YouTubeチャンネルの収益化が成功し、売却を考慮される方は多くいらっしゃいます。ただし、チャンネルの売却方法や相場を十分に把握していない方も多いでしょう。この記事では、YouTubeチャンネルの売却方法や相場などについて詳しく解説いたします。
YouTubeチャンネルの売却は規約違反なのか?
YouTubeアカウントのM&Aは規約違反である、という噂を聞いたことがある方もいらっしゃるでしょう。
結論からお話しすると、現行のYouTubeの利用規約において、YouTubeチャンネルの譲渡は許容されています。
その根拠として、YouTubeの公式ヘルプセンターには以下のような記載があります。
- ブランドアカウントでチャンネルの所有者と管理者を変更する方法
- YouTubeチャンネルを別のアカウントに移行する方法
- チャンネルの所有権を譲渡した後のレポート作成に関する変更
- 所有権譲渡リクエストの解決
YouTubeアカウントのM&Aが完全に禁止されていたら、YouTubeの公式がこのような手順を公開してはいけません。したがって、YouTubeアカウントのM&Aは許可されています。
ではなぜ、YouTubeアカウントのM&Aが規約違反だという噂が広まっているのでしょうか。理由は、YouTubeの利用規約に「商用利用不可」の記述があるため、YouTubeチャンネルを事業として譲渡することが商用利用に該当するのではないかという議論がされているからです。
しかし、YouTubeの公式ヘルプセンターには、前述したようにチャンネル所有者の譲渡に関する記述があるため、チャンネルの譲渡に関しては禁止されていません。「商用利用不可」という文言は、視聴者から不当に金銭を得るような行為を指しており、YouTubeアカウントの譲渡はこの範疇には含まれません。
この記事では、YouTubeチャンネルの売却方法について詳しく説明し、売却相場や注意点なども解説します。どうぞお役立て下さい。
▷関連:M&Aとは|2024年も増加!目的・メリット・流れ・方法を解説
YouTubeチャンネル購入時のメリット・デメリットを検討
YouTubeチャンネルを購入するメリット
- 開始時点から収益化が可能
- 既存のチャンネル登録者を引き継ぐことができる
- 前の運営者から運営ノウハウを共有してもらえる可能性がある
YouTubeは収益化へのハードルが高いため、収益化済みのアカウントで開始できるのは大変有利です。また、既存のチャンネル登録者を引き継げることで、新規で登録者数を増やす努力を軽減できます。アカウントの認知(チャンネル登録者数、お気に入り数)は一朝一夕に出来るものではなく、数年単位の時間を要します。さらに、運営者から運営ノウハウを共有してもらえる可能性もあり、スムーズな運営開始が望めます。既存コンテンツを買い取る事により、その続編のアップロードなど新規創出をする手間も省くことが出来ます。
YouTubeチャンネルを購入するデメリット
- チャンネルの方向性を変更しにくい
- 公開済み動画の確認に時間がかかる
- チャンネル登録者数が急激に減少するリスクがある
既に運営されているチャンネルを購入した場合、方向性の変更は難しいです。視聴者がすでに存在するチャンネルでは、動画の方向性を変更するとファンが離れることもあります。また、公開済みの動画をチェックし、必要があれば再撮影や再アップロードを行う手間が生じます。公開済み動画に規約違反の内容が含まれている場合、トラブルに発展する可能性もあります。さらに、運営者が交代することで固定ファンが離れる可能性があり、チャンネル登録者数が減少するリスクも考慮しなければなりません。チャンネルを購入した場合、既存の方針にある程度沿った形で運営されることが望ましいといえます。
▷関連:企業価値評価|M&Aでの流れ・上場企業との違い・算出方法を解説
YouTubeチャンネルを高額で売却する方法
大切に育てたYouTubeチャンネルを売却する際、できるだけ高価に売りたいと考えられるでしょう。以下の3つの方法で、高く売却することができます。
- 収益性の高いチャンネルを売却する
- 広告収入以外の収益化手法を提案する
- M&Aサイトを利用する
収益性の高いチャンネルを売却することで、購入者も納得感のある金額での取引が可能です。
また、広告収入だけでなく、他の収益化方法を提示することで、購入者にとって魅力的なチャンネルになるでしょう。
M&Aサイトを利用することで、競争原理が働き、適正価格での売却が期待できます。当たり前のことですが、交渉相手先によって評価が大きく異なることにも注意しましょう。例えば、多くの子供が登録しているチャンネルの場合、子供向けの玩具メーカーが引き受け自社のセールスプロモーションに活用する事も想定されます。そのようなシナジー効果がある先に売却することにより、高い評価を得ることが出来ます。
