化粧品OEMの会社売却では、決算書の利益より先に、充填ラインの稼働余力、ODMで開発した処方の帰属、製造所ごとに置く責任技術者の後任が問われます。受託市場は上位10社で約6割を占め、中小OEMは原料・容器の調達難と人手不足を同時に抱えがち。後継者がいなくても、設備と顧客を守りながら譲る道はあります。譲受企業が見る指標、許可の扱い、財務再建を経た成約事例まで、判断材料をまとめました。
- 化粧品受託製造市場3,456億円、上位10社が6割を握る構図
- 財務再建から主要取引先の傘下へ、化粧品OEMトレミーの売却事例
- 責任技術者の後任と外国人材の受入れ枠、化粧品OEMが売却を考える理由
- 充填ラインの稼働率と上位顧客比率、化粧品OEMの譲渡価格を見る視点
- ODM処方と容器金型の帰属、取引基本契約で先に確かめること
- 化粧品製造業許可と製造販売元、株式譲渡と事業譲渡で違う扱い
- 化粧品OEMを売却するメリットと引き換えになるもの
- 化粧品OEMの買い手候補は同業だけではない
- 製造記録とPFHxS規制、化粧品OEMのデューデリジェンスで見られる論点
- 化粧品OEMの売却を検討する経営者からのよくある質問
- 化粧品OEMの処方・許可の承継と売却相談先選び
この記事は、化粧品や医薬部外品の受託製造を営み、会社の売却を考え始めたオーナー経営者に向けたものです。化粧品OEMの譲渡では、取引先から預かる容器金型や、ODMで提案した処方の線引きで話が止まりがち。工場に常駐させる責任技術者が社長本人、という会社も少なくありません。どこから固めれば価格と取引を守れるのか、順に見ていきます。
化粧品受託製造市場3,456億円、上位10社が6割を握る構図
化粧品OEMのM&Aが増えている背景には、市場の偏りがあります。数字と最近の案件から、中小OEMの立ち位置を見ておきましょう。
受託市場の規模と上位集中の実態
経済産業省の委託調査「化粧品におけるOEM/ODM/原料製造の市場動向及び今後の海外展開に係る調査」(2025年2月、有限責任あずさ監査法人)は、矢野経済研究所の推計を基に、国内の化粧品受託製造市場を2023年度で3,456億円と示しました。上位10社で約6割を占める一方、主力企業を含め非上場の中小・中堅が大半です。OEM/ODMの粗利は受託売上の約35%と推計され、設備と人材への再投資余力は大きくありません。
最大手とメークアップ大手の統合が示した方向
2024年6月、TOA(旧日本コルマー)を傘下に持つ日本コルマーホールディングスが、カーライルが運用するファンド等からトキワ・コスメティクス・グループの全株式を取得しました。取得金額は非開示。トキワはアイメイクやペンシルに強い国内大手で、2023年12月期の売上高は299億円です。スキンケア・ヘアケアに強いTOAとの品目補完が狙いとされ、中堅以下のOEMは「どの剤型で残るか」を強く問われる局面に入りました。
充填の専業や工場単体も譲渡の対象になっている
再編は大型案件に限りません。充填・包装を担う小規模な製造会社や、ブランド会社が持つ工場の資産そのものも、譲渡の対象として動いています。譲受側の狙いは、工程の内製化と生産能力の上積みにほぼ集約されるもの。下表は、公表資料で確認できる近年の化粧品OEM関連の案件を、時期・譲渡側・目的の3点で並べたものです。取得価額などは開示の範囲に限られる点を、読み方の前提としてください。
| 案件(譲受側×対象) | 公表・実行の時期 | 譲渡側と取得の形 | 目的・想定シナジー |
|---|---|---|---|
| 日本コルマーホールディングス×トキワ・コスメティクス・グループ | 2024年6月6日発表 | カーライルが運用するファンド等から全株式を取得 取得金額は非開示 | スキンケア・ヘアケアとアイメイク・ペンシルの品目補完 国内外の生産体制の強化 |
| ベイコスメティックス×合同会社sanpack | 2025年9月30日付で取得 | 大阪府岸和田市で化粧品・医薬部外品の製造を担う同社の出資者から全持分を取得 | 企画から製造・充填・包装までのグループ内一貫体制 大規模な製造釜の導入による大ロットのバルク製造 |
