持株会社のメリットとデメリット|ホールディングス設立の注意点

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持株会社(ホールディングス)とは

持株会社とは、他の会社の株式を所有することによって、その会社の事業活動を支配する会社のことを指します。そして、持株会社を設立して、その傘下に幾つかの会社を子会社としてぶら下げることを、「持株会社化」や「ホールディングス化」といいます。

持株会社は、「事業持株会社」と「純粋持株会社」の2つに分類されます。これら以外に、金融持株会社という銀行・証券会社・保険会社などの金融機関を傘下に持つ形態もあります。

純粋持株会社と事業持株会社の違い

事業持株会社とは

事業持株会社とは、子会社の株式を保有しながら、自社でも事業活動を行っている会社を指します。つまり、「事業と株式保有の両立」と言えば、事業持株会社のことで、同業種会社同士で事業を両立しています。1953年の独占禁止法の改正から認められており、「株式保有による完全子会社の支配」を主な事業とするのでなければ、他社株式保有の維持は基本的にO.K.となりました。

事業持株会社の特徴に、子会社と強固な関係で結ばれることが挙げられます。多くの場合、親会社が本業に専念し、新規事業や海外事業などを子会社が行うとするという役割分担はよく見られます。子会社の役員人事は親会社が担っていることも多く、グループとしての一体感は純粋持株会社より強いと言えます。

純粋持株会社とは

純粋持株会社とは、子会社の株式のみを保有することを目的として設立された会社です。自らは事業活動を行いません。単に「持株会社」と言った場合、純粋持株会社を指します。「ホールディングス」や「グループ」と社名についていることが多いです。 これらの会社は、グループ内の会社の経営を維持し、グループ全体の中枢を担っています。主な業務は、事業を担当しているグループ内各社の支配です。

純粋持株会社の特徴として、グループ全体の各会社の取りまとめを行い、子会社には事業活動の自由を認めている点にあります。つまり、純粋持株会社の子会社は、収益や実績で事業会社として評価されます。結果、グループとしての一体感は、事業持株会社より低いと言えます。1997年独占禁止法の改正により、日本でも認められるようになりました。

持株会社(ホールディングス)のメリット・デメリット

持株会社化することで、さまざまなメリットとデメリットがあります。

持株会社のメリット

まずはメリットを見ていきましょう。

経営権の集約

子会社化していないグループ会社の株式を持株会社が取得することで、持株会社を頂点とする資本支配に一元化されます。これにより、統一的なグループ会社運営がやり易くなります。また、持株会社の場合、株式を保有するのは持株会社のみとなり、結果、持株会社傘下の各子会社の株式が分散することを防ぐことできるようになります。

事業効率の改善

経営判断のうち重要な部分は持株会社が一括に引き受けることで、それぞれの事業子会社は日常業務の経営判断に集中できるため、スピーディーかつ柔軟に変化への対応が可能となります。また、各事業子会社では判断しづらかった、新規事業や将来有望事業への参入なども、持株会社による判断で行いやすくなります。資金面においては、グループ間での資金の融通など、経営における資金効率を高めることが可能です。

事業リスクの分散

事業リスクには、業績の低迷、製品の欠陥、行政による指導による許認可取消、個人情報の漏洩、自然災害や事故、SNS等での炎上など様々なものが考えられます。昨今では、インターネット上での情報拡散が大きな影響力を持つようになっています。たとえ誤った情報であっても、風評被害やブランドイメージの毀損といった実害が発生することがあります。

持株会社形態は、それを親会社としつつも複数の子会社でグループを形成する、いわば分社経営です。そのため、様々な事業リスクが、特定の一社に集中することはなく、複数の子会社にリスクを分散させることで、全体への影響を最小限に抑えることができます。問題が起きた法人のみ閉鎖や譲渡など、切り離しの際に速やかに実行できます。

リーダーや後継者の発掘・育成

持株会社の配下には複数の事業子会社が設置されます。ということは、その子会社の数だけ、社長や役員のポジションがあるということになります。これら子会社の社長・役員のなかに、次世代のリーダーが存在する可能性があります。あるいは、いまは存在していなくても、今後、「立場が人を作る、成長させる」効果を期待できます。一事業部での責任者と、法人の責任者という立場では大きく立場が異なるため、次世代リーダの成長に良い影響を与える可能性が高いです。

