-まず、御社の事業内容について教えていただけますでしょうか。
当社は、測量業務を主な事業としており、建設コンサルタント企業になります。創業以来、約50年にわたり地域に根ざした企業として、測量や土木設計業務を通じて地域のインフラ整備に貢献してまいりました。主に公共事業関連の仕事が多く、道路や河川の測量、都市計画に関わる道路、河川、農業土木などの設計などを手がけてきました
-長年にわたり地域に貢献されてきたのですね。そんな中で、今回M&Aを決断されたきっかけは何だったのでしょうか。
はい、決断に至った理由はいくつかあります。まず、私自身が高齢となり、引退を考え始めたのが一番の理由です。後継者候補は社内にふたりおり、息子と創業時からの取締役です。どちらに継がせるか、最後の最後まで悩みました。取締役に継がせる場合には、株の承継が問題になりますので、このあたりも相談しておりました。
最終的には、まずは親族でない取締役に会社の経営は任せることにし、株については大手企業に譲り、資本業務提携をすることにしました。測量設計業界全体が技術革新の波にさらされており、新しい技術や設備への投資、若手人材の確保が必要不可欠となってきていることも大きな理由となりました。中長期的に成長し続けるためには、社内の承継とは別の話で、大手企業との提携が必要と考えたのです。
-なるほど、後継者問題と業界の変化が大きな要因だったのですね。M&Aを検討し始めてから実際に譲渡までどのくらいの期間がかかりましたか?
検討を始めてから実際の譲渡まで、1年ほどかかりました。まず想定される株価と候補先について説明を受けました。その際に、候補先に期待すること、資本提携をつうじて解決したいことなどを伝えました。このような要望をかなえてくれそうな候補先を中心に打診をしていただきました。
-M&Aのプロセスを進める中で、特に印象に残っていることはありますか?
はい、特に印象深かったのは、譲受企業の社長との出会いです。年齢も若く、非常にエネルギッシュな方で、私たちの会社の価値を深く理解してくださいました。また、グループ企業間の連携を重視されているという点に、大きな可能性を感じました。
-譲受企業の社長との出会いが転機となったのですね。具体的にどのような点に共感されましたか?
単に事業を買収するだけでなく、お互いのの会社の強みを活かしながら連携し、一緒になって成長していく、グループ企業体として大きくなっていく、との考えです。例えば、私たちが長年培ってきた地域とのつながりや信頼関係を大切にしつつ、新しい技術を導入して業務の効率化を図るといったアイデアを提案してくださいました。また、グループ企業間で技術や人材を共有することで、より大規模なプロジェクトにも対応できるようになるという展望も示してくださいました。
-そうした考え方は、従業員の方々にとっても安心材料になったのではないでしょうか。
おっしゃる通りです。実は、M&Aを検討し始めた当初、従業員たちの反応を非常に心配していました。働き方が大きく変わってしまうのではないだろうか、雇用や処遇はどなるのか、やはり当然はじめは不安に思うだろうと。
しかし、クロージング後の従業員説明会の際に、自身が大切にしている考え方、今後の具体的な連携方法などを丁寧に説明していただきました。はじめは驚いた顔をしていた従業員も話を聞いているうちに安心した顔になり、今後に期待をし、やる気に満ちた顔になった人もいました。結果的に、ほとんどの従業員が前向きに受け止めてくれ、新しい体制での仕事に期待を寄せてくれています。
-従業員の方々の理解を得られたことは、非常に大きかったですね。M&Aのプロセスを振り返って、特に難しかった点や苦労されたことはありますか?
