M&A支援機関登録制度は、国がガイドライン遵守を宣言した仲介会社やFAを登録・公表する仕組みです。補助金の活用条件やトラブル時の相談窓口に加え、登録業者の中から本当に信頼できる相談先を見極めるチェックポイントまで、会社売却を検討する譲渡オーナーの向けに説明します。
「うちの会社でも売却できるだろうか…」、「何から始めればいいんだろう…」。そのようなオーナー経営者の不安に、中小企業向けM&A仲介会社みつきコンサルティングは、20年間・500件以上の支援実績に基づき、お応えします。本格検討前の情報収集として、まずはお話をお聞かせください。
> みつきコンサルティングに無料相談する|税理士法人グループ
M&A支援機関登録制度とは
会社を誰かに引き継ごうと考え始めたオーナーが、最初にぶつかる壁があります。「結局、どこに相談すればいいのか」という壁です。仲介会社の数はここ数年で一気に増え、玉石混交になりました。その見極めの足場になるのが、国が運営するこの登録制度です。まずはM&A仲介の仕組みを押さえたうえで、本制度の位置づけを確認していきます。
中小企業を守るための国の仕組み
M&A支援機関登録制度は、中小企業庁が2021年8月に創設した公的な事業者登録制度です。国が定めた中小M&Aガイドラインを遵守すると宣言した仲介業者やフィナンシャル・アドバイザー(FA)を、データベースに登録して公表します。
背景にあるのは、トラブルの増加です。高額な着手金を払ったのに成約しない、強引な営業で契約させられた。こうした相談が各所に寄せられた結果、悪質な業者を市場から締め出し、取引の透明性を引き上げる狙いで生まれました。詳細は中小企業庁の公式ページでも確認できます。
登録されると何が変わるのか
登録事業者には、手数料体系の公表や不適切な勧誘の禁止が義務づけられます。譲渡オーナーから見れば、業者を選ぶときの「最低限の信頼の証」になる。ただし、後述するとおり、これはあくまで入口の基準にすぎません。数ある仲介会社の一覧を眺めても、登録の有無だけでは中身までは見えてこないからです。
登録の対象になる事業者と調べ方
この制度は、誰でも登録できるわけではありません。対象になる事業者の範囲と、自分が相談しようとしている業者が登録済みかを確かめる手順を整理します。
対象になる事業者・ならない事業者
対象は、M&Aの仲介やFA業務を行う事業者です。専門の仲介会社だけでなく、地域の金融機関、商工団体、M&A支援を行う税理士・公認会計士・弁護士なども含まれます。M&Aの相談先として候補に挙がる多くがここに該当する、と考えるとわかりやすいでしょう。
一方で、デューデリジェンスや株価算定だけを担う士業専門家は対象外です。あくまでマッチングや交渉の仲介・助言を行う者が登録の対象になります。
登録状況は3,000件超
登録された事業者は、すでに3,000件を超える規模に達しています。内訳はM&A仲介会社が最も多く、次いで税理士、経営コンサルティング会社などが続く。従業員数名の小規模事業者が多くを占め、新規参入も相次いでいます。最新の件数は登録支援機関データベースで随時更新されます。
登録の有無を確認する手順
相談予定の業者が登録されているかは、上記データベースで名前や地域から検索できます。手順はシンプルです。サイトにアクセスし、業者名または地域を入力して検索を実行する。これだけで、登録の有無と公表されている手数料体系まで確認できます。
下表は、登録支援機関と未登録業者の主な違いを、譲渡オーナーへの影響という軸で整理したものです。
| 確認したい点 | 登録支援機関 | 未登録業者 |
|---|---|---|
| ガイドライン | 遵守を宣言・公表している | 遵守義務がない |
| 手数料の透明性 | 料金表の公表が義務 | 公表義務なし(不透明な場合あり) |
| 補助金の活用 | 事業承継・M&A補助金の対象 | 補助金の対象外 |
| トラブル時 | 国の情報提供窓口へ通報可能 | 国の管轄外となる場合が多い |
譲渡オーナーが得られる3つのメリット
制度を使う側、つまり会社を売るオーナーにとってのメリットは、大きく3つあります。特に手取り額に直結する部分は、検討の初期段階で必ず押さえておきたいところです。
