株式譲渡と事業譲渡の消費税|会社売却で有利なスキーム選定

会社売却で株式譲渡と事業譲渡のどちらを選ぶかは、消費税の扱いで手取り額が大きく変わります。株式譲渡は原則非課税、事業譲渡は課税資産ごとに消費税が発生します。本記事ではM&A仲介の現場経験から、両スキームの消費税の違い、会計処理、譲渡オーナーの手取りに直結するスキーム選定の判断軸まで解説します。

「うちの会社でも売却できるだろうか…」、「何から始めればいいんだろう…」。そのようなオーナー経営者の不安に、中小企業向けM&A仲介会社みつきコンサルティングは、20年間・500件以上の支援実績に基づき、お応えします。本格検討前の情報収集として、まずはお話をお聞かせください。

会社売却での消費税は株式譲渡なら非課税

会社をまるごと譲渡するか、事業の一部を譲渡するか。M&A実務での最初の分岐点が、株式譲渡か事業譲渡かというスキーム選定です。両者は消費税の取扱いが根本的に異なり、譲渡対価の手取り額に直接影響します。

結論|株式譲渡は消費税ゼロ、事業譲渡は課税資産に発生

消費税法上、株式は有価証券に該当するため、株式譲渡は非課税取引です。一方、事業譲渡は譲渡対象となる資産ごとに消費税の課税・非課税が判定されます。中小企業のM&Aで株式譲渡が約9割を占める背景には、この消費税の差も影響しています。

譲渡オーナーの手取りに直結するスキーム選定

支援現場では、譲渡オーナーから「どちらが税務上有利か」と問われる場面が多くあります。消費税の有無に加え、譲渡所得課税か法人税課税か、簿外債務の承継リスク、契約の引継ぎ範囲など、複数の論点を立体的に比較する必要があります。詳しくは株式譲渡と事業譲渡の違い・選び方で解説しています。

株式譲渡で消費税が非課税となる理由

株式譲渡が非課税となるのは、株式が「消費」ではなく「資本の移転」とみなされるためです。譲渡側が個人であっても法人であっても、株式譲渡の対価に消費税は課されません。

株式は資本の移転であり消費ではない

消費税は、本来は商品の売買やサービス提供という「消費行為」に課される税金です。株式は会社の所有権を表す有価証券であり、その移転は資本の移動にすぎません。手形や小切手と同じく、株式の取引は譲渡側から譲受側への持分の移転と整理されます。

消費税法上の3区分での位置づけ

消費税の取引区分には、課税取引・非課税取引・不課税取引の3種類があります。下表で違いを整理しました。表中のとおり、株式譲渡は「非課税取引」に分類されます。

区分該当する取引の例消費税の扱い
課税取引商品の販売、サービス提供、固定資産の売却10%課税
非課税取引株式譲渡、土地の譲渡、利子・保険料消費税は課されないが、消費税法上の取引には含まれる
不課税取引給与、寄附、配当金、保険金受取そもそも消費税の対象外

非課税と不課税の違いは、後述する「課税売上割合」の計算で影響が出る点です。詳細は国税庁のタックスアンサーNo.6209「非課税となる取引」で公表されています。

個人株主・法人株主のいずれも非課税

オーナー経営者が個人で保有する自社株を譲渡する場合も、ホールディングス等の法人が子会社株式を譲渡する場合も、いずれも消費税は発生しません。中小企業M&Aで多いオーナーから第三者への株式譲渡は、消費税の心配は不要です。株式譲渡の基本は株式譲渡とは|中小企業の目的とメリットでも整理しています。

事業譲渡では消費税が課税される理由と計算

事業譲渡は、会社が運営する事業の一部または全部を切り出して譲渡する手法です。譲渡対象は個別の資産・負債の集合体であり、その中に消費税法上の課税資産が含まれていれば、その部分に消費税10%が課されます。

課税対象になる主な資産

事業譲渡の対価のうち、課税対象となる代表的な資産は以下です。

  • 棚卸資産(商品・原材料・仕掛品)
  • 有形固定資産(機械・設備・備品・建物)
  • 無形固定資産(ソフトウェア・特許権・商標権・のれん)
  • 車両運搬具

とくにのれんは事業譲渡で大きな価額となるケースが多く、そこに10%の消費税が乗ると、譲受側のキャッシュアウトは数千万円単位で増えることがあります。

非課税となる主な資産

一方、以下の資産は事業譲渡に含まれていても消費税は課されません。

  • 土地(借地権を含む)
  • 有価証券(株式・社債)
  • 債権(売掛金・受取手形・貸付金)
  • 現金・預金

譲渡資産の中に土地が大きく含まれる事業(不動産業・運送業の倉庫・製造業の工場など)では、消費税負担は比較的軽くなります。逆に在庫や機械設備が中心の事業では、譲渡額に対する消費税の比率が大きくなる傾向です。

