ジュエリー製造・加工業の売却|地金高騰期のM&Aと職人の技能承継

ジュエリー製造・加工業の売却では、地金在庫の時価と、原型や職人の技能をどう価格に映すかが交渉の軸になります。金相場の高騰で仕入資金は膨らむ一方、分業を担う職人の高齢化は止まらず、単独で続けるか迷う経営者は少なくありません。預り地金の線引き、めっき工程の届出、上場企業の公表事例まで、宝飾メーカーの譲渡オーナーが先に知っておきたい実務を解説します。

M&A仲介手数料・料金体系を見る|完全成功報酬制・着手金・中間金0円
企業価値を1分で簡易試算|登録不要・無料の企業価値評価
目次
  1. 地金高騰と産地の担い手減少が重なるジュエリー製造・加工業
    1. 出荷額は持ち直しても事業所の9割が20人未満
    2. 1グラム2万円台の金相場が運転資金を押し上げる
    3. 山梨の集積産地を支えてきた分業の細り
  2. 原型師や石留め職人の高齢化など宝飾メーカーが売却に動く理由
    1. 技能検定の1級技能士が社長と古参職人に偏る
    2. 地金の立替資金と個人保証の重さ
    3. 百貨店や専門店に預ける委託在庫の負担
    4. ラボグロウンダイヤモンドとCAD化への投資判断
  3. 譲渡オーナーから見た宝飾工房売却のメリットとデメリット
    1. 株式譲渡なら残る取引口座と届出
    2. ブランドや工房だけを切り出す事業譲渡の注意
  4. 地金の時価と預り地金から組み立てる宝飾メーカーの譲渡価格
    1. 年買法で見る時価純資産と地金の含み益
    2. 支給地金と自社地金を分けて数える
    3. 基本合意から実行日までの相場変動をどう扱うか
  5. 工賃単価や地金ロス率など買い手の評価を動かす数字
    1. 加工賃型と素材込み型で変わる粗利の見え方
    2. 原型とゴム型の保有数とCADデータの管理
    3. 上位取引先への集中と自社ブランド比率
  6. ジュエリー製造・加工業のM&Aで特に注意すべき論点
    1. めっき工程の毒物劇物業務上取扱者届出と排水設備
    2. 原型・デザインの権利と発注元とのOEM契約
    3. 天然石とラボグロウンダイヤモンドの区分管理と原石の来歴
    4. 社長を慕って残る職人と外注先をどう引き継ぐか
  7. 宝飾メーカーに手を挙げる譲受企業の類型と公表事例
    1. 同業の製造卸と大手ジュエリーメーカー
    2. 店舗網を持つ小売チェーンとリユース事業者
    3. 上場企業の公表事例に見る株式取得とブランド事業の譲受
    4. 異業種と投資ファンドが関心を示す場面
  8. ジュエリー製造・加工業のM&A・売却でよくある質問
  9. ジュエリー製造・加工業の地金評価と売却相談先選び
    1. ジュエリー製造・加工業の会社売却の関連コラム

金庫の地金は相場で値上がりしたのに、会社の値段がどう決まるのかは見えにくいもの。宝飾品の製造や加工を営み、会社売却を考えるオーナー経営者からよく聞く戸惑いです。発注元から支給された地金と自社地金の線引き、原型の権利の所在、石留めや研磨を担う職人の定着、めっき工程の届出。この業種で交渉が止まりやすい箇所を、順に取り上げます。

地金高騰と産地の担い手減少が重なるジュエリー製造・加工業

単価が上がれば会社も安泰、とは限りません。外部環境から、宝飾メーカーのM&Aが動く背景を確かめます。

出荷額は持ち直しても事業所の9割が20人未満

総務省・経済産業省「経済構造実態調査」によると、貴金属・宝石製品製造業の製品出荷額は2023年に2,599億円となり、コロナ禍の2020年の約1,300億円から大きく戻りました。押し上げたのは金やプラチナの値上がりと円安によるインバウンド需要で、作る点数が増えたわけではありません。全625事業所のうち従業者20人未満が約9割を占める構造も同じまま。1社で販路と技能者の両方を抱え続ける負担は重く、中小企業のM&Aが現実の選択肢に上っています。

