システム開発および保守のM&A事例 【関東】

ITソフトウェア開発会社株式の譲渡を助言|D社さま

譲渡企業 D社さま
業種 システム開発および保守
事業内容 宿泊予約システムの開発、販売
売上 約10億円
地域 関東
設立 1980年
経営者の年齢 70歳
譲渡理由 後継者不在
譲受企業 Y社さま
業種 情報、通信業
事業内容 情報、通信業
売上 約6000億円
地域 関東
設立 1990年代
上場の有無 上場
譲受目的 事業領域の拡大

- 本日は、D社の売却についてお話を伺います。まず、御社の創業から現在に至るまでの経緯について教えていただけますでしょうか。

はい、ありがとうございます。D社は、私と妻で約30年前に創業しました。当初は小規模なシステム開発会社でしたが、観光業界向けの管理システムに特化することで、徐々に事業を拡大してきました。

創業当時を振り返ると、IT業界は今ほど成熟しておらず、多くの企業がシステム化の必要性を感じ始めた時期でした。私たちは、顧客の声に真摯に耳を傾け、ニーズに合わせたカスタマイズ性の高いシステムを提供することで、信頼を獲得していきました。

特に印象に残っているのは、大手企業から初めて大型案件を受注したときです。社員一丸となって昼夜を問わず開発に取り組み、無事に納品できたときの喜びは今でも鮮明に覚えています。この経験が、私たちの技術力と信頼性を市場に示す大きなターニングポイントとなりました。

- 素晴らしい歩みですね。御社の強みについて、もう少し詳しくお聞かせいただけますか?

私たちの最大の強みは、特定分野における専門性と、それを支えるシステム開発力です。長年の経験により、観光業界特有の課題やニーズを深く理解し、それに応える高品質なシステムを提供してきました。

また、顧客との長期的な関係構築も重要な強みです。単にシステムを納入して終わりではなく、導入後のサポートや継続的な改善提案を行うことで、多くの顧客と10年以上の取引関係を維持しています。この信頼関係が、安定的な収益基盤となっています。

さらに、社員の技術力と定着率の高さも自慢できる点です。社員教育に力を入れ、最新技術の習得を支援するとともに、働きやすい環境づくりに注力してきました。その結果、高い技術力を持つ社員が長期にわたって活躍してくれています。

- 御社の業界の動向や将来展望について、どのようにお考えですか?

私たちの業界は、デジタルトランスフォーメーション(DX)の波を受けて、大きな変革期を迎えています。従来型のオンプレミスシステムからクラウドベースのソリューションへの移行が加速しており、AIIoTの活用も進んでいます。

将来的には、単なる業務効率化だけでなく、データ分析や予測モデルを活用した戦略的な意思決定支援システムの需要が高まると予想しています。また、セキュリティの重要性がさらに増すでしょう。

一方で、技術の進化スピードが速く、常に最新の知識とスキルが求められる環境は、中小規模の企業にとっては大きな課題です。人材の確保や育成、研究開発投資の面で、大手企業との差が開いていく可能性を懸念していました。

このような状況下で、当社が今後も成長を続けるためには、より大きな経営資源を持つ企業とのアライアンスが不可欠だと考えるようになりました。それが、M&Aを検討するきっかけの一つとなったのです。

M&Aを決断される際に、どのような不安や懸念がありましたか?

最大の懸念は、私たちが長年かけて築き上げてきた企業文化や従業員の雇用が守られるかということでした。会社として、家族的な雰囲気を大切にしており、社員一人一人が会社の成長に貢献してきました。M&Aによってこの良好な関係性が崩れてしまうのではないかと心配でした。

また、顧客との信頼関係を損なわないか、私たちのビジョンや技術力が継承されるかという点も大きな懸念事項でした。長年にわたって築いてきた顧客との関係性は、当社の最大の資産の一つです。M&Aによって、サービスの質が低下したり、顧客対応が疎かになったりするのではないかと不安でした。

さらに、M&Aの手続きや評価額の算定など、未知の分野に踏み込むことへの不安もありました。経営者として日々の業務に追われる中で、複雑なM&Aプロセスを適切に進められるのか自信がありませんでした。

- そうした不安を抱えながら、みつきコンサルティングを選んでいただいた理由は何だったのでしょうか?

