足場リース会社の売却で問われる資材の稼働率|本足場原則化とM&A事例

足場リース会社の売却では、ヤードと現場にある資材の数量や稼働率、整備の状態が譲渡価格を大きく動かします。2024年4月の本足場の原則化で現場の資材需要が変わるなか、資材の入れ替えや職人の確保に悩むオーナー経営者に向けて、株価の考え方、譲受企業の顔ぶれ、譲受前の調査で問われる点、九州の足場会社の売却事例を解説します。

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目次
  1. 958億円の大型売買が映す足場リース業界と、地場の会社の立ち位置
    1. 軽仮設が8割、約3,600億円の仮設材リース市場
    2. リース専業、施工付き、メーカー系が並ぶ業界の構図
    3. 大手の売買に表れた、資材の拠点と施工力への評価
  2. 本足場が原則になった現場で、足場リース会社に重くなる負担
    1. 2024年4月から、幅1メートル以上の箇所は本足場が原則に
    2. 枠組足場の在庫を抱えたまま迫られる、次世代足場への入れ替え
    3. 作業主任者と配送の担い手、そして後継者の不在
  3. 資材と職人を託す前に知りたい、足場リース会社の売却の損得
    1. 資材・職人・借入、それぞれに表れるメリットとデメリット
    2. 会社ごと引き継ぐ株式譲渡と、資材や部門を切り出す事業譲渡
  4. ヤードの在庫と現場の貸出分から読む、足場リース会社の株価
    1. 年買法の算式に、資材の時価をどう入れるか
    2. 稼働率から弁償の回収まで、評価の場で求められる数字
    3. 枠組足場の在庫は、品目と状態の掛け合わせで示す
  5. 足場リース会社に手を挙げる譲受企業と、それぞれの狙い
    1. 資材置場ごと地域を得たい仮設材メーカーと広域レンタル
    2. 資材を自前で持ちたい足場工事会社と、施工力を求める会社
    3. 人手不足とインフレの局面に投資する投資ファンド
    4. 資材の種類が補い合う相手から打診する
  6. 譲受企業の調査で問われる、資材置場の土地と足場の点検記録
    1. 農地のまま使ってきた資材置場と、地目の確認
    2. 点検者の記録、労働災害の履歴、規格を確かめられない部材
    3. 元請の協力会社登録と、安全書類の名義
  7. 枠組足場30年の地場ブランドを、くさび式足場の同業へ託した売却事例
    1. 受注の落ち込みと家族への思いが重なった決断
    2. くさび式足場の会社が見た、枠組足場との相乗効果
    3. 資材と販路を合わせ、全国展開を見据える
  8. 仮設資材リース会社の売却で寄せられる質問
  9. まとめ|足場リースの会社売却で見落とせない実務論点
    1. 足場リースの会社売却の関連コラム

償却を終えても貸し出せる資材と、台帳にあっても所在をつかみきれない資材。足場リース会社の売却では、その両方が論点になります。本記事は、会社売却を考える足場・仮設資材リースのオーナー経営者に向けて、資材購入の借入に付いた個人保証、とび・土工工事業の許可の引継ぎ、資材置場の土地の扱いなど、売却の場で問題になりやすい点を具体的に取り上げます。

958億円の大型売買が映す足場リース業界と、地場の会社の立ち位置

958億円。2026年3月、足場・仮設機材レンタル大手を傘下に持つ会社の株式90%に付いた値段です。地場の会社にとっても、M&Aは身近な選択肢になりました。

軽仮設が8割、約3,600億円の仮設材リース市場

国土交通省「建設関連業等の動態調査報告」によると、2025年度の賃貸売上高は、足場材などを扱う軽仮設リース業50社で約2,801億円、鋼矢板などの重仮設リース業11社で約788億円でした。合計約3,589億円の8割近くを軽仮設が占めます。2026年8月の軽仮設の売上高は、前年と比べられる会社の合計で前年同月より6.3%増。保有する足場材のうち現場に出ている割合(稼働率)は55.7%で、前年同月の51.4%を上回りました。対象は主要な会社に限られ、地場の中小まで含めた市場はさらに大きくなります。

