M&Aのマンデートとは?専任・非専任の違いと契約の注意点

会社を売るとき、仲介会社にどこまで業務を託せばよいのか。M&Aのマンデートは、その委任と契約を指す言葉です。専任と非専任の選び方、契約期間やテール条項など結ぶ前に確かめたい点、依頼先の見極め方までを、中小企業の会社売却を支援する立場から具体的に整理します。

「うちの会社でも売却できるだろうか…」、「何から始めればいいんだろう…」。そのようなオーナー経営者の不安に、中小企業向けM&A仲介会社みつきコンサルティングは、20年間・500件以上の支援実績に基づき、お応えします。本格検討前の情報収集として、まずはお話をお聞かせください。

M&Aのマンデートとは

マンデートと聞いて、すぐ意味が浮かぶ経営者は多くありません。M&Aの現場では日常語のように飛び交いますが、初めて会社売却を考える方には馴染みのない言葉です。ここでは譲渡オーナーが知っておきたい範囲に絞って、意味と使われ方を整理します。

マンデートが指す2つの意味

M&Aにおけるマンデートとは、依頼主がM&A仲介会社やFA(フィナンシャル・アドバイザー)に対し、M&Aの業務を正式に委託すること、またはそのために結ぶ契約を指します。「マンデートを持っている」は、依頼主から正式に受託している状態を表す言い回し。大きく次の2つの意味で使われます。

契約としての意味

ひとつは、契約そのものを指す使い方です。仲介会社やアドバイザリー会社が会社売却・譲受を支援するため、依頼主と取り交わすアドバイザリー契約の中身を意味します。契約書には業務範囲、手数料、秘密保持といった条件が定められます。

委任としての意味

もうひとつは、業務を任せる「委任」のニュアンスです。交渉の代行、契約手続、クロージングまでを専門家に託すことを表します。会社売却の一連の流れを自社だけで進めるのは難しく、ここで専門家への委任が要となる。仲介会社が実際にどんな役割を担うのかは、M&A仲介の仕組みで詳しく触れています。

M&Aにおけるマンデート(業務委任・アドバイザリー契約)の2つの意味を解説した図解インフォグラフィック

「mandate」という言葉の由来

英語のmandateには「命令」「委任」「権限を与える」といった意味があります。職務執行令状や委任統治といった用法も持つ言葉。そこから「代理で特定の任務を行う権限を与える」というニュアンスが生まれました。M&Aでは、この権限の付与が契約という形をとります。

専任マンデートと非専任マンデートの違い

マンデートには、1社だけに任せる形と複数社に任せる形があります。どちらを選ぶかで、情報管理も進み方も変わってきます。会社売却を考える譲渡オーナーが、最初に押さえたい分岐点です。

専任マンデート

専任マンデートは、1社のM&A仲介会社・FAに独占的に依頼する契約です。窓口が一本化されるため情報が漏れにくく、アドバイザーも人員を集中させやすい。業界慣習として、中小企業のM&Aでは専任が選ばれるケースが大半を占めます。

非専任マンデート

非専任マンデートは、複数の仲介会社やFAに同時に依頼する形です。候補先を幅広く探せる反面、各社の本気度が下がりやすく、売却情報が複数ルートに広がるリスクも抱えます。譲渡オーナーの社名が思わぬ経路から知れ渡る、という相談は現場でも珍しくありません。

中小企業の会社売却ではどちらが向くか

下表は、売り手の視点で両者の特徴を整理したものです。

比較項目専任マンデート非専任マンデート
依頼先の数1社に独占して依頼複数社へ同時に依頼
情報管理窓口が一本化され漏えいリスクが低い情報が複数経路に広がりやすい
担当者の動き専門チームが優先して集中対応本気度が分散しやすい
候補先の広さ1社のネットワークに依存幅広く探せる
向いている相手秘密保持を重視する中小オーナー候補を広く比較したい場合

秘密保持を重視し、腰を据えて進めたい中小企業のオーナーには専任が向くケースが多くなります。ただし1社に絞る分、相手選びの重みは増します。

マンデート契約(専任)を結ぶメリット

専任でマンデートを結ぶと、依頼主にはいくつかの実利が生まれます。代表的なものを順に見ていきます。

専門チームが優先して動く

成約時の報酬が見込めるため、仲介会社は専門チームを優先的に配置します。マッチングや資料作成のスピードが上がりやすく、案件が前へ進みやすい。

秘密保持を徹底しやすい

窓口が1社に絞られると、売却検討という機微な情報を管理しやすくなります。M&Aの秘密保持契約は、通常この段階で結びます。なお契約書でよく見るNDAとCAは、呼び方が違うだけで同じ秘密保持契約を指します。

交渉窓口を一本化できる

複数の譲受企業候補とのやり取りを一任でき、オーナーは本業に集中できます。判断材料が1社から整理して届く点も、初めての売却では助けになります。

マンデート契約を結ぶ前に確認したい注意点

便利な一方で、条件を確かめずに署名すると後で困ることがあります。国の指針である中小M&Aガイドライン(中小企業庁)も、依頼前に確認すべき事項を具体的に示しています。

契約期間(縛り期間)

専任の契約期間は6か月〜1年が目安です。中小企業庁のガイドラインも、専任条項を設ける場合は最長でも6か月〜1年以内を目安とし、依頼者が任意の時点で中途解約できる旨を明記するよう求めています。成果が出ないまま縛られ続ける事態は避けたい。万一のときに備え、専任契約を解除する手順も把握しておくと安心です。