みつきコンサルティングを選んだ最大の理由は、IT業界、特に私たちのような特定分野に特化したシステム会社のM&Aに関する豊富な経験と実績です。初回の面談で、私たちの業界特有の課題や価値評価のポイントを的確に理解していることに驚きました。

また、担当者が私たちの想いをしっかりと受け止めてくれたことも大きな決め手となりました。単なる企業売却ではなく、会社の未来を託せる最適なパートナーを見つけたいという私たちの希望に真摯に耳を傾けてくれたのです。

さらに、M&Aのプロセスを丁寧に説明してくれ、不安を一つ一つ解消していく姿勢に信頼感を覚えました。特に、役員や顧客とのコミュニケーション方法について、具体的なアドバイスをくれたことは非常に心強かったです。

- 実際にM&Aを進めていく中で、みつきコンサルティングのサポートで特に印象に残っていることはありますか?

はい、いくつか印象深い点がありました。まず、買い手候補の選定プロセスが非常に丁寧だったことです。私たちの要望を細かくヒアリングし、それに合致する候補を複数社提示してくれました。単に財務的な観点だけでなく、企業文化や将来ビジョンの親和性まで考慮して候補を絞り込んでくれたことに感銘を受けました。

また、交渉の場面では、私たちの意向を尊重しながらも、客観的な視点で適切なアドバイスをくれました。例えば、譲渡価格の交渉では、市場の成長性を踏まえつつ、会社の価値を最大限に引き出す交渉をしてくれました。時には、私たちが気づかなかった当社の強みを指摘してくれ、それを交渉材料として活用できたこともありました。

さらに、デューデリジェンスの過程では、私たちが準備すべき資料や対応について的確なガイダンスをくれ、スムーズに進めることができました。特に、技術的な側面の評価において、当社の独自性や将来性を適切に伝えるためのアドバイスは非常に有益でした。

M&Aのプロセスを通じて、何か新たな発見や気づきはありましたか?

はい、いくつかの重要な気づきがありました。まず、自社の価値を客観的に見直す良い機会となりました。みつきコンサルティングの担当者と話し合うなかで、私たちが当たり前だと思っていた強みや独自性が、実は市場で高く評価されるものだと再認識できたのです。

例えば、私たちのシステムの柔軟性や、顧客ごとのカスタマイズ能力は、大手企業にはない強みとして評価されました。また、長年蓄積してきた業界知識やノウハウが、単なる技術力以上に価値があることを学びました。

さらに、M&Aは単なる企業の売買ではなく、互いの強みを活かしてシナジーを生み出す「パートナーシップ」だという考え方に気づかされました。この視点は、最適な買い手を選ぶ際に非常に重要でした。単に高い買収価格を提示する企業ではなく、私たちの技術力や顧客基盤を活かしつつ、新たな成長機会を提供してくれる企業を探すことができました。

また、従業員や顧客とのコミュニケーションの重要性も再認識しました。M&Aという大きな変化に対する不安を和らげ、前向きな姿勢を維持するためには、適切なタイミングでの情報共有が欠かせないことを学びました。特に、キーパーソンとなる従業員との個別面談や、主要顧客への丁寧な説明は、スムーズな移行に大きく貢献しました。

- 実際に買い手が決まった時のお気持ちはいかがでしたか?

