譲渡制限株式の会社売却|中小企業M&Aでの譲渡承認請求と実務

自社株を譲渡したいが、定款の譲渡制限が壁になる――。会社売却を検討する中小企業オーナーが、最初につまずきやすい論点です。本記事では、譲渡制限株式を用いた会社売却の進め方、譲渡承認請求の流れ、取締役会・株主総会での決議、不承認時の対応、M&A実務で見落とされがちな名義株や個人保証の論点まで、現場感覚を交えて整理します。

「うちの会社でも売却できるだろうか…」、「何から始めればいいんだろう…」。そのようなオーナー経営者の不安に、中小企業向けM&A仲介会社みつきコンサルティングは、20年間・500件以上の支援実績に基づき、お応えします。本格検討前の情報収集として、まずはお話をお聞かせください。

「うちの株は、定款で譲渡制限がついている。これって会社売却の障害になるのでは」。ときおり中小企業オーナーからいただく質問です。結論からいえば、譲渡制限株式でもM&Aは実行できます。ただし、譲渡承認請求という一手順が必須となり、ここで段取りを誤るとクロージングが遅れます。本記事では、その全体像を実務目線で解説します。

譲渡制限株式の会社売却が「自由」でない理由

譲渡制限株式は、定款で「譲渡には会社の承認を要する」と定められた株式です。中小企業の大半は、この譲渡制限を設けています。背景には、株主構成を社内関係者に限定したいという閉鎖的経営の意図があります。

譲渡制限株式の法的位置づけ

会社法127条は株式譲渡自由を原則としますが、定款で例外を設けることができます(会社法107条1項1号)。条文の詳細はe-Gov法令検索(会社法)で確認できます。

譲渡承認の対象となる株式の確認方法

自社の登記簿謄本または定款を確認し、「株式の譲渡制限に関する規定」の有無をチェックします。「当会社の株式を譲渡するには取締役会の承認を要する」等の文言があれば、譲渡制限株式の発行会社です。

中小企業の大半が譲渡制限会社

非上場の中小企業のほぼ全てが、発行する全株式に譲渡制限を設けています。理由は単純で、見知らぬ第三者が突然株主になることを避けたいからです。

非公開会社と公開会社の違い

会社法上は、譲渡制限のない株式を一部でも発行していれば「公開会社」です。上場の有無とは異なる概念であり、実務上は混同しやすい点になります。

会社売却で譲渡承認が必須となる根拠

株式譲渡型のM&Aでは、オーナーが保有する自社株を譲受企業に売却します。譲渡制限株式である以上、会社(取締役会または株主総会)の承認なしには株主名簿の書換ができません。承認を経ない譲渡は会社との関係で効力を主張できないため、実質的にクロージング不能となります。

会社売却(M&A)での譲渡承認請求の位置づけ

譲渡承認は、M&Aプロセス全体のどこに組み込まれるのか。タイミングを誤ると、契約締結後の宙ぶらりんな期間が生じます。

株式譲渡型M&Aの全体フロー

典型的な中小企業M&Aは、相談・準備→相手探し→基本合意→デューデリジェンス→最終契約(SPA)→クロージング、という流れで進みます。譲渡承認請求は、最終契約とクロージングの間に位置することが大半です。

承認請求のタイミング

支援現場では、SPA締結と同日またはその直前に承認請求書を提出するケースがあります。SPAに「承認取得を停止条件とする」旨を入れ込み、不承認の場合は契約を解除できる設計にします。

実際の中小企業M&Aの実務では、譲渡制限株式に係る譲渡承認はSPA締結前に必ず取得されるとは限らず、まずSPAを締結し、その後、譲渡承認の取得をクロージングの前提条件(CP)として整理する運用が一般的です。

早すぎる承認請求の落とし穴

基本合意の段階で承認請求を出してしまうと、買い手の素性や条件が固まる前に取締役会の議論が始まります。条件交渉が決着しないまま承認手続だけ進むと、後で価格や付随条件が変わったときに再決議が必要になることもあります。

