食材費と人件費の上昇が止まらず、店を畳むか譲るかで迷うオーナーが増えています。飲食業の譲渡は、店舗の屋号や味、長年通う常連客、そしてアルバイトを含む従業員の雇用をどう残すかが論点になりやすい分野です。本記事では、外食産業の再編動向、譲渡価格を押し上げるFL比率や店舗収益力の見方、飲食店営業許可やフランチャイズ契約の承継実務、そして焼肉チェーンの成約事例まで、譲渡オーナーと譲受企業の双方に役立つ視点を整理します。
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飲食業界で加速するM&Aの背景と再編のうねり
「うちのような小さな店に買い手なんて」と話すオーナーは少なくありません。実際の現場感覚は、その思い込みとは逆に動いています。
物価高と人手不足が押し上げる外食の再編圧力
外食の世界では、いま静かに事業の組み替えが進んでいます。食材・光熱費の高騰に加え、アルバイト時給の上昇で人件費が膨らみ、単独店では値上げに踏み切りにくい状況が続きます。帝国データバンクの調査では、飲食店の価格転嫁率は2024年7月時点で36.0%と全業種の44.9%を下回りました。コスト増を価格に乗せきれない構造が、規模を持つ企業の傘下に入るM&Aという選択を後押ししています。仲介各社を比べたい場合は、仲介一覧から比較するのも一つの方法です。
倒産の最多更新と後継者不在が生む譲渡ニーズ
厳しい数字も出ています。帝国データバンクによれば、2024年の飲食店の倒産は894件で過去最多を更新し、業態別では居酒屋が目立ちました。
ラーメン店の3割が赤字で、倒産が過去最多
2025年1月に帝国データバンクが公表した以下の「ラーメン店」の倒産動向では、ラーメン業態での競争激化が浮き彫りになっています。
赤字店が約3割
2023年度のラーメン店業績では、「赤字」が33.8%、「減益」が27.7%を占め、業績悪化が全体の61.5%に達しました。コロナ禍に次ぐ高水準で、主因は原材料費や人件費、光熱費の高騰に価格転嫁が追いつかないことです。特に原材料費は2024年平均で2022年比1割超増加し、豚肉や麺、具材の価格が軒並み上昇しています。しかし、ラーメンの平均価格は700円未満と安価なイメージが根強く、適正価格の設定が難しい状況が続いています。

倒産は過去最多を更新
2024年のラーメン店経営事業者の倒産件数は72件と過去最多を更新し、前年より3割以上増加しました。人件費や光熱費、原材料費の高騰に対し、価格転嫁が難しい状況が影響し、多くの店舗が閉店を余儀なくされました。

一方で、黒字のうちに店を次の担い手へ渡す動きも広がっています。経営者の高齢化が進む業界では、子に別の道を勧めるオーナーも多く、後継者不在を理由とした会社売却が現実的な出口になりつつあります。倒産で雇用と屋号を失うより、譲渡で残す判断は珍しくありません。
大手チェーンと投資ファンドによる譲受の活発化
買い手側の顔ぶれも変わってきました。日本フードサービス協会と食の安全・安心財団の推計では、2023年の外食産業市場規模は24兆1,512億円、前年比20.2%増と回復基調にあります。インバウンド需要を取り込む大手チェーンが異業態へ進出し、業務スーパーや精肉事業を持つ企業が居酒屋や焼肉店を取り込む例も見られます。投資ファンドが多店舗の運営基盤を束ねるプラットフォーム型の譲受も増え、譲渡オーナーから見た買い手の選択肢は確実に広がっています。
飲食店の譲渡で売り手・買い手が手にする利点と注意点
譲渡は売り手だけが身軽になる取引ではありません。買い手にとっても出店戦略を一気に進める手段となり、双方の思惑がかみ合って初めて成立します。
譲渡オーナーが得るものと向き合う負担
譲渡オーナーにとっての最大の魅力は、雇用と屋号を残しながら個人保証を外せる点にあります。一方で、味や接客の方針が変わる可能性や、譲渡後の引き継ぎ拘束といった負担も伴います。下表に譲渡オーナー側の主な利点と注意点をまとめました。
| 区分 | 譲渡オーナーのメリット | 譲渡オーナーのデメリット |
|---|---|---|
| 事業承継 | 後継者不在の解消 従業員の雇用と店舗を存続させたまま引退できる | 屋号・味の変化 運営方針が買い手側に寄り、看板メニューが変わることもある |