| 日本色材工業研究所×ハーバー小諸工場 | 2025年12月17日取締役会決議 取得日は2026年3月25日の予定と公表 | ハーバー株式会社から長野県小諸市の工場の土地・建物・機械設備等を6億5,000万円で取得 | 新たな生産拠点の確保による生産能力の拡大 |
表中のsanpackの案件は合同会社の持分を取得する形で、会社法上、持分の譲渡には定款に別の定めがない限り他の社員全員の承諾が要ります。日本色材工業研究所の案件は、法人ではなく工場の資産を買う形でした。何を渡すかで、許可の扱いや従業員の移り方は変わってきます。
▷関連:アパレル業界のM&A|ブランド価値と在庫リスクで考える譲渡事例
財務再建から主要取引先の傘下へ、化粧品OEMトレミーの売却事例
東京都で化粧品・医薬部外品の受託製造を営むトレミー(1983年設立、売上約10億円)の事例です。

売却に至るまでの背景
二代目体制で設備投資や海外進出が急速に進む一方、管理体制が追いつかず、営業赤字約2億円、債務超過約2億円、有利子負債約13億円に陥りました。2013年からみつきコンサルティングが再生支援に入り、3工場を1拠点に集約、合議制の経営と顧客別・アイテム別の原価管理を整えて黒字体質を取り戻しています。
主要取引先を譲受先に選んだ決め手
トレミーは、東証プライム上場のナックの子会社JIMOSが通信販売する主力製品の製造を、かねてより担っていました。この主要取引先への株式譲渡をみつきコンサルティングが提案。ナックは商品開発力の強化を、トレミーは製造技術を大きな事業基盤で生かす道を得られる組合せでした。
グループ入り後の歩み
2021年7月30日、約6年にわたり資本参加していたみつきファンド1号投資事業組合が全株式をナックへ譲渡し、トレミーはナックグループの一員として新たなスタートを切りました。
【インタビュー全文】債務超過から再生した化粧品OEMが上場企業グループ入りを選んだ経緯を読む
責任技術者の後任と外国人材の受入れ枠、化粧品OEMが売却を考える理由
受注は戻っているのに、なぜ今売却を考えるのか。相談の場で多いのは、人と調達にまつわる次の3つの事情です。
工場ごとに置く責任技術者が同じ世代に偏る
化粧品製造業許可は製造所ごとに与えられ、各製造所には責任技術者を常時置かなければなりません。資格は薬剤師のほか、薬学や化学の専門課程を修めた人、化学などの科目を修得したうえで製造業務に3年以上従事した人などに限られます。中小のOEMでは、創業期から工場を見てきた役員がこの役を兼ね、処方開発まで担っている例が目立ちます。親族に同じ資格者がおらず、事業承継の相手が見つからないという相談は珍しくない話です。
支援現場では、責任技術者を誰が引き継ぐかを初回面談の段階で聞き取ります。譲受企業から有資格者を出してもらうのか、社内の化学系出身者に実務年数を積ませて要件を満たすのかで、クロージング日の組み方が変わるためです。変更そのものは届出で対応できますが、工場に空白期間をつくらない段取りが欠かせません。
化粧品製造は外国人材の受入れ枠の外にある
前述の経済産業省委託調査は、化粧品OEM/ODMで人手不足が深刻化し、設備に余裕があっても受託できない状況が生じていると指摘しました。背景には、化粧品製造業が特定技能の対象外で、技能実習でも2号への移行対象職種に入っていなかった事情があります。2026年6月1日施行の経済産業省告示で工業製品製造業分野の受入れ対象は76の産業分類に広がったものの、化粧品製造業は含まれていません。充填・包装のパート確保は、地域の求人事情次第です。
原料と容器の調達で、単独の交渉力が試される
2026年2月末のホルムズ海峡封鎖以降、化粧品の受託製造では原料・資材の不足や価格高騰、納期遅れが広がりました。健康産業新聞が同年5〜6月に化粧品受託製造企業121社から得た回答では、上期の増収企業が60.6%あったものの、下期を「悪くなる」とみる声が増えています。容器や界面活性剤を大口で押さえられる大手グループと比べ、中小OEMは仕入先に待たされる側に回りがち。見積りの改定を顧客に何度も頼むことに疲れた、という声も届きます。
▷関連:小売業のM&A|EC化と店舗網再編が変える譲渡価格と成約事例
充填ラインの稼働率と上位顧客比率、化粧品OEMの譲渡価格を見る視点