株主名簿書換とクロージング

承認決議後、SPAに基づき譲渡実行(株式代金の支払、株主名簿の書換、登記簿の役員変更等)を行います。先述のように、譲渡承認はクロージングの前提条件として位置づけ、停止条件付きSPAで対応するのが実務の主流です。

譲渡承認請求書の記載事項と作成方法

譲渡承認請求書には、法律上、必ず書かなければならない項目があります。形式は自由でも、内容には決まりがあります。

会社法上の必須記載事項

会社法138条は、譲渡承認請求に際して①譲渡しようとする株式の数(種類株式発行会社では種類と種類ごとの数)、②譲受人の氏名または名称、③会社が承認しない場合に会社または指定買取人による買取を請求するか否か、の3点を明らかにすることを求めています。

記載漏れがあると差し戻しの可能性

支援現場で見る論点として、買取請求の有無の記載漏れがあります。「不承認なら売却を諦める」という株主はほぼ存在しません。買取請求の意思表示は、ほぼ必須項目として記載しておきます。

雛形と記載例

下表のような項目を入れ込んだ書面で十分です。実印押印は法律上必須ではありませんが、本人確認の観点から実印+印鑑証明書の添付が一般的です。

株式譲渡承認請求書のひな型・テンプレート

下表は譲渡承認請求書に最低限盛り込むべき記載事項の整理です。

記載項目記載内容の例実務上の留意点
譲渡株式の種類・数普通株式 ○○株種類株式発行会社では種類ごとに記載
譲受人株式会社○○(住所・代表者)表記揺れがないか登記簿で確認
買取請求の意思表示不承認時は会社買取を請求する記載漏れに注意
請求日・請求者請求年月日、株主名、押印実印+印鑑証明書の添付を推奨

通知書一体型のひな型

譲渡承認請求書と、会社からの承認・不承認通知書を一体化したフォーマットも実務でよく使われます。記載項目は単独型と同じです。

株式譲渡承認請求書の見本・サンプル

提出先と提出方法

会社の本店宛に、直接持参または配達記録の残る郵送で提出します。M&Aでは仲介会社が一連の書面を整え、取締役会の議事日程に合わせて提出するのが通常です。

取締役会・株主総会での承認決議

請求書を受け取った会社は、どの機関で承認・不承認を決議するのか。機関設計によって流れが分かれます。

取締役会設置会社の場合

取締役会で普通決議により承認・不承認を決定します(会社法139条)。中小企業でも取締役会を置く会社では、この方法が原則です。

取締役の利害関係に注意

譲渡オーナーが取締役を兼ねている場合、自分の譲渡に関する決議には特別利害関係があるため議決権を行使できません。実務では、譲渡オーナーが取締役会を退席して決議を進めます。

取締役会非設置会社の場合

株主総会の普通決議で決議します。中小企業の小規模会社では、こちらのケースも珍しくありません。

定款で機関を変更している場合

「代表取締役の承認をもって会社の承認とする」等、定款で承認機関を別途定めているケースもあります。請求書を出す前に必ず定款を確認します。

議事録の作成と保管

承認決議の証拠として、取締役会議事録または株主総会議事録を必ず作成します。M&AではDDでも提出が求められるため、誤字脱字や日付の整合性に注意が必要です。

2週間ルールとみなし承認

会社は、請求から2週間以内に承認・不承認の決定内容を株主に通知しなければなりません(会社法139条2項)。期限内に通知がない場合は、承認したものとみなされます(みなし承認)。

