居酒屋の会社売却では、深夜酒類提供飲食店営業の届出が人的に承継できない点と、ドリンク構成比を含む収益の質が、価格と成否を分けます。酒場・ビヤホールの倒産が業態別で最多という厳しい環境でも、立地と常連客を抱えた店には譲受の引き合いが絶えません。廃業ではなく売却で暖簾と雇用を残すために、譲渡オーナーが押さえておきたい相場観と承継実務をお伝えします。
「うちの会社でも売却できるだろうか…」、「何から始めればいいんだろう…」。そのようなオーナー経営者の不安に、中小企業向けM&A仲介会社みつきコンサルティングは、20年間・500件以上の支援実績に基づき、お応えします。本格検討前の情報収集として、まずはお話をお聞かせください。
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宴会の予約が戻りきらない、深夜のシフトに入れる人が集まらない、酒類と食材の仕入値だけが上がっていく。居酒屋を営むオーナーが売却を考え始めるきっかけは、たいていこの三つが重なった時です。本記事は、居酒屋やダイニングバーを運営する会社の売却を検討するオーナー経営者に向けて、深夜営業の届出や賃借物件の承継など、この業態でつまずきやすい論点をお伝えします。
酒場・ビヤホールの倒産増が映す居酒屋オーナーの選択肢
店をたたむか、託すか。判断の前に、いま居酒屋を取り巻く数字を落ち着いて眺めておきたいところです。
業態別で最も多い酒場・ビヤホールの倒産
帝国データバンクによると、2025年の飲食店の倒産は900件で過去最多を更新し、業態別では居酒屋を主体とする「酒場・ビヤホール」が204件と最も多くを占めました。同社の価格転嫁に関する調査では、飲食店業界の価格転嫁率は32.3%にとどまります。原材料費と人件費の上昇を、値上げで取り戻しきれない構図です。それでも、店を閉じる前に設備も常連も引き継ぐM&Aという道があります。原状回復費を負って看板を消すより、会社売却で雇用ごと託す判断を選ぶオーナーが増えました。
8割が単独店という事業所構造
総務省・経済産業省「経済センサス」では、酒場・ビヤホールの事業所は約8万5,000か所あり、そのうち約8割が単独店舗です。一方で売上は支店を持つ事業所が約半分を占め、1事業所あたりの売上は単独店のおよそ5倍。この規模差が、そのまま仕入条件と人材確保の差になります。小さな店ほど、価格交渉でも採用でも不利を背負いやすい。非対称な構造が、単独店のオーナーに早めの出口検討を促しています。
宴会需要の縮小と家飲みの定着
日本フードサービス協会によれば、居酒屋・バーの市場規模は2023年で2兆4,645億円でした。5兆円を超えていた1992年のピークから、半分以下に縮んだ計算になります。パブ・居酒屋業態の全店売上高は2022年以降に回復したものの、2024年の前年比は105.5%まで伸びが鈍りました。歓送迎会の規模縮小や家飲みの定着で、かつての宴会需要は戻りきっていません。客数が回復しないまま単価の引き上げに頼る経営は、いずれ限界を迎えます。
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深夜シフトの人繰りと後継者不在が生む居酒屋の売却理由
売却を決めた理由を伺うと、業態ごとに驚くほど傾向が違います。居酒屋の場合、夜の時間帯そのものが重荷になりやすい。
深夜割増賃金とアルバイト確保の限界
居酒屋の売上高人件費率は20〜30%程度で推移し、総務省「労働力調査」では飲食店で働く人の8割弱が非正規雇用者です。学生アルバイトに支えられてきた現場は、少子化と時給上昇の板挟みにあります。加えて22時以降は深夜割増賃金が25%上乗せされるため、遅い時間まで開ける店ほど人件費が膨らむ構造。募集をかけても集まらず、オーナー自身が閉店作業まで入る日が続けば、体力の限界が先に見えてきます。
個人保証を抱えたまま迎える70代
借入の個人保証を背負ったまま年齢を重ねる不安は、初回相談で最も多く聞く話のひとつです。内装や厨房設備のために借りた資金は、返済が終わるまでオーナー個人に紐づき続けます。親族に継ぐ意思がなければ、保証を外す現実的な手段が第三者への株式譲渡に絞られることも。事業承継の道筋と金融機関との交渉を早めに描いておくと、選べる相手の幅が広がります。
賃借物件の更新と内装リニューアルの負担