高い収益性を持つチャンネルの売却価格の相場
YouTubeチャンネルの売却価格は、直近6か月~1年間の平均収益×10~15か月分という形で決まります。そのため、収益性が高いチャンネルほど高額で売却することが可能です。
過去に育ててきたチャンネルの中で収益性が高く、手放しても問題ないと判断できるチャンネルの売却を検討してみましょう。また、これからチャンネル登録者数や再生回数を増やして、直近6か月~1年間の平均収益を上げた後に売却する方法も選択肢となりえます。再生数やチャンネル評価による収益は、運営側の方針転換で変動する事もあります。基本的には収益減少傾向ですので、トレンドとしては早いうちに売却された方が高額で譲渡できる可能性が高いといえるでしょう。
広告収入以外の収益化方法をアピールする
YouTubeチャンネルの主な収益は、広告収入ですが、企業がYouTubeチャンネルを運営する場合、自社の商品やサービスの販売、アフィリエイト広告などを活用し、さらなる収益を上げることも少なくありません。
広告収入以外の収益化方法が存在する場合、相場よりも高額で売却できる可能性があります。そのため、広告収入以外の収益化方法があることを、譲渡先に伝えることが重要です。その際、譲渡先としてはチャンネルの顧客層(登録者数、視聴者層)をもって評価をするので、自身のチャンネルがどのような顧客層なのかを理解しておくことが重要です。
M&Aサイトを活用する
インターネット上には、YouTubeチャンネルのM&Aサイトが存在します。これらのサイトを利用することで、売却手続きをスムーズに進めることができます。
▷関連:M&Aの相談先は誰がよい?相談先一覧とメリット・デメリットを解説
YouTubeチャンネル売却で人気のジャンル3選
チャンネルを買い取る人は、購入後もチャンネルを継続して運営できるかどうかが最も重要な懸念事項です。また、動画編集スキルは一朝一夕に身につくものではないため、これも懸念ポイントです。
買い手にとっての悩みを解消できるチャンネルが人気の傾向にあります。ここでは、実際の取引で人気のあるYouTubeチャンネルジャンルを3つ紹介します。
切り抜きチャンネル
切り抜きチャンネルとは、配信者の長い配信を短く編集し、字幕などを付け加えることによって生まれるコンテンツです。これらのチャンネルは、YouTubeチャンネル売買で非常に人気があります。
切り抜きチャンネルの人気の理由は:
- 元の配信者が提供するコンテンツを編集することで、ネタ切れの心配が少ない
- 運営が比較的容易であること
- 動画編集自体が通常の動画より容易でスマートフォンでも編集可能
- 他チャンネルを開設する際も、ノウハウが流用しやすい
が挙げられます。
しかし、最近は切り抜き動画チャンネルの数が増えており、配信者本人の人気だけでなく、切り抜きチャンネル自体の人気も向上させる必要があると言えます。
読み物系チャンネル
インターネットの掲示板上で見られる会話や、X(旧:Twitter)上の意見を編集しまとめた「まとめ系コンテンツ」は、多くの人々に支持されています。
このジャンルは、既存のコンテンツを要約する形で作成されるため、切り抜きと同様に、まとめサイトでの閲覧数やX(旧:Twitter)上での反応を参考にすれば、そのコンテンツがどれだけ人気があるかをある程度予測することが可能です。一方で、既に掲示板やSNSなどで情報を得ている層が一定数要るため、動画まで流れてくる人数は必然的に少なくなります。
このジャンルは配信者自身の人気に影響されることがなく、切り抜きよりも安定して動画を作成できるというメリットがあります。
ただし、切り抜きに比べると作業量が増えるため、手間がかかる面もありますが、題材が豊富なため、運営しやすいジャンルであると言えます。
解説チャンネル
さまざまなトピックに関する解説動画が人気の「解説チャンネル」です。題材は、時事ネタや都市伝説、アニメ・マンガの考察など多岐にわたります。このジャンルは、まとめコンテンツのメリットに加え、題材によっては視聴数が急激に増えることも期待できます。
ただし、まとめ系と同様に作業量が多くなることがあり、さらに該当分野に関する専門知識も必要とされることがあります。また、アニメや漫画などは著作権にも関わる問題があり、突如収益配分の停止や場合によってはチャンネルの停止になるケースもございます。
自身が得意とする分野であれば、非常に良い選択肢となるでしょう。
▷関連:M&A仲介会社とは?業者を利用するメリット・選び方・注意点を解説
YouTubeチャンネルの譲渡手続きの流れ
次に、YouTubeチャンネルの譲渡手続きの流れについて詳しく解説していきます。YouTubeチャンネルの売却が決まっても、手続きの方法が分からず破談になることもあります。売却後のトラブルを避けるためにも、譲渡手続きの流れを事前に把握しておくことが望ましいです。
