仲介手数料の負担が重く、譲渡に踏み切れない経営者は少なくありません。事業承継・M&A補助金の16次公募は、2026年10月2日に申込受付が始まります。本記事では16次公募のスケジュールと、売り手が使える支援枠の補助率・上限額、採択率や申請の注意点まで、M&Aアドバイザーが解説します。
事業承継・M&A補助金16次公募の要点|2026年10月2日申込開始
16次公募の申込受付は、2026年10月2日(金)から11月6日(金)17時までです。公募要領は9月4日に公開され、4つの支援枠の骨格は15次公募から引き継がれました。まずは全体像を下表で押さえてください。
| 項目 | 16次公募の内容 |
|---|---|
| 申込受付期間 | 2026年10月2日(金)〜11月6日(金)17:00 |
| 申請方法 | 電子申請(Jグランツ)のみ、GビズIDプライムが必要 |
| 採択発表 | 2026年12月下旬以降、順次(予定) |
| 補助事業期間 | 交付決定日〜2028年3月中旬(予定) |
| 支援枠 | 事業承継促進枠、専門家活用枠、PMI推進枠、廃業・再チャレンジ枠 |
| 補助上限額 | 150万〜2,000万円(枠・類型により異なる) |
| 売り手支援類型の補助率 | 1/2(赤字等の条件で2/3) 小規模売り手支援類型は2/3 |
会社売却を考える譲渡オーナーが最初に確認すべきは、仲介手数料を補助する専門家活用枠です。GビズIDの発行には最長3週間ほどかかるため、10月中旬までに取得を済ませておくと締切に慌てずに済みます。
事業承継・M&A補助金とは|会社売却の費用を国が支える制度
会社を譲渡したいが、仲介手数料や調査費用の負担が重い。そう感じて検討を止めてしまうオーナーは珍しくありません。その費用の一部を国が補助するのが、事業承継・M&A補助金です。譲渡オーナーにとっては、会社売却の手取りを守る現実的な一手になります。
まずは事業承継の基本と会社売却の流れを押さえたうえで、制度の使いどころを見ていきます。

旧「事業承継・引継ぎ補助金」からの位置づけ
この制度は、かつての「事業承継・引継ぎ補助金」を引き継いだものです。名称が変わり、M&Aと統合作業を正面から支える設計に整理されました。第三者承継を選ぶ譲渡オーナーが使える数少ない国の補助制度です。
相談先選びの段階から関わる費用も視野に入ります。誰に何を頼むかは、事業承継の相談先を整理してから決めると失敗が減ります。
譲渡オーナーが押さえる4つの支援枠
支援枠は目的別に4つあります。会社売却を考えるオーナーがまず見るべきは、仲介手数料を補助する専門家活用枠です。16次公募の補助上限額と補助率を下表にまとめました。
| 支援枠 | 主な対象 | 補助上限額 | 補助率 |
|---|---|---|---|
| 専門家活用枠 | M&A仲介手数料、FA費用、DD費用 | 600万円(DD費用で+200万円) 小規模売り手支援類型 450万円 100億企業特例 2,000万円 | 買い手 2/3 売り手 1/2(赤字等 2/3) 小規模売り手 2/3 |
| 事業承継促進枠 | 親族内・従業員承継に伴う設備投資 | 800万円 (賃上げ時 1,000万円) | 1/2(小規模 2/3) |
| PMI推進枠 | M&A後の統合に向けた専門家費用、設備投資 | 150万〜800万円 (事業統合投資の賃上げ時 1,000万円) | 1/2(事業統合投資の小規模 2/3) |
| 廃業・再チャレンジ枠 | M&Aに伴う廃業費(解体・在庫処分) | 300万円 (他枠との併用時は上乗せ) | 2/3(併用時は各枠に準拠) |
譲渡オーナーは専門家活用枠の売り手支援類型、譲受企業は買い手支援類型とPMI推進枠を中心に検討する形になります。事業承継促進枠は、専門家活用枠やPMI推進枠と同じ公募回に申請できません。迷ったら、自社が譲り渡す側か譲り受ける側かを起点に絞り込むと判断が早まります。
16次公募のスケジュール|申込開始から補助金の入金まで
16次公募の申込受付は2026年10月2日に始まります。採択、交付決定、補助金の入金と続くため、全体では1年以上の長丁場です。会社売却のタイミングと申請時期は密接に絡むので、日程から逆算して動く必要があります。
申込受付期間と公募要領の公開
16次公募の公募要領は2026年9月4日に公開されました。受付は電子申請のみで、主な日程は下表のとおりです。出典は中小企業庁の公表資料と事務局の16次公募ページです。
