株式譲渡の損益で確定申告が不要な場合|非上場株の課税の注意点

株式譲渡で得た利益を得た場合、確定申告するべきかどうかは条件によって異なるため、頭を抱えている人もいるのではないでしょうか。本記事では、株式譲渡を検討している経営者に向けて、確定申告に関する基本的な知識と、事業承継やM&Aで株式譲渡する際の注意点を解説します。

確定申告とは

最初に、株式譲渡に限らず、何かしたの収入(所得)を得た個人の確定申告とは何かについて、概要を説明します。

個人の確定申告とは、1年間の収入・経費と、そこから計算される所得を申告する手続きで、所得税や住民税の正確な額を算出するために必要です。個人・法人を問わず、申告した所得に課せられる所得税を納付しなければなりません。個人は、前年の1月1日~12月31日分を、2月16日~3月15日の間に申告・納付します。法人は、事業年度終了後2か月以内に申告・納付することが不可欠です。

参考:No.2020 確定申告|国税庁

確定申告が必要な人

確定申告が必要な人の代表例は、以下のとおりです。

  • 配当所得があった人:株式や投資信託などからの配当金を受け取った人は、その所得に対して確定申告が必要
  • 不動産所得があった人:賃貸物件などからの家賃収入がある人は、その所得に対して確定申告が必要
  • 譲渡所得があった人:不動産や株式などの資産を売却して利益が出た人は、その譲渡所得に対して確定申告が必要

上記に該当する場合、それぞれの所得に適用される税率や控除を把握し、正確に申告をしなければなりません。

確定申告と年末調整の違い

確定申告と年末調整の違いは、制度の対象者です。年末調整は、主に会社員に関連する制度で、所得税の最終的な精算をします。会社員の場合、毎月の給与から所得税が暫定的に控除されています。ただし、暫定額は年間を通じて一定の税率で計算されるため、実際の年収に応じた税額とは異なります。

年末には、1年分の所得額をもとに、実際に支払うべき正確な税額が計算されます。この際に、年間を通じて控除された税額との違いが生じた場合、その過不足分を調整するのが年末調整の役割です。

一方で、確定申告は法人や個人事業主、複数の収入源を持つ人を対象としています。収入が会社の給与のみで、年収が2,000万円を超えない人は、確定申告が不要であるため、年末調整のみで問題ありません。

上場株式の譲渡時の確定申告

上場株式を証券市場(証券会社)を通して売買するには、証券口座がなければ取引できません。証券口座の種類は以下の3つです。

  • 一般口座
  • 特定口座(源泉徴収なし)
  • 特定口座(源泉徴収あり)

特定口座(源泉徴収あり)を利用して上場株式を譲渡して、譲渡益が生じた場合は、確定申告は不要です。他の2つは、基本的に確定申告が必要になります。

なお、上場株式であっても、市場(証券会社)を通さず、相対で譲渡した場合には、後述する非上場株式を譲渡した場合の取扱いと同じになります。

参考:No.1476 特定口座制度|国税庁

非上場企業の譲渡時の確定申告

非上場企業の株式を譲渡する際に得られる所得は、税務上は「譲渡所得」として扱われます。そして、原則として確定申告が必要です。非上場企業の株式を売却する場合、その取引は証券市場を通じて行われません。そのため、株式の譲渡価額や取得コストなどは個別に計算され、結果として得られる譲渡益が譲渡所得となります。

確定申告が不要な場合

ここでは、株式譲渡しても確定申告が不要なケースについて整理します。

株式の譲渡損がある

株式の譲渡損がある(赤字になっている)場合は、確定申告が不要です。ただし、上場株式の譲渡損がある場合、確定申告により損失を3年間繰り越せます。上場株式を売却して赤字が出た場合は、確定申告をするとよいでしょう。ただし、非上場株は繰り越せないため、注意が必要です。

特定口座(源泉徴収あり)を利用している

前述したように、特定口座(源泉徴収あり)を利用している場合には、確定申告が不要です。譲渡時に証券会社で源泉徴収しているためです。

譲渡所得が20万円以下である

譲渡所得が20万円以下であれば確定申告は不要です。

ただし、事業承継やM&Aなどの大規模な株式譲渡に関しては、譲渡所得が20万円以下となるケースはほとんどありません。このような大きな取引では、所得が20万円を超えることが一般的であるため、確定申告が必要になる場合が多いでしょう。

