事業承継・引継ぎ支援センターとは|M&A相談の内容と使い分け

事業承継・引継ぎ支援センターは、国が全国47都道府県に設置した無料の公的相談窓口です。第三者承継のマッチングから親族内承継の計画づくりまで扱いますが、できることには線引きもあります。支援メニューと相談の流れ、民間のM&A仲介会社との使い分けを説紹介します。

M&A仲介手数料・料金体系を見る|完全成功報酬制・着手金・中間金0円
企業価値を1分で簡易試算|登録不要・無料の企業価値評価
目次
  1. 事業承継・引継ぎ支援センターとは何をする窓口か
    1. 国が全国47都道府県に設置した公的な相談窓口
    2. 2021年の統合で親族内承継とM&Aが一本化
    3. 直近の実績から見える利用の広がり
  2. センターが担う3つの支援メニュー
    1. 第三者承継(M&A)のマッチング支援
    2. 親族内・従業員承継の計画づくり
    3. 後継者人材バンクによる創業希望者との橋渡し
  3. 事業承継・引継ぎ支援センターを使うメリット
    1. 相談料がかからない
    2. 中立の立場からのセカンドオピニオン
    3. 小規模な会社でも相談しやすい
  4. 相談する前に知っておきたいセンターの限界
    1. 譲受候補の母集団は民間ほど広くない
    2. 条件交渉の主導までは踏み込みにくい
    3. 動き出しから成約までの時間軸
  5. 民間のM&A仲介会社との違いと使い分け
    1. 比較表で見る役割の違い
    2. 併用するときの実務的な線引き
  6. 相談前に押さえておきたいM&Aの基礎知識
    1. 株式譲渡と事業譲渡の違い
    2. 個人保証をどう外すか
    3. 面談で出てくる用語
  7. 相談から成約までの流れと必要な資料
    1. 予約から一次対応まで
    2. 初回相談で持参したい資料
  8. センターを活かすための3つの工夫
    1. 「まだ先の話」の段階で顔を出す
    2. 譲れない条件を言葉にしておく
    3. 契約後もセカンドオピニオンとして使う
  9. 事業承継・引継ぎ支援センターに関するFAQ
  10. 事業承継・引継ぎ支援センターと民間仲介の併用で納得の承継を

事業承継・引継ぎ支援センターとは何をする窓口か

後継者のことを誰に相談すればよいのか。この一点で何年も足踏みしている経営者は、決して珍しくありません。その最初の入口として国が用意したのが、事業承継・引継ぎ支援センターです。

国が全国47都道府県に設置した公的な相談窓口

センターは中小企業庁の委託事業として運営され、各都道府県の商工会議所などが実施主体を担っています。営利を目的としないため、案件を無理に成立させる方向の力が働きにくい構造です。

相談は原則無料、秘密は厳守。制度全体の位置づけは中小企業庁の事業承継の支援策で公表されています。

2021年の統合で親族内承継とM&Aが一本化

かつては、M&Aを扱う「事業引継ぎ支援センター」と、親族内承継を扱う「事業承継ネットワーク」が別々に動いていました。2021年4月、この2つが統合されます。

結果として、後継者が決まっている会社も、決まっていない会社も、同じ窓口で相談できるようになりました。事業承継とM&Aの違いを整理しないまま来た経営者にとっては、使いやすい変更でした。

直近の実績から見える利用の広がり

下表は、独立行政法人中小企業基盤整備機構が公表した2025年度(令和7年度)の全国実績です。相談者数、第三者承継の成約件数ともに、センター開設以来の最多を更新しました。

指標2025年度の全国実績
新規相談者数24,030者(初めて24,000者を突破)
相談対応回数92,509回
第三者承継の新規相談者数16,322者
第三者承継の成約件数2,265件
後継者人材バンクの成約件数114件