| 財務・保証 | 個人保証からの解放 金融機関との連帯保証を解除し、創業者利益を確保できる | 引き継ぎ拘束 一定期間の在籍やレシピ開示を求められる場合がある |
| 成長基盤 | 仕入のスケール享受 買い手の食材調達網に乗り、原価率の改善が見込める | 説明の負担 従業員や常連客への伝え方に神経を使う |
| 価格評価 | のれんの上乗せ ブランド力と店舗数次第で利益数年分が評価される | 精神的負担 DDや契約交渉で想定外の論点が出ることがある |
譲受企業が描く出店戦略と抱えるリスク
買い手から見れば、譲受は出店の時間とコストを大きく圧縮する手段です。立地と常連客、稼働中のスタッフを一括で取得できる魅力は大きい反面、簿外の労務債務や契約承継のリスクも背負います。下表に譲受企業側の利点と注意点を整理しました。
| 区分 | 譲受企業のメリット | 譲受企業のデメリット |
|---|---|---|
| 出店効率 | 時間とコストの圧縮 居抜きや既存店取得で開業期間を短縮できる | 労務債務 未払残業代や社会保険の未加入が潜むことがある |
| 資産取得 | 立地と顧客の獲得 常連客とスタッフを引き継ぎ、初日から売上が立つ | 契約承継 店舗賃貸借にチェンジオブコントロール条項がある場合がある |
| 事業拡大 | 業態の拡充 異業態を取り込みポートフォリオを広げられる | 属人性 味やオペレーションが個人技に依存し再現が難しい |
| 稼働率 | 仕入基盤の活用 セントラルキッチンや物流の稼働率を高められる | 本部承認 フランチャイズ加盟店では本部の同意が前提となる |
譲渡価格を押し上げるFL比率と店舗収益力の見方
価格の話になると、純資産だけで考えてしまう方がいます。飲食店の評価は、決算書の数字よりも店舗ごとの稼ぐ力に強く反応します。
中小飲食店で使われる年買法と株式評価の基本
中小の飲食店で最もよく使われるのが年買法(年倍法)です。時価純資産にのれんを加えて目安を出します。算式は「時価純資産+のれん」で、のれんは数年分の利益が一つの目安です。純資産が薄くても、安定した集客と店舗網があれば上乗せが見込めます。DCF法や類似会社比較法を併用する場面もありますが、まずは年買法で初期の相場感をつかむのが実務の入り口になります。
飲食店は他業種より投資額の回収期間が短い
飲食店は、一般的な譲渡価格の算定方法である
譲渡価格=時価ベースの純資産(資産-負債)+のれん(利益等の複数年分)
において、「のれん」部分の価値を見出しにくいことが多いです。例えば、1~2年分しか見れないようなことも珍しくありません。一般に、飲食店は、競合による参入障壁が低く、また流行があり、外部環境の変化も受けやすい特徴があります。そのため、いまは利益を十分に出していても、M&A後も安定的に出し続ける蓋然性が(他業種に比べると)乏しいと言わざるを得ません。もちろん、固定客が付いていて、安定的な利益を計上し続けている優良店であれば、十分なのれん価値を見出すことも可能です。
客単価・坪売上・FL比率が映す店舗の稼ぐ力
買い手が真っ先に見るのは、店舗が継続して利益を生むかどうかです。とりわけFL比率、つまり食材費と人件費の合計が売上に占める割合は収益力の要となります。一般に60%を一つの目安とし、これを下回る店は評価が伸びやすい傾向にあります。下表は譲渡前に押さえたい主要な指標です。
| 指標 | 何を映すか | 買い手の着眼点 |
|---|---|---|
| FL比率 | 食材費と人件費の重さ | 原価管理とシフト設計の巧拙 |
| 客単価 | 一人あたりの売上水準 | 値上げ余地と客層の安定度 |
| 坪売上 | 面積あたりの効率 | 家賃負担率との釣り合い |
| 既存店売上前年比 | 常連を維持できているか | 譲渡後も売上が続く確度 |
買い手が高く評価する立地と店舗賃貸借契約
意外と見落とされがちなのが、店舗賃貸借契約の中身です。好立地でも、定期借家で残存期間が短ければ評価は伸びにくく、逆に普通借家で長期に借りられる契約は強みになります。支援現場では、家賃負担率が坪売上に見合うか、原状回復や造作の扱いがどうなっているかを早い段階で確認します。立地と契約条件は、客単価や坪売上と並んで価格交渉の地力を決める要素となります。
