株式譲渡で印紙は必要?金額・必要書類・手続を分かりやすく解説

株式譲渡には、さまざまな費用がかかります。複雑な手続きや必要な書類も多く、難しく感じる人もいるでしょう。本記事では、事業承継を考える経営者に向けて、株式譲渡における印紙の必要性や具体的な必要書類などについて解説します。

そもそも収入印紙とは

収入印紙は、税金や手数料の徴収を目的として、政府が発行する証票です。印紙税法で規定された課税文書を作成する際には、税金を支払う代わりに、収入印紙を貼ることが求められます。収入印紙はさまざまな文書に必要で、使用される文書は領収書や契約書、保険証券など20種類以上です。

また、収入印紙は手数料の支払いにも利用されており、例として、国家試験の受験手数料や訴訟費用などが挙げられます。「印紙」といえば、収入印紙のことを意味するのが一般的です。

株式譲渡契約書に「印紙」は基本的に不要

通常、株式譲渡の手続きでは、印紙は必要ありません。以前は、株式譲渡契約書に印紙を貼る必要がありましたが、1989年4月以降は印紙税の課税が廃止されました。そのため、基本的に、収入印紙は不要です。

なお、株式譲渡契約を電子契約で締結することは殆どありませんが、もしも電子契約で進める場合は、印紙税法上の「文書」が存在しないため、当然に印紙は不要になります。

株式譲渡で「印紙」が必要になる場合とは

株式譲渡契約書自体は原則として印紙税の課税対象ではありませんが、契約書の内容や性質によっては印紙が必要になる場合があります。例えば、以下のような場合です。

株式譲渡の対価の手付金等の前払があり、契約書に受領書の性質がある場合

    株式譲渡契約書自体は原則として印紙税の課税対象ではありませんが、契約書に売買代金の受取書としての性質が含まれる場合は、印紙税法上の第17号文書(売上代金に係る金銭または有価証券の受取書)に該当し、受取金額に応じて収入印紙の貼付が必要となります。実務的に殆どありませんが、もしも株式譲渡代金の手付金等の前払があり、それを受領した旨の記載が株式譲渡契約書にある場合が該当します。

    契約書が売買代金の受取書としての役割を兼ねている場合

      こちらも実務上は見かけませんが、もしも契約書が売買代金の受取書としての機能も果たしている場合、印紙税法上の第17号文書に該当するため、収入印紙の貼付が必要となります。

      印紙税額の一覧表

      国税庁のHPによると、株式譲渡契約書に印紙の添付が必要な場合の税額は、以下のとおりです。

      記載された受取金額必要な印紙税額
      5万円未満非課税
      5万円以上100万円以下200円
      100万円を超え200万円以下400円
      200万円を超え300万円以下600円
      300万円を超え500万円以下1千円
      500万円を超え1千万円以下2千円
      1千万円を超え2千万円以下4千円
      2千万円を超え3千万円以下6千円
      3千万円を超え5千万円以下1万円
      5千万円を超え1億円以下2万円
      1億円を超え2億円以下4万円
      2億円を超え3億円以下6万円
      3億円を超え5億円以下10万円
      5億円を超え10億円以下15万円
      10億円を超えるもの20万円
      受取金額の記載のないもの200円

      (非課税文書:1営業に関しないもの、2有価証券・預貯金証書など特定の文書に追記したもの)

      必要な収入印紙が貼られていない場合

      課税文書に収入印紙が貼られておらず、割り印も押されていない状態は、印紙税を滞納していることを意味します。この場合、本来の印紙税に2倍の金額が加わり、3倍の支払いが必要です。故意、過失に関わらず、収入印紙不足には留意しましょう。

      例えば、5000万円以下の契約書には2万円の印紙が必要です。収入印紙が貼られていなかったことによる過怠税は、2万円の印紙税に対して4万円となり、合計6万円の支払いが求められます。

      株式譲渡の手続に必要になる主な書類

      株式譲渡には、株式譲渡契約書以外にも多くの文書が必要です。ここでは、株式譲渡契約書を含め、株式譲渡に必要な主な文書について、概要を解説します。

      株式譲渡承認請求書

      株主が譲渡制限株式を譲渡する場合、株式の発行会社に株式譲渡の承認を受けなければなりません。そのための書類が株式譲渡承認請求書です。譲渡制限株式は、株式の発行会社が譲渡に制限を設けている株式です。株は基本的に自由に譲渡できますが、会社にとって望ましくない株主を避けるための措置として、譲渡制限株式があります。