事業承継・M&A補助金の対象になる
最大の利点はこれです。国の事業承継・M&A補助金(専門家活用枠)は、仲介手数料やFA費用の一部を補助する制度です。受給の必須要件として、登録された業者を利用することが定められています。
裏を返せば、未登録の業者に依頼すると、数百万円から数千万円かかる手数料が一円も補助対象になりません。コストを抑えて手取りを最大化したいオーナーにとって、登録業者の選定は実質的な前提条件です。
トラブル時に国の窓口へ相談できる
登録支援機関は、顧客が中小企業庁の情報提供受付窓口へ相談することを妨げてはならない、というルールを負っています。M&Aの契約には厳格な秘密保持義務が付きますが、「説明と違う」「不誠実だ」と感じた場合、その義務を気にせず国の窓口へ情報提供できる。これは精神的な安全網になります。仲介トラブルの事例を知っておくと、窓口の使いどころも見えてきます。
手数料体系を事前に確認できる
登録要件として、料金表の公表が義務づけられています。着手金の有無、成功報酬の料率、最低報酬額。これらを相談前に確認できるため、想定外の高額請求に後から驚く、というリスクを減らせます。M&A手数料の相場とあわせて見比べておくと、判断がぶれません。
登録業者だからといって安心は禁物
ここで一つ、現場から強めに注意を促しておきます。「登録されているから質も保証されている」という読み替えは危険です。この制度は、ガイドラインを守ると宣言した業者をリスト化したもの。成約能力やコンサルタントの力量まで国が保証しているわけではありません。
制度初の登録取消しが示したこと
2025年1月、制度創設以来はじめての登録取消し処分が下されました。資金力に疑義のある買い手を十分に審査せず譲渡オーナーへ紹介し、善管注意義務違反と認定された事例です。登録業者であっても、買い手の見極めが甘かったり、オーナーの利益を損なうマッチングをしたりするリスクはゼロではない。制度が動き出した何よりの証拠でもあります。
現場で見る支援品質のばらつき
登録業者の中には、M&Aの実績がほとんどない事業者や、会計の知識はあっても交渉のノウハウが乏しい事業者も混在します。ここで知っておきたいのが、仲介会社の系統です。M&A仲介会社は大きく、上場会社系・非上場会社系・会計事務所系(士業系)の3つに分かれます。系統によって、得意とする論点が変わってきます。
みつきコンサルティングは、税理士法人を母体とする会計事務所系・士業系の代表的なM&A仲介会社です。会計系の強みは、退職金設計や個人保証の解除、税負担を抑えた譲渡スキームといった、オーナー個人の手取りに直結する論点に踏み込める点にあります。とくに経営者保証の解除は、登録の有無では測れない実務力が問われる領域です。系統ごとの違いは仲介会社の比較でも整理しています。
信頼できる支援機関を見極めるチェックポイント
登録という最低ラインを越えた先で、自社に合うパートナーをどう選ぶか。面談の場で確認したい項目を、実務のチェックリストとしてまとめます。
類似業種・規模での成約実績があるか
「実績はありますか」と聞けば、たいていの業者は「あります」と答えます。肝心なのは、自社と近い規模感や同業種での実績です。年商50億円のM&Aと年商5,000万円のM&Aでは、論点も進め方もまるで違う。守秘義務の範囲で、近い事例を具体的に語れる担当者は信頼できます。おすすめ業者の実態も判断材料になります。
リスクを先に説明してくれるか
M&Aには必ずリスクがあります。良い面ばかりを並べ、「すぐ売れます」「高値がつきます」と安請け合いする業者は警戒対象です。「この債務がネックになり得る」「買い手が決まるまで半年はみてほしい」。そうしたネガティブ情報も正直に伝え、対策まで一緒に考える担当者を選んでください。契約面の落とし穴は仲介契約の注意点に詳しくあります。
手数料の総額をシミュレーションしてくれるか
料金表は公開されていても、計算方法は複雑です。「○億円で譲渡できたら、手数料の総額はいくらか」を必ず試算してもらいましょう。注意すべきは最低報酬額です。譲渡価格が低いと、最低報酬が固定でのしかかり、手取りがほとんど残らないケースもあります。報酬の仕組みはレーマン方式や完全成功報酬の記事で確認できます。
