国内M&A市場は後継者不足や経済のグローバル化を背景に拡大を続けています。2025年も過去最高の成約件数(5,115件)を記録し、今後もさらなる成長が見込まれます。本記事では、M&A市場の現状と将来展望について解説します。
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国内M&A市場の現状と推移
国内M&A市場は、この数十年な成長を遂げています。2022年に過去最高の4,304件を記録して以来、その勢いは衰えることなく、2025年も5,115件と新たな記録を更新しました。この市場拡大の背景には、さまざまな要因が絡み合っています。
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2025年の国内M&A市場を振り返る
2026年1月公表のレコフデータによると、2025年(1月~12月)の国内M&A市場は5,115件と、前年の4,700件を上回る成約件数を記録し、市場の活況ぶりを示しました。特筆すべき点として、下表の動でした。
| 動向 | 概要 | 主なデータ・特徴 |
|---|---|---|
| 全体件数・金額の記録更新 | 2025年のM&A件数・金額はともに過去最高を記録した | ・件数:5,115件(前年比8.8%増)、初の5,000件突破 ・金額:約35兆7,437億円(前年比74.7%増) |
| 事業承継M&Aの加速 | オーナー経営者による株式譲渡(事業承継型M&A)が引き続き増加した | ・件数:1,028件(前年比11.6%増)、2年連続で過去最多 ・買い手の約1割を投資会社(ファンド)が占めるなど、相手先の選択肢が多様化 |
| 異業種参入の活発化 | 非製造業(サービス・不動産等)による買収意欲が高まった | ・買い手の「非製造業」比率が38.4%に上昇 ・人材、介護、不動産・ホテル業界などが積極的に他社を譲り受ける動きが顕著 |
| 「売り手」業種の変化 | 小売・金融・サービス業での売却相談が増加した | ・「商業(小売)」が前年比26.5%増、「金融」が47.7%増 ・「サービス業」の売却も1,000件を超え、ソフト・情報通信業に次ぐ規模に拡大 |
| 上場企業の再編とMBO | 上場企業でも「選択と集中」や非上場化が進み、中小企業への波及も予想される | ・MBO(経営陣による買収)が30件と急増(前年比1.7倍) ・物言う株主への対応や、中長期的な事業再構築を目的とした非上場化が目立つ |
これらの動向は、日本のM&A市場が多様化し、成熟段階に入りつつあることを示しています。
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M&A市場が拡大してきた要因
M&A市場が拡大している背景には、複数の要因が存在します。主な要因を見ていきましょう。
後継者問題の深刻化
日本の中小企業が直面している最も深刻な課題の一つが、後継者不足です。東京商工リサーチが2025年11月に発表した2025年「後継者不在率」調査によると、「後継者不在率」は62.6%に達しています。この数字は、実に10社のうち6社以上が後継者問題に直面していることを意味します。業種別に見ても、後継者不在率は50~70%台と総じて高い状況にあります。
| 産業 | 後継者不在率 | 後継者あり(社数) | 後継者なし(社数) |
|---|---|---|---|
| 農・林・漁・鉱業 | 57.48% | 858 | 1,160 |
| 建設業 | 63.69% | 10,203 | 17,900 |
| 製造業 | 56.89% | 15,868 | 20,941 |
| 卸売業 | 61.45% | 12,376 | 19,730 |
| 小売業 | 64.90% | 4,835 | 8,942 |
| 金融・保険業 | 54.90% | 790 | 962 |
| 不動産業 | 61.11% | 2,410 | 3,788 |
| 運輸業 | 57.26% | 3,910 | 5,240 |
| 情報通信業 | 77.06% | 1,942 | 6,526 |
| サービス業他 | 67.28% | 10,060 | 20,695 |
| 合計 | 62.60% | 63,252 | 105,884 |
特に、以下の業種で顕著な傾向が見られます。
- 建設業:高齢化が進む職人の技術継承が課題
- 小売業:eコマースの台頭による事業モデルの変革が必要
- 製造業:技術革新への対応と海外競争力の維持が課題
このような状況下で、M&Aは事業承継の有効な選択肢として注目を集めています。親族内承継や社内承継が難しい場合でも、M&Aを通じて事業を存続させ、従業員の雇用を守ることができるからです。
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人手不足の深刻化
少子高齢化の進行に伴い、中小企業の人手不足も顕著になっています。特に、地方の中小企業では、若年労働力の確保が困難になっており、事業継続の見通しが立たない企業が増えています。この問題に対して、M&Aは以下のような解決策を提供します。