出典は中小機構の公表資料です。相談の約7割弱が第三者承継に関するもので、親族内で継ぐ前提の相談は年々細っています。

センターが担う3つの支援メニュー

センターの守備範囲は、大きく3つに分かれます。自社がどの入口に該当するかを先に見当づけておくと、初回面談の密度が変わります。

第三者承継(M&A)のマッチング支援

後継者が社内にも親族にもいない場合、譲受企業を探す支援を受けられます。センター自身が相手を探すこともあれば、登録された民間の支援機関へ橋渡しをする形もとります。

企業価値の考え方についても助言をもらえますが、精緻な算定までは行いません。数字の裏づけが要るなら、企業価値評価の方法を押さえたうえで臨むほうが話が早く進みます。

親族内・従業員承継の計画づくり

子や役員へ引き継ぐ場合は、事業承継計画の策定を無償で手伝ってくれます。株式の集約、金融機関との調整、税制の活用時期といった論点を、時系列に落とし込む作業です。

近年は従業員承継の資金対策に関する相談も増えました。親族内承継の進め方と並べて比較する経営者も多い印象です。

後継者人材バンクによる創業希望者との橋渡し

親族にも社内にも継ぎ手がいない小規模事業者を、創業を志す個人と結びつける仕組みです。2025年度の累計登録者は11,547者に達しました。

年商規模の小さい会社や個人事業では、企業への譲渡より現実的な出口になることも。小規模企業のM&Aを考えるなら、選択肢に入れておく価値があります。

事業承継・引継ぎ支援センターを使うメリット

公的機関ならではの利点は3つに集約できます。いずれも、民間の支援機関では構造的に提供しにくいものです。

相談料がかからない

面談も、初期のマッチング支援も無料です。国費で運営されているため、時間報酬や着手金という発想がありません。

ただし弁護士や税理士へ実務を個別依頼する段階では、別途費用が生じます。この線引きを最初に確認しておくと、後で慌てずに済みます。

中立の立場からのセカンドオピニオン

すでに民間と契約している場合でも、センターは相談を受け付けています。提示された譲渡価額の妥当性、契約書の不利な条項、専任期間の長さ。こうした点を利害関係のない立場から見てもらえます。

実際、中小M&Aガイドラインの内容でも、セカンドオピニオンの有効性が明記されています。

小規模な会社でも相談しやすい

民間の仲介会社は報酬構造の都合上、一定規模以上の案件を優先しがちです。手数料が最低報酬に届かない案件は、そもそも受託されないこともあります。

センターにはその制約がありません。地域に必要な事業であれば、規模を理由に断られる場面は少ないはずです。

相談する前に知っておきたいセンターの限界

ここは他ではあまり語られない部分ですが、支援現場から見ると、センターにも構造上の限界があります。過度な期待を持って行くと、かえって時間を失います。

譲受候補の母集団は民間ほど広くない

センターのマッチングは、登録データベースと連携先の情報が中心です。譲受企業側へ能動的に打診して候補を作りにいく動きは、民間ほど強くありません。

技術や取引基盤に強みがある会社ほど、候補が数社に絞られると条件面で不利になりがちです。母集団の広さは、最終的な譲渡価額に直結します。

条件交渉の主導までは踏み込みにくい

中立を旨とする以上、譲渡オーナー側に立って価額を押し上げる交渉は、センターの役割から外れます。表明保証の範囲、譲渡後の役員退任時期、従業員の処遇。この種の詰めは、当事者と専門家が担うことになります。

動き出しから成約までの時間軸

初回相談から成約まで、一般には半年から1年程度をみておきます。譲受候補の探索が長引けば、さらに延びることも珍しくありません。

体調や業績が下向きになってからでは、選べる手が急速に狭まります。会社売却の流れを先に把握し、逆算で動き始めることをおすすめします。

民間のM&A仲介会社との違いと使い分け

どちらが優れているという話ではありません。役割が違うだけです。両者を並べて眺めると、自社がどちらから入るべきかが見えてきます。

比較表で見る役割の違い

下表は、センターと民間のM&A仲介会社を実務上の観点で対比したものです。報酬体系の詳細はM&A手数料の相場で確認できます。

比較項目事業承継・引継ぎ支援センター民間のM&A仲介会社
相談料無料会社により無料から有料
成功報酬原則なし
(外部専門家への個別依頼は実費)
レーマン方式による成功報酬が中心
最低報酬額を設ける会社が多い
主な対象規模小規模事業者が中心中小から中堅企業が中心
候補先の探し方公的ネットワークと登録データベース独自の譲受企業網と能動的な打診
立場中立・公正案件の成立を志向
条件交渉の関与限定的実務の中核として関与

併用するときの実務的な線引き

現場でよくお伝えしているのは、入口をセンター、実行を民間と分ける発想です。まず無料で全体像と時間軸を掴み、そのうえで委託先を選ぶ。この順序なら、判断材料を持たないまま契約書に署名する事態を避けられます。