1グラム2万円台の金相場が運転資金を押し上げる

田中貴金属工業が公表する金の参考小売価格(税抜・月平均)は、2023年1月の1グラム8,024円から、2026年8月には2万2,660円まで上がりました。約2.8倍です。地金を先に買い、加工して納め、代金を回収するまでの間に会社が立て替える金額は、そのまま膨らむ構図。同じ重さの在庫を持つだけで借入枠を圧迫し、個人保証の残高も増えていきます。相場が上がるほど資金繰りが苦しくなるという、ほかの製造業にはない悩みを抱えやすい業種です。

山梨の集積産地を支えてきた分業の細り

山梨県によると、同県は宝石の研磨から貴金属加工、流通までが集まる産地で、宝飾品出荷額は全国の約3割を占めます。東京都台東区の御徒町周辺にも工房や卸が集まり、原型、鋳造、石留め、研磨、めっきを別々の会社が担う分業で成り立ってきました。この一角が廃業すると、残った会社は外注先を探し直すことに。産地ブランド「koo-fu」による若手育成など巻き返しの動きはあるものの、1工程の空白が取引全体を揺らす構造は、会社売却を急がせる一因になっています。

▷関連:アパレル業界のM&A|ブランド価値と在庫リスクで考える譲渡事例

原型師や石留め職人の高齢化など宝飾メーカーが売却に動く理由

後継者がいないから、だけで片づけると交渉の場で説明に詰まります。この業種ならではの事情を4つに分けて見ていきます。

技能検定の1級技能士が社長と古参職人に偏る

ジュエリーの製作には厚生労働省の技能検定「貴金属装身具製作」があり、1級と2級は1973年度に、3級は2008年度に設けられました。中小の宝飾メーカーでは、1級技能士が社長本人とベテラン1〜2人に限られるケースが珍しくありません。ワックス原型の彫り、爪留めや彫り留め、鏡面研磨は、図面より手の感覚で受け継がれてきた工程です。子が別の道に進み、若手が育つ前に中核の技能者が70歳を迎える会社は各地にあります。技能ごと次へ渡す方法として、第三者への事業承継を考える会社が増えています。

地金の立替資金と個人保証の重さ

地金の仕入れに充てる短期借入は、多くの場合で社長の個人保証付き。相場が上がれば同じ受注量でも借入額が増え、保証の範囲も広がります。値上がり分を発注元へ転嫁できるかは取引条件次第で、加工賃が据え置かれたまま資金負担だけが重くなる例も見られます。70代に入り、この保証を子に背負わせたくないという思いが、売却を検討する直接のきっかけになることも。資本力のある譲受企業の傘下に入れば、金融機関との交渉で保証解除の道が開けます。

百貨店や専門店に預ける委託在庫の負担

百貨店や宝飾専門店との取引では、商品を店頭に預け、売れた分だけ売上を立てる委託の形が根強く残っています。在庫は自社の資産のまま全国の売場に散らばり、クリスマスや催事の前には預け在庫が一気に積み上がるところ。売れ残りは戻され、デザインが古くなれば溶かして地金に戻す手間とロスが生じます。販路を持つ小売や大手メーカーの傘下に入り、在庫リスクを分け合いたいと考える経営者が出てくるのも無理はありません。

ラボグロウンダイヤモンドとCAD化への投資判断

研究所で育成するラボグロウンダイヤモンドは、天然石より大幅に安く、倫理面の価値を打ち出しやすい素材として広がりました。大手メーカーが専用ブランドを立ち上げる一方、小規模な作り手が新素材の仕入れ網や鑑別体制を一から整えるのは簡単ではありません。3D CADと樹脂の3Dプリンタで原型を起こす流れも進み、設備と人材への投資を自力で続けるか、投資余力のある相手と組むか。その判断を迫られる時期に来ています。

