- 本日は、C社様の譲渡についてお話を伺います。まず、御社の設立から現在に至るまでの経緯と、環境調査・分析業界の動向についてお聞かせください。
当社は2000年頃に設立し、今年で10数年目を迎えます。当初は小規模な土壌調査から始まりましたが、徐々に事業領域を拡大し、現在では大気、水質、騒音、振動、アスベスト関連など、幅広い品目において環境調査・分析を手がけています。
業界の動向としては、法規制の強化や社会的な環境意識の高まりにより、需要は着実に増加しています。特に近年は、SDGsやESG投資の観点から、企業の環境対応が重視されるようになり、我々の役割はますます重要になってきていると感じています。
- 長年経営者として携わってこられた中で、特に印象に残っているエピソードはありますか?
そうですね、現在も続いておりますがリニアに関する業務に携わっていることでしょうか。日本を横断する交通網を構築するという国家プロジェクトになりますので、土壌調査だけでなく、騒音、振動などの調査も大規模なものになります。求められる水準は当然高くなりますが、当社の技術力が日本の発展に貢献しているという大きなやりがいを感じております。
- そのような中で、M&Aを検討されたきっかけについてお聞かせください。
息子はすでに異業種の大手企業に勤めており、数年前ですが、話し合いの結果、当社を継ぐことはないとの結論にいたりました。その後、社内でも後継者候補を探してみましたが、残念ながら経営を任せられる人材はいませんでした。かりに従業員のなかで後継者候補が見つかったとしても、次の問題として株式承継の難しさがあることも理解してました。
- では、今回みつきコンサルティングとお付き合いが始まったきっかけは何だったのでしょうか?
ちょうど悩んでいたタイミングで連絡をもらいました。M&Aの営業は以前から受けてましたが、社内承継も選択肢に含めて比較できるとのことで面談してみました。
税理士法人が母体ということで税務についての質問についても丁寧に回答してくれました。
特殊な業界ということもあり、はじめは事業についてはそこまで深くは理解していないようでしたが、業界誌を読んだり、わたしに質問をしたりと、徐々に業界への理解を深めていく姿勢に好感を持ちました。
- 具体的にどのような点で、みつきコンサルティングの理解が深まったと感じましたか?
例えば、環境調査・分析業特有の課題、例えば高度な専門性を持つ人材の確保や、最新の分析機器への投資の必要性などについて、的確な質問や意見を述べるようになりました。
さらに、私たちの強みであるアスベスト領域やそれにより形成された顧客基盤、一方で、品質を保ちながらいかに納期を早くするかなどといった課題についても、それを正確に理解し、それらを補えるような買い手候補を提案してくれました。
- 買い手候補として、A社を紹介された際の印象はいかがでしたか?
A社については、非常に良い印象を持ちました。特にトップ面談での経営陣の方々との話をとおして、業務連携においての具体的なビジョンに魅力を感じました。
また、環境調査・分析業務を通じて社会貢献するという私たちの理念に対して、A社の経営陣も強く共感してくれました。なによりA社はグループ内において既に同事業を展開しておりますので、人材、技術交流の面においてもすぐに効果がでるとの共通認識もありました。
- 譲渡条件について、どのようなプロセスで合意に至ったのでしょうか?
譲渡金額については、みつきコンサルティングから初期の段階で想定額の説明を受けておりましたし、A社より提示された譲渡金額についてもその想定額の範囲内でしたので、交渉することもなくすぐに了承しました。当然、譲渡金額はとても大切な判断基準ですが、A社との相性の良さや将来性を考えると、会社の中長期的な発展のためには間違いのない候補先との考えになっていたため、悩むことはありませんでした。
A社が私たちの従業員の雇用を継続し、さらなる成長の機会を提供してくれるという約束をしてくれたことも、大きな決め手となりました。
- 譲渡条件で、その他重視されたポイントはありましたか?
はい、年内クロージングを必要条件としました。スケジュール的には、十分な余裕があるとは聞いておりましたが、念のため、社内の状況やスムーズな統合を考慮してのことです。年度の変わり目に合わせて円滑に事業を引き継ぎたいという思いがありました。
また、私自身の引継ぎ期間についても慎重に検討しました。突然経営者が変わることで、従業員や取引先に不安を与えたくなかったので、1年程度の時間を掛けて引継ぎをおこなう考えでした。しかし、A社としては、私の年齢から最低でもあと3年間は代表取締役として事業連携に貢献して欲しいとのことでした。A社との連携については非常に可能性を感じておりましたので、こちらについても快諾しました。
さらに、当社の社名や企業文化の維持についても条件を付けました。長年築いてきたブランドや、従業員が誇りを持って働ける環境を守りたかったのです。A社はこの点でも柔軟に対応してくれ、当社の独自性を尊重しつつ、グループの一員として成長させていく方針を示してくれました。
- 売却プロセスの中で、特に印象に残っているエピソードはありますか?
みつきコンサルティングの担当者が、当社の顧問税理士とのコミュニケーションを円滑に進めてくれたことが印象的でした。デューデリジェンス実施前に、担当者が顧問税理士に直接挨拶に行き、本件の説明を行ってくれました。
私も同席させていただいたのですが、担当者の説明が非常に丁寧で、税務面での潜在的なリスクやデューデリジェンスにおいて想定される論点について、打ち合わせをおこなっておりました。これにより、顧問税理士の協力を得やすくなり、スムーズに進められたと感じています。
また、私からも年内クロージングの目標を説明し、資料準備への協力をお願いしました。長年、お世話になっている顧問税理士で、私の後継者についても心配してくれておりましたので、快く協力してくれました。
- その結果、どのような効果がありましたか?