リース専業、施工付き、メーカー系が並ぶ業界の構図

鋼矢板や覆工板などの重仮設では商社や鉄鋼系のグループ会社が目立つ一方、足場などの軽仮設は独立系の会社が多い分野です。アルインコやタカミヤのように、足場の製造販売からレンタルへ事業を広げたメーカー系もあります。地場の会社は、資材を貸すだけのリース専業と、組立て・解体まで請け負う施工付きに分かれ、両方を営む会社も少なくありません。どの形をとっているかで、譲受企業が評価する中身も変わってきます。

大手の売買に表れた、資材の拠点と施工力への評価

近年の大きな取引では、取得の理由として、機材を置いて配る拠点や、足場を組む施工の担い手が挙がっています。下表は、各社の適時開示やニュースリリースから主な取引を抜き出したものです。

公表時期譲受企業譲渡側・対象会社公表された目的・想定シナジー
2024年3月信和
仮設資材・物流機器の製造販売
CTR(愛知県一宮市)
足場施工のヤグミを中核とする、東海地方で最大規模の仮設工事企業グループ。取得価額30億円
メーカーと仮設工事の担い手という親和性を生かした業容拡大と、新分野への参入
2025年2月タカミヤ
仮設機材の販売・レンタル
日建リース(広島市)
建築・土木用仮設機材と機械のレンタル・販売。取得価額15億5,400万円
中国地区での事業成長と、機材供給拠点の機能の拡充
2026年3月カーライルが組成した特別目的会社オリックス
足場・仮設機材レンタルの杉孝グループを傘下に持つSGKホールディングスの株式90%を958億円で譲渡
人手不足やインフレで事業環境が変わるなか、インフラ分野の投資と経営支援の知見を持つ相手に企業価値の向上を託す

タカミヤが取得した日建リースは、開示された2023年12月期の純資産が約11億円、営業利益が約3,400万円で、取得価額は15億5,400万円。開示では、広島県内有数の敷地規模を持つ機材供給拠点が理由に挙げられました。

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本足場が原則になった現場で、足場リース会社に重くなる負担

規則が変わると、なぜ資材を貸す側の経営まで揺れるのでしょうか。答えは、現場で求められる資材の量と種類にあります。

2024年4月から、幅1メートル以上の箇所は本足場が原則に

労働安全衛生規則の改正で、2024年4月から一側足場を使える範囲が明確になりました。建物の外面から1メートル以上の幅がとれる箇所では、建地を2列に立てる本足場を原則として使わなければなりません。狭い敷地で一側足場を組んできた現場ほど、同じ建物でも必要な部材の数や種類が変わります。一側足場向けの部材を中心にそろえてきた会社にとっては、品ぞろえを見直すきっかけに。本足場用の部材を厚く持つ会社は、需要の受け皿として見られやすくなります。

点検者の指名と記録が加わった2023年10月の改正

これに先立つ2023年10月からは、足場を点検する際に点検者を指名し、組立てや変更の後の点検では点検者の氏名を記録・保存することも求められるようになりました。施工まで請け負う会社では、現場ごとの点検記録が日々の仕事に加わっています。記録が残っているかどうかは、売却の場でも見られる部分です。

枠組足場の在庫を抱えたまま迫られる、次世代足場への入れ替え

マンションの大規模修繕や公共施設の工事を支えてきた枠組足場は、1950年代からほぼ同じ規格で使われてきた資材です。近年は、手すりを先に取り付けられ、階高にもゆとりのある次世代足場が登場し、元請の指定で採用する現場も出てきました。新しい足場材を買いそろえるには、まとまった借入が必要に。鋼材の値上がりも重なり、枠組足場の在庫を抱えたまま入れ替えを進めれば、返済と社長の個人保証はさらに膨らみます。

作業主任者と配送の担い手、そして後継者の不在

施工まで請け負う会社では、高さ5メートル以上の足場を組む現場に、技能講習を修了した足場の組立て等作業主任者を置く必要があります。資材を運ぶトラックの運転手も集めにくくなりました。2024年4月からは建設業にも時間外労働の上限規制が適用され、繁忙期を残業で乗り切るやり方は通りにくい状況です。営業と段取りを社長が1人で担い、後継ぎも見当たらない会社は多いもの。社外への事業承継を考えるなら、建設業に明るい相談先を仲介一覧で見比べておくと迷いません。

