存続会社とは?吸収合併の手続から資本金・会計処理・登記まで解説!

吸収合併において、関与する会社は、存続会社と消滅会社の二つに分類されます。吸収合併存続会社の資本金金額、登記や決算の手続き方法は、吸収合併の諸条件に応じて変化するため、十分注意が必要です。この記事では、吸収合併存続会社の資本金金額決定方法や、登記・決算などの手続き方法を詳しく解説します。

吸収合併の存続会社とは

存続会社とは、吸収合併により法人格が存続する会社です。

企業合併には多くの方法がありますが、その中でも吸収合併と新設合併が最もよく知られています。多くの場合、吸収合併は新設合併よりも利点が大きく、企業が合併を行う際には吸収合併が選択されることが殆どです。吸収合併に関与する会社は、存続会社と消滅会社に分かれます。吸収合併存続会社についての概要を理解しましょう。

吸収合併の定義

吸収合併は、企業合併の方法の一つで、一方の企業(存続会社)がもう一方の企業(消滅会社)の資産、負債などの権利義務をすべて引き継ぐ方式です。この場合、消滅会社は解散し、存続会社と合併して一つの企業が誕生することになります。通常、業績の良い企業が、業績の悪い企業を吸収合併することが多いです。

吸収合併の他のケースとして、親会社が子会社を吸収合併することもあります。これにより、サービスや人材を効率的に活用することが可能となります。

存続会社とは何か

吸収合併に関与する会社は、存続会社と消滅会社に区分されます。吸収合併において、譲受企業が存続会社となり、譲渡企業が消滅会社となります。存続会社は、吸収合併により消滅会社の技術や人材を確保することができるため、事業拡大が容易になります。

さらに、吸収合併を行うことで、存続会社は業界シェアや販売網の拡大を図ることができます。吸収合併では、存続会社は1つだけですが、消滅会社は複数存在しても問題ありません。

吸収合併の手続の方法

ここでは、吸収合併の手続きの流れを詳しく解説していきます。

吸収合併における存続会社と消滅会社の手続きの大まかな手順は、以下の通りです。

合併契約書の作成・締結

吸収合併を行うにあたっては、吸収合併の当事者である会社間で、合併契約を締結しなければなりません(会社法(以下、法)748条)。

吸収合併契約には、法で規定された必須事項(法749条1項(以下、法定記載事項))があり、これらの法定記載事項を記載した書面を、株主や債権者の保護のために備え付ける必要があります(法782条1項、法794条1項)。

そのため、吸収合併を進めるにあたっては、吸収合併契約書の作成が必須となります。

合併契約の締結には、取締役会を設置している会社の場合は取締役会の決議(法362条4項)、取締役会を設置していない会社の場合は原則として、取締役の過半数による決定(法348条2項)をもとに、各当事者会社の代表取締役または代表執行役が会社を代表して締結する必要があります。

合併に反対する株主による株式買取請求等

企業が合併を行う際には、該当する合併に反対する消滅会社および存続会社の株主が、自己が保有する株式を公正な価格で買い取ることを要求できる権利が認められています(会社法785条1項、会社法797条1項)。このような株式買取請求ができる株主のことを「反対株主」と称します。具体的には以下のような株主が該当します。

合併を行うために株主総会の決議が必要な場合:

  1. 株主総会に先立って合併に反対する旨を会社に通知し、かつその総会において、合併に反対した株主
  2. 前述の株主総会において議決権を行使することができない株主

株主総会の決議が不要な場合: 全ての株主(特別支配会社を除く)

反対株主による株式買取請求は、合併が効力を発生させる日の20日前から前日までの期間内に、株式買取請求に係る株式の数を明示して行わなければなりません(会社法785条5項、会社法797条5項)。

債権者保護の手続の概要

債権者保護手続きの開始に関して特別な規定は設けられていません。一方で、債権者が異議申し立ての期間として最低1か月を確保することが求められています(会社法789条2項、会社法299条2項)。合併の効力発生には、以下に挙げる(1)~(3)の債権者保護手続きを、少なくとも効力発生日前に完了させる必要があります(会社法750条6項)。

  1. 公告手続き
  2. 個別催告手続き
  3. 債権者に対する弁済等の措置

備置開始日について

備置開始日は、以下のいずれか最も早い日となります(会社法782条2項 1号〜4号)。

  1. 合併契約について、株主総会決議によって承認が必要な場合、その株主総会の日の2週間前の日
  2. 反対株主の株式買取請求にかかる通知または公告のいずれか早い日
  3. 新株予約権買取請求にかかる通知または広告のいずれか早い日
  4. 債権者異議手続きが必要な場合、公告または催告のいずれか早い日

株主総会における合併契約の承認

当事会社は、合併契約を締結した後、上記の事前の備置を実施する必要があります(会社法782条、会社法794条)。これらの情報備置を前提として、株主総会を開催し、合併契約の承認を得なければなりません。

効力の発生・合併の登記について

合併契約に基づき効力発生日において、存続会社は消滅会社の権利・義務を包括的に引き継ぐこととなります。

ただし、吸収合併では、効力発生日と登記日が異なることがあり、その期間中、法律上の関係が不明確になる恐れがあります。これは消滅会社が吸収合併によって解散する場合、吸収合併の登記が完了するまで、第三者に対してその効果を主張することができないとされています(会社法750条2項)。