飲食店営業許可とフランチャイズ契約の承継で押さえる実務
譲渡の成否は、価格よりむしろ承継の段取りでつまずくことがあります。飲食特有の許認可や契約は、スキームの選び方ひとつで引き継ぎ方が変わります。
飲食店営業許可と深夜酒類提供飲食店営業の届出
食品衛生法に基づく飲食店営業許可は、保健所に対して取得するものです。株式譲渡なら会社が許可主体のまま残るため、許可は包括的に引き継がれます。一方、事業譲渡や個人店の譲渡では、譲受側で許可の取り直しや食品衛生責任者の選任が必要になります。居酒屋など深夜に酒類を出す店では、警察署への深夜酒類提供飲食店営業の届出も承継論点となります。当社では、行政書士と連携し、許可と届出の引き継ぎ可否を初期段階で切り分けています。
フランチャイズ契約と店舗賃貸借の引き継ぎ
フランチャイズ加盟店の譲渡では、本部の同意が欠かせません。加盟契約の地位移転には本部承認が前提となり、承認が下りなければ取引そのものが止まります。同様に店舗賃貸借も、貸主の承諾やチェンジオブコントロール条項の有無を確認しないと、思わぬ解約リスクを抱えます。複数業態を運営する企業では、直営店とFC店で承継の手順が分かれる点に注意が必要です。
アルバイト労務と衛生管理に踏み込むデューデリジェンス
飲食のデューデリジェンスでは、財務だけでなく労務と衛生に焦点が当たります。アルバイトを多く抱える業態では、残業代の精算や社会保険の加入状況が簿外債務として表に出ることがあります。みつきコンサルティングでは、シフト管理の実態や衛生管理体制まで踏み込み、表明保証で守るべき範囲を譲渡オーナーと事前にすり合わせます。ここを曖昧にすると、契約直前に条件が揺れる原因になります。
飲食業界のM&Aの進め方
飲食の譲渡には、店舗視察や許認可の確認など、この業界ならではの工程があります。一般的なM&Aの手順とは異なる勘所を、段階を追って示します。
直営店とFC店、業態ごとに損益を切り分け、FL比率や坪売上を可視化します。不採算店を含めるか否かもこの段階で検討します。
※当社では、複数業態を運営する企業の店舗別損益の組み替えから支援します。
年買法を軸に時価純資産とのれんを試算し、ブランド力や店舗網の評価を反映します。
※当社は、最短1日で無料の株価算定の目安をお示しします。
同業チェーン、隣接業態、投資ファンドなど、店舗網のシナジーが見込める先を匿名情報で打診します。
※当社は、業務スーパーや精肉事業を持つ企業など、幅広い買い手網に当たります。
現場視察で衛生管理や接客、厨房動線を確認し、互いのカルチャーをすり合わせます。
※当社は、面談の論点設計から同席まで伴走します。
飲食店営業許可や賃貸借契約、アルバイト労務を中心にDDを進めます。
※当社では、想定外のDD論点が出ても譲渡オーナー側の精神的フォローを欠かしません。
表明保証や競業避止義務を調整し、許可と契約の承継を確認して決済します。
※当社は、弁護士とアドバイザーの連携を整え、契約直前の手戻りを防ぎます。
みつきコンサルティングが飲食業のM&Aで支持される理由
飲食の譲渡は、価格の妥当性と承継実務の両輪を回せる相手かどうかで結果が変わります。当社が選ばれる背景を三つの視点で示します。
税理士法人グループならではの株価算定と財務の知見
飲食店の評価は、のれんの織り込み方ひとつで金額が大きく動きます。当社が支援した焼肉チェーンの譲渡では、ブランド力と店舗数を踏まえ、利益数年分ののれんを反映した株価を提示できました。税理士法人グループとして財務・税務に強い体制を持ち、役員退職慰労金や譲渡益の手取りまで見据えた設計を行います。数字の根拠を丁寧に示せることが、譲渡オーナーの納得につながります。
飲食業界の固有事情に踏み込む伴走支援
飲食特有の論点を理解しているかどうかは、面談の最初の数分で伝わります。FL比率や店舗賃貸借、フランチャイズ契約の承継といった勘所を押さえ、買い手探索から契約交渉まで一貫して伴走します。M&Aが初めてのオーナーでも安心して進められるよう、M&A仲介の役割を一つずつ言葉にして共有します。完全成功報酬制で、相談から成約まで寄り添います。
