会社売却を考え始めても、まず誰に相談すべきか迷う経営者は多いものです。銀行・税理士・M&A仲介会社・公的機関は、強みも費用も大きく違います。中小企業オーナー向けに、相談先ごとの特徴と費用、依頼前に確認したい選び方を整理しました。
M&Aの相談先は大きく5種類に分けられる
後継者が決まらないまま時間だけが過ぎる。そんな相談は珍しくありません。会社売却を考え始めた譲渡オーナーが最初につまずくのが、誰に話を持ちかけるかという入口です。相談先は性格がまるで違い、選び方を誤ると遠回りになります。
主な相談先は、次の5系統に整理できます。
- 銀行・信用金庫などの金融機関
- 税理士・公認会計士などの会計事務所
- M&A仲介会社
- FAや公的機関などの専門窓口
- 商工会・経営者仲間といった身近な相手
費用やマッチング力を比べる前に、最も一般的な相談相手であるM&A仲介の全体像を一度押さえておくと、話が早く進みます。
相談先ごとの特徴と費用を下表で比較する
どこに相談するかで、得意分野も費用感も変わります。下表は代表的な5つの相談先を、メリットと注意点、費用の目安で並べたものです。
| 相談先 | 主なメリット | 注意点 | 費用の目安 |
|---|---|---|---|
| 事業承継・引継ぎ支援センター | 公的機関で中立、無料で相談できる | 大型・複雑な案件は専門業者へ紹介となりやすい | 原則無料 |
| M&A仲介会社 | マッチング力が高く、成約までの動きが速い | 双方に立つため個別交渉で有利を取りにくい | 完全成功報酬が中心(相談無料) |
| FA | 譲渡オーナー側に立ち利益を最大化 | 期間が延びやすく費用は高め | 着手金+成功報酬 |
| 金融機関 | 資金調達を同時に相談できる | 取引先に偏りやすく小規模は敬遠も | 初期相談は無料(成約時に手数料) |
| 税理士・公認会計士 | 税務や企業価値評価の専門性が高い | 相手探しのノウハウは限定的 | 顧問料内または都度 |
実際の相談相手として多いのは銀行と会計事務所
帝国データバンクのM&Aに対する企業の意識調査によると、相談先で最も多いのはメインバンクで53.0%。次いで税理士事務所が35.1%、M&A仲介業者が22.2%、事業承継・引継ぎ支援センターなどの公的機関が15.2%と続きます(複数回答)。身近な金融機関と会計事務所が入口になりやすい実態がうかがえます。

金融機関(銀行・信用金庫)に相談する
メガバンクだけでなく、地方銀行や信用金庫、証券会社の一部もM&Aに力を入れています。日頃から取引のある先に話せる安心感は大きいもの。ただ、メインバンクは主要な借入先でもあり、手の内を見せにくい関係でもあります。
金融機関に相談するメリット
- 独自の取引先ネットワークから譲受企業の候補を探せる
- 財務内容を把握しているため、資金調達の相談を同時に進めやすい
金融機関に相談する際の注意点
- マッチングが中心で、実務は提携先のコンサルへ引き継ぐ金融機関も多い
- 地元企業同士の縁組が多く、情報が漏れるリスクは相対的に高め
- 融資条件の交渉相手でもあり、本音を出しにくい場面がある
銀行ごとの関わり方はM&Aでの銀行の役割、地域に根ざした信金のM&A活用を、それぞれ別記事で掘り下げています。
会計事務所(税理士・公認会計士)に相談する
顧問税理士は、中小企業の経営者にとって最も身近な相談相手でしょう。財務から家族構成まで把握しており、ささいなことも気軽に話せます。一方で、記帳や申告のプロがM&Aにも強いとは限りません。専門性と経験の有無を確かめてから相談するのが前提になります。
会計事務所に相談するメリット
- 顧問先なら自社の数字を熟知しており、話が早い
- 正確な会計処理と安全な税務処理を任せられる
- 会計士・税理士のネットワークから相手探しにつなげられる場合がある
会計事務所に相談する際の注意点
- M&Aの専門知識や実務経験が乏しいケースがある
- 相手探しのノウハウが弱く、マッチングで苦労しやすい
- 会計・税務以外の論点には対応しきれないことがある
税務面の関わりはM&Aでの税理士の役割、企業価値評価や財務デューデリジェンスを担う公認会計士の関与で詳しく整理しています。
M&A仲介会社に相談する
