―本日はご多用の中、インタビューにご協力いただきありがとうございます。まず、会社設立の経緯やこれまで大切にしてこられた企業理念についてお聞かせください。
こちらこそありがとうございます。約30年前にスタートし、お客様の課題や要望に真正面から向き合い、デザインという手段を通じて新たな提案を行うことに力を注いできました。ともすれば一過性の仕事で終わりがちな業界ですが、当社は常にクライアントと長期的な信頼関係を築くこと、そして社員一人ひとりの成長環境を整備することを大切にしてきました。
―業界の中で独自の強みは何だとお考えですか。
私たちはデザイン業界の中でも、単なる制作会社ではなく、課題解決型のコンサルティングファームとしての側面が強い会社だったと思います。例えば、クライアントの事業成長や市場の変化に合わせ、総合的なブランディング戦略を提案するケースが多く、ただのアウトプット提案にとどまりません。こうした姿勢が、リピートのご依頼や長期取引につながったと感じています。
―このタイミングで事業譲渡を検討された主な理由を教えてください。
正直に申し上げますと、私自身の年齢と、将来的な業界環境への不安を強く感じていたことが大きいです。娘は社内におりますが、まだ小さな子どもを持つ母親でもあり、会社の舵取りを任せるには時期尚早だと考えていました。また、デザイン業界において予測できない社会変動への対応や、今後の事業継続性にも不安があったため、専門家のサポートを得て新しいステージに進む決断をしました。
―実際にみつきコンサルティングへご相談されたきっかけや第一印象はいかがでしたか。
自宅に送られてきたダイレクトメールがきっかけでした。すでに他社へ相談はしていたものの、具体的な進展がなく、どこか行き詰まりを感じる中で、みつきコンサルティングにご連絡しました。最初のご訪問では、担当者が非常に誠実かつ的確にヒアリングしてくださり、「この会社なら一緒にやっていけそうだ」と信頼感を持ちました。
―他のM&A仲介会社との違いや、サービスに期待したポイントは何でしたか。
何社か相談しましたが、みつきコンサルティングは最初から“手続きを支援する”というより、“私の思いをくみ取った上で最適な選択肢を提案してくれる”という印象がありました。特に担当者が、家族や従業員への配慮など、表面上の話だけでなく私個人の心情まで深く寄り添ってサポートしてくださった点が、他社とは大きく異なっていたと感じます。
―譲渡までのプロセスでは、どのような苦労がありましたか。
まず株価算定の考え方や、利益・純資産の見方について、丁寧に説明いただいたものの、退職金の位置づけなど一部の条件について後になって誤解があったことは悩みの種でした。契約前後で打ち合わせの話が多少食い違い、進めていいかどうか迷う場面もありました。また、最初に買手候補への打診を早めに行ったことで、「これでよかったのだろうか」と後から考えることも多かったです。一筋縄ではいかない複雑さを感じました。
―特に意思決定や交渉の場面で印象的だったエピソードがあれば教えてください。
一度は有力候補企業との交渉が難航し、最終的にトップ同士のカルチャーが合わず白紙になったことがありました。その時は心理的にも負担が大きく、「本当に譲渡してよいのか」と気持ちが揺らぎましたが、担当者が一貫して私の本音に寄り添い、再検討の時間を与えてくれたことが心強かったです。
―買手候補選定において、重視された条件・ポイントはありますか。
印刷業界の企業は対象外にしたかった理由がありました。下請け色が強くなる、社員のモチベーションや採用にも影響がある等の懸念が強かったためです。一方、お客様との距離感や仕事の質を大切にする社風を尊重してくれる会社を希望していました。その中で、結果的にZ社が社風や経営方針の観点からも一番フィットする相手だと感じました。
―最初の買手候補への打診で感じた課題や、今振り返って思うことはありますか。
最初はどうしても「楽な買手」に条件を合わせ過ぎてしまい、時間をかけた選定を怠ったことは大きな反省点です。広い視野でじっくりマッチングプロセスを進める方が、より良い結果を導くと今なら思えます。途中で打診先を変えたり、当初候補を断念する局面もありましたが、担当者が関連手続きや心のケアも含めて粘り強く並走してくださいました。
―トップ面談やキーマン面談の場では、どんなことが印象に残っていましたか。