| 項目 | 日程 |
|---|---|
| 公募要領の公開 | 2026年9月4日(金) |
| 申込受付期間 | 2026年10月2日(金)〜11月6日(金)17:00 |
| 公募説明会 | 2026年10月9日(金)14:00〜 (オンライン、参加申込は10月7日17:00まで) |
| 採択発表 | 2026年12月下旬以降、順次(予定) |
| 交付申請の受付 | 2027年1月上旬〜11月中旬(予定) |
| 交付決定 | 2027年1月下旬以降、順次(予定) |
| 補助事業期間 | 交付決定日〜2028年3月中旬(予定) |
| 実績報告 | 2027年6月上旬〜2028年3月下旬(予定) |
| 補助金の交付 | 2027年10月上旬以降、順次(予定) |
受付期間は約5週間しかありません。締切の11月6日17時を過ぎると申請は受け付けられないため、譲渡の相手探しと並行して書類準備を前倒しで進めておくと安心です。

採択と交付決定は別の手続
この補助金は、公募申請で採択された後に、あらためて交付申請を行う2段階の仕組みです。採択は交付申請へ進む権利にすぎず、補助事業に着手できるのは交付決定の通知を受けてからになります。
16次公募の交付決定は、早くても2027年1月下旬の見込みです。見積書は公募申請の時点では不要で、採択後の交付申請で提出します。仲介会社との契約や相見積の取得は、この流れを起点に段取りを組みましょう。
15次公募からの主な変更点
16次公募は、15次で整えられた枠組みをほぼそのまま引き継いでいます。支援枠や補助率に大きな変更はなく、見直されたのは日程と一部の要件です。譲渡オーナーに関わる点を順に見ていきます。
補助事業期間と事業承継対象期間の更新
補助事業期間は、2027年1月下旬から14か月以内が想定されています。事業承継促進枠で承継を完了させる期限は、申込締切の11月6日から5年後にあたる2031年11月5日までとなりました。
登録FA・仲介業者が申請する場合の要件
M&A支援機関登録制度に登録されたFA・仲介業者やその代表者が補助事業者となる場合の要件が見直されました。自社や関連会社をFA・仲介の委託先にしないことが条件として明記され、公募申請時に他社へ委託する理由を求められる場合もあります。
小規模売り手支援類型は16次も継続
15次で新設された小規模売り手支援類型は、16次でも継続しています。9月11日には16次版のチラシとガイドブックも公開されました。従業員が少ない会社の売却で、仲介手数料の負担を抑えたい場合の有力な選択肢です。
専門家活用枠|M&A仲介費用を抑える売り手の使い方
会社売却で最も大きい費用は、仲介会社やFAへの手数料です。ここを補助するのが専門家活用枠で、譲渡オーナーが直接恩恵を受けられる枠になります。手数料の水準はM&A手数料の相場で確認できます。

補助対象になるM&Aと対象者
対象になるのは、実質的な事業の引継ぎを伴うM&Aです。株式譲渡、事業譲渡、株式交換、合併、会社分割といった手法が含まれます。一方で、物品や不動産のみの売買、グループ内再編、親族間の承継は対象外。ここは取り違えやすい線引きです。
株式譲渡で売り手支援類型を使う場合は、対象会社と、議決権の過半数を持つ株主が共同で申請します。過半数を1人で持つ株主がいないときは、株主の代表者1名が他の株主の確認書を添えて申請する形です。
法人の場合は、3期分の決算と申告を終えていることが前提です。常時使用する従業員を1名以上引き継がない案件は、要件を満たさないと判断されるおそれがあります。事業譲渡では、設備や従業員、顧客をまとめて引き継ぐことも欠かせません。
要件の詳細は、16次公募の公募要領で確認できます。候補先がまだ決まっていない段階でも申請はできるため、相手探しと並行して準備を進めるのが得策でしょう。
対象経費・補助率・上限額
主な対象経費は、仲介手数料やFA費用、弁護士や会計士に依頼するDD費用です。仲介・FA費用は相談料や着手金、中間報酬、成功報酬まで対象になります。類型ごとの補助率と上限額を下表にまとめました。
| 類型 | 補助率 | 補助上限額 | 上乗せ額 |
|---|---|---|---|
| 売り手支援類型 | 1/2 (条件を満たせば 2/3) | 600万円 | DD費用 +200万円 廃業費 +300万円 |
| 小規模売り手支援類型 | 2/3 | 450万円 | 廃業費 +150万円 |
