-本日は、S社の譲渡に関してお話を伺います。まず、会社設立の経緯と、これまでの経営者としての経験についてお聞かせください。
会社を設立したのは今から50年ほど前のことです。当時、包装資材業界は成長期にあり、大きな可能性を感じていました。最初は小さな倉庫からスタートしましたが、顧客のニーズに真摯に向き合い、徐々に事業を拡大していきました。経営者として最も大切にしてきたのは、「誠実さ」と「柔軟性」です。この2つの価値観が、困難な時期を乗り越える力になったと思います。
-長年経営されてきた中で、印象に残っているエピソードはありますか?
50年経営していれば印象に残っていることはたくさんありますが、最近、特に印象深かったのは、リーマンショック後の対応です。多くの取引先が経営難に陥るなか、我々も厳しい状況に直面しました。しかし、従業員全員で知恵を絞り、新しい販路を開拓したり、経費削減に取り組んだりしました。この経験を通じて、会社の団結力が強まり、危機対応力が身についたと感じています。
-包装資材業界の現状と将来展望について、売主様はどのようにお考えですか?
包装資材業界は、ここ数年大きな変化の波にさらされています。eコマースの急成長に伴い、梱包材の需要は増加していますが、同時に環境への配慮も強く求められるようになりました。今後は、サステナビリティを重視した製品開発や、デジタル技術を活用した効率的な物流システムの構築が重要になると考えています。また、人口減少に伴う国内市場の縮小も避けられない課題です。海外展開や新規事業への参入など、新たな成長戦略が必要になるでしょう。
-そのような業界動向の中で、M&Aを検討されるきっかけについてお聞かせください。
実は、当初はM&Aはまったく考えていませんでした。2人の子供のうちどちらかが会社を継いでくれると思っていたのです。しかし、昨年末に打診したところ、2人とも継げないと言われてしまいました。子供たちには自分の人生を歩んでほしいという思いもあり、強く説得はしませんでした。そこで急遽、M&Aを検討することにしたのです。
-M&Aのプロセスを進める中で、どのような課題や不安がありましたか?
M&Aのプロセスというより、本当に会社が守られるか。従業員の雇用は維持されか。長年築いてきた取引先との関係を維持できるか、といった不安がはじめのうちはありました。また、M&Aの知識がほとんどなかったため、交渉自体が難しいのではないかと考えておりました。
-その後、みつきコンサルティングとの出会いがあったわけですね。最初の印象はいかがでしたか?
誠実で真面目な方との印象でした。初めは会社に電話があったのですが、ちょうどすぐ横に従業員もいたため多少は話しましたがすぐに電話を切ってしまいました。しかし、その後担当者が電話の内容を補足するかたちの手紙をすぐに届けてくれたんです。その熱意に打たれて、「この人に任せよう」と思いました。手紙には、私の気持ちを理解しようとする姿勢が表れていて、心を動かされました。
-みつきコンサルティングの対応で印象に残っていることはありますか?
スピード感がありましたね。実は同じタイミングで別の会社からも提案があったのですが、みつきコンサルティングの方が素早く動いてくれました。特に、買い手との面談を迅速にセッティングしてくれたことが印象的でした。また、常に私の立場に立って考えてくれる姿勢が感じられ、安心感がありました。
-買い手企業との初めての面談はいかがでしたか?
非常に良い印象を受けました。H社の社長は夢を追いかけている素晴らしい経営者だと感じました。特に印象的だったのは、会社の方針や従業員の仕事に対する姿勢を高く評価してくれたことです。これなら安心して会社を託せると思いました。H社の社長の目には、単なる事業拡大ではなく、真摯に事業を継承しようという強い意志が感じられました。
-譲渡価格についてはどのようにお考えでしたか?
実は、当初の希望金額はもう少し高かったです。しかし、みつきコンサルティングの担当者から株式価値算定の結果について丁寧に説明を受けましたので、譲渡価格は納得しました。H社の希望額もその範囲内でしたので、すぐに提案を受けることにしました。担当者からはもう少し交渉してみますか、との提案はありましたが、はじめの提示で承諾しました。やはり、お金だけがすべてではないと思ったんです。H社の社長の人柄や、従業員の雇用継続を約束してくれたことが大きかったですね。また、H社の事業ビジョンに共感できたことも、決断の要因でした。
-デューデリジェンスや2回目の面談はスムーズに進みましたか?