最終的な買手候補との面談は印象的でした。業界が近かったため話も弾み、お互いの経営観について率直な意見交換ができました。また、キーマン面談の際には、社内の主力スタッフが買手会社の方を“頼もしい上司”と評価し、今後のキャリア形成や成長機会を前向きに捉えてくれた点が嬉しかったです。
―M&Aの検討過程で一度検討自体を中断した理由や心理的な葛藤もあったかと思います。その時のご心境はいかがでしたか。
交渉が一度頓挫した時、またコロナ禍の不透明感も強まったタイミングで「自分自身が一旦退職し、一区切りつける」という選択を取りました。会社の後継体制と自分自身の今後の人生を重ね合わせ、冷静に判断する時間が必要だったのです。担当者が急かすことなく、私の内省や決意を尊重してくださったことに、今でも感謝しています。
―売却先にZ社を選ばれた決め手は何だったのでしょうか。
複数の候補の中で、やはり業界知識や実績、クリエイティブに対するリスペクトが伝わってきました。また、社内のキーマンたちが「ここなら新しいことに挑戦できる」と自ら前向きなリアクションを示してくれたのも大きかったです。みつきコンサルティングの担当の方ががたまたま買手会社の役員の方とつながりができたという運命的なタイミングもありました。縁を感じています。
―ファイナライズ、つまりクロージング直前にご不安やトラブル等はありませんでしたか。
一部、税制の優遇手続きに時間を要し、クロージング期日が多少後ろ倒しになりましたが、それ以外はトラブル無く、無事に最終譲渡まで進みました。大きな揉め事もなく進められたのも、担当者の調整力やサポートがあったからだと思います。
―M&Aを終えた今、どんなお気持ちでしょうか。
この決断を下すまで多くの悩みや葛藤がありましたが、今は大きな安堵感を覚えています。もちろん、事業を引き継ぐということは大きな責任を伴い、従業員やお客様への配慮が求められますが、新しい経営体制のもとで会社が持続的に発展していくことに大きな希望を持っています。
―みつきコンサルティング担当者とのやりとりで特に印象に残っている出来事、サポート内容などがあれば教えてください。
常に私たち売り手の気持ちや立場に立って、きめ細かいサポートをしていただきました。社内のドキュメントづくりから買手候補へのアプローチ方法、また交渉のポイントやリスク面についても、わかりやすい助言をいただけたので、安心感がありました。たとえ些細な不安でも受け止めてくださる、そうした安心感が心強かったです。
―家族や社員の方への配慮について、何か意識されたことはありますか。
娘や社員には、事前に率直な気持ちを伝え「自分の気持ちだけでなく、会社全体にとって最善の選択を探る」と繰り返し話し合いました。従業員には、それぞれのキャリアと生活がありますので、できるだけ影響を最小限にし、逆に今回のM&Aを成長のきっかけにしてもらいたい、そういう願いもありました。
―今後の売主様ご自身のご予定や、新しいチャレンジについてお考えがあれば、ぜひお聞かせください。
現在は、アドバイザーの立場で一定期間関わりつつ、徐々に第一線から離れる予定です。これまで蓄積してきた知見や人脈が、会社や業界の若い世代に役立つようサポートしていくつもりです。新たな人生設計に向けて、前向きな想いで歩み始めています。
―M&Aを成功に導くうえで、みつきコンサルティングに依頼して特に良かったと思う点とは何でしょうか。
専門知識だけでなく、物事を感情面も含めて総合的に見て助言してくれた点が一番大きかったです。担当者が「何を優先すべきか」を一緒に考えてくださり、冷静かつ柔軟に対応してくださったことで、不安が払拭されました。
―売却の道をこれから検討している経営者の方へ向け、今の自分から「当時の自分」へアドバイスするなら?
何よりも「ひとつの方法に固執しない」ことの大切さを伝えたいです。M&Aの過程では、状況や気持ちが目まぐるしく変わることも多いですが、悩みや課題があれば専門家と積極的に共有し、共に乗り越える姿勢が重要です。自分の直感や想いを信じることも、納得のいく選択につながると思います。
―最後に、今後のみつきコンサルティングへの期待や、読者へ伝えたいことがあればお願いします。
私も長年経営の世界に身を置きましたが、本音で語り合えるパートナーがいることは本当に心強いです。みつきコンサルティングの皆さんには、引き続き“人”に寄り添う支援を続けていただきたいと思います。読者の皆様にも、どんな悩みや課題でもまずは一歩、行動されることをお勧めします。