また、中小企業の事業承継において、現経営者が持株会社の社長をしつつ、後継者に子会社の社長をさせることも、次世代リーダーの育成と同じ文脈になります。後継者候補が複数いる場合には、それぞれに事業子会社の社長をさせ、経営力を比較してみることもできます。なお、一部の事業を親族で承継し、他の事業は譲渡(M&A)しても良いケースでも、持株会社形態であれば対応しやすくなります。

子会社ごとに人事制度を設計できる

事業や業種が違えば、忙しい時期や働き方のルールも変わってきます。しかし、一つの会社の中で、事業ごとに全く違う人事制度や労働条件を整えるのは簡単ではありません。 そこで、持株会社(ホールディングス)の体制にして事業ごとに子会社を分ければ、それぞれの会社が自分たちの事業に合った独自の人事制度を作れるようになります。 事業内容や仕事の種類に合わせた人事制度があれば、社員はより働きやすくなり、職場環境の改善につながります。結果として、社員の満足度も高まることが期待できます。

株価の引き下げによる事業承継の円滑化

事業承継において、自社株を譲渡や贈与・相続する際、株価が高いほど譲渡所得税や贈与税・相続税の負担が増加します。そのため、株価引下げ対策は中小企業では重要な役割を果たします。

この点、持株会社化のストラクチャーを工夫して、次の状況を合法的に創り出すことで、税務上の自社株評価を引き下げる、または今後の上昇を抑えることが可能になります。

  • 会社の規模を縮小する
  • 高評価の部門を子会社として分離する

節税効果

持株会社形態により、以下のような税務上のメリットが得られる可能性があります。

グループ通算制度の利用

グループ通算制度は、2022年4月1日に開始された新しい制度で、従来の連結納税制度に代わるものです。この制度は、親会社とその100%子会社の損益を通算できるため、グループ会社の一部が黒字、一部が赤字の場合、グループ全体の納税額を減らせます。

分社化による節税

個々には小さな節税額ですが、分社化するほど累積される効果は増えていきます。

  • 法人税の軽減が最大のメリットで、資本金1億円以下の中小企業では所得800万円以下の部分に15%の軽減税率が適用されます。例えば2,000万円の所得を持つ会社を1,000万円ずつ2社に分割すると、約100万円の節税効果が期待できます。
  • 消費税の免税も可能で、新設会社は資本金1,000万円未満であれば設立から2期間消費税が免除されます。売上1,000万円以下なら継続的に免税となり、年間約80万円の節税が可能です。
  • 交際費の損金算入枠も会社数分に増加し、各社年間800万円まで経費計上できます。事業税についても段階税率のため、所得分散により節税効果があります。

M&Aを円滑に進めやすくなる

M&Aで他の会社をグループに迎え入れる際、譲渡企業の従業員や取引先は、これからどうなるのかと不安に感じたり、反発したりすることが少なくありません。 そのため、M&Aがなかなか円滑に進まなかったり、譲渡企業の従業員が一度に辞めてしまったりするリスクがあります。 しかし、持株会社のグループに加わる形であれば、グループ内の会社同士は対等な関係に近く、それぞれが独立して事業を続けるため、譲受の後も働く環境に大きな変化が生じにくいです。 このことにより、従業員や取引先の気持ちの面での反発を和らげることができ、M&Aによる会社の譲受を円滑に進められる可能性があります。

反対に、グループ内の会社の業績が悪化したり、予期せぬ経営上のリスクが発生したりした場合には、その会社だけをグループから切り離し、円滑に譲渡することもできます。

持株会社のデメリット

持株会社には、注意すべき点もあります。

持株会社化する際の資金負担

経営者等の既存株主が持株会社に既存の事業会社の株式を譲渡すると、個人株主の場合には譲渡益に対して約20%の譲渡所得税が、法人株主の場合には通常の法人課税が発生します。

