- 本日は、みつきコンサルティングを通じてM&Aを成功させた売主様にお話を伺います。まずは、御社の事業内容と、経営者としてのこれまでの経験についてお聞かせください。
当社は、MRIやCTの画像データを活用した臨床開発を手掛けている企業です。医療技術の進歩とともに、画像解析の重要性が高まる中で、常に最先端の技術を追求してきました。特に、AI技術の発展により、より精密な画像解析が可能になり、臨床試験の効率化や精度向上に大きく貢献できるようになりました。
- 御社の業界における現状と将来展望についてはどのようにお考えですか?
医療画像解析の分野は、今後さらなる成長が見込まれます。特に、個別化医療の進展に伴い、画像データの重要性はますます高まっていくでしょう。また、5G通信の普及により、大容量の医療画像データをリアルタイムで送受信できるようになれば、遠隔医療の可能性も広がります。一方で、技術の進歩が速いため、常に最新の技術に追いつく必要があり、継続的な投資と人材育成が課題となっています。
- そのような中で、M&Aを検討されるきっかけについてお聞かせください。
当初は積極的にM&Aを考えていたわけではありませんでした。「良い相手がいれば」「良い条件であれば」というレベルでM&Aを検討し始めました。
- みつきコンサルティングとの出会いはどのようなものでしたか?
みつきコンサルティングからレターとお電話をいただき、その後私からメールで返信しました。M&Aの提案をいただいた時は、様子を見ながら進めていきたいと思っていました。正直なところ、当初はあまり積極的ではありませんでした。
- その後、M&Aを本格的に進めようと思われた理由は何でしょうか?
当社は非常にニッチな分野で収益性の高い事業を展開していましたが、ある取引先との契約更新とならず売上高の約20%が消失する見込みとなりました。これは当社にとって大きな打撃で、早急にM&Aを実行する必要性を感じました。また、業界の急速な技術革新に対応するためには、より大きな組織の一員となることが有効だと考えるようになりました。
- みつきコンサルティングの対応はいかがでしたか?
最初は正直、あまり積極的ではありませんでした。私の「同業NG」「シナジーが見込めるような大手希望」「経営権は譲りたくない」といった要望があったこともあり、定期的にご連絡いただきアドバイスをもらう程度の関係でした。しかし、業績悪化の危機に直面した際、担当者の方が迅速に対応してくれました。特に、野口部長のご提案によりにより、有力候補であったH社との交渉を継続できたことは大きかったです。
- 買収先を探す過程で、どのような企業と接触されましたか?
みつきコンサルティングから最初に提示されたのは同業のみのリストでしたが、私の希望で同業以外の企業リストを20社程提示してもらいました。その中から、総合商社、メーカー、金融大手、医療機器メーカーなどが候補として挙がりました。医療機器メーカーとは3回ほど面談を重ねましたが、最終的には技術の方向性の違いから見送りとなりました。最終的にはH社との交渉が本格化しました。
- H社との交渉はスムーズに進みましたか?
最初は順調に進んでいました。H社は医療分野への進出を図っており、当社の技術に興味を持ってくれました。しかし、売上2億円の消失という問題が発生し、一時は交渉を中止しようかと考えました。ですが、みつきコンサルティングの担当者の方々が粘り強く交渉を続けてくれ、最終的には良い条件で合意に至ることができました。
- 交渉の中で特に印象に残っていることはありますか?
H社のトップであるK社長との面談が印象的でした。当社の上場を目指して一緒に頑張りましょうというお言葉をいただき、取締役の方々の人柄にも好感が持てました。また、売上消失の問題があっても提携したいという強い意向を示してくれたことに、大変感銘を受けました。K社長の医療分野に対する熱意と、当社の技術を高く評価してくださったことが、私たちの決断を後押ししました。
- デューデリジェンス(DD)の過程で何か課題はありましたか?
DDは7月中旬から9月中旬にかけて行われましたが、当社の決算期が8月ということもあり、決算が確定していない状況でのDDとなりました。数字が固まっていない部分もあり難航しましたが、9月中旬に決算が確定し、無事DDを終えることができました。この過程で、私たちの会社の強みと弱みがより明確になり、今後の経営戦略を考える上でも非常に有益な経験となりました。
- 契約書の作成過程ではどのような点に注意されましたか?