▷関連:小売業のM&A|EC化と店舗網再編が変える譲渡価格と成約事例

譲渡オーナーから見た宝飾工房売却のメリットとデメリット

職人ごと渡せば工房の味が消える、というのはよくある誤解です。下表で、得るものと手放すものを並べました。

譲渡オーナーのメリット譲渡オーナーのデメリット
地金の立替資金と個人保証から離れられる
相場高騰で膨らんだ短期借入を譲受企業の信用で借り換え、保証解除へ進めやすくなります。
地金相場の変動で価格が揺れる
基本合意から実行日までの相場の上下が、譲渡価格の調整につながります。
職人の雇用と技能を工房ごと残せる
廃業なら散り散りになる原型師や石留め職人の働く場を守れます。
預り地金の管理不備が減額要因になる
重量台帳と実物の差異は、表明保証の対象として厳しく見られます。
地金の含み益を価格に織り込める
廃業時に地金を売るのと違い、時価で置き直した純資産にのれんを上乗せできます。
取引先の承諾が要る契約がある
OEM基本契約の経営権変動条項や原型の所有権の定めが、日程を左右します。
委託在庫のリスクを分け合える
店舗網を持つ相手なら、預け在庫の偏りや返品の負担が軽くなります。
社長を慕う職人が離れる可能性
発表の仕方を誤ると、中核の技能者が独立を選ぶことがあります。
CADや鑑別体制への投資を任せられる
ラボグロウンダイヤモンド対応や3Dプリンタ導入を相手の資金で進められます。
自社ブランドや刻印の自由が狭まる
譲受企業の商品方針に合わせ、デザインや価格帯を見直す場面が出てきます。
自社ブランドの存続を条件にできる
ブランド名や刻印を残すことを、交渉の段階で約束事項に盛り込めます。
工程の集約で工房が閉じることも
めっきや鋳造を相手の工場へ寄せると、設備の廃止に伴う調査負担が生じます。

株式譲渡なら残る取引口座と届出

中小の宝飾メーカーの売却は、株主が変わるだけで会社はそのまま残る株式譲渡が大半です。百貨店や専門店の取引口座、精錬会社との地金取引、保健所への届出、従業員の雇用契約が法人に紐づいたまま続くため、営業を止めずに移行できます。ただし、取引基本契約に経営権の変動を届け出る条項や解除条項があれば、実行前の承諾取得が欠かせません。刻印に使うブランドマークの商標が社長個人の名義で登録されている例もあり、会社への移転を先に済ませておくと話が早く進みます。

ブランドや工房だけを切り出す事業譲渡の注意

自社ブランドだけ、あるいは特定の工房だけを譲りたい場合は事業譲渡を選びます。資産や契約を個別に移すため、取引口座の開設、めっき工程に関する届出のやり直し、職人の転籍同意がそれぞれ必要です。在庫の地金は、重量と品位を一つずつ確定させる作業に。後述する純金ブランド事業の譲受のように、ブランド単位の切り出しは価格が小さく収まりやすく、残った工房をどう続けるかという課題が譲渡オーナーの手元に残ります。

地金の時価と預り地金から組み立てる宝飾メーカーの譲渡価格

相場表を見ればすぐ計算できる、と考えるのは早計です。在庫の中身を分けて数えるところから始まります。

年買法で見る時価純資産と地金の含み益

中小のジュエリーメーカーで最もよく使われるのが年買法(年倍法)です。算式は「時価純資産+のれん」で、時価純資産に営業利益の数年分をのれんとして加えて目安を出します。この業種では、決算書に取得時の価格で載っている地金在庫を時価に置き直すだけで、純資産が大きく増えることがあります。一方、デザインの古い完成品は、地金と石の再販価値まで引き下げて見られる場合も。DCF法や類似会社比較法は、規模の大きい案件で併用されます。

支給地金と自社地金を分けて数える

発注元から地金を支給されて加工する賃加工では、手元にある金やプラチナの一部は他社の資産です。支援現場では、地金の重量台帳を「自社所有」と「支給分」に分け、棚卸で量ったグラム数と突き合わせてから財務デューデリジェンスに備えます。ここが曖昧だと、譲受企業は差異の全額を減額要因として扱いがち。研磨くずや鋳造時の湯口を回収精錬に出した記録まで揃っていれば、地金ロス率の説明にもそのまま使えます。品位ごとの内訳もあわせて示すと、話は一段と早くなります。

基本合意から実行日までの相場変動をどう扱うか

田中貴金属工業の参考小売価格(税抜)では、2026年3月の1か月だけでも、金1グラムの最安値と最高値に約5,800円の開きがありました。地金在庫が10キロを超える会社なら、基本合意から株式の引渡しまでの数か月で、時価純資産が数千万円単位で動きかねません。そこで、地金部分だけを実行日の相場で計算し直す価格調整条項や、変動幅に上下限を設ける方法が検討されます。どちらを選ぶかで相場リスクを負う範囲が変わるため、相談先を仲介会社一覧で比べる段階から意識しておきたいところ。