- 事業統合による人材の確保
- 業務効率化によるリソースの最適配分
- 新たな技術や知見の導入による生産性向上
人手不足を補う方法としてM&Aを進める企業は、今後さらに増加すると予想されます。
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経済のグローバル化
日本企業の海外進出意欲は依然として高く、経済のグローバル化が進んでいます。しかし、海外進出には多くの時間とコスト、そしてリスクが伴います。そこで、M&Aが効果的な戦略として注目されています。M&Aを通じた海外進出のメリットには以下のようなものがあります。
- 現地市場への迅速な参入
- 既存の顧客基盤やブランドの獲得
- 現地の規制や商習慣に関するノウハウの取得
- 人材や技術の即時獲得
特に、IN-OUT型(国内企業が海外企業を譲受)のM&Aは、市場規模が最も大きく、1件あたりの取引金額も高額になる傾向があります。
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M&A支援体制の充実
近年、M&Aを支援する専門家や企業が増加し、支援体制が充実してきています。特に、中小企業や個人事業主向けのM&Aサービスが拡大しており、以前は大企業のものと思われていたM&Aが、より身近なものになってきています。M&A支援体制の充実は、以下のような効果をもたらしています。
- M&Aプロセスの効率化と迅速化
- 専門知識を持つアドバイザーによる適切なサポート
- マッチング精度の向上
- 中小企業でも利用しやすい価格帯のサービス提供
これらの要因により、M&Aの敷居が下がり、より多くの企業がM&Aを検討するようになっています。
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M&Aに対する認識の変化
かつては「企業買収」というネガティブなイメージが強かったM&Aですが、近年ではその認識が大きく変化しています。M&Aは企業成長の有効な手段として広く認知されるようになり、ポジティブな印象が広がっています。M&Aに対する認識の変化は、以下のような要因によってもたらされました。
- 成功事例の増加と情報共有
- M&Aに関する教育や啓蒙活動の拡大
- 経営者の世代交代による新しい価値観の浸透
- 企業の社会的責任(CSR)の観点からの事業継続の重要性認識
この認識の変化により、M&Aを検討する企業が増加し、市場の拡大につながっています。
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売り手から見たM&A市場
近年のM&A市場は、譲渡オーナーにとって有利な「売り手市場」の様相を呈しています。譲受企業が急拡大する一方で、譲渡企業は緩やかな増加にとどまっているため、譲受を希望する企業が多い状況です。
売り手優位の背景
中小企業の後継者不足が深刻化しており、事業承継の手段としてM&Aを選択する企業が増加しています。また、競争力強化や規模の経済を追求するため、企業の買収意欲が高まっています。既存事業の成長が鈍化している企業が新規事業獲得の手段としてM&Aを積極的に活用している点や、プライベートエクイティファンドなどのM&A投資資金が増加している点も背景にあります。
譲渡オーナーのメリット
売り手市場の状況下では、譲受を希望する企業が多いため、より高い価格で会社を売却できる可能性があります。複数の候補企業から最適な条件を引き出すことができ、事業の継続性や従業員の処遇など、譲渡企業の希望に沿った譲受企業を選択できる可能性が高まります。
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スモールM&A市場の台頭
近年、日本のM&A市場において注目を集めているのが「スモールM&A」です。スモールM&Aとは、一般的に売上高10億円未満の中小企業や個人事業を対象としたM&Aです。取引金額は数百万円から数億円程度が中心であり、比較的小規模な取引が特徴です。業種は小売業やサービス業、製造業など多岐にわたり、地方の中小企業も多く含まれます。
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スモールM&A市場拡大の背景
スモールM&A市場が拡大している背景には、中小企業オーナーの高齢化と後継者不足があります。2025年までに約245万人の経営者が70歳を超え、そのうち約127万人が後継者不在という深刻な状況です。かつてはネガティブなイメージがあったM&Aも、事業承継の有効な選択肢として認知されるようになりました。また、M&A仲介サービスの充実により、中小企業もM&Aを活用しやすい環境が整ってきています。
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スモールM&A市場の展望