事前に想定資料リストに基づいて準備しておりましたので、デューデリジェンス開示時に必要な財務資料のほとんどが揃っておりました。これにより、プロセスがスムーズに進み、最終的にトップ面談からデューデリジェンス実施、株式譲渡契約の締結、クロージングまでを2ヶ月という短期間で完了することができました。
特に印象的だったのは、デューデリジェンスにおける対応です。A社担当の公認会計士や弁護士などの専門家から細かい質問が次々と寄せられましたが、みつきコンサルティングの担当者が間に入って整理してくれたおかげで、効率よく回答することができました。また、想定される論点についても事前に洗い出しておいたため、スムーズに説明することができました。
- 2ヶ月という短期間でのクロージングは、かなり迅速だと思います。何か特別な工夫をされたのでしょうか?
みつきコンサルティングの担当者が、買い手側であるA社とうまく連携してくれたことが大きかったと思います。特に、A社内で必要な決裁フローを確認し、意向表明書受理の段階でクロージングまでのスケジュールを共有していたことが効果的でした。
また、私自身もできる限りの協力をしました。例えば、デューデリジェンスに必要な資料は、通常業務に支障が出ない範囲で、できるだけ早く準備するよう心がけました。従業員に怪しまれるわけにはいかないので、週末を利用して資料を準備しましたが、みつきコンサルティングの担当者もよく一緒になって作業してくれました。
さらに、A社との面談や交渉の際には、できるだけ迅速に日程調整を行い、意思決定のスピードを上げるよう努めました。この点においても、みつきコンサルティングの担当者が両社の調整役として大きな役割を果たしてくれました。
- 売却プロセスを通じて、みつきコンサルティングのサポートで特に良かった点はどこでしょうか?
スケジュール管理の徹底さが印象的でした。例えば、デューデリジェンスの資料準備について、事前に想定リストを用意し、意向表明書受領前から準備を始めるよう指示してくれました。買い手側にもこのリストでデューデリジェンスを実施することを了承してもらったことで、実査前に必要な資料をすべて揃えることができました。
さらに、感情面でのサポートも非常に助かりました。M&A自体はじめての経験になりますので、先が見通せないことから精神的にストレスを感じることがありますが、担当者が常に寄り添ってくれ、不安や懸念を丁寧に聞いてくれました。例えば、従業員の処遇について悩んでいた時も、過去の事例を踏まえたアドバイスをしてくれ、心強かったです。
また、A社との交渉の際には、私の意向を適切に代弁してくれただけでなく、時には冷静な判断を促してくれました。例えば、些細な条件にこだわりすぎて全体の合意が遅れそうになった時も、大局的な視点から助言をくれ、スムーズな合意形成につながりました。
- 売却後、事業や従業員の方々の状況はいかがでしょうか?
非常に良好です。A社もグループ内で環境調査・分析業をおこなっておりますので、人材、技術交流は早い段階で実施しました。その他、お互いがフォローできなかった顧客に対してのケアが可能になりました。ここは、これまで大きな機会損失になっていたので、その効果は大きいです。
従業員も、大手企業グループの一員となったことで、モチベーションが上がっているように感じます。特に若手社員にとっては、キャリアアップの機会が増えたことが大きな魅力になっているようです。実際に、A社のグループ会社への出向や、新しいプロジェクトへの参加など、様々な機会が生まれています。
また、A社の持つ体系的な教育システムを導入することで、従業員のスキルアップがより効果的に行えるようになりました。一方で、私たちが大切にしてきた顧客との密接な関係性や、柔軟な対応力といった強みも維持できています。
- 今回のM&Aを経験して、他の中小企業経営者にアドバイスするとしたら、どのようなことをお伝えしますか?
まず、M&Aを検討する際は、単に高値で売却することだけを目指すのではなく、自社の事業成長や従業員の将来を真剣に考えることが重要だと伝えたいです。私の場合、A社との相性や将来性を重視しました。結果的に、それが正しい選択だったと実感しています。
次に、早めの準備と決断の重要性です。私自身、60代なかばに差し掛かってから事業承継について考えはじめましたが、実際に行動を起こすまでに時間がかかってしまいました。ですので、事業承継やM&Aの可能性を感じたら、すぐにでも情報収集や専門家への相談を始めることをお勧めします。
また、信頼できるアドバイザーを見つけることも大切です。みつきコンサルティングのように、業界への理解を深めようと努力し、細やかなサポートをしてくれるアドバイザーと組むことで、プロセスがスムーズになります。特に、自社の強みや課題を正確に把握し、それを活かせる買い手候補を探してくれるアドバイザーは貴重です。
- 最後に、今後の展望についてお聞かせください。
売主様:A社グループの一員となったことで、より大きな視点で環境調査・分析業の発展に貢献できると考えています。私たちの専門性とA社のリソースを組み合わせることで、新たな環境ソリューションの開発や、より広範囲な顧客へのサービス提供が可能になると期待しています。
私としては、最低3年間は代表取締役として会社の成長、発展のために邁進するつもりです。その後は、これまでの経験を活かして、業界団体での活動や、大学での講義など、様々な形で環境技術の重要性を伝え、後進の育成に貢献していきたいと考えています。
また、現在も趣味でおこなっている家庭菜園の時間を増やしつつ、家族と日本中を旅行したいとも考えています。
M&Aを決断してよかったと心から思っています。これからの当社の発展が非常に楽しみです。
- 本日は貴重なお話をありがとうございました。C社様とA社様の今後のさらなる発展を願っております。