売上が大きいほど高く売れる、とは限りません。受託製造では同じ売上でも中身の違いで評価が開き、売却相場の目安も幅を持ちます。
年買法で出す目安と化粧品OEMならではの時価修正
中小の化粧品OEMで最もよく使われるのが年買法(年倍法)です。算式は「時価純資産+のれん」で、のれんには数年分の利益をあてます。化粧品OEMで帳簿と実態がずれやすいのは棚卸資産と設備。顧客専用に刷った容器や化粧箱、使用期限が迫る原料は、帳簿価額のまま評価されることはまずありません。逆に償却を終えた乳化釜が現役で回っていれば、その稼働力は利益を通じてのれんの側に表れます。
譲受企業が値付けで確かめる指標
評価の差は、どの指標で利益の持続性を示せるかで生まれます。下表は、化粧品OEMの企業価値評価で譲受企業が確認を求めることの多い指標と、価格への効き方をまとめたものです。とくに上位顧客の売上構成比と自社処方の比率は、のれんを何年分とみるかの判断に直結します。数値は直近3期分を月次でそろえておくと、質問への回答が早まるはず。生産日報からの手集計でも十分に役立ちます。
| 指標 | 譲受企業が確認する中身 | 価格への効き方 |
|---|---|---|
| 充填ライン・製造釜の稼働率 | ライン別の稼働時間、段取り替えの回数、夜勤の有無 | 余力があれば譲受側の案件を載せられ、上乗せの材料になる |
| 上位顧客の売上構成比 | 上位1社・3社の比率、取引年数、契約期間 | 1社依存が強いと減額や成果連動の後払いの検討材料になる |
| 自社処方(ODM)の比率 | 受け処方と自社処方の内訳、処方の帰属条項 | 自社処方が多いほど顧客が離れにくく、のれんが厚くなる |
| 製造販売元を引き受けている品目数 | 届出品目の一覧と顧客ごとの内訳 | 株式譲渡なら継続、事業譲渡なら出し直しの工数として見られる |
| 原料・容器の価格改定の実績 | 直近2年の見積改定と顧客の受入れ状況 | 転嫁できていなければ利益の持続性に疑問符がつく |
| 責任技術者・処方担当の年齢構成 | 有資格者数、後任候補、退職予定 | 空白が出ると許可の維持と開発力に響く |
| 設備の年齢と更新計画 | 乳化釜・充填機・包装機の導入年、修繕履歴 | 更新時期が近いと設備投資として価格から差し引かれやすい |
当社では、化粧品OEMの株価を試算する際、顧客別・品目別の粗利を並べ、赤字品目を抱えたまま稼働率を保っていないかを先に点検します。稼働率が高くても、原料高を転嫁できていない品目が多ければ、のれんの年数は短く見積もられるためです。原価管理の仕組みが整っていない会社でも、受注台帳と原料の仕入単価から概算は組み立てられます。
時価純資産で減額されやすい資産
受託製造ならではの減額要因は、主に在庫と顧客からの預かり物に集中します。決算書に載っているのに価値が低いもの、載っていないのに責任だけを負っているもの。この2つを分けて把握しておくと、価格交渉の場で慌てずに済みます。譲受企業の財務デューデリジェンスでは、棚卸資産の一覧を品目単位で求められるのが通例。次の3つは、開示の前に台帳を整えておきたい項目にあたります。
顧客専用に刷った容器・化粧箱
顧客のロゴや法定表示を印刷済みの容器や化粧箱は、その顧客の発注がなければ転用できません。終売や処方変更で宙に浮いた資材が倉庫の奥に積まれている例は少なくないもの。引取り条項が契約にあるか、過去に顧客が引き取った実績があるかで、評価の扱いが変わります。
使用期限の近い原料とバルク
原料には使用期限があり、充填前のバルク(中身)にも保管期限を設けるのが一般的です。期限切れ間近の原料が大量に残っていれば、廃棄費用まで含めて減額されます。ロットごとの入庫日と期限を一覧にしておくと、議論はぐっと短くなります。
顧客から預かる支給品と金型
顧客から支給された容器や、顧客所有の金型は決算書に載りません。それでも保管中の破損や紛失は受託側の責任になり得るため、譲受企業は預かり台帳の有無を確認します。台帳がなければ、現物の棚卸しから始めることになります。
ODM処方と容器金型の帰属、取引基本契約で先に確かめること
「処方はうちが作ったもの」。そう思っていた社長が、契約書を読み返して言葉を失う場面があります。