譲渡側・譲受側の消費税の流れ

事業譲渡では、譲受企業が課税資産の合計額に消費税10%を上乗せして譲渡側に支払います。譲渡側は受け取った消費税を仮受消費税として預かり、決算後に税務署へ申告・納付します。

つまり、譲渡側は消費税を「一時的に預かるだけ」で最終的な負担者ではありません。ただし、譲受側のキャッシュアウトが膨らむため、価格交渉や資金計画に影響します。営業の譲渡の取扱い詳細は国税庁の質疑応答事例でも整理されています。事業譲渡の手続全体は事業譲渡とは|デメリットとM&Aでの活用法を参照ください。

スキーム選定では消費税以外の税務も含めて比較する

消費税の取扱いだけを見ると株式譲渡が圧倒的に有利ですが、スキーム選定はそれだけで決まりません。譲渡所得課税・簿外債務・契約承継など、複数の要素を組み合わせて判断します。

譲渡所得課税と法人税の違い

株式譲渡では、譲渡益はオーナー個人の譲渡所得として課税され、税率は所得税・住民税・復興特別所得税の合計で約20.315%(申告分離課税)です。事業譲渡では譲渡益は会社に帰属し、法人税等の実効税率(中小法人で約34%前後)が課されます。さらに、譲渡対価をオーナー個人に渡すには配当または役員退職金など別の課税が必要です。

譲渡オーナー個人の手取りという観点では、株式譲渡のほうが税負担は軽くなる傾向にあります。具体的な計算方法は株式譲渡の税金|計算方法と節税で詳しく解説しています。

簿外債務・契約承継の違い

株式譲渡では、会社をまるごと譲受するため、簿外債務や偶発債務もそのまま承継されます。譲受側はデューデリジェンスでリスクを洗い出し、表明保証や価格調整で対応します。

事業譲渡では、譲受側が引き継ぐ資産・負債を選別できるため、簿外債務リスクを切り離せます。一方、取引先との契約や許認可は個別に巻き直しが必要となり、手続負担は重くなります。譲渡側にとっては、契約や許認可の同意取得が成約スピードを左右する論点です。

譲渡対価の入り口(会社か個人か)

譲渡対価が「誰の手元に入るか」も重要な分岐点です。下表は支援現場でよく使う比較フレームです。

比較項目株式譲渡事業譲渡
消費税非課税課税資産に10%課税
譲渡対価の入り口オーナー個人譲渡会社(法人)
主な課税譲渡所得(約20.315%)法人税等(約34%前後)
簿外債務承継される選別可能
契約・許認可包括承継個別に巻き直し
個人保証解除交渉が前提原則として残存

事業譲渡で得た代金を最終的にオーナー個人に移すには、退職金・配当・残余財産分配など別の経路が必要です。各経路で課税が発生するため、二重課税となるケースが多く、譲渡オーナーの最終的な手取りは株式譲渡より目減りしやすい構造です。事業譲渡の税金論点は事業譲渡の税金|売り手と買い手の税務リスクで整理しています。

株式譲渡でも消費税が間接的に発生する場合

株式譲渡そのものに消費税は課されません。ただし、譲渡側が課税事業者の法人である場合、株式譲渡額が「課税売上割合」に影響し、結果として消費税の納付額が増えることがあります。オーナー個人による自社株譲渡では関係しませんが、ホールディングス体制での子会社株式譲渡では留意が必要です。

課税売上割合と仕入税額控除

法人が納付する消費税は、預かった消費税(仮受消費税)から支払った消費税(仮払消費税)を差し引いて計算します。ただし、課税売上高が5億円超の法人、または課税売上割合が95%未満の法人は、仮払消費税の全額を控除できません。控除できるのは課税売上割合に応じた一部のみです。

課税売上割合の計算方法は、国税庁のタックスアンサーNo.6505「課税売上割合の計算方法」で確認できます。

5%加算ルールの仕組み

有価証券を譲渡した場合、譲渡価額の5%のみを非課税売上として課税売上割合の分母に加算するルールがあります。これは、株式譲渡額をそのまま分母に入れると課税売上割合が極端に下がり、納税額が過大になることを防ぐための調整措置です。

計算式の項目内容
分子課税売上高
分母課税売上高+非課税売上高+株式譲渡価額×5%

つまり、株式譲渡額が大きいほど分母が膨らみ、課税売上割合が低下します。その結果、控除できる仮払消費税が減少し、納付すべき消費税が増える構造です。

譲渡額が大きい法人での注意点

支援現場で論点になるのは、株式譲渡額が数十億円規模となるケースや、グループ再編で複数回の株式譲渡を行うケースです。納税シミュレーションを事前に行わないと、決算後に想定外の納税負担が発生することがあります。譲渡の意思決定時には、税理士と連携して課税売上割合への影響を確認しておくのが実務の基本です。