▷関連:サービス業のM&A|人手不足と許認可承継で変わる譲渡事例と相場

資材と職人を託す前に知りたい、足場リース会社の売却の損得

売却すれば職人も資材も相手の都合で動かされる、という心配をよく耳にします。実際には、条件の決め方次第で守れるものが多くあります。

資材・職人・借入、それぞれに表れるメリットとデメリット

足場リース会社の売却では、資材と人と借入がひとまとまりで動きます。譲渡オーナーにとっての利点と負担を、項目ごとに下表へ並べました。借入の返済や個人保証の解除は、多くの場合、譲受企業の資金を使って決済日に合わせて進めます。在庫の実在確認や古い部材の扱いは、売却前の準備がそのまま評価に響くところ。表の右側に挙げた負担も、売却を決める前から手を打てば軽くできるものがほとんどです。

譲渡オーナーのメリット譲渡オーナーのデメリット
資材購入の借入と個人保証からの解放
譲受企業の資金で返済や借り換えを進め、社長の保証を外す道が開けます。
資材の入れ替え投資を任せられる
次世代足場への切り替えなど、単独では重い投資を譲受企業の資金力で進められます。
職人と協力会社の仕事を残せる
組立て班や協力会社との取引が続き、地域の現場を支える力を保てます。
屋号と元請との関係を残せる
株式譲渡なら会社はそのまま残り、元請や足場工事会社との取引も原則として続きます。
創業者としての対価を得られる
株式の対価を、引退後の生活や相続への備えに充てられます。
安全管理や教育の仕組みを底上げできる
点検記録や特別教育の体制を、譲受企業の仕組みで補えます。
資材の棚卸に手間がかかる
貸出中の資材まで数え直し、台帳とのずれを説明する必要があります。
古い資材は評価が伸びにくい
規格や傷みの状態によっては、除却を前提に価格から外されます。
仕入れや価格の自由度が下がる
資材の購入先や貸出の単価が、グループの方針に合わせて変わることがあります。
職人や協力会社への説明が要る
伝える順番を誤ると、引き抜きや取引の離反を招きかねません。
引継ぎ期間の関与
元請との顔つなぎのため、一定期間は役員や顧問として残るよう求められることがあります。
個人名義の土地や車両の扱い
資材置場やトラックが社長名義なら、会社へ貸すか売るかを決めておく必要があります。

会社ごと引き継ぐ株式譲渡と、資材や部門を切り出す事業譲渡

足場リース会社の売却では、株式譲渡が中心です。会社が残るため、とび・土工工事業の建設業許可も、元請とのリース契約や職人の雇用も、原則としてそのまま続きます。資材や一部の部門だけを譲る事業譲渡では、契約や雇用を1件ずつ移すことに。許可は譲受企業が取り直すか、事前に国土交通大臣や知事の認可を受けて引き継ぐ必要があります。1件500万円(税込)以上の足場工事を請け負う会社にとって、許可の扱いは手法を選ぶ決め手の1つです。

ヤードの在庫と現場の貸出分から読む、足場リース会社の株価

譲受企業に示した数量と、ヤードの実数との食い違い。売却の場で起きがちなつまずきです。株価は、資材の中身から組み立て直します。

年買法の算式に、資材の時価をどう入れるか

中小の足場リース会社でも、最もよく使われるのは年買法(年倍法)です。算式は「時価純資産+のれん」で、時価に直した純資産に、のれんとして数年分の利益を加えて目安を出します。将来の利益から逆算するDCF法を併せて使う場合も。足場リース会社は資産の多くを資材が占めるため、帳簿の価額を貸出の実力に見合う時価へ置き直す作業ひとつで、時価純資産が大きく動きます。株価の出発点は、決算書ではなく資材台帳です。

簿価ゼロでも稼ぐ資材と、規格や傷みで値が付かない資材

長く使われてきた足場材は、帳簿上の価値がほとんど残っていなくても、整備すれば貸し出せるものが少なくありません。こうした資材は時価純資産を押し上げます。反対に、曲がりや錆の進んだ部材、規格を確かめられない部材は評価から外れがち。鋼管足場に使う部材や附属金具は、労働安全衛生法第42条により、国の規格を備えなければ貸与できないためです。

