-本日は、C社様のM&A案件についてのインタビューにお時間をいただき、ありがとうございます。まずは、御社の事業概要と、M&Aを検討されるに至った経緯についてお聞かせください。
ありがとうございます。弊社C社は、編集プロダクションとして事業を展開してきました。主に出版社や企業のクライアント様向けに、書籍や雑誌、広報誌などの編集・制作を手がけてきました。私自身、元々は大手出版社で編集者として働いていましたが、独立して自分の理想とする編集の形を追求したいと思い、この会社を立ち上げました。
M&Aを検討するきっかけとなったのは、業界の変化への対応と今後の成長戦略を考えたときでした。ご存知の通り、出版業界は近年大きな変革期を迎えています。紙媒体からデジタルへの移行が急速に進む中、従来の編集スキルだけでは対応しきれない状況になってきました。そこで、ITやデジタルマーケティングの分野で強みを持つ企業とのシナジーを模索したいと考えたのです。
-なるほど、業界の変化に対応するための戦略的な判断だったのですね。御社の強みや、業界内でのポジショニングについて、もう少し詳しくお聞かせいただけますか?
はい。弊社の強みは、長年培ってきた編集力と、クライアントとの信頼関係です。特に、専門書や学術書の分野で、高度な知識を分かりやすく伝える編集技術に定評があります。また、企業の広報誌や社内報の制作では、クライアントの企業文化や価値観を深く理解した上で、効果的なメッセージを発信する能力が評価されてきました。
一方で、業界内でのポジショニングとしては、中堅の編集プロダクションという位置づけです。大手出版社の子会社や、大規模な制作会社と比べると規模は小さいですが、専門性の高い分野でのニッチトップを目指してきました。しかし、デジタル化の波が押し寄せる中、このポジショニングだけでは今後の成長に限界があると感じていたのです。
-M&Aのプロセスを開始されてから、最終的な譲渡先が決まるまでにはかなりの期間がかかったようですが、その間のご苦労や印象に残っているエピソードなどはありますか?
そうですね、実際のプロセスは2017年から始まり、最終的に譲渡が完了したのは2021年末でしたので、約4年半の期間を要しました。この間、いくつかの企業と交渉を重ねましたが、なかなか理想的な譲渡先が見つからず、一時は諦めかけたこともありました。
特に印象に残っているのは、ある大手企業グループとの交渉です。当初は前向きに進んでいたのですが、グループ内の出版社との協業を想定していたところ、その会社の社長との相性が良くないことが分かり、結局交渉が中断してしまいました。この経験から、単に事業シナジーだけでなく、経営者同士の相性や価値観の共有も重要だと痛感しました。
また、社内でのコミュニケーションにも苦心しました。M&Aの話を社員に伝えた際、最初は不安や動揺が広がりました。特に、長年一緒に仕事をしてきた幹部社員たちは、会社の将来や自分たちの立場について心配していました。彼らの不安を和らげ、新しい挑戦への期待に変えていくのに、かなりの時間と労力を要しました。
-確かに、経営者同士の相性や社内のコミュニケーションは非常に重要な要素ですね。その後、最終的にY社に譲渡されることになったわけですが、Y社を選ばれた理由はどのようなものだったのでしょうか?
Y社との出会いは、みつきコンサルティングさんからの紹介でした。以前の経験から、できればIT企業への譲渡を希望していたところ、Y社のニーズと弊社の希望がマッチしたんです。
最初の面談で、Y社の社長さんの人柄や経営理念に非常に共感しました。彼もクリエイティブな仕事に携わってきた経験があり、編集の価値や重要性をよく理解してくださっていました。また、弊社の強みである編集・制作の技術と、Y社のITやWebマーケティングの知見を組み合わせることで、新たな価値を生み出せると確信したんです。
さらに、弊社の社員たちの将来についても真剣に考えてくださる姿勢に、大きな信頼感を覚えました。「人材こそが最大の資産」という考え方を共有できたことが、最終的な決め手になったと言えるでしょう。
-社員の方々への配慮も重要な判断材料だったのですね。実際に、御社の社員の方々はこのM&Aについてどのような反応を示されましたか?