居酒屋の多くは繁華街の賃借物件で営業しており、契約更新のたびに賃料改定と原状回復義務がのしかかります。10年、15年と使った内装や厨房、給排気設備の更新時期が重なれば、投資額は数千万円規模に達することも珍しくありません。回収年数を試算した瞬間に、譲渡へ気持ちが傾くオーナーもいます。相手選びで迷ったら、仲介会社の一覧を眺めて比較してみるのも一案です。
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客席回転率とドリンク構成比で読む居酒屋の譲渡価格
「うちの店に、いったいいくら付くのか」。相談で真っ先に出るこの問いに、居酒屋ならではの見方でお答えします。
年買法で置く価格の目安
中小の居酒屋運営会社で最もよく使われるのが年買法(年倍法)です。時価純資産にのれん(数年分の利益)を加えて目安を出します。純資産が薄くても、駅至近の立地や固定客の厚みがあれば上乗せが見込めます。純資産法やDCF法、類似会社比較法も物差しとして使われますが、店舗数が限られる会社では将来予測の前提が揺れやすく、実務では年買法の考え方を軸に据えることが多くなります。売却の相場観も、まずはここから逆算します。
譲受企業が確かめる居酒屋の経営指標
下表は、居酒屋の譲渡価格を検討する際に譲受企業が確認する主な経営指標と、その見られ方をまとめたものです。
| 確認される指標 | 譲受企業から見た評価の視点 |
|---|---|
| 客単価 | 値上げ後も客数が落ちていないかを、月次の推移で確かめられます |
| 客席回転率 | 滞在時間の長い業態のため、週末の稼働と平日の落差が見られます |
| ドリンク構成比 | 飲み物の比率が高いほど原価率は下がり、利益の厚みとして評価されます |
| 売上高賃料比率 | 繁華街の賃料水準と残存契約期間が、収益の持続性を測る材料になります |
| 深夜帯の売上構成 | 0時以降の売上比率は、届出の承継と人件費の両面から見られます |
| 予約・宴会比率 | 法人宴会への依存が強い場合、需要変動のリスクとして織り込まれます |
高く評価されやすい居酒屋の条件
当社では、居酒屋の株価算定にあたって、料理とドリンクの売上構成を必ず分けて確認します。ドリンク構成比が高い店は原価率が低く、同じ売上高でも利益の残り方が違うためです。店長が抜けても回る仕込みの標準化、看板メニューの再現性、予約管理の仕組み。こうした属人性を薄める工夫があるほど、譲受企業は買収後の運営を具体的に描けます。数字だけでなく、引き継げる形になっているかが評価を押し上げます。
深夜酒類提供飲食店営業の届出で注意すべき居酒屋の承継論点
許可や届出の扱いを見落としたまま話を進め、引渡し直前に慌てる。居酒屋では、これが最も起きやすい失敗です。
風営法の届出は人に紐づく
午前0時以降も酒類を提供する店は、風営法に基づく深夜酒類提供飲食店営業開始届出を、所轄警察署を経由して公安委員会へ提出しています。この届出は営業者に紐づくため、事業譲渡では譲受企業が営業開始の10日前までに新たに届け出る必要があります。株式譲渡なら法人格が変わらず、届出はそのまま維持されます。深夜帯の売上構成が高い店ほど、スキーム選択が営業の空白に直結する。ここは順序を間違えられません。
食品衛生法の地位承継届で変わった営業許可の扱い
2023年12月13日に施行された改正食品衛生法により、営業の全部を譲り渡す場合は、譲受企業が地位承継届を保健所へ提出することで飲食店営業許可を引き継げるようになりました。以前は新規申請と現地確認が必要で、営業を止める期間が生じることも。ただし複数店舗のうち一部だけを渡す形では対象外です。事業譲渡の範囲設計を誤ると、この改正の恩恵を受けられません。
スキーム別に見る許可と契約の引き継ぎ
表中では、居酒屋で選ばれやすい二つのスキームについて、許可・届出と主要な契約の扱いを対比しています。
| 比較項目 | 株式譲渡 | 事業譲渡 |
|---|---|---|
| 飲食店営業許可 | 法人が許可主体のまま残り、手続は生じません | 営業の全部譲渡なら地位承継届で引き継げます |
| 深夜酒類提供飲食店営業の届出 | 法人名義のため、そのまま維持されます | 譲受企業が営業開始の10日前までに新規届出 |
| 店舗の賃貸借契約 | 当事者は変わらず、支配権変更の通知条項の有無を確認 | 貸主の承諾を得たうえで再契約が必要 |
| 従業員の雇用 | 雇用条件を含めてそのまま継続 | 個別に同意を得て転籍する形 |
| 酒類卸との取引条件 | 既存の掛け条件を引き継ぎやすい | 与信の再審査で条件が変わることも |
