M&AにおけるPMIの重要性|基本的な概要や実施の手順について解説

M&Aを実施する際には、「PMI」についての知識も重要です。PMIへの理解を深めることで、M&Aの効果をより引き出すきっかけになり得るでしょう。本記事ではM&AにおけるPMIの重要性と基本的概要、手順やポイントなどを解説します。M&Aを計画しているのなら、PMIについても確認してみてください。

1.M&Aにおける「PMI」とは

M&Aにとって、「PMI」は重要なプロセスの1つです。​​PMIがスムーズに進むかによって、M&Aの成否が分かれます。以下では、M&AにおけるPMIの基本について解説します。

PMIとはM&Aによる「買収後の経営統合」作業を意味する

PMIとは、「Post Merger Integration」の略称です。M&Aによって譲受した後の、「経営統合」に関する作業・プロセスを指します。新しい経営体制を考案・構築したり、それぞれのIT環境を統合したりと、さまざまな作業がPMIに含まれます。ただ2つの組織を組み合わせるだけの経営統合では、M&Aによるシナジー(相乗効果)を引き出すことは難しいです。 PMIによって中長期的な計画を立て、実践していく準備が重要視されます。

M&Aの際にはPMIへの理解も必要

M&Aを行う際には、事前にPMIへの理解を深めておく必要があります。M&AはPMIを主軸に話が進むケースがあるため、スムーズに契約するためにも、基本を把握しておくことが求められます。PMIの意味はもちろん、流れや注意点を確認しておくことも重要です。

2.PMIが重要である理由

M&Aにおいて、PMIは重要視されている要素の1つです。以下では、PMIが重要なものと認識されている理由を解説します。

シナジー(相乗効果)を早期に実現させる

M&Aの目的の1つに、企業同士の特徴を合わせて、シナジー(相乗効果)を生み出すことが挙げられます。PMIはシナジー(相乗効果)を早期に実現するための施策として、有効な方法と認知されています。逆にいえばPMIを計画・具体化できないと、想定していたシナジー(相乗効果)を引き出せない可能性が高くなります。

M&Aによる従業員の不満解消につながる

M&Aによって企業が1つになると、新しい環境に不満を持つ従業員も出てくることが想定されます。PMIは従業員の不満を解消するための施策を考え、実行するためにも役立つプロセスです。従業員が納得のいく形で経営統合ができるように、具体的な方法を設定しておくことがポイントです。

譲渡された企業に合わせた内部統制の構築に役立つ

M&Aの契約後には、譲渡された企業に合わせて事業体制を整える必要があります。PMIで内部統制の構築方法や方針を決めておけば、迅速に環境整備が可能となります。内部統制の構築が進んでいないと、業務が停滞するなどのリスクが懸念され、結果的にシナジー(相乗効果)を引き出せず損害を被る可能性もあります。

3.PMI実施の流れ

​​PMIを実施する際には、基本となる流れがあります。以下を参考に、PMIを計画・実現する手順を確認しましょう。

M&Aにおける経営統合の方針を決定する

​​PMIを計画するには、まずM&Aにおける経営統合の方針を決める必要があります。相手企業の情報を収集し、必要な環境や設備の準備を進めておくことが基本です。その上で具体的な統合の進行方法や、中長期的な目標を定めるのが、初期段階の流れとなります。

シナジー(相乗効果)の効果測定を実施する

M&Aによってどのようなシナジー(相乗効果)を得られるのか、事前に効果測定をします。シナジー(相乗効果)の効果測定の結果を軸に、M&A後の目標を設定することで、現実的な効果を見込めます。経営統合後も、PMIが計画通りに進められているか確認するために、KPI(重要業績評価指標)の設定などを行い、定期的なモニタリングでPDCAサイクルを回します。

ランディング・プラン(統合作業の計画)を考案する

ランディング・プラン(統合作業の計画)とは、クロージング(成約)後3か月〜6か月程度の期間で何を優先すべきか決め、スケジュールを立てる方法のことを指します。PMIの設定時には、一般的には譲受側と譲渡側で協力し、ランディング・プラン(統合作業の計画)を決めます。中長期的に発生が予想される課題解決に関する計画を立てる際には、クロージング(成約)後の100日間の課題解決を考える「100日プラン」も設定します。

4.PMI成功への準備(ポイント)

PMIを成功させるには、必要な準備とポイントを知ることが重要です。以下では、PMIの成功に欠かせない準備・ポイントを解説します。

業務システムの統合計画を立てる

業務システムの統合計画を立案し、早期に事業を動かせるように備えることが、PMIを成功させるポイントです。必要に応じて業務システムを新規で導入するなど、大掛かりなアクションが必要になることもあります。計画性がないと無駄なコスト(費用)がかかる可能性もあるため、しっかりとPMIに向けた計画立案に時間をかけましょう。