株式譲渡にかかる税金

個人が株式譲渡した際にかかる税金の概要を説明します。

税金の種類

個人の株式譲渡に関する税金は、以下の3つです。

  • 所得税:譲渡益に直接適用される税
  • 復興特別所得税:東日本大震災からの復興を支援するためのもので、2037年までの時限税
  • 住民税:所得税と同じく、譲渡益に直接適用される税

所得税は15%、復興特別所得税は0.315%、住民税は5%です。そのため、個人の株式譲渡においては、合計20.315%の税金が発生します。

分離課税という方式

所得税は、総合課税方式と分離課税方式の2種類に分けられます。総合課税は、さまざまな所得を合算して税率を適用する方式です。一方、分離課税は特定の所得に個別の税率を適用し、その所得に関しては他の所得と合算しない方式です。

株式譲渡は、分離課税方式に該当します。そのため、他の所得との合算はできません。上場株式と一般株式(非上場株式)もそれぞれの申告分離課税であるため、合算できない仕組みとなっています。

参考:No.1463 株式等を譲渡したときの課税(申告分離課税)|国税庁

事業承継において株式譲渡する際の注意点

ここでは、事業承継で株式譲渡する際の注意点について解説します。

親族間で株式譲渡する場合は譲渡価額に注意が必要

親族間で株式譲渡をする場合には、譲渡価額に注意しましょう。第三者への株式譲渡であれば、両者合意のもとの金額で問題ありません。しかし、親族間の場合、株式を譲渡した価額と時価との差が大きいと判断されると、多額の税金(贈与税など)が発生する危険性があります。

贈与税・相続税に注意が必要

事業承継で株式譲渡する際には、贈与税・相続税に注意しましょう。株式譲渡は、譲渡所得に課税されるため、基本的には譲渡側が税金を納める仕組みです。税金は、株式を売却して得た利益に基づいて計算されて、譲渡者が負担します。しかし、贈与や相続とみなされると、譲受側に贈与税・相続税が課されます。特に親族間での株式譲渡においては注意が必要です。

退職金の活用で節税できる場合がある

株式譲渡する金額の一部を退職金として受け取ると、節税ができる場合があります。退職金は、役員として5年以上勤務している場合であれば、課せられる税金が通常の半分になります。ただし一定の条件を満たさなければ、この仕組みは適用できません。条件によっては税金が増える可能性もあるため、事前に確認をしておきましょう。

株式譲渡収入の確定申告はプロに相談すると安心

株式譲渡で得た所得の確定申告は複雑であるため、プロのサポートを求めるのが望ましいでしょう。特に事業承継のような大規模な取引においては、税務、法律、会計の各分野に関する専門的な知識と経験が不可欠です。事業承継は、単に株式を売買する以上に、多くの作業や手続きを必要とします。

譲渡価格の設定などを適切に進めるためには、一定の専門知識や経験などが必要不可欠となるため、株式譲渡に関して一括で相談できるプロに依頼するのがおすすめです。知識・経験が豊富なプロに依頼をすれば、株式譲渡に伴うさまざまな問題も、スムーズに解決できるでしょう。

株式譲渡と確定申告のまとめ

株式譲渡益の確定申告を行う際には、事前に確定申告が必要なケースや注意点を把握しておきましょう。節税方法も押さえておけば、より経済的なメリットも得られます。

みつきコンサルティングは、設立母体の「みつき税理士法人」と連携することで、株式譲渡にかかる確定申告等への対応も含め、事業承継・M&Aへの全般サポートが可能です。株式譲渡は、みつきコンサルティングにご相談ください。

著者

西尾崇
西尾崇事業法人第三部長
宅食事業を共同経営者として立ち上げ、CFOとして従事。みつきコンサルティングでは、会計・法務・労務の知見を活かし、業界を問わず、事業承継型・救済型・カーブアウト・MBO等、様々なニーズに即した多数の支援実績を誇る。
監修:みつき税理士法人

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