正直なところ、最初は社員たちも不安を感じていたようです。特に、長年一緒に仕事をしてきた幹部社員たちは、会社の将来や自分たちの立場について心配していました。そこで、みつきコンサルティングさんのアドバイスもあり、幹部社員との面談の機会を設けました。彼らの率直な意見を聞き、Y社との統合によるメリットを丁寧に説明しました。
また、Y社の幹部との面談も行い、お互いの強みや文化について理解を深める機会を作りました。特に印象的だったのは、Y社のクリエイティブディレクターと弊社の編集長が、お互いの仕事に対する情熱や価値観について熱く語り合う場面でした。この時、社員たちも「新しい可能性が広がるかもしれない」と前向きに捉え始めたように感じました。
結果的に、多くの社員が前向きに受け止めてくれ、新しい挑戦への期待も高まっていったと感じています。中には、デジタルスキルを学ぶ機会が増えることを楽しみにしている社員もいました。
-M&Aのプロセスの中で、デューデリジェンス(DD)も行われたと思いますが、このプロセスではどのような点に注意されましたか?
DDについては、私たちも初めての経験だったので、正直なところ不安もありました。しかし、Y社は非常に紳士的で、DDのプロセスも効率的に進めてくださいました。
具体的には、2日間にわたって現地実査が行われ、主に経理面のチェックが中心でした。私たちは、事前に必要な資料を整理し、できるだけ透明性の高い情報開示を心がけました。特に注意したのは、過去の取引や契約関係の整理です。長年の事業の中で、曖昧になっていた部分もあったので、それらを明確にする良い機会になりました。
また、DDの過程で指摘された点については、すぐに対応策を検討し、誠実に対応しました。例えば、一部の固定資産の評価方法について指摘を受けましたが、すぐに公認会計士に相談し、適切な処理方法を提案しました。
結果的に、大きな問題点は見つからず、むしろお互いの信頼関係を深める良い機会になったと感じています。Y社の経理担当者が、弊社の経理システムの効率性を評価してくれたことも嬉しかったですね。
-DDを通じて信頼関係が深まったというのは、素晴らしい結果ですね。最終的な譲渡条件の交渉では、どのような点が議論になりましたか?
譲渡条件の交渉では、主に株式の評価額と役員借入金の扱いが焦点になりました。弊社の財務状況を考慮すると、役員借入金の返済については慎重に協議しました。
みつきコンサルティングさんのアドバイスもあり、Win-Winの解決策を見出すことができました。これにより、私個人の負担も軽減され、心置きなく会社を譲渡することができたと感じています。
-みつきコンサルティングの支援について、どのような点が特に役立ちましたか?
みつきコンサルティングさんには、本当に感謝しています。特に印象に残っているのは、最初の買い手候補の選定から最後の条件交渉まで、一貫して私たちの立場に立って考えてくださったことです。
例えば、最初の買い手候補との交渉が上手くいかなかった時も、諦めずに新たな候補を探してくださいました。また、社員とのコミュニケーションの重要性を指摘してくださったのも、みつきコンサルティングさんでした。彼らのアドバイスがなければ、社内の不安や混乱をうまく管理できなかったかもしれません。
さらに、DDの準備や最終的な条件交渉においても、私たちの不安や疑問に丁寧に答えてくださり、常に最善の選択ができるようサポートしていただきました。特に、役員借入金の扱いについては、税務面も含めて最適な解決策を提案してくださり、大変助かりました。
プロフェッショナルとしての知識や経験はもちろんですが、人間味のある対応に非常に助けられました。時には厳しいアドバイスもありましたが、それが結果的に良い決断につながったと感じています。
-M&A後の協業について、どのようなシナジー効果を期待されていますか?
