プロラタ(方式)とは、複数の金融機関への借入返済額を、借入残高等に応じて比例的に計算する返済方式です。本記事では、プロラタ(プロラタ方式)の意味・種類や返済額の計算方法などについて詳しく解説します。
プロラタ(方式)とは
プロラタとは、「比例して按分できる」という意味の「proratable」に由来する言葉で、複数の金融機関から借り入れを行っている企業が、返済条件の変更をするうえで、借入金額に応じて返済額を決定する方式です。返済条件を変更することを「リスケジュール」と呼び、金融機関と合意のうえで、毎月の返済額を一定期間減額したり、返済期限を延長したりします。
プロラタ方式は、すべての金融機関に対して、変更後の返済条件が不公平にならないようにすることが主な目的となります。
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プロラタ(方式)の手順・流れ
はじめに、各金融機関の借入残高を確認します。借入残高と返済条件は、金融機関から発行される返済予定表で確認ができます。また、借入残高については、金融機関へ依頼して、残高証明を発行してもらい確認することもできます。
借入残高を確認できたら、各金融機関に対してプロラタ方式での返済に同意してもらう交渉を行います。この際、金融機関の対応に精通した弁護士やコンサルティング会社などに相談し、交渉のサポートをしてもらうと良いでしょう。
各金融機関とそれぞれ交渉をしながら、返済計画を調整していきます。返済計画を作成する際、合わせて事業計画を作成する必要がありますが、税理士や弁護士、コンサルタントのサポートを受けながら作成すると良いでしょう。
借入残高に応じた返済方法の他に、担保のない借入金を優先的に返済する方法などがありますが、それぞれの金融機関に対して不公平感がないように心掛けながら、交渉を進めていきます。
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借入返済計画への同意取付のポイント
過剰設備・過剰人員・売上低迷など、何らかの事情で一時的に借入金の返済が困難になることがあります。この場合、金利支払は継続しながら、月々のまたは年々の元金返済額を減額してもらう、あるいは一定期間は元金の返済を据え置いてもらう、といった金融支援を取引金融機関から取り付けるよう動くことがあります。
このとき、既存の約定返済の金額・返済時期にとられずに、新たな返済金額・返済時期を計画することを「リスケジュール」といいます。このリスケにおける返済金額を決める上では、プロラタ方式を用いることが通例です。
専門家に返済計算および交渉への同席を依頼する
交渉に先立って行うべき最初のステップは、借入残高の確認となりますが、税理士や公認会計士などの専門家に確認作業を依頼することで、より確実な情報が得られます。経営者にとって専門家の同席は下記のようなメリットもあります。
- 交渉力が向上し、精神的な余裕を得られる
- 本業に専念できる
- 金融機関にとっても、客観的な情報を提供できる
リスケジュールには全行一致が必要
金融機関との交渉の結果、プロラタ返済を実行してもらう場合、各金融機関に対して同時での開始が基本です。各金融機関に対して同時で実行されない場合、下記により、金融機関によって不公平感が発生します。
- リスケに応じる金融機関と応じない金融機関がある場合、リスケに応じない金融機関への返済の方が短期間で進むため、リスケに応じた金融機関は不利な状況になります。
- リスケが可能な金融機関は返済待ちとなるため、企業は預金残高を引き出してリスケできなかった金融機関への返済に充てることになります。
- この状況では、リスケに応じた金融機関の回収リスクが増大し、また不公平な状況が長期化すれば、プロラタ返済の実施が困難になる可能性があります。
そのため、不公平感を抑えるために全行一致を目指すことが重要です。
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プロラタ(方式)のメリット・デメリット
プロラタ方式を採用する際のメリットとデメリットをそれぞれ解説します。
メリット
プロラタ方式を採用するメリットは、以下のようなことが挙げられます。
借入額の割合に応じて返済額が決まるプロラタ方式の場合は、すべての金融機関に対して同時期に返済を完了することができます。そのため、金融機関は「返済が後回しにされるのではないか」という不安を抱くことなくなります。また、他の金融機関の動向も把握が容易になることも、金融機関にとって安心感を与えることにつながり、交渉を円滑に進めることができる可能性があります。
デメリット
一方で、プロラタ方式には以下のようなデメリットも存在します。
- 返済計画の調整を複数の金融機関と行わなければならず、手間がかかる。
- 一定の交渉力と専門知識が求められるため、専門家や仲介者の支援が必要となることがある。
- 全ての金融機関が一致して動かざるを得なくなる。例えば、追加の融資が必要になった際に、反対する金融機関が存在すると、実現が困難になる場合があります。また、各金融機関との取引内容が公開されることで、他の金融機関から敬遠される可能性もあります。
プロラタ方式を選択する際は、これらのメリット・デメリットを総合的に検討し、自社の経営状況や金融機関との関係性を考慮して判断することが重要です。
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2種類のプロラタ(方式)による返済額の計算
プロラタ方式には、返済額算定の考え方に応じて下記の2種類があります。
- 残高プロラタ
- 信用プロラタ
残高プロラタの計算方法
残高プロラタでは、各金融機関からの借入残高に基づいて返済額が決定されます。借入残高が多い金融機関の返済額が多く、借入残高が少ない金融機関の返済額が少なくなるため、返済方法が分かりやすくなります。プロラタ方式を実行する場合には、この残高プロラタが採用されることが多いです。
金融機関A | 金融機関B | 金融機関C | 合計 | |
---|---|---|---|---|
借入残高 | 500万円 | 300万円 | 200万円 | 1,000万円 |
借入残高に対する割合 | 50% | 30% | 20% | 100% |
月間返済額 (返済額に対する割合) | 5万円 (10万円×50%) | 3万円 (10万円×30%) | 2万円 (10万円×20%) | 10万円 |
信用プロラタの計算方法
信用プロラタは、各金融機関の借入残高から担保部分を差引いた、無担保部分の残高に基づいて返済額を決定する方式です。「無担保」とは、預金や不動産などの担保が提供されていない状態を指し、債権回収の保証がない状況を意味します。
信用プロラタの場合、取得している担保が多い金融機関ほど無担保の残高が少なくなり、ついては返済金額が少なくなることから、担保を持っている金融機関にとっては不利になります。一方で、担保を持っていない金融機関にとっては、残高プロラタより信用プロラタの方が有利になります。
金融機関A | 金融機関B | 金融機関C | 合計 | |
---|---|---|---|---|
借入残高 | 500万円 | 300万円 | 200万円 | 1,000万円 |
担保額 | 300万円 | 100万円 | 100万円 | 500万円 |
借入残高のうち無担保額 | 200万円 | 200万円 | 100万円 | 500万円 |
借入残高に対する割合 | 40% | 40% | 20% | 100% |
月間の返済額 (返済額に対する割合) | 4万円 (10万円×40%) | 4万円 (10万円×40%) | 2万円 (10万円×20%) | 10万円 |
プロラタ(方式)計算のまとめ
本記事では、プロラタ方式の概要や返済計算方法について解説しました。企業経営において資金調達が不可欠であり、複数の金融機関からの借入が求められることがあります。
- 借入を行う企業側もプロラタ方式の特徴を理解することで、最大限に活用可能です。
- M&Aや事業拡大など資金が必要な際には、プロラタ方式を選択肢の一つとして検討することをお勧めします。
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著者
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宅食事業を共同経営者として立ち上げ、CFOとして従事。みつきコンサルティングでは、会計・法務・労務の知見を活かし、業界を問わず、事業承継型・救済型・カーブアウト・MBO等、様々なニーズに即した多数の支援実績を誇る。
監修:みつき税理士法人
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