吸収合併の登記については、効力発生日から2週間以内に、消滅会社は解散登記を行い、存続会社は変更登記を行う必要があります(会社法921条)。

吸収合併における存続会社の資本金の決定方法

吸収合併の際の存続会社の資本金は、合併条件によって異なる計算方法が採用され、その資本金額によって課税が変化します。資本金を決める際のポイントを理解しましょう。

会社法の規定による計算方法

吸収合併においては、存続会社は消滅会社の資本金を含むことになり、その金額は会社法によって定められています。計算方法は、消滅会社が資本関係のない会社か子会社であるかによって異なります。資本関係のない会社を吸収合併する場合、消滅会社の資産と負債を時価で算定し、資本金を決定します。

親会社が子会社を合併する場合や、子会社同士の合併(共通支配下の合併)の場合は、簿価を用いて資本金が決定されます。

税金を考慮した資本金の決定

資本金が1億円以上であるか、以下であるかによって課税が異なり、資本金を決定する際に重要なポイントとなります。1億円以下の企業は法人税法において中小企業とされ、様々な優遇措置を受けることができます。

中小企業に該当する場合、年間800万円までの所得に対して軽減税率が適用され、税制面で優遇されます。また、地方税は資本金や資本準備金、減資差益などの大きさによって課税額が変動します。資本金が1億円を超える企業の場合、外形標準課税という地方税も課税されます。

ただし、資本金が少ないことで生じるデメリットも存在するため、メリットとデメリットを比較し、資本金を適切に調整することが重要です。

消滅会社が債務超過の場合の資本金の決定

現行の会社法では、消滅会社が債務超過であっても吸収合併が可能です。その場合、株主総会で消滅会社が債務超過であることを証明する必要があります。債務超過の会社を吸収合併する場合、存続会社の資本金に対する計上は通常の方法とは異なる方法が採用されます。

消滅会社が債務超過である場合、基本的には存続会社の資本金は増加しませんが、条件によっては資本金の増額が認められるケースが存在します。具体的な条件については会計に精通した専門家でなければ把握が困難であるため、吸収合併を行う際には会計・税務の専門家へご相談ください。

吸収合併後の存続会社の決算処理

吸収合併後の存続会社の決算期における会計処理は、吸収合併が「取得」とみなされるか、「逆取得」とみなされるかによって変わります。それぞれの場合の会計処理の違いについて、以下に解説します。

吸収合併における存続会社の会計処理

吸収合併の際、存続会社が資本関係のない消滅会社の支配権を取得する場合、「取得」と判断されると、パーチェス法という会計処理が行われます。このパーチェス法は、消滅会社の資産や負債を時価に基づいて計算する方法です。

消滅会社の簿価と時価の間に差額が発生するため、この差額が「のれん」として計上されることになります。

「のれん」とは、消滅会社が持つブランド力や信用力などの無形の価値を表すものです。例えば、簿価が5億円の会社を時価7億円で吸収合併すると、その2億円が消滅会社の「のれん」、つまり付加価値として計上されます。

消滅会社の会計処理については、吸収合併の効力発生日の前日を決算日とし、決算手続きを行います。

逆取得が発生する場合の会計処理

逆取得とは、吸収合併において存続会社が消滅会社の支配権を獲得できず、逆に消滅会社が取得企業とみなされる状況を指します。

逆取得が発生するのは、吸収合併後に、消滅会社の株主による議決権比率が存続会社の株主の議決権比率を上回る場合です。

逆取得の際には、時価ではなく簿価で取得が行われるため、パーチェス法のような「のれん」の発生はありません。この場合、消滅会社となる取得企業の決算は、吸収合併の効力発生日の前日が決算日となります。

吸収合併後の存続会社の登記手続き

吸収合併が成立した場合、効力発生日から2週間以内に、存続会社の登記変更と消滅会社の解散登記を同時に行う必要があります。

吸収合併に際して登記手続きに必要な書類には以下が含まれます。

  • 合併契約書
  • 株主総会の議事録
  • 資本金の計上証明書
  • 消滅会社の登記事項証明書

必要書類は、契約内容や各会社の事業内容により異なりますので、専門家(弁護士、司法書士)への確認を行い、手続きを進めることが推奨されます。

吸収合併における存続会社のまとめ

本記事では、吸収合併を行う存続会社における資本金の決定方法や登記・決算などの手続きについて説明しました。吸収合併によって存続会社は、消滅会社の資産、負債、権利義務のすべてを一つの法人格として引き継ぎます。この吸収合併後の手続きは多岐にわたり、通常2~3ヶ月程度で進められます。特に、決算期の会計処理や資本金に関する税務処理は条件により大きく異なり、効力発生日以降は迅速かつ適切な登記手続きが求められます。決算日に合わせたい場合、効力発生日当日に登記申請を完了させる必要があります。手続きが複雑で多岐に渡るため、専門家の協力を得ることが不可欠です。まずは経験豊富な専門家へ相談しましょう。

みつきコンサルティングは、税理士法人グループのM&A仲介会社として15年以上の業歴があり、中小企業M&Aに特化した経験実績が豊富なM&Aアドバイザーが多数在籍しております。みつき税理士法人と連携することにより、税務面や法律面のサポートもワンストップで対応可能ですので、M&Aをご検討の際は、成功するM&A仲介で実績のある、みつきコンサルティングに是非ご相談ください。 

著者

野口慎矢
野口慎矢熊本支店長 兼 事業法人第四部長
国内証券会社(現SMBC日興証券)にてクライアントの資産運用を支援。みつきコンサルティングでは、消費財・小売業界の企業に対してアドバイザリーを提供。事業承継案件のみならず、Tech系スタートアップへの支援も行う。
監修:みつき税理士法人

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