はい、とてもスムーズでした。事前に必要な資料を準備していたので、特に問題はありませんでした。2回目の面談では、H社から出向予定の社員とお会いしました。彼の真面目な人柄を見て、取引先とも良い関係を築けると確信しました。その方は、私たちの会社の文化や価値観を理解しようと熱心に質問してくれました。その姿勢に、会社の未来に対する希望を感じました。
-H社との協業について、具体的にどのようなシナジーを期待されていますか?
まず、H社の持つ広範な販売網を活用することで、我々の商品の販路が大きく拡大すると考えています。特に、関東圏以外の地域への展開が期待できます。また、H社の持つ産業機械の知識と、我々の包装資材のノウハウを組み合わせることで、より効率的で環境に配慮した包装ソリューションが提供できるのではないかと期待しています。さらに、H社の資金力を活かして、新しい環境配慮型の包装材料の研究開発にも取り組めると良いですね。
-クロージングを迎えた時の心境をお聞かせください。
安堵感と共に、少し寂しさも感じました。長年経営してきた会社を手放すわけですから。でも、H社なら大丈夫だという確信がありました。新しい船出を迎える会社への期待と、従業員たちへの感謝の気持ちでいっぱいでした。
-譲渡後の生活について、どのようなプランをお持ちですか?
まずは、長年の緊張から解放されて、ゆっくり休養を取りたいと思います。妻と一緒に旅行に行くのが楽しみです。その後は、地域のボランティア活動に参加したり、趣味の園芸に時間を使ったりしたいですね。また、経営者としての経験を活かして、若い起業家の相談役になることも考えています。会社経営からは離れますが、社会との繋がりは大切にしていきたいと思っています。
-M&Aを通じて、ご自身の価値観や人生観に変化はありましたか?
はい、大きな変化がありました。これまでは会社の成長だけを考えていましたが、M&Aを通じて「バトンを渡す」ことの重要性を学びました。自分の人生だけでなく、従業員や取引先の未来まで考えて決断することの大切さを実感しました。また、お金だけでなく、信頼関係や理念の共有がいかに重要か、身をもって経験しました。これからは、これらの学びを若い世代に伝えていきたいと思います。
-H社との統合後、会社の様子はいかがですか?
とても良い雰囲気だと聞いています。H社の新しいアイデアと、我々の会社の伝統的な強みが上手く融合しているようです。特に、環境に配慮した新しい包装材の開発プロジェクトが始まったと聞いて、とてもワクワクしています。従業員たちも、より大きな組織の一員となったことで、新しい可能性に挑戦する意欲が高まっているようです。時々会社を訪問しますが、皆の生き生きとした表情を見るたびに、この決断は正しかったと確信しています。
-M&Aプロセスを振り返って、特に印象に残っているエピソードはありますか?
はい、みつきコンサルティングの担当者がすぐに手紙を届けてくれたことですね。その誠意ある行動に心を開かされました。また、H社の社長との初めての面談で、従業員の仕事ぶりを高く評価してくれたときは本当に嬉しかったです。これらの経験を通じて、M&Aは単なる取引ではなく、人と人との信頼関係が基盤になっていることを実感しました。
-最後に、M&Aを検討している経営者の方々へメッセージをお願いします。
M&Aは単なる会社の売買ではありません。自分の人生をかけて築き上げた会社の未来を託す重要な決断です。だからこそ、相手の人柄や理念、従業員への思いをしっかりと見極めることが大切だと思います。また、仲介会社選びも重要です。みつきコンサルティングのように、スピード感を持って誠実に対応してくれる会社を選ぶことをお勧めします。そして、譲渡価格だけでなく、会社の将来性や従業員の幸せも考慮に入れてください。最後に、M&Aは終わりではなく新しい始まりだと捉えることが大切です。次の世代に良いバトンを渡すという気持ちで、前向きに取り組んでいただきたいと思います。
-本日は貴重なお話をありがとうございました。売主様の経験は、多くの経営者の方々にとって大きな励みになると思います。
こちらこそ、ありがとうございました。この経験を通じて学んだことを、少しでも多くの方々に伝えることができれば幸いです。M&Aは確かに大きな決断ですが、適切なサポートがあれば、会社と従業員のより良い未来につながる素晴らしい選択肢になり得ると信じています。