工賃単価や地金ロス率など買い手の評価を動かす数字

売上高が同じでも、中身しだいで価格は変わります。下表は、譲受企業が決算書の外で確かめる主な指標です。

見られる指標譲受企業が知りたいこと数字の示し方
加工賃収入と素材込み販売の比率地金相場の影響をどの程度受ける会社か取引先ごとに取引形態を一覧にする
地金ロス率鋳造・研磨の技術と管理の水準回収精錬の記録と重量台帳を並べる
1人あたり加工高作り手の生産性と工程の詰まり原型・鋳造・石留め・研磨の工程別に出す
稼働中の原型・ゴム型の数継続受注の土台がどれだけあるか自社企画品とOEM品を分けて数える
上位3社の売上構成比特定取引先への依存度百貨店・専門店・OEM別に3期分を示す
自社ブランド比率値決めの主導権を持っているか刻印・商標の名義とあわせて示す
技能士の人数と年齢構成技能承継の見通し1級・2級別、工程別に年齢を並べる
委託在庫の残高と返品率在庫の実在性と売れ筋の鮮度預け先ごとの棚卸記録を添える

加工賃型と素材込み型で変わる粗利の見え方

地金を支給されて工賃だけを受け取る会社と、自社で地金を仕入れて製品として売る会社では、同じ粗利額でも売上高と粗利率の見え方がまるで違います。金相場が上がると素材込み型は売上高が膨らみ、粗利率は下がって見えるもの。譲受企業に数字を示すときは、売上高から地金代を除いた加工高を基準に揃えると比べやすくなります。取引先ごとにどちらの形か、途中で切り替えた取引がないかも、一覧にしておくと質問が減ります。

原型とゴム型の保有数とCADデータの管理

何年も同じデザインが売れ続ける定番品は、原型とゴム型があればすぐに再生産できます。稼働中の型の数は、継続受注の土台を示す数字です。ただし、OEM品の原型は発注元の所有と契約で定めている例が少なくなく、自社の資産として数えられるのは自社企画品に限られます。CADデータがどのパソコンに誰の管理で保存されているかも、確かめられるところ。職人個人のUSBメモリにしか残っていない、という状態は早めに解消しておきましょう。

上位取引先への集中と自社ブランド比率

OEMで大手小売1社に売上の半分以上を頼る会社は、この業界では珍しくありません。取引が続く限り安定しますが、譲受企業からは、その1社の方針転換で売上が消えるリスクとして映ります。反対に、自社ブランドや刻印入りの商品が一定の割合を持つ会社は、値決めの主導権があると判断されやすい傾向。比率は短期間では上げにくいため、主要取引先との契約年数や発注の推移を添えて今の構成を示すほうが、売却相場の目線を合わせやすくなります。

ジュエリー製造・加工業のM&Aで特に注意すべき論点

現場の小さな見落としが、実行直前の足止めにつながる業種です。調査で質問が集まりやすい項目を挙げます。

めっき工程の毒物劇物業務上取扱者届出と排水設備

金めっきにシアン化金カリウムなどの無機シアン化合物を使う電気めっきの工程を社内に持つ場合、毒物及び劇物取締法の業務上取扱者として、事業場ごとに取扱開始から30日以内に保健所へ届け出て、毒物劇物取扱責任者を置く決まりです。株式譲渡なら届出は会社に残りますが、責任者が退職すれば変更の届出が要ります。めっき槽を水質汚濁防止法の特定施設として届け出ている場合、統合で工程を廃止すると土壌汚染対策法の調査が求められることも。みつきコンサルティングでは、保健所や自治体に出した届出書の控えと排水の測定記録を早い段階でお預かりし、承継の方式ごとにやり直しが必要な手続を切り分けます。

原型・デザインの権利と発注元とのOEM契約

OEMで作る商品のデザインや原型は、発注元に権利があると契約で定めていることが少なくありません。この場合、型を譲受企業の資産に数えられないだけでなく、同じデザインを他社向けに作れない制約も一緒に引き継ぎます。反対に、自社企画品を意匠登録や商標登録をしないまま長年販売してきたケースも見られるところ。取引基本契約、秘密保持契約、発注書の裏面約款まで集め、権利の帰属と経営権変動時の定めを一覧にしておくと、デューデリジェンスでの質問は目に見えて減ります。