テール条項

テール条項は、契約終了後の一定期間に、紹介された相手と直接成約した場合に手数料が発生する取り決めです。ガイドラインはテール期間を最長でも2年〜3年以内とし、対象を「ネームクリアを経て紹介された譲受企業のみ」に限定すべきとしています。範囲があいまいな契約は要注意。仕組みの詳しい中身はテール条項の考え方で整理しています。

報酬体系と費用の発生タイミング

着手金、月額報酬(リテイナーフィ)、成功報酬のどれが、いつ発生するのかを確かめます。完全成功報酬であれば、成約まで費用が出ない設計です。費用の出方は会社ごとに差があり、ここを曖昧にしたまま進めると、後で見込みが狂います。

契約前のチェックリスト

当社が譲渡オーナーにお渡しする、署名前の確認項目を挙げます。

  • 契約期間は6か月〜1年の範囲か、更新条件は明確か
  • テール条項の対象と期間が限定されているか
  • 着手金・月額・成功報酬の発生時期が書面で示されているか
  • セカンド・オピニオンを求める余地が残されているか
  • 中途解約の条件が契約書に明記されているか

マンデート取得後のM&A業務の流れ

マンデートが成立すると、仲介会社の支援が本格的に始まります。会社売却は、下表のとおりおおむね5つのステップで進みます。

ステップ主な内容
1 目的の整理M&Aの目的やスキーム、スケジュールを固める。譲渡側は企業価値をもとに概算価格を検討する
2 プロセスの開始ロングリスト・ショートリストで譲受企業を探し、交渉に入る。早期にトップ面談が組まれることも多い
3 デューデリジェンスと交渉意向表明・基本合意を経てデューデリジェンス(買収監査)を実施。財務や業績を確認し、条件交渉を進める
4 最終契約の締結株式譲渡契約書などを締結。価格・スケジュール等を明記し、必要に応じて株主総会や債権者保護の手続を行う
5 クロージング効力発生日の到来で取引が完了。原則ここでマンデートは終了する

マンデートを託す仲介会社の選び方

1社に絞る以上、誰に託すかが成否を分けます。ここで知っておきたいのが、仲介会社にはタイプがあるという事実です。

M&A仲介会社は、大きく上場会社系・非上場会社系・会計事務所系(士業系)の3つに分かれます。会計事務所系は公認会計士・税理士を母体に持つため、税負担を抑える譲渡スキームの設計や、精度の高い財務分析に強みがあります。みつきコンサルティングは、この会計事務所系・士業系を代表するM&A仲介会社のひとつです。

実際の依頼先を比べるなら、M&A仲介会社の一覧で全体像をつかみ、仲介会社の比較成約件数のランキングを判断材料にすると見えやすいです。税務の観点では、M&Aを税理士へ相談する選択肢もあわせて検討に値します。

金融業界におけるマンデートとの違い

マンデートはM&A以外でも使われる言葉です。金融業界では、企業が株式発行や上場で資金調達する際に、銀行や証券会社が業務の委任を受けることを指します。「B証券が主幹事のマンデートを受けた」といった使い方です。委任という芯は同じでも、M&Aは会社の売買、金融は資金調達と、対象が異なります。

M&Aのマンデートに関するFAQ

会社売却を検討する売り手から、契約前によく寄せられる質問を取り上げます。

Q:マンデートと専任契約は同じ意味ですか

近い場面で使われますが、同じではありません。マンデートは仲介会社へ業務を委任すること全般を指し、専任契約はそのうち1社に独占で依頼する形を指します。現場ではまず、専任か非専任かを最初に確認します。

Q:マンデートは途中で解約できますか

多くの契約で中途解約は可能です。中小企業庁のガイドラインも、任意の時点で解約できる旨を契約書に明記するよう求めています。ただし違約金やテール条項の扱いは契約次第。署名前に条文を必ず確かめてください。

Q:非専任で複数社に依頼したほうが得ですか

一概には言えません。候補は広がりますが、各社の本気度が下がり、売却情報が複数ルートに漏れやすくなります。秘密保持を重んじる中小オーナーには、専任のほうが向く場面が多いのが実感です。

Q:マンデート契約に着手金は必要ですか

会社によります。着手金や月額報酬を取る会社もあれば、完全成功報酬で成約まで費用が出ない会社もあります。現場ではまず、費用がいつ・いくら発生するかを書面で確認することをおすすめしています。

M&Aのマンデートと会社売却の相談先のまとめ

M&Aのマンデートは、仲介会社やFAへ業務を正式に託す委任と契約を指し、専任か非専任かで進み方が変わります。契約期間やテール条項、報酬の発生時期を結ぶ前に確かめておくことが、後悔のない会社売却につながる。初めての売却で何から見ればよいか迷う方も、要点を押さえれば判断はそれほど難しくありません。

みつきコンサルティングは、税理士法人グループを母体とする会計事務所系・士業系のM&A仲介会社です。中小企業のM&Aで培った実績と経験をもとに、専任マンデートの判断から会社売却の完了まで一貫して支援します。会社売却をお考えの際は、まず当社にご相談ください。

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著者

西尾 崇
西尾 崇事業法人第三部長/M&A担当ディレクター
宅食事業を共同経営者として立ち上げ、CFOとして従事。みつきコンサルティングでは、会計・法務・労務の知見を活かし、業界を問わず、事業承継型・救済型・カーブアウト・MBO等、様々なニーズに即した多数の支援実績を誇る。M&Aの成約実績多数、M&A仲介・助言の経験年数は10年以上
監修者 神門 剛 代表取締役 / 公認会計士・税理士

みつきコンサルティングは、中小企業の会社売却・事業承継に特化した譲渡企業様に完全成功報酬制のM&A仲介会社です。売り手と買い手企業の最適なマッチングを、経験豊富なM&Aコンサルタントが初期相談から成約まで一貫してフルサポートします。

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