みなし承認はM&Aでは活用しない

みなし承認は理屈上の救済規定にすぎません。実務では明示的な決議を取り、議事録を残します。買い手のDDでも、明示的な承認の記録がないと不安材料となります。

承認・不承認それぞれの対応

中小企業の親族外承継型M&Aでは、承認決議が事前に内定しているため、ほぼ100%承認されます。不承認となるのは、株主間に対立がある特殊な場合に限られます。

承認された場合の流れ

SPAに基づき、株式代金の決済、株主名簿の書換、譲渡オーナーの代表取締役辞任登記、新代表取締役の就任登記等を順次実行します。

株主名簿の書換は会社に対する対抗要件

株主名簿の名義書換が完了していなければ、譲受企業は会社に対して株主としての権利を主張できません。クロージング当日に名義書換まで完了させるのが鉄則です。

不承認となった場合の3つの選択肢

譲渡が不承認となった場合、譲渡オーナーは買取請求を選択できます(会社法140条以下)。買取主体は、会社または会社が指定する第三者(指定買取人)です。

会社による買取(自己株式取得)

会社が自己株式として買い取る場合、株主総会の特別決議で買取の決定を行い、不承認通知から40日以内に株主へ通知します。財源規制(分配可能額)の制約があり、純資産が薄い会社は実行困難です。

指定買取人による買取

指定買取人は取締役会または株主総会で決定し、不承認通知から10日以内に株主へ通知します。中小企業の親族間紛争では、後継者候補や経営陣を指定買取人にするケースがあります。

不承認時の売買価格の決定

買取価格は、当事者間の協議で決めるのが原則です。不調の場合、株主または買取側は通知受領日から20日以内に裁判所に売買価格決定の申立てができます。裁判所はDCF法、純資産法、類似会社比準法等を組み合わせて評価します。

法定価格による解決

協議も裁判所申立てもない場合、1株あたりの純資産額×株式数で算出される法定価格が適用されます。譲渡オーナーには不利な水準になりがちで、実務上は協議または裁判所手続が選ばれます。

中小企業の会社売却で押さえるべき実務論点

譲渡承認請求の手続は会社法の条文どおりに進めれば良い、というほど単純ではありません。中小企業特有の論点があります。

名義株主への対応

中小企業では、設立時の発起人要件を満たすために親戚や知人の名義を借り、実質はオーナーが出資した「名義株」が残っているケースが多くあります。名義人がすでに死亡し、相続人が分からないこともあります。

名義株の整理が承認手続の前提

当社の支援経験では、譲渡承認請求の前に名義株主全員から「実質株主はオーナーである」旨の確認書を取得します。確認が困難な場合は、買い手に対する表明保証で対応するか、買い手の承諾を得て真実株主から譲渡承認請求を行うか、設計を分岐させます。

個人保証の解除と承認手続の連動

譲渡オーナーの多くは個人保証を負っています。中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」は、最終契約で経営者保証の解除・移行を明記するよう求めています。

承認決議と金融機関交渉のタイミング

取締役会の承認決議と、メインバンクへの個人保証解除交渉は、並行して進めるのが実務です。承認決議だけ進めても、保証解除の見通しが立たなければクロージングは止まります。

少数株主の事前集約

創業者一族で株式が分散している場合、少数株主が反対株主買取請求権等を行使する可能性があります。M&A実行の遅くとも半年から1年前に、少数株主の保有株を譲渡オーナーが買い集める「集約」を行うのが定石です。

相続発生時の特例

譲渡承認は譲渡(売買・贈与)の場合に必要で、相続による株式移転には不要です。ただし、相続人に対する売渡請求の制度がある定款の場合、別途留意が必要となります。

譲渡制限株式の会社売却を成功させる4つのポイント

譲渡承認請求の手続自体は、書面の作成と決議の積み重ねです。ただし、M&A全体の成功には、隣接論点への目配りが欠かせません。

早期の専門家相談

譲渡承認請求は、M&Aプロセスの一部分にすぎません。買い手探し、企業価値評価、デューデリジェンス対応まで含めて全体設計するなら、M&A仲介会社への早期相談が有効です。

譲渡所得への税金対応

個人が株式を売却した場合、譲渡益に対し所得税15%・住民税5%・復興特別所得税0.315%の合計20.315%(分離課税)が課されます。法人売却なら法人税率での課税です。