H社側から、株主譲渡契約書、株式総数引受契約書、株主間協定書、資本業務提携に関する基本合意書という4つの構成で契約書を作成したいという提案がありました。私や取締役の表明保証が無限・無期限となっていた点が問題でしたが、みつきコンサルティングの助言もあり、譲渡対価を上限とし、役員任期を期限とする形に修正できました。この過程で、M&Aにおける法的側面の重要性を痛感しました。
- 最終的なクロージングまでの流れはスムーズでしたか?
個人株主が複数いたため、全員の同意を得るのに少し時間がかかりましたが、最終的にはクロージングに間に合いました。みつきコンサルティングが細かいスケジュール管理をしてくれたおかげで、大きな問題なく進めることができました。この過程で、株主一人一人と直接対話する機会があり、会社の歴史や彼らの思いを再確認できたことは、非常に意義深い経験となりました。
- H社とのM&A後の協業について、具体的にどのようなシナジーを想定されていますか?
H社は、幅広い医療機器や医療システムを展開しています。当社の画像解析技術を彼らの既存製品に組み込むことで、より高度な診断支援システムを開発できると考えています。例えば、H社の持つAI技術と当社の画像解析技術を組み合わせることで、がんの早期発見率を大幅に向上させる新しい診断システムの開発を計画しています。また、H社の持つ広範な販売網を活用することで、当社の技術をより多くの医療機関に提供できるようになると期待しています。
- M&Aを経験されて、どのような感想をお持ちですか?
正直、最初は不安も大きかったです。20年近く経営してきた会社の未来を他社に委ねることへの抵抗感もありました。しかし、H社という素晴らしいパートナーと出会え、当社の技術や事業を更に発展させる機会を得られたことを嬉しく思います。みつきコンサルティングの支援がなければ、ここまでスムーズには進まなかったでしょう。特に、業績悪化の危機に直面した際の迅速な対応には感謝しています。この経験を通じて、変化を恐れずに前に進むことの重要性を学びました。
- M&A後の新たな生活について、どのようなお考えをお持ちですか?
H社の傘下に入ったことで、私自身の役割も変わりました。以前は経営全般を見ていましたが、現在は技術開発により特化した役割を担っています。この変化は、私にとって新鮮で刺激的なものです。より大きな組織の一員となったことで、自分の専門性を深められる環境が整いました。また、個人的には、長年の緊張から解放され、趣味や家族との時間を持つ余裕ができました。これまでは会社のことで頭がいっぱいでしたが、今は人生の新たなステージに入ったような感覚です。
- 業界の将来展望について、改めてお聞かせください。
医療画像解析の分野は、今後ますます重要性を増すと考えています。特に、AIと5G技術の進歩により、リアルタイムでの高精度な診断支援が可能になると予想しています。また、個別化医療の進展に伴い、画像データと遺伝子情報を組み合わせた新たな診断手法も登場するでしょう。一方で、データセキュリティやプライバシー保護の問題も重要になってくると思います。H社との協業を通じて、これらの課題に取り組みながら、医療の質の向上に貢献していきたいと考えています。
- M&Aを通じて、経営者として学んだことはありますか?
M&Aのプロセスを通じて、自社の価値を客観的に見つめ直す機会を得ました。また、長期的な視点で経営を考えることの重要性を再認識しました。時には、自分の会社への愛着を脇に置いて、冷静に判断することも必要だと学びました。さらに、信頼できるアドバイザーの重要性も痛感しました。みつきコンサルティングの支援がなければ、このような大きな決断を下すことは難しかったでしょう。
- 最後に、これからM&Aを検討される経営者の方々へアドバイスをお願いします。
M&Aは会社の将来を左右する大きな決断です。最初から高い条件にこだわるのではなく、柔軟な姿勢で交渉に臨むことが大切だと感じました。また、信頼できるアドバイザーを見つけることも重要です。みつきコンサルティングのような経験豊富な専門家のサポートがあれば、複雑なプロセスも乗り越えられると思います。そして、相手企業とのシナジーや将来のビジョンの共有など、金銭面以外の要素も十分に検討することをお勧めします。最後に、自社の従業員のことを常に念頭に置き、彼らの将来も考慮に入れた決断をすることが重要だと思います。