譲受企業が踏み込むデューデリジェンスの視点
支援の現場では、居酒屋のデューデリジェンスで労務と在庫に指摘が集中します。深夜割増賃金の計算漏れ、休憩時間の管理、アルバイトの労働時間記録。加えて、酒類在庫の評価方法や、法人客のツケとして残る売掛金の回収可能性も確かめられます。現金商売ゆえにレジ締めと売上計上の突合も入ります。指摘を受けてから直すより、打診前に社会保険労務士と一緒に手当てしておくほうが、条件交渉で守りに回らずに済みます。
居酒屋を譲り受ける買い手の顔ぶれと評価の軸
誰が買い手になり得るのかを知ると、自社のどこが評価されるのかも見えてきます。
専門居酒屋へ舵を切る同業チェーン
総合居酒屋から焼き鳥や海鮮などの専門業態へ主役が移り、チェーン側も店舗網の入れ替えを進めています。既存商圏と重ならない立地、自社にないブランドの世界観を持つ店は、出店コストを抑えて面を広げる手段として映ります。実際に2022年9月、焼鳥居酒屋を運営する鳥貴族ホールディングスは、「やきとり大吉」をフランチャイズ展開するダイキチシステムの全株式をサントリーホールディングスから取得すると発表しました。2023年1月に実行された同案件は、小〜中商圏の店舗網確保と、双方のフランチャイズ運営ノウハウの持ち寄りを狙いとしています。
食材と物流でつながる隣接業種
買い手は同業だけではありません。給食事業者、水産仲卸、酒類卸、業務用食品卸といった隣接業種が、川下の出口として居酒屋を求める動きは以前からあります。食材の共通化で仕入原価を下げられ、自社の商材を店で使ってもらえる。産地と店舗が直につながれば、差別化の材料にもなります。異業種からの参入で店舗運営のノウハウを買いに来るケースも含め、譲受候補の裾野は思われているより広いのが実情です。
ファンドと譲受候補の探し方
複数ブランドを持ち、一定の営業利益を安定して出せる会社であれば、投資ファンドが候補に入ります。ただし単独店に近い規模では、事業会社との相性を優先したほうが条件はまとまりやすい。当社の成約実績を振り返ると、居酒屋案件では地域や業態の重なりよりも、譲渡後に店長を任せられる体制があるかどうかで打診の反応が変わりました。候補の絞り込みで迷ったら、M&A仲介の役割から確かめてみてください。
従業員と常連への向き合い方
みつきコンサルティングでは、居酒屋の従業員説明について、深夜帯を支える社員と長期のアルバイトを分けて段取りを組みます。店長や調理担当が抜ければ味も回転も変わるため、譲受企業は雇用継続の確約を求めることが多い。処遇の維持や役職の扱いを譲渡契約に落とし込んでおくと、引渡し後の離職を抑えられます。看板と味が変わらなければ、常連は静かに通い続けてくれます。
クラフトビール醸造を手がける居酒屋運営会社が成長加速のために選んだ売却
売却は追い詰められた末の判断とは限りません。あえて資本の傘を選んだ経営者の例です。

成長を急ぐために外部資本を求めた背景
東京都のライナ株式会社は、2007年の設立以来、居酒屋やクラフトビール専門店の運営に加え、クラフトビールの製造まで手がけてきました。売上高は10億円規模。当時39歳だった代表が掲げたのは、後継者対策ではなく企業成長の加速でした。自力での出店と醸造の拡大には限界があり、資本と販路を持つ相手と組む道を選んでいます。
給食大手グループを譲受先に選んだ理由
相手は、食堂運営や給食事業、食に関わるソフトウェア開発などを展開する株式会社ニッコクトラストでした。連結売上高は300億円規模、設立は1941年。既存サービスの拡充という譲受目的と、外食とクラフトビールという強みが噛み合いました。2020年3月、みつきコンサルティングの助言のもとで株式譲渡が成立しています。
グループ参画後に描かれたシナジー
参画後は、給食と外食の両輪で新業態や新商品の開発が視野に入りました。食材の共通化によるコスト削減も見込まれます。単独では届かなかった規模の投資も、グループの中でなら現実味を帯びます。
クラフトビールを醸造する居酒屋運営会社が給食大手グループへ参画した経緯を読む
その他の居酒屋のM&A事例
居酒屋業界におけるM&Aは、数多くの成功事例を生み出しています。ここでは、具体的な事例を挙げて、M&Aの効果や影響について解説します。
ダイナックホールディングスによるRESTAURANT SUNTORY U.S.A.,INCのM&A