台帳の数量と、ヤード・現場にある実数の照合

国の調査で、足場材の稼働率は5割前後。月末時点で、保有する資材のおよそ半分が現場に出ている計算です。ヤードの在庫を数えるだけでは足りず、現場ごとの貸出明細と突き合わせて初めて実数が見えてきます。返却のたびに出る不足分を弁償として請求できているか、紛失や盗難で台帳だけに残る資材がないか。数量の根拠を示せるかどうかが、譲受企業の信頼を左右します。

稼働率から弁償の回収まで、評価の場で求められる数字

下表は、足場リース会社の企業価値評価で、譲受企業が実際に求めてくる数字の例です。売上や利益が同じでも、資材が遊んでいる会社と回っている会社では、値段に差がつきます。とくに見られるのは、品目ごとの稼働率と、基本料や日額賃料の単価を保てているか。返却時の修理費や不足分の弁償を取りこぼしていないかも、資材の目減りを映す数字として調べられます。繁忙期と閑散期の差は、月ごとの推移で見せれば、季節の波として受け止めてもらえるはず。

求められる数字主な見方評価に響く理由
品目別の稼働率足場材・長尺足場材・支保工などの保有数に対し、月末に現場へ出ている割合遊休が多いと、資材の時価の割に利益が残らない
基本料と日額賃料現場ごとの単価、値引きの実態、貸出日数の推移単価を保てる顧客基盤が、利益の源になる
修理費・不足弁償の回収返却時の補修費や紛失分を請求し、回収できているか取りこぼしは、資材の目減りと利益の流出に直結する
資材の構成と購入時期枠組足場・くさび式足場・次世代足場の比率と購入年入れ替え投資の時期と金額を読む材料になる
施工付き売上の比率資材だけの貸出と、組立て・解体込みの売上の内訳施工の比率が高いほど、職人の引継ぎが価格の前提になる
顧客の分散上位の足場工事会社や元請への売上の集中度1社が離れただけで稼働率が大きく落ちる
拠点と配送資材置場の面積と立地、トラックの台数、配送できる範囲譲受企業が取得する目的そのものになりやすい

枠組足場の在庫は、品目と状態の掛け合わせで示す

税理士法人グループのM&A仲介会社であるみつきコンサルティングでは、足場リース会社の資材を品目ごとに「貸出中」「整備済みで出せる」「要整備」「除却候補」の4つに分けて数え直します。枠組足場が多い会社でも、整備済みの数と過去の稼働率を添えれば、次世代足場を主力とする譲受企業に、すぐ使える在庫としての説明が可能に。除却候補を先に示しておけば、価格交渉で資材全体を割り引かれる展開も避けやすくなります。

足場リース会社に手を挙げる譲受企業と、それぞれの狙い

名乗りを上げるのは、近くの同業とは限りません。遠方から進出したい会社や、施工力を求める会社も候補に入ります。

資材置場ごと地域を得たい仮設材メーカーと広域レンタル

製造からレンタルまで手がけるメーカー系や、広い地域に拠点を持つレンタル会社は、手薄な地域の資材置場と顧客をまとめて得られる相手として、地場の会社に関心を寄せます。先の表のタカミヤによる日建リースの取得も、中国地区での成長と機材供給拠点の拡充が狙いでした。足場材はかさばり、運ぶ距離が延びるほど配送の手間がかさむ資材。地元に置き場と配送網を持つ会社には、それだけで価値が生まれます。

資材を自前で持ちたい足場工事会社と、施工力を求める会社

足場の組立てを主力とする工事会社にとって、資材を借りる費用は重い負担です。地場の足場リース会社を迎えれば、自社の現場に在庫を回しつつ、他社への貸出でも稼げます。逆向きの動きもあり、先の表の信和は、仮設資材のメーカーとして、足場の施工を担うヤグミのグループを迎えました。建物の改修や管理を手がける会社が、外に頼ってきた足場工事を内製化しようと、施工力のある会社を探す例も見られます。

人手不足とインフレの局面に投資する投資ファンド

先の表のとおり、2026年3月には、足場・仮設機材レンタル大手の杉孝グループを傘下に持つ会社の株式を、オリックスがカーライルの組成した会社へ譲る契約を結びました。投資ファンドは、人手不足や物価高で再編が進む局面を、規模を広げる好機ととらえて動く存在です。地場の会社は、こうしたグループが手薄な地域を補う相手として迎える対象にもなり得ます。少数の株式を持ってもらう資本業務提携で組み、数年かけて持分を移していく段階的な形もとれます。