契約後にセンターへ駆け込む使い方も有効ですが、仲介会社の比較の視点を先に持っておくほうが、結果的に手戻りが少なくて済みます。

仲介会社は3つの系統から選ぶ

M&A仲介会社は、上場会社系、非上場会社系、会計事務所系(士業系)の3つに大別できます。系統によって、得意な規模も、社内に抱える専門家の顔ぶれも変わります。

みつきコンサルティングは、みつき税理士法人を母体とする会計事務所系・士業系の代表的なM&A仲介会社です。譲渡スキームによる税負担の差を織り込んだ設計を、初期段階から検討できる点が特徴になります。

登録制度で足元を確認する

委託先を絞る段階では、国のM&A支援機関登録制度に登録があるかも確認しておきたいところです。センターとの連携要件にも関わります。

制度の趣旨と使い方はM&A支援機関の登録制度で解説しています。あわせてM&A仲介会社の一覧も参考になります。

相談前に押さえておきたいM&Aの基礎知識

面談の場でいきなり専門用語が飛び交うと、聞きたいことを聞き逃します。最低限の地図を持って行くだけで、同じ1時間の中身がまるで変わります。

株式譲渡と事業譲渡の違い

中小企業の第三者承継では、株式譲渡が9割近くを占めます。下表で全体像を掴んでおきましょう。

比較項目株式譲渡事業譲渡
取引の対象発行済株式(会社そのもの)特定の事業に属する資産・負債
手続の重さ株主が入れ替わるのみで比較的簡便資産・契約ごとに個別対応が必要
契約・許認可原則そのまま承継される個別の巻き直しや再取得が生じる
対価の受取先譲渡オーナー個人会社
課税の考え方譲渡益に対する申告分離課税会社に法人税等が課される

不採算部門だけを切り離したい場合は事業譲渡が選ばれることも。判断軸は株式譲渡と事業譲渡の違いで詳しく比較しています。

個人保証をどう外すか

借入がある会社の経営者にとって、最大の関心事はここでしょう。譲受企業に十分な信用力があれば、金融機関の承諾を得て保証を引き継いでもらえる場合があります。

ただし自動的に外れるわけではありません。経営者保証の解除は、最終契約の条項と金融機関との交渉をセットで詰める論点です。

面談で出てくる用語

相談の場で頻出する言葉を、最低限だけ挙げておきます。

  • ノンネーム 社名を伏せた匿名の概要資料
  • 秘密保持契約(NDA) 情報を外部に漏らさない約束
  • デューデリジェンス(DD) 譲受企業が行う対象会社の詳細調査
  • のれん 純資産を超えて評価される無形の価値

調査の進み方はデューデリジェンスの流れ、情報管理の実務は秘密保持契約の実務で補えます。

相談から成約までの流れと必要な資料

手ぶらで行っても構いません。ただ、準備の有無で初回面談の解像度は明らかに変わります。

予約から一次対応まで

各都道府県のセンターへ電話またはWebフォームから面談を予約します。初回は現状のヒアリングが中心で、承継の方向性をここで絞り込む流れです。

方針が第三者承継に定まれば、データベースへの登録や候補先の選定に移ります。関心を示した企業との交渉、調査、最終契約、決済という順に進みます。

初回相談で持参したい資料

次の3点があれば、話は具体化します。

  • 直近3期分の決算書(勘定科目内訳明細書付き)
  • 会社案内や商品・サービスの資料
  • 組織図、株主名簿(あれば事業計画も)

決算書3期分で必ず確認される4点

当社が初期相談で最初に目を通すのは、以下の4点です。センターでも民間でも、見られる箇所は大きく変わりません。

  • 役員報酬と地代家賃 オーナー個人に紐づく費用は、譲渡後の収益力を測る際に調整対象になります
  • 役員保険と保険積立金 解約返戻金の扱いで、実質的な純資産が動きます
  • 売掛金と棚卸資産の滞留 回収不能分や不良在庫は、譲渡価額の減額要因になりやすい箇所です
  • 事業に使っていない資産 遊休不動産やゴルフ会員権は、事前に切り離す判断があり得ます