そうですね、一番難しかったのは、会社の価値を適切に評価してもらうことでした。建設コンサルタント業は、目に見える資産よりも、長年培ってきた技術やノウハウ、そして顧客との信頼関係が重要です。これらの無形資産をどのように評価し、譲渡価格に反映させるかが大きな課題でした。
また、公共事業が主な仕事ということもあり、行政との関係や継続中のプロジェクトの引き継ぎなど、細かな調整が必要でした。これらの点については、みつきコンサルティングさんのアドバイスが非常に役立ちました。専門的な知識と経験に基づいたサポートのおかげで、適切な評価と円滑な引き継ぎができたと感じています。
-確かに、無形資産の評価は難しい問題ですね。みつきコンサルティングのサポートについて、もう少し詳しく教えていただけますか?
まず、業界の特性を深く理解した上で、私たちの会社の強みを適切に評価してくれました。例えば、これまでの実績や技術者たちの専門性などを細かく把握し、譲渡条件の交渉に活かしてくれたのです。
また、M&Aのプロセス全体をスムーズに進めるためのアドバイスも的確でした。譲受企業との交渉の進め方や、必要な書類の準備、さらには従業員への説明の仕方まで、細かなサポートをしていただきました。特に、私自身が初めての経験で不安も大きかったのですが、常に寄り添って相談に乗ってくれたことで、心強く感じました。
-みつきコンサルティングのサポートが、プロセス全体を通じて大きな支えになったのですね。M&Aを実際に経験されて、当初の期待通りの結果が得られましたか?
はい、結果には非常に満足しています。まず、会社の存続と発展が確保されたことが何より嬉しいです。新体制のもとで、新しい技術への投資が進み、より大規模なプロジェクトにも参加できるようになりました。従業員たちも新しい環境に適応し、むしろ以前より活気づいているように感じます。
後継者問題と自力での成長限界、どちらも解決し、大きな重荷から解放されたような気持ちです。、安心して引退の準備を進めることができています。
-素晴らしい結果が得られたようで何よりです。これからM&Aを検討される中小企業のオーナーの方々へ、アドバイスがあればお聞かせください。
はい、私の経験から言えることは、まず「早めの準備」が重要だということです。後継者問題や業界の変化は、突然現れるものではありません。日頃から将来を見据えて、様々な選択肢を検討しておくことが大切です。
次に、「専門家のサポートを活用する」ことをお勧めします。M&Aは複雑なプロセスで、法律や財務など専門的な知識が必要です。私の場合は、みつきコンサルティングさんのサポートが非常に心強かったです。
最後に、「自社の価値を正しく理解する」ことです。長年経営してきた会社には、数字には表れない大切な価値があるはずです。それを適切に評価し、伝えることができれば、より良い条件でのM&Aが可能になると思います。
-M&Aを経験されて、経営者としての視点や考え方に変化はありましたか?
大きな変化がありました。これまでは、自社の存続と発展だけを考えていましたが、M&Aを通じて、業界全体や地域経済の視点で考えることの重要性を学びました。
また、「守り」の経営から「攻め」の経営への転換の必要性も強く感じました。時代の変化に応じて、果敢に新しいことにチャレンジすることの大切さを学びました。
さらに、経営者の役割として、単に会社を運営するだけでなく、次の世代にバトンを渡す準備をすることも重要だと気づきました。これは、多くの中小企業経営者が直面する課題だと思います。
-本日は貴重なお話をありがとうございました。最後に、今後の展望についてお聞かせください。
ありがとうございます。私個人としては、一線を退いた後も、顧問として会社と関わっていく予定です。長年培ってきた人脈や知識を活かして、新体制をサポートしていきたいと考えています。
M&Aは決して簡単な選択ではありませんが、会社と従業員の未来を守るための有効な選択肢の一つだと確信しています。そして何より、これまで育ててきた会社がこれからも地域に貢献し、さらに発展していくことを心から願っています。新しい技術と若い力で、より大きな貢献ができるはずです。その成長を見守ることが、私の新たな喜びになると感じています。
-本日は、大変興味深いお話を聞かせていただき、ありがとうございました。
こちらこそ、ありがとうございました。私の経験が、同じような悩みを抱える中小企業の方々の参考になれば幸いです。