事業内容を再検討する

従来の事業内容を再検討し、M&A後に合わせるのも準備の一環です。事業内容の優先度次第では、別の業務にリソースを割くように調整することもあります。PMIの際には柔軟性を意識して、さまざまなパターンを考慮しておくこともポイントです。

あらためて取引先の選定を実施する

M&Aによって事業内容が変わると、重要な取引先が変化する可能性もあります。あらためて取引先の選定を実施し、新体制に合わせる準備も必要です。M&A後に計画している事業内容を明確にした上で、重要な取引先を厳選していくプロセスが必要になるでしょう。統合によって取引している製品やサービスが重複した場合には、取引先を1つに絞るなどの対応も必要です。

必要に応じてTSAを導入する

TSAは、対象会社・事業がこれまでに実施してきた業務サービスをクロジング後も継続して利用するための契約です。事業譲渡会社分割後の株式譲渡などのカーブアウトで導入が検討されることがあります。

5.大手企業におけるPMI事例

PMIを計画する際には、具体的な事例を参考にするのもポイントです。以下では、PMIの事例を紹介します。

サントリーのPMI事例

サントリーは2014年1月に、ビーム社を譲受しました。両社のブランドを活用した展開と技術交流などを実施し、ウイスキーの販路を世界規模に広げることに成功しています。両社のトップが現場目線でコミュニケーションを取ることで、シナジー(相乗効果)を生み出した点が特徴の事例です。

日本電産のPMI事例

日本電産は2019年11月までに、66件ものM&Aを実施している企業です。「高値つかみをしない」「PMIと経営に関与」「シナジー(相乗効果)」といった点に、重きをおいた展開を実現ていることが特徴です。入りの時点では値段を抑えてリスクを下げ、PMIに関与して譲受後のシナジー(相乗効果)を早期発現させることを目指しています。

楽天のPMI事例

楽天は2000年代からM&Aを始め、現在の楽天トラベルや楽天証券になる会社を譲受しています。元々のインターネット基盤を活用し、売上やコスト(費用)に関する点で、シナジー(相乗効果)を生み出して成功を収めています。各分野と既存事業を結びつけ、業務範囲の拡大を進めた点が特徴の事例です。

6.PMIの注意点

PMIを進める際には、注意すべき点があります。以下を参考に、PMIの進行時における注意点を確認しておきましょう。

PMIのスピードを従業員に合わせる

PMIが従業員を考慮しないスピードで進むと、モチベーション低下や離職の原因になり得ます。従業員とテンポを合わせて、無理のないスケジュールでPMIを進行させることが重要です。定期的に従業員にヒアリングを行い、PMIについての意見を聞くこともポイントです。

トラブルに対する柔軟な対応が必要

M&A後には、さまざまなトラブルが起きると想定されます。PMIによる作業が原因となって起きるトラブルもあるため、事前に解決策を考案する必要があります。シナジー(相乗効果)を高めることだけに注力するのではなく、リスクヘッジ(リスクを予測・対応すること)を意識するのもポイントです。

7.M&Aを検討しているのなら「みつきコンサルティング」にご相談ください

M&Aを検討する際には、専任のコンサルティングがさまざまな支援を行う「みつきコンサルティング」にぜひご相談ください。

「みつきコンサルティング」ならPMIを含めたM&Aの具体的な相談が可能

「みつきコンサルティング」は、財務関係の作業を得意とするM&A仲介会社です。税理士や会計士といったプロフェッショナルの手によって、M&Aにおける成果を最大限に引き出す支援が可能です。M&Aの成約率は80%以上となっているため、なかなかクロージング(成約)まで進めないケースでもお役に立てます。企業価値を適切に判断した上で、最適な提携候補先を提案し、納得のいく譲渡結果まで導きます。

8.M&AにおけるPMIのまとめ

M&Aを実施する際には、クロージング後の経営統合を具体的に計画するPMIの設定も重要です。PMIについてきちんと考えられているかで、M&Aが成約するかが決まることもあるでしょう。M&Aを考えるなら、PMIの基本を確認し、M&Aの成約率を高める準備をしてみてください。

「みつきコンサルティングでは、PMIを含めたM&Aに関するあらゆる相談を受け付けています。計画の立案から成約までトータルでサポートできるため、M&Aに関する不安を払拭しつつ譲渡を叶えられます。まずは「みつきコンサルティングに、お気軽にご相談ください。

著者

西尾崇
西尾崇事業法人第三部長
宅食事業を共同経営者として立ち上げ、CFOとして従事。みつきコンサルティングでは、会計・法務・労務の知見を活かし、業界を問わず、事業承継型・救済型・カーブアウト・MBO等、様々なニーズに即した多数の支援実績を誇る。
監修:みつき税理士法人