名義株や時価乖離による贈与税リスク

時価から大きく乖離した低額譲渡や無償譲渡は、譲受側に贈与税・受贈益課税が発生する可能性があります。事前の税務シミュレーションが欠かせません。

株主間の利害調整

同族会社では、配偶者や子が株主に名を連ねる例が多いです。譲渡の意思決定や承認決議の前に、家族内で目線合わせをしておきます。後から「自分の株は売らない」という株主が出ると、進行中の交渉が崩れます。

譲受企業の信頼性確認

中小M&Aガイドライン第3版では、不適切な譲受企業(クロージング後に資金を引き出して蒸発する事例等)への警戒が強く打ち出されています。仲介会社が譲受企業の財務状況・コンプライアンス・実態調査を行う運用となっており、譲渡オーナー側も契約条件で身を守る必要があります。

譲渡制限株式の会社売却に関するFAQ

譲渡承認請求やM&A実務で、現場で実際にいただく質問をまとめます。

Q:譲渡承認を取らずに株式を売却してしまった場合はどうなる

譲渡当事者間では契約は有効でも、会社との関係では効力を主張できません。株主名簿の書換ができず、譲受企業は配当受領も議決権行使もできません。後から会社が無効を主張するリスクもあります。

Q:承認請求から決済までどのくらいの期間がかかるか

取締役会設置会社で書類が整っていれば、請求から決議・通知まで2〜3週間程度です。ただし、M&A実務ではDDや個人保証解除と並行するため、SPA締結からクロージングまで1〜2ヶ月を見込みます。状況次第で前後します。

Q:同族株主が反対している場合はM&Aを諦めるしかないのか

反対株主の保有比率次第です。少数株主であれば、事前の買取集約で対応するのが定石です。反対が拮抗する場合は、家族会議や種類株式の活用、譲渡オーナー側からの一部買取提案など、設計の選択肢があります。

Q:M&A時に譲渡制限自体を撤廃する必要はあるか

原則として不要です。承認決議さえ取れれば譲渡実行できます。譲受企業が新オーナーとして経営する以上、譲渡制限を残した方が買い手にとっても安全です。

Q:株主名簿に古い名義株主が残っている場合はどうするか

承認請求の前に整理しておくのが原則です。実質株主が誰かを確認書で固め、必要に応じて贈与・買取で名義を集約します。整理が遅れるとDDで指摘され、価格減額や破談に繋がります。

譲渡制限株式の会社売却のまとめ

譲渡制限株式の会社売却は、譲渡承認請求書の提出、取締役会または株主総会の決議、株主への通知、名義書換という一連の手続を経て完結します。中小企業特有の名義株や個人保証、少数株主の集約まで含めて設計することが、M&A成功の分岐点です。手続の難しさより、隣接論点の見落としが落とし穴になります。

みつきコンサルティングは、税理士法人グループの中小企業向けM&A仲介会社として、譲渡制限株式の整理から会社売却の完了まで一貫してサポートします。会計・税務・法務の知見を組み合わせ、譲渡オーナーが安心して次のステージへ進めるよう伴走します。会社売却や企業価値評価をご検討中であれば、お気軽にご相談ください。

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著者

西尾 崇
西尾 崇事業法人第三部長/M&A担当ディレクター
宅食事業を共同経営者として立ち上げ、CFOとして従事。みつきコンサルティングでは、会計・法務・労務の知見を活かし、業界を問わず、事業承継型・救済型・カーブアウト・MBO等、様々なニーズに即した多数の支援実績を誇る。M&Aの成約実績多数、M&A仲介・助言の経験年数は10年以上
監修:みつき税理士法人

みつきコンサルティングは、中小企業の会社売却・事業承継に特化した譲渡企業様に完全成功報酬制のM&A仲介会社です。売り手と買い手企業の最適なマッチングを、経験豊富なM&Aコンサルタントが初期相談から成約まで一貫してフルサポートします。

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