資材の種類が補い合う相手から打診する

後述する九州の売却事例でも、くさび式足場を主力とする東北の会社が、九州への進出を目指すなかで、枠組足場を持つ会社との組み合わせに相乗効果を見いだしました。資材の種類が違えば、互いの在庫で受けられる現場が広がります。当社では譲受候補を、同じ県の同業だけでなく、保有資材の種類と進出したい地域の2つの軸で洗い出します。案件掲載サイトに自ら情報を出す方法もありますが、資材の量や拠点の場所から社名を推し量られやすい業界。組み合わせから候補を描けるM&A仲介に相談すれば、相手の幅は広がります。

M&Aが成立した場合のみ、譲渡対価に応じた手数料を頂戴します。
売主様は、ご成約まで費用負担なくスタートできます。


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譲受企業の調査で問われる、資材置場の土地と足場の点検記録

調査の終盤になって、資材置場の地目が畑のままだと判明する場面も。土地・記録・取引先の3点は、早めに確かめておきたいところです。

農地のまま使ってきた資材置場と、地目の確認

足場リース会社の資材置場は郊外の広い土地にあることが多く、なかには地目が田や畑のまま使われてきた土地もあります。農地を資材置場として使うには、農地法による転用の許可が必要です(市街化区域では届出)。許可を得ずに使ってきた土地は、譲受企業のデューデリジェンスで是正を求められ、条件の見直しにつながることも。社長個人や親族の土地を会社が借りている場合は、賃料の水準と契約書の有無もあわせて確認します。

点検者の記録、労働災害の履歴、規格を確かめられない部材

施工まで請け負う会社では、2023年10月から求められるようになった点検者の指名と氏名の記録に加え、作業主任者の選任や特別教育の修了の記録が確かめられます。過去の労働災害や、労働基準監督署から受けた是正勧告の有無も調べられるところ。貸し出す資材の側では、鋼管足場の部材が国の規格に合っているかが論点になります。規格を確かめられない部材が混じっていれば、売却前に区分しておくと安心です。

契約の安全条項に備え、点検と教育の記録をそろえる

譲渡契約では、会社の状態を事実として約束する表明保証の条項に、安全や法令の遵守が盛り込まれるのが一般的です。記録が抜けたまま契約に臨むと、譲渡後に補償を求められるおそれも。売却を決めた段階で直近数年分の点検と教育の記録をそろえ、欠けている部分を把握しておきます。

元請の協力会社登録と、安全書類の名義

支援現場では、主要な元請ごとに、協力会社としての登録の有無、作業員名簿などの安全書類(グリーンファイル)の名義、貸出中の資材の契約先を一覧にしてから、譲受企業との協議に入ります。株式譲渡なら会社は変わりませんが、元請によっては株主や代表者が替わったときに届け出や再審査を求めることがあるためです。足場リースの売却をみつきコンサルティングが支援する際も、こうした取引先ごとの手続を決済日から逆算して段取りします。主要な元請へ説明する順番まで決めておけば、譲渡後も現場は止まりません。

枠組足場30年の地場ブランドを、くさび式足場の同業へ託した売却事例

とび・足場組立工事と足場材リースを営む、九州の会社の事例です。

夕暮れ時の建設現場に組まれた金属製の足場(とび・足場組立工事のM&A成約事例のイメージ画像)

受注の落ち込みと家族への思いが重なった決断

1993年設立、売上約8,000万円。枠組足場を中心に、大規模修繕やマンション・公共施設の新築工事を手がけてきました。後継者がおらず、コロナ禍の受注減、年齢と体調への不安、娘2人にこれ以上負担をかけたくない思いが重なり、オーナー(譲渡時74歳)は会社の畳み方を考え始めます。そこへ届いた1通のダイレクトメールをきっかけに、みつきコンサルティングへ相談しました。

くさび式足場の会社が見た、枠組足場との相乗効果

株式譲渡による承継の説明を受け、第三者に託す道を選択。検討から約半年で、九州への進出を目指す東北の足場工事・資材販売会社と出会いました。くさび式(楔形)足場が主力の相手にとって、枠組足場を持つ同社は補い合える存在です。資材販売の販路を広げたい意向とも重なり、2022年8月、トップ面談から3カ月で成約しました。