株式会社ダイナックホールディングスは、2019年12月にハワイで和食レストランを経営するRESTAURANT SUNTORY U.S.A.,INCの株式を取得し、2020年3月付けで子会社化しました。この取得により、同社はハワイでの事業拡大とブランドの強化を実現しています。
鳥貴族ホールディングスによるダイキチシステムのM&A
株式会社鳥貴族ホールディングスは、2023年1月に「やきとり大吉」の運営会社であるダイキチシステム株式会社の全株を、サントリーホールディングスから取得しました。これによりダイキチシステム株式会社は、株式会社鳥貴族ホールディングスの子会社となり、両社の事業のシナジー(相乗効果)が期待されます。
SFPホールディングスによるクルークダイニングのM&A
2019年5月、SFPホールディングス株式会社は、株式会社クリエイト・レストランツ・ホールディングスの子会社である株式会社クルークダイニングを、株式譲渡により子会社化しました。このM&Aは、SFPホールディングス株式会社の「SFPフードアライアンス構想」の一環として実施されており、独自ブランドの育成や広域展開をサポートする目的がありました。
やまやによるつぼ八のM&A
2018年10月、酒類販売大手の株式会社やまやは、傘下の居酒屋チムニー株式会社と共同で、株式会社つぼ八の株式のうち、87.8%を取得しました。このM&Aの主な目的は、運営店舗数の確保です。
完全成功報酬
M&Aが成立した場合のみ、譲渡対価に応じた手数料を頂戴します。
売主様は、ご成約まで費用負担なくスタートできます。
着手金・中間金
0円
月額報酬
0円
成功報酬
成約時のみ
※レーマン方式
居酒屋の譲渡を検討する経営者からのよくある質問
相談の場でよく挙がる疑問のうち、本文で触れきれなかったものにお答えします。
対象に含めるのが一般的です。商標を登録している場合は移転登録の手続が必要になります。レシピや仕込みの手順は、書面に落ちていないと引き継げません。現場では、味を決めている工程を文書化できているかを確認します。オーナー個人の感覚に依存した部分が多いほど、引継期間の設定が長くなりやすい傾向です。
一概には下がりません。深夜帯の売上を失っても、人件費と光熱費が減って利益率が改善している店もあります。譲受企業が見るのは、時間帯を戻せる余地があるかどうか。届出を出したままの状態か、取り下げているかで、再開までの手間が変わります。現場ではまず届出の現況を確かめます。
株式譲渡では会社に残るため、株価算定の中で評価されます。開栓済みや回転の悪い銘柄は、簿価どおりに見てもらえないことも。法人客のツケは、回収実績と滞留期間を見て評価を落とす場合があります。棚卸の基準と売掛の年齢表を先に整えておくと、交渉が長引きにくくなります。
可能ですが、事業譲渡になるため許可と届出の扱いが変わります。飲食店営業許可の地位承継は営業の全部譲渡が前提のため、一部譲渡では譲受企業側で新規申請が必要です。深夜酒類提供飲食店営業の届出も出し直しになります。みつきコンサルティングでは、居酒屋の切り出しを検討する段階から保健所や警察署への事前相談の順序を組み立てます。
まとめ|居酒屋の売却で押さえたい承継実務
酒場・ビヤホールの倒産が業態別で最も多い一方、立地と常連を抱えた居酒屋には譲受の引き合いが続いています。価格を左右するのは客単価やドリンク構成比といった収益の質、そして深夜酒類提供飲食店営業の届出をどう引き継ぐかという設計です。ひとりで抱え込むには重い判断ですが、順序を踏めば道は開けます。
みつきコンサルティングは、税理士法人グループの財務・税務に強いM&A仲介会社として、中小企業のM&A仲介の実績経験が豊富です。相談先選びに迷った段階でも構いません。居酒屋の会社売却なら、みつきコンサルティングへお気軽にご相談ください。
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著者

- 事業法人第三部長/M&A担当ディレクター
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宅食事業を共同経営者として立ち上げ、CFOとして従事。みつきコンサルティングでは、会計・法務・労務の知見を活かし、業界を問わず、事業承継型・救済型・カーブアウト・MBO等、様々なニーズに即した多数の支援実績を誇る。M&Aの成約実績多数、M&A仲介・助言の経験年数は10年以上
監修者 神門 剛 代表取締役 / 公認会計士・税理士
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