他方で、持株会社側は、子会社となる会社の株式の取得資金を用意しなければなりません。もっとも、資金支出を伴わない方法(会社分割、株式交換、株式移転)を採用する場合には、持株会社側の資金負担は不要で、既存株主側も一定の税務要件を満たせば課税が生じません。

バックオフィスのコスト増加

法人が増えるため、バックオフィスの人員削減ができず、コストが増加するリスクがあります。 経理や人事、総務などのバックオフィス部門は会社ごとに必要です。同グループ内とはいえ実質した別会社であるため、全てを削減するわけにはいきません。業務のスリム化や、コスト削減の努力が必要です。

持株会社化による効果が、バックオフィスコストを上回って得られるか、よく見極めましょう。

グループ内の会社同士で連携しにくくなる

持株会社のグループに入っている会社は、それぞれが独立した存在です。そのため、経営の方針も会社ごとにある程度は自由に決められる場合が多くなります。 各子会社の独立性が高すぎると、グループ内の会社同士の協力がうまくいかなくなるおそれがあります。その結果、グループ全体の利益を損なうような事態を招く可能性も考えられます。 それぞれの会社が自由に決められる範囲が大きくなりすぎると、親会社である持株会社がグループをまとめる力も弱まり、会社間の意思疎通が難しくなることもあります。 グループ全体をまとめつつ、各社の自主性も尊重するという、絶妙な力関係を保つことが経営上の難しい課題となります。

持株会社(ホールディングス)の設立方法

持株会社を設立する際には「株式移転方式」と「会社分割方式」があります。 既存の1つの事業会社を持株会社と事業会社の2つに分ける持株会社化において、実務上は、株式移転が使われることは余りなく、会社分割を用いることが多いです。

以下、それぞれの特徴を見ていきましょう。なお、既存の会社を持株会社の傘下に組み入れようとする場合には、株式の単純売買、株式交換という方式があります。

会社分割方式

会社分割方式とは、会社を複数の法人格に分割し、それぞれの法人格に資産・事業・債務を移転する組織再編行為の一つです。 つまり、自社を親会社として、新たに子会社を作ります。

営業部門を子会社として1つの会社に集約する場合や、一部事業を他社に譲渡する場合などに利用されます。純粋持株会社化においては、グループ内の組織再編に利用されることが多いです。

会社分割方式のメリット

株式を対価として実行ができるため、現金の手当てが要りません。また、債務や資産などの分割範囲の設定も可能です。一方で、株主にとっては、所有する株式に変更がないためメリットを感じにくいかもしれません。

会社分割方式のデメリット

会社分割に際し、一定以上の規模を分割する場合、株主の3分の2以上の同意を得るための臨時株主総会を開催しなければなりません。株式を対価として新会社に渡すため、株式価値評価も行う必要があります。株主総会開催も、株式価値評価も時間がかかるという点は注意が必要です。また、会社分割は、手続きが煩雑で、一定の費用が掛かってしまうことも注意が必要です。

なお、会社分割方式は、新しい会社が既存事業を引受ける「新設分割」と、既存会社が引受ける「吸収分割」があります。新設分割は、既存の会社に分割した事業を譲り渡す吸収分割とは異なり、新たに設立した会社が事業を引き受ける分割方式で、結果として株式を移転(交換)します。 吸収分割はさらに2つの手法に分かれ、「物的分割(分割型分割)」と「人的分割(分社型分割)」があります。

株式移転方式

株式移転方式は、既存会社が単独または複数で新たに会社を設立し、既存会社の持株会社とする方法です。 子会社が親会社を作り、自社株を100%維持させます。

株式移転方式のメリット

事業に必要な許認可がある場合において、許認可の移転手続きが不要で、既存会社の事業への影響が少ないというメリットがあります。また、会社分割方式に比べ、手続き面での負担が少なく、設立手続きが比較的スピーディーに行えます。

株式移転方式のデメリット

一方、資本金が増加することで、法人税の負担増や配当可能額が減少してしまうというデメリットもあります。

持株会社を設立する際の注意点

持株会社(ホールディングス)の設立を成功させるためには、事前にいくつかの重要な点を確認しておく必要があります。ここでは、中小企業のオーナー経営者様が知っておくべき注意点を紹介します。