登録支援機関が守る中小M&Aガイドラインの中身
登録業者が遵守を求められる中小M&Aガイドラインには、譲渡オーナーを守るためのルールが書き込まれています。中身を知っておくと、業者の対応が適正かを自分で判断できます。2024年8月に第3版へ改訂され、手数料開示や利益相反の規律がさらに具体化されました。
利益相反(両手取引)の説明義務
仲介業者は、譲渡オーナーと譲受企業の双方から手数料を受け取る両手取引が一般的です。構造的に、どちらかに有利な条件へ誘導する余地が生まれます。ガイドラインは、契約前にこの立場の特徴と手数料を明確に説明するよう義務づけています。説明を省く業者は、違反の可能性が高い。論点の整理は仲介の利益相反にまとめています。
テール条項など契約条項の説明
契約終了後でも、紹介された買い手と直接成約すれば手数料が発生するテール条項。こうした不利になりうる条項について、丁寧な説明が求められます。支援現場でよく見るのは、契約書を読み込まずに署名し、別の仲介会社へ乗り換えようとして揉めるパターンです。公的な相談ルートを併用したいなら、公的な相談窓口も選択肢に入ります。
M&A支援機関登録制度に関するFAQ
制度について、検討初期のオーナーからよく寄せられる質問に答えます。
法的にM&Aができなくなるわけではありません。ただ、事業承継・M&A補助金の対象外となり、手数料の補助を受けられなくなります。ガイドライン遵守の義務もないため、契約や手数料の透明性が担保されていないリスクが高まる。現場ではまず、登録の有無を入口で確認します。
いいえ、まったく異なります。制度が義務づけているのは料金表の公表だけで、金額設定は各社の自由です。最低報酬が1,000万円の会社もあれば、2,500万円の会社もある。必ず複数社から見積もりを取り、サービス内容と費用のバランスで比べてください。
両手取引そのものが悪いわけではありません。問題は、利益相反の説明と、条件交渉での誠実さです。契約条項と担当者の姿勢次第、というのが実務の答えになります。気になる場合は、片側だけを支援するFA型や、セカンドオピニオンの活用も検討します。
まず担当者に説明を求めましょう。それでも解決しなければ、中小企業庁の情報提供受付窓口へ連絡します。秘密保持義務があっても、この窓口への相談は制度上保証されています。別の専門家にセカンドオピニオンを求めるのも有効です。
まとめ|会社売却に登録制度をどう活かすか
M&A支援機関登録制度は、譲渡オーナーが安心して会社売却に踏み出すための土台です。補助金の対象になり、手数料の透明性や一定のコンプライアンスが期待できる。ただし登録は最低ラインにすぎず、業者の質まで保証するものではありません。「うちは本当に売れるのか」という不安は、見極めの目を持つことで少しずつ晴れていきます。
みつきコンサルティングは、税理士法人グループのM&A仲介会社であり、会計事務所系・士業系の代表的な存在として登録支援機関の認定を受けています。中小企業のM&Aに特化し、税理士・公認会計士・M&Aアドバイザーが連携して、数字の整理から後継者探し、手取り額の設計まで一貫して支援します。会社売却や借入・個人保証の扱いに不安があれば、当社までお気軽にご相談ください。
完全成功報酬のM&A仲介会社なら、みつきコンサルティングへ >
著者

- 名古屋法人部長/M&A担当ディレクター
-
人材支援会社にて、海外人材の採用・紹介事業のチームを率いて新規開拓・人材開発に従事。みつきコンサルティングでは、強みを生かし人材会社・日本語学校等の案件を中心に工事業・広告・IT業など多種に渡る案件支援を行う。M&Aの成約実績多数、M&A仲介・助言の経験年数は10年以上
監修者 神門 剛 代表取締役 / 公認会計士・税理士
最近書いた記事
2026年7月9日M&A仲介トラブルの事例と対策|安全に会社売却を進める選び方
2026年7月9日事業譲渡とは|会社売却スキームの選び方とメリット・会社法の手続
2026年7月3日M&Aののれんとは|償却・減損・税務と譲渡価格への影響を解説
2026年7月2日自動車販売・整備業のM&A|電動化と買い手多様化で読む譲渡事例