正直なところ、安堵感と期待感、そして寂しさが入り混じった複雑な心境でした。長年育ててきた会社を手放すことへの寂しさはありましたが、それ以上に、D社の未来に対する大きな期待がありました。

パートナーとして決定したY社は、私たちの企業文化や従業員を尊重してくれる姿勢が明確で、かつ会社の技術力や顧客基盤を高く評価してくださいました。特に印象的だったのは、Y社の経営陣とビジョンを語り合った時です。会社の強みを活かしつつ、新たな市場に挑戦していくという具体的な成長戦略を共有でき、「Y社なら安心して会社を託せる」と確信しました。

また、Y社の持つ経営資源や販路を活用することで、会社がさらに飛躍できる可能性を感じました。例えば、海外展開や新規事業の立ち上げなど、私たちだけでは実現が難しかった目標にも挑戦できる道が開けたのです。

一方で、創業者としての役割が変わることへの不安もありました。しかし、Y社が私たちの経験とノウハウを尊重し、新体制でも重要な役割を任せてくださったことで、その不安は徐々に解消されていきました。

M&A成立後、実際にどのような変化がありましたか?

はい、いくつかの大きな変化がありました。まず、Y社のリソースを活用することで、新規プロジェクトへの挑戦が可能になりました。以前は規模的に手が出せなかった大型案件にも参画できるようになり、社員のモチベーションも上がっています。

具体的には、Y社の営業網を活用して、全国規模の大手企業との取引が増えました。また、Y社の技術開発部門と連携することで、AIやブロックチェーンなど最新技術を活用した新サービスの開発にも着手しています。

さらに、Y社のグローバルネットワークを通じて、海外展開の機会も生まれつつあります。現在、アジア市場向けに当社のシステムをローカライズするプロジェクトが進行中で、これは私たちだけでは実現が難しかった目標でしたので、非常に嬉しく思っています。

一方で、管理体制の強化や報告プロセスの変更など、大企業グループの一員となったことで生じた変化もあります。例えば、意思決定のプロセスが以前より複雑になり、スピード感が失われる場面もありました。しかし、Y社は私たちの自主性を尊重してくれており、会社の良さを失うことなく、新しい企業文化を築いていけていると感じています。

- 従業員の方々の反応はいかがでしたか?

当初は不安の声も聞かれましたが、丁寧な説明と対話を重ねることで、多くの従業員が前向きに受け止めてくれました。特に、キャリアパスの拡大や新たな挑戦の機会が増えたことを評価する声が多いですね。

例えば、Y社グループ内での人事交流が始まり、グローバルプロジェクトに参加する機会が生まれました。また、Y社の研修プログラムを利用して、最新技術やマネジメントスキルを学ぶ社員も増えています。

さらに、福利厚生の充実も従業員の満足度向上につながっています。例えば、育児・介護支援制度の拡充や、フレックスタイム制度の導入など、ワークライフバランスの改善につながる施策が実施されました。

もちろん、変化に戸惑う社員もいましたが、私たちと新しい経営陣が一丸となってサポートすることで、徐々に新体制に馴染んでいってくれています。特に、若手社員のなかで、大企業グループの一員となったことで自身のキャリアに新たな可能性を見出し、より積極的に業務に取り組むようになったものもいます。

- 顧客からの反応はどうでしたか?

顧客の皆様からは、概ね好意的な反応をいただいています。Y社グループの一員となったことで、会社の財務基盤や開発リソースが強化されたことを評価していただいています。

特に、長年のお付き合いのある顧客からは、「D社の良さを失わずに、さらに進化していってほしい」という励ましの言葉をいただきました。これは私たちにとって大きな励みになっています。

具体的には、大手企業の顧客から、より大規模なプロジェクトを任せていただけるようになりました。Y社の信用力と、私たちの専門性を組み合わせることで、新たなビジネスチャンスが生まれています。

一部の顧客からは、サービスの継続性や品質に関する懸念の声もありましたが、丁寧な説明と実際のサービス提供を通じて、むしろ以前以上に充実したサポートが可能になったことをご理解いただいています。例えば、24時間体制のサポート体制の構築や、より高度なセキュリティ対策の実施など、Y社のリソースを活用した新たなサービスの提供が、顧客満足度の向上につながっています。

M&Aを経験されて、経営者としての視点や考え方に変化はありましたか?