| 買い手支援類型 | 2/3 | 600万円 | DD費用 +200万円 廃業費 +300万円 |
| 買い手支援類型(100億企業特例) | 1/2(1,000万円超の部分は 1/3) | 2,000万円 | 廃業費 +300万円 |
補助下限額は50万円で、補助率1/2なら100万円、2/3なら75万円以上の経費が申請の目安です。小規模売り手支援類型には下限がありません。補助金は後払いで、受け取った年度の法人税等の課税対象になる点も押さえておきましょう。
注意したいのは、登録要件です。仲介会社やFAへの費用は、M&A支援機関登録制度に登録された業者でなければ対象になりません。登録の有無は交付決定の時点で確認され、契約前の確認を欠かすと補助そのものが消えます。
登録業者は、手数料の開示といったルールを定めた中小M&Aガイドラインの遵守が求められる支援機関です。当社みつきコンサルティングも同制度の登録支援機関として、補助金の活用を前提にしたご相談に対応しています。
売り手の補助率が2/3に上がる条件
売り手支援類型の補助率は原則1/2です。次のいずれかに当てはまると、2/3まで引き上げられます。
| 条件 | 判定のしかた |
|---|---|
| 営業利益率の低下 | 直近期と2期前の比較、または直近期と進行期の任意の連続3か月の平均の比較で、営業利益率が下がっている |
| 赤字 | 直近決算期の営業利益または経常利益が赤字である |
物価高で利益率が落ちた会社は、該当するケースが少なくありません。比べる期間の取り方で結果が変わるため、決算書と月次の試算表を並べて早めに確かめておくと判断を誤りにくくなります。
小規模売り手支援類型の対象と上限
従業員が少ない会社には、小規模売り手支援類型があります。補助上限額は450万円、補助率は2/3で、補助下限額はありません。DDの実施も求められず、事業譲渡と株式譲渡が対象です。
| 業種 | 従業員数の基準 |
|---|---|
| 製造業その他 | 20人以下 |
| 商業(卸売業・小売業)・サービス業 | 5人以下 |
| サービス業のうち宿泊業・娯楽業 | 20人以下 |
通常の売り手支援類型とは、同じ公募回にどちらか一方しか申請できません。上限は通常枠の600万円より低い一方、補助率は最初から2/3です。手数料の見込み額と業績を踏まえ、有利なほうを選びます。
試算例として、従業員4人の小売業が事業譲渡で仲介会社に着手金と成功報酬あわせて300万円を支払うケースを考えます。補助額は200万円(300万円×2/3)となり、自己負担は100万円まで下がる計算です。小さな会社の売却手順は零細企業のM&Aで解説しています。
仲介会社との契約と相見積のルール
補助対象になるのは、交付決定日以降に契約・発注し、補助事業期間内に支払った経費です。中間報酬は期間内の基本合意、成功報酬は期間内の最終契約が前提となります。支払いは申請者の口座からの振込か、クレジットカードの1回払いに限られます。
見積は、原則として2者以上から取るのが決まりです。相見積では最も低い見積額が補助額の基準となり、事務局のFAQでは最低価格でない業者を選ぶと対象外になると示されました。相見積の依頼先も登録業者でないと、無効な見積とみなされる場合があります。
例外は、FA・仲介費用がレーマン方式の表で算出した額以下に収まる場合です。公募要領の表では譲渡額または移動総資産の5億円以下の部分に5%を掛けるため、想定譲渡額5億円なら2,500万円が目安になります。最低報酬額の定めがある見積は、この例外を使えません。
M&Aが成約しなかった場合の扱い
補助事業期間内にクロージングまで至らなかった場合も、一部の経費は補助されます。売り手支援類型ではDD費用とシステム利用料に限られ、上限額は300万円に下がります。小規模売り手支援類型の上限は50万円で、着手金とシステム利用料、DD費用が対象です。
廃業費の上乗せも、関連する引継ぎが期間内に実現しなければ対象外です。成約の時期がずれ込みそうな案件では、この減額を織り込んで資金計画を立てておくことが欠かせません。
デューデリジェンス費用の扱い
DDは、譲受企業が対象会社のリスクを洗い出す調査です。財務や法務、労務まで複数の側面から踏み込みます。買い手支援類型ではDDの実施が要件とされ、実施する場合は上限に200万円が上乗せされます。