国内のM&Aを最も多く支えているのが、M&A仲介会社です。譲渡側と譲受側の間に立ち、双方が納得する成約を目指して条件を調整します。結婚の仲人に近い立ち位置、と言うと分かりやすいかもしれません。
M&A仲介会社のメリット
- 業界動向や相場、費用体系に精通している
- 経験を積んだM&Aアドバイザーが在籍する
- 全国に広がる候補先からマッチングを進めやすい
M&A仲介会社のデメリット
- 成約そのものを優先する担当者がいる
- 大手では小規模案件が後回しになることもある
仲介会社は3つの系統に分かれる
ひとくちにM&A仲介会社といっても、出自はさまざまです。大きく分けると、上場会社系・非上場会社系・会計事務所系(士業系)の3系統。営業力を前面に出す会社が多い一方、会計事務所を母体とし、税務や財務の精度を強みにする会社もあります。みつきコンサルティングは、みつき税理士法人を母体とする会計事務所系・士業系の代表的なM&A仲介会社です。系統ごとの顔ぶれは系統別の仲介会社一覧で確認できます。
会社の規模より担当者で選ぶ
知名度で大手を選ぶ経営者は少なくありません。安心感は確かにあります。ただ、M&Aの成否は担当者個人の力量に大きく左右される世界。看板の大きさだけで決めると、肝心の相性で後悔しかねません。
M&A業務は属人性が高い
経験豊富な中小仲介会社の担当者が、大手の新人より成果を出す場面は実際にあります。会社の規模ではなく、担当者の経験と実力を見るべきです。
手数料体系を見極める
大手ほど報酬が高くなりやすく、着手金や中間金が途中で発生することもあります。完全成功報酬を掲げても、最低手数料が高止まりすれば割高になりがち。契約前に費用の全体像を確かめておくと安心です。
親身に向き合ってくれるか
短期の利益を優先する会社では、譲渡オーナーの思いが置き去りになることがあります。一人の担当者が多くの案件を抱え、優先順位を付けられる懸念も。相性と誠実さは、最後まで効いてきます。
そのほかの相談先と専門窓口
仲介会社を軸にしつつ、論点に応じて専門家を組み合わせるのが日本のM&Aの一般的な形です。必要に応じて使い分けたい窓口を、まとめて見ておきましょう。
FA(ファイナンシャル・アドバイザー)
FAは仲介と違い、譲渡側か譲受側どちらか一方の利益だけを追います。多くの利害関係者の納得が要る大企業同士の取引で活躍する傾向です。中立の仲介との性格差はFAと仲介会社の違いで整理しています。
M&Aコンサルティング・アドバイザリー・ブティック
戦略立案から実行、統合まで一貫支援するのがM&Aコンサルティングの違いやアドバイザリーの役割です。少数精鋭の専門家集団はブティックという業態と呼ばれます。代理人として動くエージェントの位置づけも知っておくと、相談先の地図が描けます。
商工会・商工会議所
地域密着で無料相談に応じ、補助金の情報も持っています。中立に話せる半面、込み入った案件の解決力は限られがち。会員向けという制約もあります。入口として使い、具体策は別の窓口に回す形が現実的です。
事業承継・引継ぎ支援センター
国が全国に置く公的な相談窓口です。親族内承継から第三者承継まで無料で相談でき、専門家も紹介してくれます。ただ、内部で完結することは少なく、仲介会社へつなぐ役割が中心。公的な相談窓口の活用の使い方は別記事で解説しています。
弁護士・中小企業診断士・経営者仲間
契約書や法務デューデリジェンス、法的トラブルの予防にはM&Aでの弁護士の役割が欠かせません。企業価値を高める助言は中小企業診断士、引退後の資産設計はファイナンシャルプランナーが向きます。先に成約した経営者仲間の体験談も貴重ですが、検討中の事実を安易に明かさない配慮は要ります。
信頼できる相談先を見極める制度と視点
相談先選びで失敗を避けるには、公的な仕組みを使うのが近道です。国の制度と、現場で実際に効くチェック項目を押さえておきましょう。
中小企業庁のM&A支援機関登録制度を使う
中小企業が安心して依頼できるよう、中小企業庁はM&A支援機関登録制度を設けています。中小M&Aガイドラインの遵守を宣言した仲介会社・FAが登録され、手数料体系も公開。専用データベースで業種や地域から探せます。制度の中身はM&A支援機関の登録制度でも詳しく解説しています。
相談先選びで確認したい5つの視点
当社の支援現場で、相談先を見極める際に必ず確認している点を挙げます。
- 自社と同じ業種・規模での支援実績があるか