受け処方とODM処方で変わる処方の持ち主
顧客が持ち込んだ処方で作る受け処方と、自社で開発して提案したODM処方では、処方の持ち主の考え方が異なります。ところが取引基本契約に、開発した処方の権利を委託者に帰属させる条項や、他社へ製造を移すときに処方を開示する条項が入っていることも。この種の条項があると、譲受企業は顧客がいつでも乗り換えられると読み、のれんを薄く見積もります。自社処方の比率が高いと言えるかどうかは、結局のところ契約の文言次第です。
チェンジ・オブ・コントロール条項と品質監査
株式譲渡なら契約の当事者は変わりませんが、支配株主が変わった時点で通知や承諾を求めるチェンジ・オブ・コントロール条項(COC条項)が入った契約も多いもの。大手ブランドとの取引では、株主の変更を機に工場監査をやり直す運用も見られます。監査で是正事項が出れば、クロージング後の設備投資として譲受企業の計算に入ってきます。承諾を得る順番と開示の範囲は、譲受企業と事前にすり合わせておきたい論点です。
品質の取決め書が生産移管の制約になる
顧客が製造販売業者として市場に出す製品では、製造を担うOEMとの間で、品質管理の役割分担を文書で取り決めておくのが一般的です。取決め書が古いまま更新されていない、担当者の異動で原本の所在が分からない、といった状態は意外と多い落とし穴。取決め書は再委託や試験の外部委託の可否も定めているため、譲受企業の工場へ一部の生産を移す構想がある場合、その条項が思わぬ制約になることも。
みつきコンサルティングの支援実績には、化粧品・医薬部外品のOEMメーカーが主要取引先のグループに入った案件があります。受託製造の案件では、取引先の顔ぶれそのものが譲受候補になり得るため、主要顧客の意向をどの段階で、誰から確かめるかを最初に設計します。顧客への説明を最後の通知で済ませる発想では、取引の継続を守りきれないことがあるからです。
化粧品製造業許可と製造販売元、株式譲渡と事業譲渡で違う扱い
許可を途切れさせずに譲りたいなら、選択肢はほぼ株式譲渡に絞られます。化粧品OEMの許可が、製造所と法人に結び付いているためです。
許可が製造所に付くことの意味
化粧品製造業許可は、中身の製造まで行える「一般」と、包装・表示・保管だけを行う区分に分かれ、いずれも製造所ごとに受ける許可です。株式譲渡であれば法人も製造所も変わらないため、許可はそのまま生き続けます。一方、事業譲渡で工場を移す場合、許可は引き継がれず、譲受企業がその製造所について許可を取り直すことになります。構造設備の基準への適合確認や実地調査が入るため、引渡し日から逆算した準備期間が欠かせません。
製造販売元を引き受けている品目の扱い
許可を持たない異業種やPBの顧客に代わり、OEMが自社の製造販売業許可で製品を市場に出していることがあります。パッケージに「製造販売元」として自社名が載る品目です。化粧品の製造販売届出には承継の制度がなく、事業譲渡では譲受企業が届出を出し直し、顧客の包材の表示も差し替えが必要に。顧客にとっては資材の刷り直しという実費を伴う話です。製造販売元の品目を多く抱えるOEMほど、株式譲渡を選ぶ理由がはっきりしてきます。
化粧品OEMを売却するメリットと引き換えになるもの
得るものと手放すものを、受託製造の現場に即して並べます。
譲渡オーナーから見たメリットとデメリット
化粧品OEMの会社売却で得られるものは、人材・調達・設備投資という単独では解きにくい課題への答えです。反対に、顧客との関係や経営の裁量には変化が避けられません。下表では、化粧品OEMの譲渡オーナーから相談の場でよく挙がる項目を6つずつ並べました。左右は対応関係ではなく、それぞれ独立した項目です。自社にとって重いのはどの項目か、優先順位をつける材料にしてください。
| 譲渡オーナーのメリット | 譲渡オーナーのデメリット |
|---|---|
| 責任技術者の後任を確保しやすい 譲受グループの有資格者や育成の仕組みで、製造所の許可を安定して保てる | 主要顧客の反応で条件が動く COC条項の承諾や工場監査のやり直しで、取引条件の見直しを求められ得る |