譲渡オーナー側でも、必要性があればDD費用の計上は可能です。ただし実務上は場面が限られるため、どのような想定で計上するのか事務局から確認される場合があります。費用の目安はデューデリジェンス費用の相場にまとめました。
支援現場の例として、年商8億円規模の製造業の譲渡では、仲介手数料を中心に専門家費用が900万円ほどかかった案件がありました。直近期が赤字で補助率2/3が適用されれば、補助額は上限の600万円に達し、自己負担は300万円に収まります。
数値は守秘配慮による仮例ですが、補助の有無で手取りが大きく動くことは現場の実感と一致します。手取りの考え方は会社売却の手取りで詳しく整理しました。
事業承継促進枠|親族内・従業員へ引き継ぐ場合の支援
第三者へのM&Aだけが承継ではありません。親族や従業員へ引き継ぐ道を選ぶ譲渡オーナーには、事業承継促進枠が用意されています。かつての経営革新枠の流れをくむ枠で、後継者が取り組む生産性向上の投資を支えます。

対象になる承継と補助の中身
対象は、同じ会社の中で代表者が交代し、親族または従業員へ事業を引き継ぐケースです。16次公募では、2031年11月5日までに承継を終える計画が求められます。承継後に代表者が複数になる形は対象外です。
後継者には、役員や従業員として通算3年以上の経験があるか、代表経験のない親族であることが求められます。補助されるのは、後継者が行う設備投資や店舗・事務所の工事、専門家への謝金や外注費です。
公募申請には、認定経営革新等支援機関が発行する確認書が要ります。名義の付け替えではなく、引き継いだ会社をどう伸ばすかという計画こそ審査の軸。ここを描けないと評価は伸びません。詳しい要件は事業承継促進枠の公募要領で確認できます。
親族へ渡すか社内人材へ託すかで、株価や資金の論点は変わります。親族内承継の手順と従業員承継の方法を見比べてから、補助の使いどころを定めると無駄がありません。
賃上げ要件で上限が広がる仕組み
この枠の上限は800万円です。補助事業の完了後、従業員1人当たりの給与支給総額を3%以上引き上げる要件を満たせば、上限が1,000万円まで伸びます。800万円を超える部分の補助率は1/2です。
補助率は小規模事業者等なら2/3、それ以外は1/2が基本となります。賃上げが未達の場合は、引き上げ分として最大200万円の返還を求められるため注意が必要です。
現場では、承継のタイミングで老朽化した設備を入れ替える計画が通りやすい傾向があります。承継と投資を一体で描けるかどうか。そこが採択を分ける分岐点です。
PMI推進枠と廃業・再チャレンジ枠|M&Aの前後を支える制度
M&Aの前後には、統合作業や一部事業の整理にかかる費用も生じます。こうした費用を支えるのが、PMI推進枠と廃業・再チャレンジ枠です。16次公募での補助率と上限額は下表のとおりです。
| 枠・類型 | 補助率 | 補助上限額 |
|---|---|---|
| PMI推進枠(PMI専門家活用類型) | 1/2 | 150万円 |
| PMI推進枠(事業統合投資類型) | 1/2(小規模事業者等は 2/3) | 800万円 (賃上げ時 1,000万円) |
| 廃業・再チャレンジ枠(単独申請) | 2/3 | 300万円 |
| 廃業・再チャレンジ枠(併用申請) | 併用する枠の補助率 | +300万円 (小規模売り手支援類型は +150万円) |
PMI推進枠
PMI推進枠は、M&A成立後の経営統合(PMI)に伴う費用を支援します。専門家に統合作業を依頼するPMI専門家活用類型と、統合効果を高める設備投資を対象とする事業統合投資類型の2つです。

異なる企業文化やシステムを統合するには、想定以上のコストと労力がかかるものです。現場では、PMIをおろそかにした結果、M&A後に社員が離職してしまうケースが散見されます。進め方はPMIの進め方で詳しく解説しました。
PMI専門家活用類型は、専門家活用枠の買い手支援類型と同じ公募回に同時申請できます。一方、事業統合投資類型は買い手支援類型と同時には申請できず、公募申請の時点で基本合意、交付申請の時点で最終契約を結んでいることが前提です。
廃業・再チャレンジ枠
廃業・再チャレンジ枠は、事業承継やM&Aに伴う廃業や再チャレンジの費用を支援します。対象は、廃業支援費や解体費、原状回復費、在庫廃棄費、リースの解約費といった経費です。

M&Aで一部の事業だけを譲渡し、残りを廃業する場合は、他の枠と併用して上限額を上乗せできます。M&Aで事業を譲り渡せなかった会社の株主や個人事業主が、新たな挑戦のために廃業する場合は、この枠の単独申請です。