Y社との協業では、大きく3つのシナジー効果を期待しています。
まず1つ目は、デジタルコンテンツの強化です。弊社の編集力とY社のデジタル技術を組み合わせることで、より魅力的なデジタル書籍や電子雑誌の制作が可能になると考えています。例えば、インタラクティブな要素を取り入れた教育コンテンツの開発などを計画しています。
2つ目は、Webマーケティングとの融合です。Y社のSEOやコンテンツマーケティングのノウハウを活用することで、クライアント企業のWebサイトやブログの制作・運用サービスを強化できると考えています。実際に、M&A後すぐに共同プロジェクトを立ち上げ、大手メーカーのコーポレートサイトのリニューアルを手がけました。
3つ目は、新規事業の創出です。例えば、AIを活用した自動要約システムの開発や、VR技術を用いた新しい形の出版物の制作など、これまで単独では挑戦できなかった領域にも取り組んでいきたいと考えています。
これらのシナジー効果を通じて、従来の編集プロダクションの枠を超えた、新しい形のクリエイティブ企業として成長していけると確信しています。
-最後に、これからM&Aを検討される経営者の方々へ、アドバイスをいただけますか?
はい、私の経験から言えることは、まず自社の強みと弱みを正確に把握することが重要だということです。M&Aは単なる事業売却ではなく、自社の価値を最大化し、新たなステージに進むための手段だと捉えるべきです。
そして、単に会社を売却するのではなく、自社の事業をさらに成長させるためのパートナーを探すという視点を持つことが大切です。相手企業の財務状況だけでなく、経営理念や企業文化との親和性も重要な判断基準になります。
また、M&Aのプロセスは予想以上に時間がかかることもあるので、焦らず粘り強く取り組む姿勢が必要です。そして、社員とのコミュニケーションを大切にすることも忘れないでください。特に、幹部社員の理解と協力を得ることが、スムーズな譲渡につながります。
最後に、信頼できるアドバイザーを見つけることも成功の鍵だと思います。みつきコンサルティングさんのような、専門知識と経験豊富なアドバイザーのサポートがあれば、複雑なM&Aプロセスも乗り越えられると確信しています。彼らの客観的な視点や専門的なアドバイスは、感情的になりがちな局面でも冷静な判断を下すのに役立ちます。
-譲渡後の心境や新たな生活について、お聞かせいただけますか?
譲渡後は、正直なところ、安堵感と寂しさが入り混じった複雑な心境でした。長年間経営してきた会社を手放すことは、我が子を送り出すような気持ちでしたね。しかし同時に、会社の未来に希望を持てたことは大きな喜びでした。
新たな生活については、まず心身ともにリフレッシュする時間を持ちました。長年の経営者としてのストレスから解放され、久しぶりに自分の時間を持てたことは、とても貴重な経験でした。旅行に行ったり、趣味の読書に没頭したりと、これまでできなかったことを楽しんでいます。
また、Y社との統合後も、顧問として関わらせていただいています。若い世代の新しい発想や技術に触れる機会があり、それが私自身の学びにもなっています。特に、デジタル技術と編集の融合について、新しい可能性を感じています。
さらに、長年の経験を活かして、業界の後進育成にも力を入れたいと考えています。編集の技術や経営のノウハウを若い世代に伝えることで、業界全体の発展に貢献できればと思っています。
M&Aを経験したことで、ビジネスに対する視野が広がったと感じています。これからは、新たな挑戦や投資の機会も積極的に探っていきたいですね。例えば、スタートアップ企業への投資や、新しいビジネスモデルの構築など、これまでとは違った形で事業に関わっていくことも考えています。
最後に、この経験を通じて得た知見を、同じような状況にある中小企業の経営者の方々にも共有していきたいと思っています。M&Aは決して「終わり」ではなく、新たな始まりだということを、私の経験を通じて伝えていければと考えています。
-本日は貴重なお話をありがとうございました。御社の今後ますますのご発展を心よりお祈りしております。
こちらこそ、ありがとうございました。この経験を活かし、Y社との新たな挑戦を成功させていきたいと思います。また、私個人としても、これからの人生を豊かなものにしていきたいと考えています。本日はお時間をいただき、ありがとうございました。