| 原料・容器の調達力が上がる グループの購買量を背景に、供給不安の局面でも仕入れの順番を確保しやすい | 処方と金型の線引きに手間がかかる 帰属が曖昧な処方や預かり金型があると、契約と台帳の整備に時間を取られる |
| 設備更新の資金を一社で背負わずに済む 乳化釜や充填機の更新を、グループの投資計画に乗せて進められる | 受注の優先順位が変わり得る 譲受側の案件が優先され、小口の既存顧客への対応が変わる懸念が残る |
| 処方開発力を生かす販路が広がる 譲受側の顧客や海外の取引先に、自社のODM提案を届けられる | 包材の表示差替えが発生する場合がある 社名変更や事業譲渡を伴うと、製造販売元の表示を顧客の資材ごと差し替える必要が出る |
| 借入と個人保証を整理できる 設備資金の借入に付いた社長の個人保証を、クロージングに合わせて外す交渉ができる | 経営の裁量が狭まる 設備投資や価格改定がグループの決裁に乗り、判断の速さが変わる |
| 従業員の雇用と技能が残る 熟練の調合担当や充填のパート人材が、職場を変えずに働き続けられる | 表明保証の責任が残る 譲渡後に品質事故や未払残業が判明すると、補償を求められる可能性がある |
デメリットを小さくする契約上の手当て
デメリットの多くは、最終契約の書き方ひとつで小さくできます。たとえば主要顧客との取引継続を譲受企業と共有の目標とし、COC条項の承諾取得を誰がいつ行うかを契約に書き込む方法。表明保証は、品質記録や労務の開示内容と結び付け、補償の上限と期間を区切るのが通例です。交渉に慣れた相談相手かどうかは、仲介会社の一覧で得意分野や体制を見比べておくと判断しやすくなります。
化粧品OEMの買い手候補は同業だけではない
同業大手に絞って探すと、相性のよい相手を見落としかねません。化粧品OEMの譲受企業には、少なくとも4つの入口があります。
同業OEMは剤型と拠点の補完を狙う
メークアップに強い会社がスキンケアの処方力を求める、関西の会社が関東の拠点を求める、といった補完関係が同業の動機です。TOAとトキワの統合も、スキンケア・ヘアケアとアイメイク・ペンシルという剤型の補完でした。中小同士でも、乳化品は得意だが粉体の打型設備がない、スティックの成型設備はあるが処方人材が足りない、といった凹凸が合えば話は進みます。顧客が重なる場合は、情報開示の順番に一層の注意が要ります。
委託元のブランド会社や通販会社が供給を押さえにくる
主要取引先そのものが譲受企業になる型も、化粧品OEMでは現実的な選択肢です。通販や自社ブランドを持つ会社にとって、主力品を作るOEMをグループに入れれば、供給の安定と処方ノウハウの内製化を同時に得られます。後述する成約事例も、この型にあたります。ただ他の顧客から見れば、競合の子会社に製造を任せることになり、取引が細るおそれも。顧客構成の偏り具合で、向き不向きが分かれるところです。
原料・容器側や投資ファンド、海外志向の事業会社
原料メーカーや容器メーカー、商社が、自社の素材を最終製品まで仕上げる出口としてOEMを求める例があり、資本業務提携から始める形もとられます。投資ファンドは、複数の中小OEMを束ねて規模を出す発想で動きます。経済産業省の化粧品産業競争力強化検討会は2026年3月の中間報告骨子で、日本ブランドの現地製造額を含む輸出額を2033年までに2兆円へ伸ばす目標を掲げました。海外向けの受託実績を持つOEMは、関心を集めやすい立場です。
化粧品OEMの打診先を選ぶとき、支援現場で最初に照らし合わせるのは、取引先リストと譲受候補の重なりです。主要顧客の競合にあたる会社へ先に声をかけると取引が揺らぎかねないため、候補を「顧客と重ならない同業」「顧客自身」「原料・容器側や異業種」に分けて順番を決めます。こうした打診順の設計は、M&A仲介に任せる価値が大きい部分です。
製造記録とPFHxS規制、化粧品OEMのデューデリジェンスで見られる論点
デューデリジェンスでは、工場を見る前にまず書類が並びます。化粧品OEMで質問が集中しやすいのは、品質の記録と原料の規制対応です。
製造記録と苦情・回収の履歴