はい、大きな変化がありました。まず、「企業価値」という概念をより深く理解できるようになりました。財務的な側面だけでなく、人材や技術力、顧客との関係性など、無形資産の重要性を再認識しました。

例えば、私たちが長年かけて築いてきた顧客との信頼関係や、社員の技術力、業界内でのブランド力などが、実際の企業価値評価において大きな要素となることを実感しました。これらの無形資産を可視化し、適切に評価することの重要性を学びました。

また、長期的な視点で経営を考えることの大切さを学びました。日々の業務に追われがちでしたが、5年後、10年後のビジョンを明確に持ち、それに向けて戦略を立てることの重要性を実感しています。M&Aのプロセスを通じて、自社の将来像を具体的に描き、それを実現するための道筋を考える機会を得たことは、非常に貴重な経験となりました。

さらに、「協業」や「シナジー」の可能性を常に探る姿勢が身につきました。自社の強みを活かしつつ、他社とのコラボレーションによって新たな価値を生み出す機会を積極的に探るようになりました。Y社との統合後、グループ内の他社とも連携し、新たなサービスの開発や市場開拓に取り組んでいますが、このような発想は以前の私にはなかったものです。

M&A後の新たな生活について、どのような変化がありましたか?

M&A後の生活は、予想以上に充実したものになっています。まず、経営者としての責任は軽減されましたが、新たな役割として事業部門の責任者を任されました。これにより、より専門的な領域に集中できるようになり、自身の強みを最大限に活かせる環境が整いました。

また、以前は常に会社のことで頭がいっぱいでしたが、今はワークライフバランスを意識した生活を送れるようになりました。家族との時間が増え、趣味にも取り組めるようになったことは、私自身の人生の質を大きく向上させてくれました。

さらに、新たな学びの機会も増えました。Y社のグローバルな経営手法や、最新の技術トレンドに触れる機会が多くなり、経営者としての視野が大きく広がりました。この経験は、今後のキャリアにおいても大きな財産になると感じています。

一方で、創業者としての愛着から、時には口を出しすぎてしまうこともあります。新しい経営陣との関係性を築きながら、適切な距離感を保つことの難しさも感じています。しかし、これも新たな学びの機会だと前向きに捉えています。

- 最後に、M&Aを検討している経営者の方々へメッセージをお願いできますか?

はい。まず、M&Aは決して「会社を売り渡す」ということではなく、新たな成長の機会だと捉えることが大切だと思います。自社の未来を託せるパートナーを見つけることで、これまで以上の発展が可能になるのです。

また、プロセスを通じて、自社の強みや課題を客観的に見つめ直すことができます。これは、M&Aの成否に関わらず、経営者として非常に貴重な経験になると思います。私自身、このプロセスを通じて、自社の価値を再認識し、新たな可能性を見出すことができました。

そして、信頼できるアドバイザーを選ぶことが極めて重要です。みつきコンサルティングのような専門家のサポートがあることで、複雑なプロセスを乗り越え、最適な結果を導き出すことができました。経営者一人で抱え込まず、専門家の知見を積極的に活用することをお勧めします。

最後に、従業員や顧客との丁寧なコミュニケーションを忘れないでください。彼らの理解と支持があってこそ、M&Aの真の成功があると私は考えています。変化に対する不安や懸念は自然なものですが、オープンで誠実なコミュニケーションを通じて、多くの課題を乗り越えることができるはずです。

M&Aは確かに大きな決断ですが、それは同時に、自社と関わる全ての人々にとって新たな可能性を開く機会でもあります。慎重に、しかし前向きに検討されることをお勧めします。

- 大変貴重なお話をいただき、ありがとうございました。D社のさらなる発展を心よりお祈りしております。

           

この案件・類似案件の担当者

▷伊丹 宏久 事業法人第二部長


ヘルスケア分野に関わる経営支援会社を経て、みつきコンサルティングでは事業計画の策定、モニタリング支援事業に従事。運営するファンドでは、投資先の経営戦略の策定、組織改革等をハンズオンにて担当。東南アジアなど海外での業務経験から、クロスボーダー案件に関しても知見を有する。

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