「廃業=失敗」と捉えられがちですが、国はこれを次の挑戦へ向かうステップとして支援しています。単独申請では認定経営革新等支援機関の確認書が要るため、早めに相談先を決めておきましょう。
廃業を決める前に、廃業とM&Aの比較で手取りや雇用への影響を確かめておくと、選択を誤りにくくなります。
採択率と審査で見られるポイント
採択は抽選ではありません。事業計画の中身で決まります。落ちる理由の多くは要件不備と計画の具体性不足です。
直近の採択率の傾向
採択率はおおむね60%前後で安定しています。直近の15次公募と14次公募の採択状況を下表に示します。出典は事業承継・M&A補助金の事務局サイトです。
| 区分 | 15次申請件数 | 15次採択件数 | 15次採択率 | 14次採択率 |
|---|---|---|---|---|
| 事業承継促進枠 | 190件 | 115件 | 60.5% | 60.9% |
| 専門家活用枠 | 312件 | 194件 | 62.2% | 60.2% |
| PMI推進枠 | 47件 | 28件 | 59.6% | 62.8% |
| 廃業・再チャレンジ枠 | 2件 | 1件 | 50.0% | 100.0% |
| 合計 | 551件 | 338件 | 61.3% | 60.7% |
5社中3社が通る計算です。低い壁ではありませんが、4割近くは落ちています。申請件数は14次の512件から15次は551件へ増えており、準備の差がそのまま結果に出ます。
売り手・買い手それぞれの審査の着眼点
売り手支援類型では、譲渡の目的と必要性、譲渡による効果や地域経済への影響が問われます。雇用や取引先をどう守るのか、その視点が評価を左右する場面も多いものです。
買い手支援類型で見られるのは、財務内容の健全性、買収の目的と必要性、買収後の成長の見込みです。どちらの類型でも、補助事業期間内に引継ぎを進められる計画かどうかが確認されます。
加点項目の活用
専門家活用枠では、次のような事由が審査の加点対象です。複数に当てはまる場合は、それぞれの証明書類をすべて提出します。
| 加点の区分 | 主な内容 |
|---|---|
| 計画の認定 | 経営力向上計画、経営革新計画、先端設備等導入計画、(連携)事業継続力強化計画 |
| 会計・働き方 | 中小企業の会計に関する基本要領・指針の適用、健康経営優良法人、えるぼし・くるみん認定 |
| 事業者の属性 | 小規模事業者等、地域未来牽引企業、米国の追加関税措置で大きな影響を受ける事業者 |
| その他 | サイバーセキュリティお助け隊サービスの利用、2%以上の賃上げの表明 |
賃上げ加点は、未達だと以後18か月、中小企業庁所管の補助金で大幅に減点されます。売り手支援類型で使う場合は、M&A後も譲受企業が賃上げを続ける合意を得て誓約書を出さなければなりません。無理のない範囲で選ぶのが賢明です。
申請でつまずきやすい3つの落とし穴
補助金は、計画の一部として確実に取りにいくものです。ところが、細かなミスで受給を逃す例が後を絶ちません。現場で繰り返し見てきた確認項目を、下表のチェックリストにまとめました。
| 確認項目 | つまずく理由 |
|---|---|
| GビズIDプライムの取得時期 | 発行に1〜2週間、混雑時は3週間ほどかかり、締切直前では間に合わない |
| 契約・発注の順番 | 交付決定前に契約すると費用が補助されない |
| 仲介会社の登録と相見積 | 未登録の業者や、最低価格でない見積の業者を選ぶと対象外になる |
| 支払いの方法 | 申請者の口座からの振込とカードの1回払い以外は認められない |
| 事業計画の中身 | 費用削減だけの計画は採択されにくい |
とくに次の3点は、会社売却の段取りと直結します。順に掘り下げます。
GビズIDプライムの早期取得
申請はJグランツで行い、GビズIDプライムのアカウントが要ります。発行には1〜2週間、混雑時は3週間ほどかかるため、締切直前では間に合いません。会社売却を考え始めた時点で、IDだけでも先に取得しておくのが安全です。
交付決定前の契約・発注
最も多い失敗が、いわゆるフライングです。交付決定の通知前に仲介契約を結ぶと、その費用は補助されません。仲介・FA費用にこの扱いが適用されたのは11次公募からで、16次でも変わりません。