資材と販路を合わせ、全国展開を見据える

譲渡後は、地場で築いたブランドの強化に加え、譲受企業の資材を生かした技術の向上、両社の販路を合わせた全国展開が期待されています。

【インタビュー全文】九州のとび・足場材リース会社が東北の足場会社へ株式譲渡した経緯を読む

仮設資材リース会社の売却で寄せられる質問

メーカーとの取引、古い資材の処分、職人との契約など、売却を前にしたオーナーから実際に届く質問を集めました。

Q:仮設材メーカーと販売店の契約を結んでいますが、売却で取引条件は変わりますか?

株式譲渡なら契約の当事者は会社のままなので、原則として取引は続きます。現場で確かめるのは、契約書に株主や代表者が替わったときの通知や解除の条項がないかという点。譲受企業が別のメーカーの系列なら、仕入先や販売の条件を見直す話が出ることもあります。どちらに寄せるかは、譲受企業との協議と契約条項次第です。

Q:鉄スクラップの相場が高いうちに、古い資材を処分してから売却したほうが得ですか?

一概には言えません。除却候補の部材を売って現金に換えても、時価純資産の中身が資材から現金に替わるだけで、評価が大きく増えるわけではないためです。保管や整備の手間が減り、稼働率の見え方が良くなる効果はあります。ただし貸し出せる資材まで手放せば、売上を支える力が落ちることに。処分の時期で除却損や処分益の計上年度も変わるため、みつきコンサルティングでは決算期と合わせて判断します。

Q:一人親方の職人に組立てを任せていますが、売却後も同じ体制で続けられますか?

続けられる場合が多いものの、譲受企業は契約の実態を確かめます。作業の指示や時間の拘束が社員と変わらなければ、雇用に近いと見られるおそれがあるためです。2025年4月からは、危険な場所での立入禁止や退避などの措置の対象が、一人親方など社員以外の人にも広がりました。請負契約書と安全教育の記録をそろえておけば、受け入れの協議も進めやすくなります。

Q:同業から借りた資材が自社の資材と混ざってヤードにありますが、売却の妨げになりますか?

妨げにはなりませんが、棚卸の段階で分けて数えます。他社の資材を自社の在庫に含めたまま株価を出すと、後から数量の誤りとして指摘され、価格の見直しにつながるためです。現場では、刻印や塗装の色で持ち主を見分け、借りている資材の契約と未払いの賃料を一覧にします。返す予定の数量まで示せれば、譲受企業の不安も和らぎます。

税理士法人を母体とするM&A仲介会社|みつきコンサルティングが選ばれる理由

まとめ|足場リースの会社売却で見落とせない実務論点

足場リース会社の売却では、資材の数量と状態、品目ごとの稼働率、本足場の原則化を受けた品ぞろえ、施工を支える職人と許可、資材置場の土地が、価格と相手選びを分けます。長く貸し出してきた資材と人をどこへ託すか、迷うのは当然のことです。

みつきコンサルティングは財務・税務に強いM&A仲介会社として、中小企業のM&A仲介の実績経験が豊富です。資材の時価評価や許可の承継など、足場リースに特化した論点を専門スタッフが受け持ち、相談先選びの段階からご相談に応じます。足場リースの会社売却なら、みつきコンサルティングへ。

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著者

田原 聖治
田原 聖治事業法人第一部長/M&A担当ディレクター
みずほ銀行にて大手企業から中小企業まで様々なファイナンスを支援。みつきコンサルティングでは、各種メーカーやアパレル企業等の事業計画立案・実行支援に従事。現在は、IT・テクノロジー・人材業界を中心に経営課題を解決。M&Aの成約実績多数、M&A仲介・助言の経験年数は10年以上
監修者 神門 剛 代表取締役 / 公認会計士・税理士

みつきコンサルティングは、中小企業の会社売却・事業承継に特化した譲渡企業様に完全成功報酬制のM&A仲介会社です。売り手と買い手企業の最適なマッチングを、経験豊富なM&Aコンサルタントが初期相談から成約まで一貫してフルサポートします。

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