株式譲渡の会計処理と仕訳

株式譲渡を行ったときの仕訳は、有価証券譲渡益または有価証券譲渡損の勘定科目を用います。消費税は非課税のため、仕訳上に仮受消費税は発生しません。

有価証券譲渡益が発生した場合

取得価額15,000円の株式を16,000円で譲渡し、1,000円の利益が発生したケースを示します。

借方金額貸方金額
現金預金16,000有価証券15,000
有価証券譲渡益1,000

有価証券譲渡損が発生した場合

取得価額15,000円の株式を株価下落により10,000円で譲渡し、5,000円の損失が発生したケースを示します。

借方金額貸方金額
現金預金10,000有価証券15,000
有価証券譲渡損5,000

関係会社株式・子会社株式の仕訳の詳細や勘定科目の使い分けは、株式譲渡の仕訳|関係会社・子会社株式の会計処理で詳述しています。譲渡益にかかる課税の全体像はキャピタルゲイン課税の仕組みもあわせてご確認ください。

株式譲渡と事業譲渡の消費税に関するFAQ

支援現場で譲渡オーナーから実際に多く寄せられる質問を整理しました。

 Q:株式譲渡で消費税が一切かからないのは本当ですか

はい、株式譲渡の対価に消費税は課されません。個人オーナーによる自社株譲渡であれば、消費税は完全にゼロです。ただし、課税事業者の法人が株式を譲渡する場合は、課税売上割合への影響で間接的に納付消費税が増えることがあります。現場ではまずここを確認します。

Q:事業譲渡で消費税の負担を減らす方法はありますか

譲渡資産の構成を整理することで、課税対象資産の比率を下げる工夫は可能です。たとえば、土地比率が高い事業切り出しや、譲渡前に在庫を圧縮するなどの調整があります。ただし、租税回避とみなされない範囲での対応が前提です。契約条項と税理士の判断次第となります。

Q:株式譲渡と事業譲渡のどちらを選ぶべきですか

譲渡オーナー個人の手取りを最大化したい場合は、消費税・譲渡所得課税の両面で株式譲渡が有利です。一方、事業の一部だけを切り出したい、簿外債務を切り離したいといった事情がある場合は事業譲渡が選ばれます。実務では9割が株式譲渡を選択しています。

Q:個人事業主が事業譲渡した場合、消費税はどうなりますか

個人事業主が課税事業者であれば、譲渡資産のうち課税資産部分に10%の消費税が発生します。免税事業者であれば消費税の納税義務はありませんが、譲受側は仕入税額控除ができないため、価格交渉に影響します。

Q:のれんに消費税はかかりますか

事業譲渡で発生するのれん(営業権)は無形固定資産として課税資産に該当し、10%の消費税が課されます。のれん部分が大きい案件では、譲受側のキャッシュアウトが大きく膨らむため、価格交渉時の論点となります。

株式譲渡と事業譲渡の消費税まとめ

株式譲渡は資本の移転として消費税が非課税となる一方、事業譲渡では譲渡資産の中の課税資産に10%の消費税が課されます。消費税だけでなく、譲渡所得課税や簿外債務、契約承継までを含めて比較すると、譲渡オーナーの手取りや承継リスクは大きく変わります。スキーム選定の判断は不安が大きい局面ですが、ひとつずつ整理すれば最適解は見えてきます。

みつきコンサルティングは税理士法人グループのM&A仲介会社です。中小企業の会社売却・事業承継で20年の実績があり、税務・法務の両面から最適なスキームをご提案します。本格検討前の情報収集段階から、無料相談を承っています。

ご譲渡を検討される方
今すぐ無料相談する
M&Aの重要ポイント資料
無料でダウンロードする

著者

西尾 崇
西尾 崇事業法人第三部長/M&A担当ディレクター
宅食事業を共同経営者として立ち上げ、CFOとして従事。みつきコンサルティングでは、会計・法務・労務の知見を活かし、業界を問わず、事業承継型・救済型・カーブアウト・MBO等、様々なニーズに即した多数の支援実績を誇る。M&Aの成約実績多数、M&A仲介・助言の経験年数は10年以上
監修:みつき税理士法人

みつきコンサルティングは、中小企業の会社売却・事業承継に特化した譲渡企業様に完全成功報酬制のM&A仲介会社です。売り手と買い手企業の最適なマッチングを、経験豊富なM&Aコンサルタントが初期相談から成約まで一貫してフルサポートします。

【無料】資料をダウンロードする

M&Aを成功させるための重要ポイント

M&Aを成功させるための
重要ポイント

M&Aの事例20選

M&Aの事例20選

事業承継の方法とは

事業承継の方法とは

【無料】会社売却のご相談 
簡単30秒!即日対応も可能です

貴社名*
お名前*
電話番号*
メールアドレス*
所在地*
ご相談内容(任意)

個人情報の取扱規程に同意のうえ送信ください。営業目的はご遠慮ください。

買収ニーズのご登録はこちら >

その他のお問い合わせはこちら >