設立方法を慎重に検討する

持株会社を設立するには、主に「株式移転」「会社分割」といった方法があります。どの方法を選択するかによって、必要な手続や税金の取扱いが変わるため、自社の状況に最も適した方法を慎重に選ぶことが重要です。それぞれの方法にはメリットとデメリットがあるため、専門家と相談しながら進めることをお勧めします。

法的なルールを正しく理解する

持株会社を設立することで、特定の市場で大きな影響力を持つことになる場合、独占禁止法に抵触しないか注意が必要です。場合によっては、公正取引委員会による審査が入ることもあります。自社が関連する市場の状況を分析し、法的な問題がないか事前に確認しましょう。

また、金融や放送など、特定の事業を行う会社を子会社にする場合は、それぞれの業種に特有の法律や規制があります。これらのルールもしっかりと理解しておく必要があります。

税金の取扱いを確認する

持株会社を設立すると、税金の面でメリットが生まれることがあります。例えば、子会社から受け取る配当金は、一定の条件を満たせば持株会社の利益に含めなくてもよい「受取配当金の益金不算入制度」というルールがあります。

一方で、税金の計算や申告が複雑になるという側面もあります。特に、子会社が利益を上げて法人税を支払った後、その残りの利益を持株会社へ配当し、持株会社がその配当金に対して再度法人税を支払うと、一つの利益に対して二重に課税されてしまう可能性があります。

このような複雑な税務に対応するため、グループ全体の税負担を軽減できる「グループ通算制度」の適用を検討することも一つの手です。税務に関する判断は専門的な知識が求められるため、必ず税理士などの専門家に相談し、万全の体制を整えましょう。

グループ全体の組織構造を設計する

持株会社を設立する際は、グループ全体の組織をどのように設計するかが成功のカギを握ります。単に事業部を別会社にするだけでは、十分な効果は得られません。

持株会社がグループ全体の経営戦略を立て、各子会社がそれぞれの事業に専念するといった役割分担を明確にすることが大切です。また、人事や経理、総務といった管理部門の機能を持株会社に集約させるのか、各子会社に残すのかといった点も検討が必要です。グループ全体として、一貫性のある効率的な組織を目指しましょう。

関係者への丁寧な説明を心掛ける

持株会社の設立は、会社の形を大きく変える重要な決断です。そのため、株主はもちろんのこと、従業員や取引先、金融機関といった関係者に対して、なぜ持株会社化するのか、その目的や今後の事業方針について丁寧に説明することが不可欠です。関係者の理解と協力を得ることが、円滑な移行と設立後の安定した経営につながります。

持株会社(ホールディングス)のまとめ

持株会社の仕組みは、経営資源の集約や事業のリスク分散を図ることができるメリットがある一方で、設立時のコストやバックオフィス維持コストの増加、グループへの求心力の低下などのデメリットもあります。持株会社のメリットを最大化させるためには、各会社がグループ全体の方針に協力する必要があると言えます。また、未上場の中堅企業において、後継者への事業承継のため、持株会社化を検討するケースがあります。 もし、事業承継でお悩みの場合は、一度、専門家に相談してみてはいかがでしょうか。

みつきコンサルティングは、税理士法人グループのM&A仲介会社として15年以上の業歴があり、中小企業M&Aに特化した経験実績が豊富なM&Aアドバイザーが多数在籍しています。みつき税理士法人と連携することにより、税務面や法律面のサポートもワンストップで対応可能ですので、M&Aをご検討の際は、成功するM&A仲介で実績のある、みつきコンサルティングにご相談ください。 

著者

野口慎矢
野口慎矢事業法人第四部長/M&A担当ディレクター
国内証券会社(現SMBC日興証券)にてクライアントの資産運用を支援。みつきコンサルティングでは、消費財・小売業界の企業に対してアドバイザリーを提供。事業承継案件のみならず、Tech系スタートアップへの支援も行う。M&Aの成約実績多数、M&A仲介・助言の経験年数は10年以上
監修:みつき税理士法人

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