2025年以降、スモールM&A市場はさらなる成長が見込まれます。後継者問題の深刻化に伴い、地方の中小企業を中心にM&Aによる事業承継が活発化すると予想されます。M&Aプラットフォームの進化により、より効率的で透明性の高い取引が実現する見通しです。これまでM&Aが少なかった農業や伝統工芸などの業種でも取引が増加し、産業構造の変革に影響を与える可能性があります。
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M&A市場を種類別にみた動向
M&A市場は取引の形態により、下表のとおり3つの型に分類されます。それぞれの特徴と動向を比較することで、日本のM&A市場全体の構造を理解できます。
| 項目 | IN-IN型(国内企業同士) | IN-OUT型(日本企業が海外企業を譲受) | OUT-IN型(海外企業が日本企業を譲受) |
|---|---|---|---|
| 概要・主な目的 | 日本企業同士のM&Aです。事業承継、同業の統合、販路・人材の確保などが目的になりやすいです。 | 日本企業が海外企業を譲受するM&Aです。海外市場の開拓や技術獲得が中心で、中小企業では「一気に海外」は少なめです。 | 海外企業が日本企業を譲受するM&Aです。日本市場への参入や、日本の技術・ブランドの獲得が目的になりやすいです。 |
| 2025年の実績 | 件数:4,086件 金額:11兆2,903億円 | 件数:657件 金額:18兆2,461億円 | 件数:372件 金額:6兆2,072億円 |
| 市場動向の推移 | 件数の中心はこの型で、事業承継型の相談増が追い風になりやすいです。 中小企業の「譲渡オーナーの引退」と「譲受企業の人材・顧客獲得」が噛み合いやすいです。 | 件数はIN-INより少ない一方、金額が大きくなりやすい型です。 巨大案件の影響で市場全体の金額を押し上げる年があります。 | 外資ファンドを含む海外勢の動きで増減しやすい型です。 国内の企業再編の局面で注目されることがあります。 |
| 今後の展望 | 後継者不在を背景に、地域・同業の再編が続きやすいです。 サービス業・不動産・ITなどでも「人と顧客」を目的に譲受が進みやすいです。 | 中小企業では、まず国内基盤を固めつつ、アジア近隣などに絞った小規模な海外展開が現実的です。 海外は魅力がある反面、管理体制・人材面の準備が重要になります。 | 日本の高齢化や人手不足を背景に、国内の事業基盤を評価して譲受を狙う動きが続きやすいです。 売却側は「雇用維持・取引継続」の条件整理がカギになります。 |
IN-IN型が件数で圧倒的に多い一方、IN-OUT型が金額面で最大の市場規模を持つという特徴があります。
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2026年以降のM&A市場の展望
2026年以降の日本国内のM&A市場は、引き続き活況が続くと予想されます。特に、中小企業や個人事業主を対象としたスモールM&A市場の成長が顕著になると考えられます。また、売り手市場としての特徴も当面は継続すると見込まれます。ただし、以下の点にも注意が必要です。
業界による差異:成長産業と衰退産業では、売り手市場の度合いに差が出る可能性があります。
経済環境の変化:景気後退や金融市場の変動により、買い手の投資意欲が減退する可能性もあります。
規制環境の変化:M&Aに関する法規制の変更により、市場動向が影響を受ける可能性があります。
M&Aを視野に入れている企業は、これらの市場動向を注視しつつ、自社の成長戦略や事業承継計画にM&Aをどのように位置づけるか、慎重に検討する必要があるでしょう。
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M&A市場のまとめ
国内M&Aの市場は、活況を呈しています。M&Aは単なる企業の売買ではなく、日本経済の新陳代謝を促進し、産業構造を変革する重要な手段となっています。今後も、M&A市場の健全な発展が、日本経済の活性化に寄与することが期待されます。
みつきコンサルティングでは、親族内承継から第三者承継(M&A)まで複数の選択肢を考慮し、メリット・デメリットを比較した上で最適な選択を提案しています。企業譲渡を検討するなら、まずお気軽にお問い合わせください。
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著者

- 事業法人第三部長/M&A担当ディレクター
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宅食事業を共同経営者として立ち上げ、CFOとして従事。みつきコンサルティングでは、会計・法務・労務の知見を活かし、業界を問わず、事業承継型・救済型・カーブアウト・MBO等、様々なニーズに即した多数の支援実績を誇る。M&Aの成約実績多数、M&A仲介・助言の経験年数は10年以上
監修:みつき税理士法人
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