      株式譲渡契約書

      株式譲渡契約書は、譲渡側と譲受側の双方の同意に基づく文書で、譲渡の条件や支払い方法が記載されます。また、譲渡金や譲渡手続きや名義書き換えなど、手続きの詳細な内容も含まれ、法的な拘束力があるため、違反したときは損害賠償の対象となります。

      株式名義書換請求書

      株式名義書換請求書は、株主が所有する株式の名義(所有者)を変更するための書類です。株主が株式を譲渡した際に、新しい所有者の情報を正確に記載する必要があります。通常、株式発行会社に対して提出され、株主情報の更新や登記が行われます。

      株主名簿

      株主名簿は会社が株主を管理する帳簿のことで、譲渡後に更新されます。譲受側は、名簿の更新による株主権利の主張が可能です。名簿には株主情報や取得日が記載され、法律で定められた情報を含みます。

      株主名簿記載事項証明書

      株主名簿記載事項証明書は、会社の株主であることを証明する書類です。株式譲渡後、新たな株主となった場合、一般的に株主名簿記載事項書換請求書を提出し、書き換えを確認するために株主名簿記載事項証明書を取得することがあります。

      株式譲渡をスムーズに進めるポイント

      ここでは、株式譲渡をスムーズに進めるポイントについて解説します。

      早めに準備を進める

      株式譲渡は、事業承継としては比較的手続きが簡単ですが、多くの工程を要するため、早めの準備が重要です。まずは、事業承継の方法と流れを理解し、必要な書類を準備しましょう。一般的に事業承継は、後継者の決定や引継ぎに時間がかかるため、余裕をもたせた準備期間が必要です。

      株主が分散している場合は委任状を取りつける

      株式譲渡は、オーナー経営者がすべての株式を保有していれば、簡潔に進められます。しかし、相続などで株主が分散して複数いる場合、オーナー経営者が代表して手続きを進めるために、他の株主から委任状を取り付けることが一般的です。オーナー経営者が、他の株主から株を譲り受けて株式譲渡の手続きを進める方法は、課税や株式譲渡の取り消しなどのリスクがあるため、避けましょう。

      株式譲渡は公的な手続きがないため慎重に確認する

      株式譲渡は公的な手続きが不要で、行政機関からのチェックも受けないため、手続きに不備がないか確認する必要があります。従って、株式譲渡をしたつもりでも、手続きの不備から無効にならないように、慎重な確認が重要です。

      株式譲渡での心配事は専門家に相談して解決

      株式譲渡は比較的進めやすい手続きといわれていますが、印紙の必要性や書類作成の注意点など、多くの懸念事項があります。曖昧な理解で行い、株式譲渡が適切に進められなかった場合、大きなリスクにつながるケースもあるのが実情です。このため、専門家に相談し、確実な方法で株式譲渡の手続きを進めましょう。

      株式譲渡と収入印紙のまとめ

      本記事では、株式譲渡での収入印紙の必要性や、手続きに必要な書類、株式譲渡をスムーズに進めるポイントを解説しました。株式譲渡における手続きや書類作成には、さまざまな注意点があります。適切な手続きを行うためにも、専門家への相談は重要です。

      みつきコンサルティングは、事業所内や親族内承継など、複数の選択肢の提案が可能です。また、税理士法人グループであり、経験豊富な経営コンサルタントも在籍しているため、詳細な事業分析からシナジー(相乗効果)創出の可能性まで、包括的なサポートを提供します。株式譲渡を検討する際には、ぜひご相談ください。

      著者

      西尾崇
      西尾崇事業法人第三部長
      宅食事業を共同経営者として立ち上げ、CFOとして従事。みつきコンサルティングでは、会計・法務・労務の知見を活かし、業界を問わず、事業承継型・救済型・カーブアウト・MBO等、様々なニーズに即した多数の支援実績を誇る。
      監修:みつき税理士法人

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