この記事では、オーガニックグロースとM&Aグロースについて、それぞれの特徴やメリット・デメリットを分かりやすく解説していきます。どのようなケースにどの手法が適しているかについても触れます。オーガニックグロースやM&Aグロースに関心をお持ちの方は、ぜひ参考にしてください。
オーガニックグロースとは?
オーガニックグロースとは、企業が自社で保有する経営資源(人材、商材やサービス、技術やノウハウ、ブランドなど)を最大限に活用し、収益を拡大していく持続的な成長戦略です。オーガニックグロースによる成長は、企業の合併や買収、所謂M&Aを考慮しないため、既存の商材やサービス、技術やビジネスモデルの発展に対する業績評価の指標としてよく使われます。
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オーガニックグロースのメリットとデメリット
オーガニックグロースには、複数のメリットとデメリットが存在します。以下、オーガニックグロースのメリットとデメリットについて詳しく解説します。
メリット
- リスクを最小限に抑えながらの成長が期待できる
- 企業文化の一貫性を保ちながら事業を展開できる
- 独自の技術やノウハウの向上に繋がる
オーガニックグロースでは、企業の内部資源を活用し、無理なM&Aは実施しないことで資金面のリスクを抑えつつ、会社を成長させることができます。また、M&Aによる統合プロセスへの人・時間などの重要な経営リソースの配分や企業文化の摩擦が排除され、一貫性のある経営を続けることができます。さらに、自社独自の技術やノウハウを時間掛けて磨くことができるため、他社との競争力を高めることが可能です。
デメリット
- 事業成長に時間が掛かる
- 資金不足や人材不足に陥りやすい
- 市場の変化に対応できないケースもある
一方で、オーガニックグロースは地道な積み重ねが必要で、事業成長に時間が掛かることがデメリットです。M&Aによる事業成長と比べて、自社の資源だけで進めるため、技術やノウハウの蓄積やブランドの認知度向上、何より事業成長に時間が掛かることがあります。また、設備投資が必要になった際に資金不足に陥るケースや特に最近では人材の確保に苦戦する企業も増えてきており、計画的な事業運営が重要となります。さらに、大手資本の新規参入など市場環境が急激に変化する場合には、オーガニックグロースでは対応しきれないこともあります。
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オーガニックグロースとM&Aグロースの比較
企業価値を向上させるための成長戦略には、主に2つのアプローチがあります。オーガニックグロースとM&Aグロースです。実際の企業経営では、これら2つの戦略を状況に応じて組み合わせることが多いです。事業の成長段階や市場環境、自社の強みなどを考慮し、最適な戦略を選択することが企業価値の向上につながります。それぞれの特徴を詳しく見ていきましょう。
オーガニックグロースの特徴
オーガニックグロースは、自社の内部資源を活用して成長を目指す戦略です。以下のような特徴があります:
- 自己資金やリソースを活用するため、リスクが比較的低くなります。
- 成長速度は緩やかな傾向にありますが、安定した成長が期待できます。
- 自社内で柔軟に戦略や方針を決定できるため、中長期的な視点での経営が可能です。
- 企業文化や価値観を維持しやすく、従業員のモチベーション管理が比較的容易です。
M&Aグロースの特徴
M&Aグロースは、他社の経営資源を取り込むことで成長を加速させる戦略です。主な特徴は次のとおりです:
- 短期間での急速な事業成長が可能です。
- 新しい技術、ノウハウ、商材、サービス、取引先網、人材などを素早く獲得できます。
- 統合プロセスにおけるリスクや負荷が生じる可能性があります。
- 初期投資が大きく、財務面での影響を慎重に検討する必要があります。
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オーガニックグロースとM&Aグロースの最大の違いは、活用する経営資源が企業の内部にあるか外部にあるかという点です。両戦略をバランスよく活用することで、持続可能な成長と企業価値の向上を実現できるのです。以上の観点を含め、比較表にまとめたものが以下です。
オーガニックグロース | M&Aグロース | |
---|---|---|
利用する経営資源 | 内部資源 | 外部資源 |
成長スピード | ゆるやか | 速い |
初期投資額 | 少ない | 多い |
人材確保 | 自力で採用 | 他社からグループイン |
新規事業展開(多角化) | 知見がないため簡単でない | 成功している事業を取り込むため容易 |
方針の転換 | いつでも柔軟にできる | カーブアウトが検討される |
オーガニックグロースとM&Aのまとめ
オーガニックグロースは、自社の経営資源のみを活用して、自力で事業成長を実現する手法であり、中長期的な視野からの事業運営が可能になるなど多くのメリットがあります。ただし、事業成長に時間が掛かるケースや資金調達、人材の確保が困難になるなどのデメリットも無視できません。企業の状況に応じて、M&Aグロースがより適切な選択であるケースもあります。企業は市場環境や成長段階に応じて、オーガニックグロースとM&Aグロースを比較検討し、数多くの選択肢のなかから適切な成長戦略を選択することが重要です。企業価値向上のためには、それぞれの手法のメリットとデメリットを理解し、自社に適した戦略を立案することが肝心です。
本記事では、オーガニックグロースとM&Aグロースのメリット・デメリットとその違いについてご紹介しました。自社の事業戦略を検討する際にぜひ参考にしてください。また、適切な戦略の選択や実行には専門家の意見も重要ですので、必要に応じて外部のコンサルタントや支援機関と相談することもお勧めします。
著者
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ヘルスケア分野に関わる経営支援会社を経て、みつきコンサルティングでは事業計画の策定、モニタリング支援事業に従事。運営するファンドでは、投資先の経営戦略の策定、組織改革等をハンズオンにて担当。東南アジアなど海外での業務経験から、クロスボーダー案件に関しても知見を有する。
監修:みつき税理士法人
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