以下では、譲渡手続きの流れを3つのステップに分けて解説します。
- 譲渡する側の作業流れ
- 譲渡される側の作業流れ
- Adsenseアカウントの手続き流れ
譲渡する側の作業流れ
まず、アカウントを譲渡する側の手続きについて説明します。
- 譲渡する側がパソコン版のYouTube Studioへログインし、「設定」を選択します。
- 「権限」の中の「権限の管理を引き続きブランドアカウントで行う」の「権限管理」を選択します。
- 「ユーザー」の項目内にある「権限を管理」をクリックします。
- ログイン画面が表示されたら、ログインしてください。
- 画面右上にある「新しいユーザーを招待」アイコンをクリックします。
- 譲渡先のメールアドレスを入力し、権限を「オーナー」に設定したら、「招待」をクリックします。
これで譲渡する側の作業は完了です。
譲渡される側の作業流れ
次に、アカウントを譲渡される側の手続きについて説明します。
- 「オーナー権限の共有に招待されました」という内容のメールが届きますので、「招待に応じる」をクリックします。
- チャンネルのオーナーとして招待に応じるかの確認画面が表示されたら、「承認」ボタンをクリックします。
- 承認されてオーナー権限が与えられたら、アカウントの画面で「権限を管理」をクリックします(※ログイン画面が表示されたらログインしてください)。
- 譲渡した元のアカウントと譲渡されたアカウントが表示されますが、7日以上経過しないと譲渡されたアカウントがメインオーナーになれないので注意してください。
- 7日間が経過したら、譲渡されたアカウントの権限を「メインのオーナー」に変更します。
- プライマリオーナーに関する注意画面が表示され、問題がなければ「譲渡」をクリックします。
これで譲渡される側のアカウントで権限を得ることができます。
元のアカウントの権限を他の権限に変更したり、削除したりすることもできます。
AdSenseアカウント手続きの手順
AdSenseアカウントの手続きを行う際の流れは、次のような手順です。
- YouTube Studioにログインした譲渡された側が、「収益受け取り」ページ内にあるAdSenseアカウントの「変更」を選択
- 本人確認のためのログイン手続き
- 「AdSenseにリダイレクトされます」という画面が表示されたら、「続行」をクリック
- アカウント選択画面で、関連付けるアカウントを選ぶ
- 「Google AdSenseお申込み」画面が現れたら、関連付けを完了
これにより、AdSenseアカウントの手続きは完了します。
▷関連:M&Aの流れ|検討・NDAから成約・クロージングまで、簡単に解説
YouTubeチャンネル売却で注意すべき点
YouTubeチャンネルを購入する際に後悔しないために、注意すべきポイントを確認しておきましょう。主な注意点は以下の5つです。
- チャンネル登録者数の水増しはないか?
- 規約違反のチャンネルではないか?
- 過去にペナルティを受けていないか?
- 属人性が高すぎないか?
- 需要があるチャンネルか?
それぞれ詳しく解説していきます。
チャンネル登録者数の水増しはないか?
チャンネル登録者数は、一部のツールを利用すれば簡単に水増しすることができますが、そのような行為が運営に見つかると、アカウントが削除される恐れがあります。購入時にはフェイク登録者に気づかなかった場合、実際の再生数が予想より伸びないことで水増しの事実が明るみに出ることもあります。
そのため、「純粋なチャンネル登録者だけが集まっているかどうか?」を事前にしっかり確認しておく必要があります。チャンネル登録者数と再生数の比較する事で傾向はつかめます。
規約違反の疑いがないチャンネルかどうか確認しよう
YouTube利用規約は年々厳格化されており、動画内での誹謗中傷や著作権違反が重大な問題となり、チャンネル運営者が逮捕される事例が発生しています。
2021年6月には、短縮版映画「ファスト映画」をYouTubeに投稿し、収益を得たとして3名が著作権法違反容疑で逮捕されました。これは、ファスト映画に関連する全国初の逮捕事例でした。YouTubeチャンネルを購入した場合、以前の運営者がアップロードした動画にて問題が発覚した場合、現運営者であるあなたが責任を問われる可能性があります。
したがって、YouTubeチャンネルを購入する際には、購入時点でのYouTube規約に沿って、「違反が疑われるチャンネルではないか?」という点に注意が必要です。公序良俗に反すると思われるジャンル(内容)の動画は避けるべきといえます。
過去にペナルティを受けていないか確認しよう