天然石とラボグロウンダイヤモンドの区分管理と原石の来歴

ダイヤモンドの原石を輸出入するには、紛争ダイヤモンドの流通を防ぐキンバリープロセス証明書が外為法上求められ、ロシア産の非工業用ダイヤモンドは原則として輸入が禁じられています。研磨済みの石は業界の自主的な保証書の運用に委ねられているため、仕入先の保証書や鑑別書の保管状況が調べられます。ラボグロウンと天然のルースが同じ棚で管理されていると、在庫の価値も表示の適正さも説明がつきません。石種ごとの台帳と鑑別記録を整えることが、在庫評価の前提です。

社長を慕って残る職人と外注先をどう引き継ぐか

小さな工房ほど、職人は会社より社長個人とのつながりで働いています。発表の順番を誤ると、腕の立つ人ほど独立を選び、工程が回らなくなることも。当社が公開している譲渡オーナーの声を見ても、従業員の雇用を守れるかを相手選びの軸に据えた経営者は少なくありません。鋳造やめっきを任せている外注先も、実質的には工房の一部。取引年数、単価、支払条件を一覧にし、個別の説明は、譲受企業が継続の意思を示してからに回します。この順序を守れるかどうかで、技能者の定着は大きく変わります。

M&Aが成立した場合のみ、譲渡対価に応じた手数料を頂戴します。
売主様は、ご成約まで費用負担なくスタートできます。


0円


0円

宝飾メーカーに手を挙げる譲受企業の類型と公表事例

誰に声をかけるかで、評価される強みは変わります。代表的な類型と、上場企業の公表事例を見ていきます。

同業の製造卸と大手ジュエリーメーカー

最も多いのは同業です。国内外に工場を持つ大手は、人材の確保と国内生産の増強を目的に、特定の工程に強い作り手を探しています。石留めや鏡面仕上げなど、自社で足りない工程を補える会社には関心が集まりやすいもの。当社が打診先を選ぶ際は、相手の工場にない工程と、百貨店や専門店の取引口座の重なりを先に洗い出します。口座が重なると統合後に一本化され、売上が目減りする場合があるためです。重ならない販路を持つ相手ほど、価格面でも条件が良くなる傾向があります。

店舗網を持つ小売チェーンとリユース事業者

小売チェーンにとって、自社企画の商品を作れるメーカーは、仕入先に払っていた中間マージンを取り込む手段になります。製造から販売まで一貫して手がけるSPAへ移る動きは、この業界でも広がってきました。中古の買取・販売を営む事業者も、買い取った貴金属製品をリフォームして再販するための加工拠点を求めています。ただ、小売側は製造管理の経験が浅いことが多く、製造現場の運営を引き続き任せたいという期待が譲渡オーナーに向きやすい点は心得ておきたいところです。

上場企業の公表事例に見る株式取得とブランド事業の譲受

同じ小売企業が、工房を持つ会社の株式取得と、ブランド事業だけの譲受を相次いで行った例があります。

2022年のAbHeri株式取得

ハピネス・アンド・ディの適時開示によると、同社は2022年11月28日の取締役会で、東京都千代田区のAbHeriの全株式を2億5,200万円で取得すると決めました。AbHeriはデザインから製作まで自社工房で一貫して手がけ、卸売と直営店、通販で販売する会社。10か月の変則決算で売上高2億4,300万円、純資産1億2,800万円で、従来と異なる顧客層の獲得が狙いでした。

2025年の純金ブランドJUNGOLD事業の譲受

同社は2025年11月26日、台東区で宝飾品の卸売や企画製造を営むRAINから、純金(24K)ジュエリーブランド「JUNGOLD」事業を3,000万円で譲り受ける基本合意を決めたと公表しました。2024年4月の業務提携を経た取引で、金の実需と資産需要の高まりを背景に、地金ジュエリーの品揃え拡充と製造・販売の相乗効果を見込むとしています。

異業種と投資ファンドが関心を示す場面

アパレルや雑貨のブランド企業は、自社ブランドに宝飾ラインを加える目的で製造機能を求めます。精錬や地金を扱う会社が、加工の出口として関心を示すこともあります。投資ファンドは単独の小規模工房より、複数の工程や拠点を束ねて規模を作る構想の中で候補を探すのが一般的。いきなり全株式を渡さず資本業務提携から始める道もあるため、M&A仲介を使う場合は、宝飾業界の取引慣行を知る担当者かどうかを見極めておくと安心です。

ジュエリー製造・加工業のM&A・売却でよくある質問

ものづくりの実務に近い問いほど、ほかでは答えが見つかりにくいもの。相談の場で出た質問から4つを選びました。

Q:社長個人名義の地金やルースも会社と一緒に売却できますか?