- 担当者本人の経験年数と、過去の関与案件の深さ
- 着手金・中間金・最低報酬の有無と金額が書面で明確か
- 連絡の速さと、不利な情報も率直に伝えてくれる誠実さ
- 税務・法務など実務面を社内または提携で補える体制か
規模や知名度より、この5点がそろう先のほうが、結果的にスムーズに進みます。
M&Aの相談にかかる費用の目安
料金体系は会社ごとにばらつきます。後から知らない費用が出てきた、という声も実際に聞きます。提案書や見積書で内訳を確認し、納得できるまで説明を受けることが肝心です。
途中で生じる費用(着手金・月額・中間金)
成功報酬が中心ですが、着手金や月額報酬、中間金がかかる場合もあります。着手金は無料の会社も増え、有料なら50万〜500万円程度。月額は数万〜数十万円、中間金は基本合意時に成功報酬の一部(例えば10%)を支払う形が一般的です。
成約時に生じる費用(成功報酬)
成約して初めて、譲渡代金などを基準に計算されるのが成功報酬です。レーマン方式が使われ、最低報酬額は1000万〜2500万円程度に置かれることが多いもの。詳しい相場は手数料相場の比較で25社を比べています。
後継者が見つからない中小企業は今も多い
帝国データバンクの後継者不在率の動向調査によると、2025年の全国の後継者不在率は50.1%でした。改善傾向にあるとはいえ、中小企業は51.2%、小規模企業は57.3%と依然として高い水準です。

M&Aによる相手探しと実行には、早くて半年、長ければ1〜2年かかることも珍しくありません。年齢を重ねる前に、複数の相談先を比べながら動き出すのが安全です。会社売却そのものの段取りは会社売却の流れで確認できます。
M&Aの相談先に関するFAQ
相談先を選ぶ際に、よく寄せられる質問をまとめました。
多くの仲介会社やFA、公的機関では初期相談を無料にしています。費用が発生するのは、着手金のある会社と契約した時や、成約時の成功報酬が中心です。相談の段階で料金体系を確認しておくと安心できます。
一概には決められません。相手探しを急ぐなら仲介会社、中立な情報整理なら公的機関、税務の不安が大きいなら会計事務所が向きます。まず公的窓口で課題を整理し、数社を比べる進め方が堅実でしょう。
基本の窓口は重なりますが、重視点が違います。買い手は資金調達やデューデリジェンスで金融機関・専門家の比重が増し、売り手は条件交渉と従業員の処遇を支えてくれる相手が要になります。立場を伝えたうえで相談してください。
税務の相談先としては心強い存在です。ただ相手探しや交渉の実務までは担えないことが多いもの。税理士と仲介会社を組み合わせる形が現実的です。M&Aの経験があるかを確かめてから任せましょう。
中小企業庁のM&A支援機関登録制度に登録され、手数料体系を公開しているかが一つの目安です。そのうえで同業種の実績や担当者の経験、書面での費用説明を確認すると、ミスマッチを防ぎやすくなります。
まとめ|自社に合う相談先を早めに選ぶ
M&Aの相談先は、金融機関・会計事務所・仲介会社・公的機関などそれぞれに強みと費用差があります。初めての会社売却で誰に託すか迷うのは当然のこと。公的窓口で課題を整理し、実績と担当者、費用の明確さで数社を比べれば、後悔の少ない選択に近づきます。
みつきコンサルティングは、税理士法人グループを母体とする会計事務所系・士業系の代表的なM&A仲介会社です。中小企業の会社売却・事業承継で培った経験をもとに、税務にも強い体制でご支援します。会社売却や企業価値評価をお考えなら、当社にご相談ください。
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著者

- 事業法人第三部長/M&A担当ディレクター
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宅食事業を共同経営者として立ち上げ、CFOとして従事。みつきコンサルティングでは、会計・法務・労務の知見を活かし、業界を問わず、事業承継型・救済型・カーブアウト・MBO等、様々なニーズに即した多数の支援実績を誇る。M&Aの成約実績多数、M&A仲介・助言の経験年数は10年以上
監修者 神門 剛 代表取締役 / 公認会計士・税理士
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