- まず、Q社の事業内容と、M&Aを検討されるに至った経緯についてお聞かせください。
当社は図書館システムの開発を主な事業としていました。私を含め10名の社員がおり、ほとんどが技術者でした。私自身が営業も兼ねていましたが、やはり限界があり、販路拡大に苦労していました。
技術者として自分たちが開発した商品をより多くの図書館に広めたいという思いは強かったのですが、営業力不足で思うように事業が拡大できずにいました。そんな中、M社との出会いがありました。
- M社との出会いについて、もう少し詳しくお聞かせいただけますか?
M社商社で、システム事業部で大学向けの販路を持っているものの、自社パッケージ商品がなく、パッケージ商品の開発を課題としていました。そのため、私たちの図書館システムと彼らの販路やリソースを組み合わせることで、大きな事業シナジーが見込めると考えたのです。
実は、M&Aの話が進む中で、途中からM社よりも高額な買収提案をしてきた競争相手も現れました。しかし、最終的にはM社とのシナジーの方が大きいと判断し、M社との交渉を進めることにしました。
- M社との交渉プロセスはいかがでしたか?特に印象に残っていることはありますか?
特に印象的だったのは、M社の常務との面談です。M社の熱意には本当に感銘を受けました。意思決定前からクロージングまで、計5回ほど面談の機会を設けていただき、M社にとって当社のM&Aがいかに重要であるかを熱く語っていただきました。
事業責任者が早い段階で登場し、何度もラブコールを送ってくれたことで、M社の真剣さが伝わってきました。これは後々、交渉が困難になった際にも大きな支えとなりました。
- 交渉の中でどのような困難な局面があり、どのように乗り越えられたのでしょうか?
困難な局面はいくつかありました。M社は意思決定がトップダウンの会社であったのですが、私たちに条件を提示した後に内容が二転三転したり、最終契約に向けた決裁の直前になって契約条件の変更が出てきたりということもありました。
例えば、私の処遇に関しての変更がありました。当初、M社からは「代表取締役としてこれまで通りスピード感を持って経営に関与してほしい」と言われていたのですが、後になって急に「取締役を退任してアドバイザーとして関与して欲しい」という話になったのです。その時は、さすがにM社に対して不信感を抱いてしまいました。
- そのような困難な状況を乗り越えられた要因は何だったのでしょうか?
早い段階で、M社の事業責任者である役員との信頼関係を築いたことが大きいですね。役員に何度もご足労いただき、熱意を持ってお話をしていただき、私が退任して会社の舵取りを任せようと決断することができました。
最終的には顧問という立場になりましたが、みつきコンサルティングさんがこちらの意向を踏まえてしっかりと交渉してくれたことで、処遇については十分配慮していただきました。両社から挟まれて大変だったと思いますが、しっかりと交渉してくれたみつきコンサルティングさんには感謝しています。
また、みつきコンサルティングの弁護士の対応スピードも助かりました。株式譲渡契約書のリーガルチェックや調整に1週間しかない中、M&Aに慣れた弁護士だったため、非常にスピーディかつ的確に論点を解決していただきました。私自身も弁護士に信頼を寄せることができ、条件の調整がスムーズに進みました。
- M&A後の状況はいかがですか?
結果的には、両社ともに非常に喜んでいただけました。例えば、M社の本社は地方にあるのですが、当社で毎年行っている社員旅行として、M社本社のある地域に行ったりしました。これは両社の関係が円満であることの表れだと思います。
私個人としても、売却資金で家を購入し、現在は趣味に没頭しながら悠々自適に過ごしています。振り返ってみると、やはりこのM&Aを実行して良かったと心から思えます。
- M&Aを検討している他の中小企業のオーナー経営者に向けて、アドバイスがあればお聞かせください。
まず、相手の選定に向けては事業シナジーを重視することが大切だと思います。単に高い買収金額を提示する企業ではなく、長期的に自社の技術や製品を最大限に活かして企業が成長できる相手を選ぶことが重要と考えています。そのためには、まず、自社の強みと弱みを客観的に見極めることが大切です。私たちは技術力には自信がありましたが、営業力の弱さを認識しておりましたので、みつきコンサルティングさんと共有することで、それを補完してくれるパートナーを見つけることができました。
また、買い手企業との信頼関係の構築が非常に重要だということも学びました。M社との交渉過程では困難な場面もありましたが、両者間で早い段階から築いた信頼関係があったからこそ、最終的には良い結果に結びつけることができたと思います。
また、信頼できる専門家のサポートを得ることも重要です。私たちの場合、M社と直接交渉をしていたら、間違いなく破談となっていたと思います。交渉を円滑に進めるうえで、経験豊富な専門家がクッションとなり、解決策を見出してくれたことが、非常に大きな助けとなりました。
最後に、M&Aは経営者だけでなく、従業員の人生にも大きな影響を与えます。その責任の重さを常に心に留めながら意思決定を行うことが、経営者として最も重要な姿勢だと感じました。
この経験は、私にとって非常に貴重なものとなりました。今後、他の経営者の方々がM&Aを検討する際に、私の経験が少しでも参考になれば幸いです。