株式譲渡で移るのは会社の資産だけなので、個人名義の地金や裸石は別の取引になります。会社に売り渡すか、譲受企業と個別に売買契約を結ぶかのどちらかです。帳簿に載せずに社内へ置いていると、棚卸で会社資産と混ざり、調査で説明を求められます。現場では、所有者別に重量と鑑別書を分けた一覧づくりから始めます。

Q:タイや香港など海外の外注工場とのつながりは評価されますか?

中身次第です。量産品を海外、難しい石留めを国内に分ける体制は、コストと品質の両面で強みとみなされます。一方、発注が社長個人の人脈だけで成り立ち、契約書や品質基準書がない場合は、引継ぎ後に取引が続く裏づけが弱いとして割り引かれがち。地金の支給方法や通関、為替負担をどちらが持つかも確認されます。

Q:産地の協同組合に加入している場合、組合員の資格や出資金はどうなりますか?

株式譲渡なら組合員は会社のままなので、資格も出資金も原則として残ります。ただし定款で地区や業種の要件を定めている組合では、本社移転や業態の変更で要件を外れると脱退になる場合も。事業譲渡で持分を移すには組合の承諾が必要です。共同受注や展示会出展など組合経由の取引があるなら、定款を先に読んでおきます。

Q:修理やリフォームで顧客から預かった品物が工房に残っていても大丈夫ですか?

預かり品は顧客の所有物なので、在庫にも譲渡対象にも含めません。問題になるのは、受付台帳と実物が一致しない場合です。長く引き取りのない品や、預かり中の破損・紛失の補償履歴は、実行後の苦情につながりかねません。ジュエリー製造・加工業の売却を支援する際、当社では預かり品の一覧と保管場所を事前に確かめ、引継ぎ後の顧客対応の担い手まで決めていただきます。

税理士法人を母体とするM&A仲介会社|みつきコンサルティングが選ばれる理由

ジュエリー製造・加工業の地金評価と売却相談先選び

ジュエリー製造・加工業の売却では、地金在庫の時価、支給地金との線引き、原型の権利、職人と外注先の承継が価格と日程を動かします。相場が揺れるなかで決断を急ぐ必要はありません。長年守ってきた工房の技術を、納得できる形で次へ渡す道筋を一緒に描きましょう。

みつきコンサルティングは財務・税務に強いM&A仲介会社として、中小企業のM&A仲介の実績経験が豊富です。地金評価の専門的な論点から相談先選びの迷いまで、業種特化の視点で伴走します。ジュエリー製造・加工業の会社売却なら、みつきコンサルティングへご相談ください。

ご譲渡を検討される方
今すぐ無料相談する
M&Aの重要ポイント資料
無料でダウンロードする

ジュエリー製造・加工業の会社売却の関連コラム

著者

潟野 和徳
潟野 和徳名古屋法人部長/M&A担当ディレクター
人材支援会社にて、海外人材の採用・紹介事業のチームを率いて新規開拓・人材開発に従事。みつきコンサルティングでは、強みを生かし人材会社・日本語学校等の案件を中心に工事業・広告・IT業など多種に渡る案件支援を行う。M&Aの成約実績多数、M&A仲介・助言の経験年数は10年以上
監修者 神門 剛 代表取締役 / 公認会計士・税理士

みつきコンサルティングは、中小企業の会社売却・事業承継に特化した譲渡企業様に完全成功報酬制のM&A仲介会社です。売り手と買い手企業の最適なマッチングを、経験豊富なM&Aコンサルタントが初期相談から成約まで一貫してフルサポートします。

【無料】資料をダウンロードする

M&Aを成功させるための重要ポイント

M&Aを成功させるための
重要ポイント

M&Aの事例20選

M&Aの事例20選

事業承継の方法とは

事業承継の方法とは

【無料】会社売却のご相談 
簡単30秒!即日対応も可能です

貴社名*
お名前*
電話番号*
メールアドレス*
所在地*
ご相談内容(任意)

個人情報の取扱規程に同意のうえ送信ください。営業目的はご遠慮ください。

買収ニーズのご登録はこちら >

その他のお問い合わせはこちら >