M&Aは相手のある交渉ですが、補助金を使うなら交付決定までの2〜3か月を織り込んで段取りを組みます。期間前に最終契約を結び、覚書で契約日を期間内にずらす方法も、原則として期間内の契約とは認められません。
補助金ありきにしない事業計画
審査員が見るのは、補助金で会社がどう変わるかという筋書きです。手数料が安くなるから申請する、という計画書は通りにくくなります。技術の承継、雇用の維持、賃上げといった先の絵を描けるかが鍵を握ります。
他の補助金との組み合わせ|M&A後の成長投資
補助の対象は、M&Aそのものの費用にとどまりません。承継後の投資を支える制度と重ねれば、譲渡を「第二創業」の起点に変えられます。
設備投資や新市場への進出には新事業進出・ものづくり商業サービス補助金、システム統合にはデジタル化・AI導入補助金が候補です。ただし、同じ事業で国の他の補助金と重ねて交付を受けることはできません。導入の時期と対象経費を、M&Aの工程に合わせて切り分けるのがコツです。
旧制度の事業再構築補助金は新規公募を終えていますが、承継M&Aと補助金の関係を考える材料になります。承継方法ごとに費用の構造も変わります。
M&Aと親族内・従業員承継の事業承継の費用比較を先に見ておくと、どこに補助を当てるべきか判断しやすくなるはずです。税負担まで含めて比べたいなら、事業承継税制との比較も手がかりになります。
事業承継・M&A補助金に関するFAQ
支援現場で売り手のオーナーからよく届く質問をまとめました。
2026年10月2日(金)から11月6日(金)17時までです。電子申請のJグランツのみで受け付け、締切を過ぎた申請は認められません。GビズIDプライムの発行に1〜3週間かかるため、早めに取得しておくと安心です。
15次公募は申請551件に対して採択338件で、採択率は約61%でした。14次も約61%と、おおむね同じ水準で推移しています。4割近くは落ちており、要件不備や計画の具体性不足が主因なので、支援機関と準備を進めるのが現実的です。
どちらも使えます。専門家活用枠に買い手支援類型と売り手支援類型があり、従業員が少ない売り手には上限450万円・補助率2/3の小規模売り手支援類型もあります。規模や業績に合わせて、有利な類型を選ぶのが基本です。
補助を受けるなら避けてください。採択と交付決定は別の手続で、交付決定の通知を受けた後に契約・発注した経費だけが対象です。交付決定前に結んだ仲介契約の費用は、支払いが期間内でも補助されません。
そうとは限りません。補助の対象は、M&A支援機関登録制度に登録された業者への費用に限られます。相見積の依頼先も登録業者である必要があるため、契約前に登録の有無を確認するのが、現場でまず押さえる一点です。
一部は補助されます。売り手支援類型ではDD費用とシステム利用料に限られ、上限額は300万円に下がります。小規模売り手支援類型は上限50万円で、着手金とシステム利用料、DD費用が対象です。
原則は後払いです。M&Aや投資を実行して支払いを済ませ、実績報告と検査を経てから入金されます。16次公募の補助金交付は2027年10月上旬以降の予定のため、当面の資金繰りは別に確保しておく必要があります。
まとめ|事業承継・M&A補助金16次公募で会社売却の負担を軽くする
16次公募の受付期間は、2026年10月2日から11月6日までです。売り手支援類型は仲介手数料の1/2から2/3を補助し、小規模事業者向けの類型もあります。交付決定前に契約しないことと、GビズIDの早期取得が成否を分けます。
当社はみつき税理士法人グループのM&A仲介会社として、中小企業のM&Aを数多く支援してきました。M&A支援機関登録制度の登録支援機関で、M&Aアドバイザーに加え公認会計士・税理士が在籍し、補助金の活用も含めた提案ができます。会社売却や事業承継でお悩みでしたら、お気軽にご相談ください。
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著者

- 名古屋法人部長/M&A担当ディレクター
-
人材支援会社にて、海外人材の採用・紹介事業のチームを率いて新規開拓・人材開発に従事。みつきコンサルティングでは、強みを生かし人材会社・日本語学校等の案件を中心に工事業・広告・IT業など多種に渡る案件支援を行う。M&Aの成約実績多数、M&A仲介・助言の経験年数は10年以上
監修者 神門 剛 代表取締役 / 公認会計士・税理士
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