この4点は、決算書を見た瞬間に譲受企業側も気づきます。指摘される前に手を打てるかどうかで、交渉の主導権が変わってきます。

センターを活かすための3つの工夫

使い方次第で、得られるものはかなり違います。支援現場で有効だったやり方を挙げます。

「まだ先の話」の段階で顔を出す

承継の準備には3年から10年かかると言われます。業績が下向いてから動き出すと、譲受候補の関心は目に見えて薄れます。

気力も体力もあるうちに一度顔を出しておく。それだけで、選べる道の幅が違ってきます。

譲れない条件を言葉にしておく

雇用を守ってほしい、屋号を残したい、取引先との関係を維持してほしい。こうした希望は、頭の中にあるだけでは相手に伝わりません。

紙に3つ書き出してから面談に臨むと、マッチングの精度が上がります。優先順位まで付けられれば、なお良いでしょう。

契約後もセカンドオピニオンとして使う

民間と契約した後、進め方に違和感を覚えたら、遠慮なくセンターへ相談してください。専任契約の解約可否や、テール条項の残存期間といった論点も整理してもらえます。

相談先の全体像はM&Aの相談先の選び方、支援者の役割分担はM&A仲介の仕組みで整理しています。

事業承継・引継ぎ支援センターに関するFAQ

初回のご相談でよくいただく質問をまとめました。

Q:商工会議所の会員でなくても相談できますか

問題なく利用できます。国の委託事業であり、団体への加入状況は要件ではありません。所在地のセンターへ直接連絡すれば予約が取れます。

Q:個人事業主でも対応してもらえますか

対応してもらえます。後継者人材バンクを含め、小規模事業者を想定した支援メニューが用意されています。まずは現状を伝えるところから始めてください。

Q:売り手として相談すると、必ずM&Aに誘導されますか

そうはなりません。センターは親族内承継や従業員承継も扱う窓口です。現場では、まず後継者候補の有無を確認し、そこから方向性を詰めていきます。

Q:センターに相談すれば買い手はすぐ見つかりますか

案件次第です。登録データベースと連携先が探索の中心になるため、母集団の広さは民間ほどではありません。規模や業種によっては、民間との併用が現実的になります。

Q:廃業しか道がないと思っていますが、相談する意味はありますか

意味はあります。廃業費用と譲渡した場合の手取りを並べると、判断が変わる会社は少なくありません。廃業と売却の比較も判断材料になります。

税理士法人を母体とするM&A仲介会社|みつきコンサルティングが選ばれる理由

事業承継・引継ぎ支援センターと民間仲介の併用で納得の承継を

事業承継・引継ぎ支援センターは、無料かつ中立という強みを持つ一方、候補先の探索や条件交渉には構造的な限界もあります。入口として活用し、実行段階は自社に合う支援者へ委ねる。この使い分けができれば、後悔の残る決断は避けられます。一人で抱え込む必要はありません。

みつきコンサルティングは、みつき税理士法人を母体とする会計事務所系・士業系の代表的なM&A仲介会社です。中小企業の会社売却と事業承継に特化し、500件超の支援実績を積み重ねてきました。完全成功報酬制でご相談を承っていますので、センターの活用方法やセカンドオピニオンを含め、お気軽にお声がけください。

ご譲渡を検討される方
今すぐ無料相談する
M&Aの重要ポイント資料
無料でダウンロードする

著者

潟野 和徳
潟野 和徳名古屋法人部長/M&A担当ディレクター
人材支援会社にて、海外人材の採用・紹介事業のチームを率いて新規開拓・人材開発に従事。みつきコンサルティングでは、強みを生かし人材会社・日本語学校等の案件を中心に工事業・広告・IT業など多種に渡る案件支援を行う。M&Aの成約実績多数、M&A仲介・助言の経験年数は10年以上
監修者 神門 剛 代表取締役 / 公認会計士・税理士

みつきコンサルティングは、中小企業の会社売却・事業承継に特化した譲渡企業様に完全成功報酬制のM&A仲介会社です。売り手と買い手企業の最適なマッチングを、経験豊富なM&Aコンサルタントが初期相談から成約まで一貫してフルサポートします。

【無料】資料をダウンロードする

M&Aを成功させるための重要ポイント

M&Aを成功させるための
重要ポイント

M&Aの事例20選

M&Aの事例20選

事業承継の方法とは

事業承継の方法とは

【無料】会社売却のご相談 
簡単30秒!即日対応も可能です

貴社名*
お名前*
電話番号*
メールアドレス*
所在地*
ご相談内容(任意)

個人情報の取扱規程に同意のうえ送信ください。営業目的はご遠慮ください。

買収ニーズのご登録はこちら >

その他のお問い合わせはこちら >