完全成功報酬制の料金体系
着手金や中間金をいただかない完全成功報酬制を採用しています。料金の詳細は下記のブロックをご確認ください。
完全成功報酬
M&Aが成立した場合のみ、譲渡対価に応じた手数料を頂戴します。
売主様は、ご成約まで費用負担なくスタートできます。
着手金・中間金
0円
月額報酬
0円
成功報酬
成約時のみ
※レーマン方式
後継者不在の焼肉店が大手グループ入りで描いた譲渡事例
神奈川で焼肉店5店舗とモスのフランチャイズ4店舗を運営し、売上12億円を上げていた企業のオーナーは、娘に別の道を勧め、配偶者の体調もあって後継者不在に直面していました。雇用と屋号を守るため、譲渡という出口を選びます。

譲渡を決断した背景
当初は顧問税理士の紹介で大手仲介に相談していましたが、別の機会にみつきコンサルティングと出会います。会社の状況をじっくり聞き、飲食業界の固有事情に踏み込む姿勢が決断を後押ししました。
譲渡先選定と価格交渉の決め手
株価算定では、大手の提示より1億円以上高い金額が示されました。ブランド力と店舗数を踏まえ、利益5年分ののれんを織り込んだ評価でした。3社による入札を経て、業務スーパーや居酒屋FCを運営するパスポートを交渉相手に選びます。
譲渡後に広がった店舗展開
DDでの想定外の論点や契約条文の調整に苦労しつつも、クロージングは滞りなく完了しました。譲渡後は買い手の和牛仕入ノウハウを生かし、出店が再び動き出しています。
飲食業のM&Aでよくある質問
譲渡を具体的に考え始めたオーナーから、現場で実際に多い質問を取り上げます。
見つかります。現場では、立地や常連客、スタッフのまとまりを評価する買い手が一定数います。数百万円規模の小さな店でも、出店を急ぐチェーンにとっては魅力的な選択肢です。規模の小ささより、店舗が継続して利益を生む形になっているかを確認します。
条件次第で可能です。買い手の意向によりますが、地域に根づいた屋号やレシピを資産と見て、そのまま残す方針を取る企業もあります。譲渡前に、屋号の継続や味の維持を希望する旨を意向表明や契約条項に落とし込んでおくと、認識の食い違いを防げます。
のれんの源泉として評価されます。独自レシピや内製の仕込み体制は、他店が再現しにくい強みとなり、年買法でのれんの上乗せ要因になります。ただし属人的すぎる味は再現リスクと見られることもあり、マニュアル化の度合いが評価の分かれ目となります。
店舗賃貸借契約とFC契約の条件次第です。直営店なら事業譲渡で特定店舗のみを切り出す設計もできますが、賃貸借の貸主承諾やFC本部の同意が前提になります。採算店だけを残す再編か、全体譲渡かは、契約条項と金融機関の条件を見て判断します。
まとめ|飲食業のM&A・譲渡はみつきコンサルティングへ
飲食業の譲渡は、物価高と人手不足、後継者不在という外部環境のなかで現実的な出口になっています。価格はFL比率や坪売上、のれんで動き、承継は飲食店営業許可やフランチャイズ契約の段取りが鍵を握ります。雇用と屋号を残したいという思いに、納得できる評価で応えることが大切です。
みつきコンサルティングは、税理士法人グループのM&A仲介会社として中小企業M&Aの実績経験が豊富です。飲食特有の論点に踏み込みながら、相場感の確かな相談先選びを支えます。飲食業のM&Aなら、みつきコンサルティングへご相談ください。
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著者

- 事業法人第三部長/M&A担当ディレクター
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宅食事業を共同経営者として立ち上げ、CFOとして従事。みつきコンサルティングでは、会計・法務・労務の知見を活かし、業界を問わず、事業承継型・救済型・カーブアウト・MBO等、様々なニーズに即した多数の支援実績を誇る。M&Aの成約実績多数、M&A仲介・助言の経験年数は10年以上
監修者 神門 剛 代表取締役 / 公認会計士・税理士
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