譲受企業は、ロットごとの製造記録と試験記録がたどれるか、苦情の受付から原因調査までが記録として残っているかを見ていきます。業界の自主基準として採用されているISO 22716(化粧品GMP)に沿った運用ができていれば説明は楽になりますが、認証がなくても記録が揃っていれば問題視されにくいもの。過去の自主回収は隠さず、原因と再発防止策をセットで示すほうが信頼を得られます。表明保証の範囲も、ここでの開示内容で線が引かれます。
2026年のPFAS規制と原料の棚卸し
化審法の第一種特定化学物質にPFHxS関連物質117物質が追加指定され、2026年6月17日から製造・輸入・使用が原則禁止となりました。化粧品基準は第一種特定化学物質の配合を禁じているため、フッ素系の表面処理粉体など、該当しうる原料を使う処方の有無が確認されます。長鎖ペルフルオロカルボン酸(LC-PFCA)なども2026年11月22日施行予定で指定が進行中。原料メーカーの不使用証明を処方ごとに揃えておくと安心です。
完全成功報酬
M&Aが成立した場合のみ、譲渡対価に応じた手数料を頂戴します。
売主様は、ご成約まで費用負担なくスタートできます。
着手金・中間金
0円
月額報酬
0円
成功報酬
成約時のみ
※レーマン方式
化粧品OEMの売却を検討する経営者からのよくある質問
受託製造ならではの疑問を4つ取り上げます。
売れます。譲受企業の多くは自社で製造販売業許可を持つブランド会社や同業OEMで、求めているのは製造所の許可と技術、そして顧客です。包装・表示・保管の区分だけの会社でも、充填後の工程を内製化したい相手には魅力になります。現場ではまず、許可証の有効期間と直近の立入検査での指摘事項を確認します。
取引年数が長く、自社処方の品目が多ければ、候補探しは十分に可能です。ただし価格は、取引継続を条件にした後払い(アーンアウト)を組み合わせる形になりやすいもの。その顧客自身が譲受企業になる道もあります。契約条項と顧客の意向次第のため、みつきコンサルティングでは化粧品OEMの案件で打診の順番から一緒に組み立てます。
一概には言えません。生産能力の上積みを狙う譲受企業なら、遊休ラインは稼働余力として評価されることがあります。反対に、老朽化して修繕費がかさむ設備であれば、先に除却して決算書を軽くしたほうが説明はしやすくなります。設備台帳と修繕履歴を見てから判断する、というのが実務の答えです。
切り分けは可能です。ブランドの商標と在庫を別会社へ移して製造販売届出はそちらで出し直すか、OEM事業と一体で譲るかは、譲受企業の関心次第。ブランドが受託顧客と競合している場合は、切り分けたほうが双方の顧客に説明しやすくなります。会社分割か事業譲渡かで税金と手間が変わるため、グループの税理士と組んで比べます。
化粧品OEMの処方・許可の承継と売却相談先選び
化粧品OEMの会社売却では、充填ラインの稼働率や上位顧客の構成比に加え、ODM処方と金型の帰属、製造所ごとの許可と責任技術者の後任までが、評価と実行日の分かれ目。取引先への影響を思うと一歩を踏み出しにくいものですが、論点を先に洗い出せば、顧客と従業員を守る道筋は描けます。
みつきコンサルティングは税理士法人グループの財務・税務に強いM&A仲介会社で、中小企業のM&A仲介の実績経験が豊富です。受託製造の実務に即した株価算定と打診先の設計まで、相談先選びの段階から専門の担当者が伴走します。化粧品OEM業界の会社売却なら、みつきコンサルティングへ。
完全成功報酬のM&A仲介会社なら、みつきコンサルティングへ >
化粧品OEMの会社売却の関連コラム
著者

- 名古屋法人部長/M&A担当ディレクター
-
人材支援会社にて、海外人材の採用・紹介事業のチームを率いて新規開拓・人材開発に従事。みつきコンサルティングでは、強みを生かし人材会社・日本語学校等の案件を中心に工事業・広告・IT業など多種に渡る案件支援を行う。M&Aの成約実績多数、M&A仲介・助言の経験年数は10年以上
監修者 神門 剛 代表取締役 / 公認会計士・税理士
最近書いた記事
2026年9月28日化粧品OEMの売却|充填ラインと処方の帰属で差がつくM&A事例
2026年9月28日化粧品業界の売却|製造販売業許可の承継とブランド評価のM&A事例
2026年9月25日ファッション雑貨メーカーの会社売却|ファンとECが効くM&A評価
2026年9月25日下着メーカーの売却|カップ成型とSEKマークで問われるM&A譲渡価格