YouTubeが「このチャンネルは広告を掲載するにふさわしくない」と判断した場合、広告収入が得られなくなってしまいます。広告掲載にふさわしくないと判断される動画は、以下のような内容を含むものです。
- 誹謗中傷
- 著作権違反
- グロテスクな表現
- 過度な性的表現
- 暴力的な内容
- 自殺や自傷行ためなど社会問題に発展する可能性のある内容
YouTubeのポリシーやガイドラインに違反したと判断されると、ペナルティが課されます。
ペナルティを3回受けるとアカウントが削除され、そのチャンネルでは永久に動画を投稿できなくなります。これに伴い、チャンネル登録者や投稿動画も全て失われることになります。もし過去に2回ペナルティを受けたチャンネルを購入してしまった場合、あと1回のペナルティでアカウントが削除されるリスクがあります。
購入するチャンネルが「過去にペナルティを受けていないか?」を確認することが重要です。確認だけではなく、最終的な売買契約時に書面に違反がない事を明記すべきです。
属人性が強すぎないか検討しよう
もとのチャンネル運営者に熱狂的なファンがいたり、高い専門性を持っていたりするなど運営者の属人性が強すぎるチャンネルには注意が必要です。ファンが多いチャンネルでは、動画の内容よりも運営者自身に興味を持ってチャンネル登録していることが多いでしょう。
運営者が人気である場合、運営者の交代により、これまでのチャンネル登録者が興味を失ってしまう可能性があります。また、高い専門性や独自の編集技術を持つチャンネルは引き継ぎが困難であることが考えられます。そこで、「運営者のファンに依存しないチャンネルであるか?」を検討することが必須です。
一方で、顔出しをしていないなどの属人性が低いチャンネルは、チャンネル購入後も視聴者に違和感を与えずに運営できるでしょう。
需要が続くチャンネルかどうかを確認しよう
YouTubeチャンネルを購入する際には、そのチャンネルのコンセプトが「将来的にも需要が続くか否か」という点を十分に検討することが重要です。YouTubeの世界では、一つの動画がバズることでチャンネル登録者数や再生回数が急激に増加することが珍しくありません。しかしながら、一過性のブームによって急成長したチャンネルを購入することはあまりお勧めできません。
その理由は、ブームが終わってしまうと需要が減少し、それに伴って収益も大幅に減少する可能性があるためです。例えば、「東京オリンピック」を専門に取り扱っているチャンネルがあるとしましょう。東京オリンピックの開催前後には、チャンネル登録者数や再生回数が増加することは確かですが、オリンピックが終わってしまうと、その需要は大幅に減少するでしょう。
ドラマや漫画などのコンテンツに依存するものも同様です。また、模倣されやすいジャンルも競合が出てくることにより、自身のチャンネルの動画再生数が低下します。
このように、短期間での需要が見込めるものの長期的な需要が疑問視されるチャンネルには注意が必要です。
YouTubeチャンネルの売却によって利益を上げる方法
現代では、YouTubeチャンネルは収益化の手段として多くの人々が活用しています。そのため、収益化されたYouTubeチャンネルを売却することを検討する人も増えているのです。自身のチャンネルのピークだけでなく、運営側の収益に対する動向など相場も含め時期を検討するべきです。
チャンネルの売却を検討する際には、YouTubeの利用規約違反やトラブルを避ける必要があります。両者にとって利益を最大化し、円滑な取引ができるように注意を払って進めましょう。
みつきコンサルティングは、税理士法人グループのM&A仲介会社として15年以上の業歴があり、中小企業M&Aに特化した経験実績が豊富なM&Aアドバイザーが多数在籍しております。
みつき税理士法人と連携することにより、税務面や法律面のサポートもワンストップで対応可能ですので、M&Aをご検討の際は、成功するM&A仲介で実績のある、みつきコンサルティングに是非ご相談ください。
▷関連:事業承継とは?引き継ぐ3つの資源や事業承継の手順、税金について解説
著者
-
国内証券会社(現SMBC日興証券)にてクライアントの資産運用を支援。みつきコンサルティングでは、消費財・小売業界の企業に対してアドバイザリーを提供。事業承継案件のみならず、Tech系スタートアップへの支援も行う。
監修:みつき税理士法人
最近書いた記事
- 2024年11月9日事業譲渡による債権債務の引受|同意は必要か・債務超過の場合は?
- 2024年9月23日M&Aの「完全」成功報酬とは?利点と欠点・中小企業の相場・経費性
- 2024年9月23日後継者を募集する中小企業|親族外の事業承継での社長の探し方
- 2024年9月12日親族内の事業承継とは|株式譲渡・贈与・相続の利点と欠点を比較