- 本日は、Y社の譲渡に関してお話を伺います。まず、M&Aを検討されるきっかけについてお聞かせください。
実は、当初はM&Aを積極的に検討していたわけではありませんでした。後継者不在の課題は認識していましたが、まだまだ先の話だと漠然と考えていました。ただ、みつきコンサルティングの担当者からの提案を受けて、我が社を指名で提携希望をしている具体的な買い手候補がいるということで興味を持ちました。
- みつきコンサルティングからの提案は、どのような形で行われたのでしょうか?
実は、会社宛のダイレクトメールは破棄してしまっていて目を通していなかったんです。しかし、自宅に送られてきた手紙を見て、具体的な相手が本当にいそうだという印象を持ちました。正直、こういった類の誘いは本当に多く時間が無駄になるのが嫌だったので、最初は慎重でしたが、具体的な提案なら少し話を聞いてみようと思いました。
- 初回の面談ではどのような印象を持たれましたか?
初回面談の際に、候補先の社名や具体的な提携プランを開示したいということで、事前に秘密保持契約書を締結しました。そして、初回面談で、みつきコンサルティングの担当者からC社を紹介されました。特に印象的だったのは、日本の製薬業界を変革したいという考え方でした。これは私も必要性を感じていましたので、非常に興味深く感じました。また、C社の社長の経営に対する考え方に強く共感しました。私には、会社を拡大していこうという考えはありませんでしたが、人材採用や業務のシステム化など、現状の課題解決につながる可能性を感じました。
- トップ面談ではどのような話し合いが行われましたか?
最初のトップ面談では、C社の社長から主に経営に関する考え方やグループ会社への方針について話がありました。臨床分野への参入の理由やSMO事業の方針、CROを含む臨床分野全体の目標について詳しく説明していただきました。また、医療従事者データベースを活用した人的サポートや、治験臨床におけるスペシャリティ領域を中心としたセグメント戦略での連携可能性についても議論しました。
- C社との連携にどのような可能性を感じられましたか?
特に印象的だったのは、C社からの営業サポートの可能性です。製薬企業とのネットワークや膨大な量の医療従事者データベースは非常に魅力的でした。また、受託施設や治験領域などをもとに具体的な連携の可能性について意見交換できたことも決断の契機になったと感じています。
- 株式価値算定のプロセスはどのように進められましたか?
当社は人材集約型の企業で、主だった資産はありません。そのため、拠点別、サービス別の人員、治験施設数、契約例数などを過年度実績から傾向分析しました。みつきコンサルティングの担当者がこれらの予想推移を反映した事業計画を策定し、それをもとに株式価値の算定を行いました。その後、一定期間、担当者とC社の間で譲渡条件の交渉がおこなわれ、最終的には満足のいく条件の提示がありました。
- グループ参画を決断されたのは、どの時点でしょうか?
2回目のトップ面談で正式に決断しました。この面談では、事業計画をもとにどのKPIに早期に協業効果を出せるかを議論しました。これらの議論を通じて、グループ参画のメリットを強く感じ、決断に至りました。
-その際に話し合われた協業効果について、具体的に教えていただくことはできますか?
先ず、C社の医療従事者データベースを活用した新たな病院の開拓やCNS領域などの治験サービスの拡充です。また、システムインフラの共有やCROとの連携による相乗効果、治験領域のデジタル化の推進なども魅力的でした。さらに、販管部門の効率化による全体最適化も期待できると考えました。
- デューデリジェンス(DD)のプロセスはスムーズに進みましたか?
はい、非常にスムーズでした。実は、意向表明前から想定DDリストで事前準備に入っていたんです。業種としてアセットがありませんので、労務関係や取引先との契約内容などが主な調査対象になると、みつきコンサルティングの担当者から説明を受けておりました。したがって、関連する就業規則などの社内規程、雇用契約書や製薬会社や医療施設との契約書を非開示箇所の特定なども含め、事前には対応していました。また、C社がM&Aに慣れていることや、財務DDと法務DDの担当者がM&A経験豊富だったこともあり、非常にスムーズに進行しました。
- クロージングと従業員説明会はどのように行われましたか?
クロージングは当社で行われ、支店についてはWebでつなぎました。。従業員説明会では、C社の社長が直接ご挨拶くださり、会社紹介や今後の連携について説明がありました。従業員の反応も良好で、新しい出発に期待を感じているようでした。
- このM&Aの成功要因は何だとお考えですか?
やはりC社に明確なM&Aの意向があったこと、それが当社にとっても事業シナジーが期待できたことです。C社の社長の人柄や柔軟な対応力も大きな要因でした。
一緒に働いてみたいと思ったんです。
- みつきコンサルティングのサポートについて、どのような印象をお持ちですか?
非常に満足しています。面談での丁寧な説明がとても印象的です。初回面談でのM&Aの流れ、C社の紹介やその後の株式価値算定など分かりやすく説明してくれました。きめ細かい対応があったからこそ、私もM&Aを真剣に検討する気になりました。また、トップ面談の設定や株式譲渡契約書の作成など、各段階で適切なサポートを受けられたことが、スムーズな進行につながったと感じています。
- M&Aを検討している他の経営者へのアドバイスがあればお聞かせください。
まず、M&Aを漠然とした将来の課題と考えるのではなく、具体的な選択肢として真剣に検討することが大切だと思います。私も最初は慎重でしたが、実際に話を聞いてみると、思わぬ可能性が見えてきました。また、適切なアドバイザーを選ぶことも重要です。みつきコンサルティングのような経験豊富な専門家のサポートがあると、複雑なプロセスをスムーズに進められます。そして、相手企業との価値観の共有も大切です。単なる事業の売買ではなく、互いの強みを活かした新たな価値創造を目指すことで、より良い結果につながると思います。
- M&A後の展望についてお聞かせください。
C社とのシナジーを最大限に活かし、新たな成長を目指したいと考えています。特に、医療従事者データベースの活用や、デジタル化の推進には大きな期待を寄せています。また、グループの一員となることで、より大規模なプロジェクトにも挑戦できるようになると思います。従業員にとっても、キャリアの選択肢が広がるなど、様々なメリットがあると確信しています。これからは、C社と共に、医療業界により大きな貢献ができるよう努力していきたいと思います。
- 具体的な事業展開について、もう少し詳しくお聞かせください。
C社との統合後、まず取り組みたいのが、治験領域でのデジタル化推進です。当社のSMO事業の知見と、C社のデジタル技術を組み合わせることで、治験プロセスの効率化や精度向上が図れると考えています。例えば、AIを活用した被験者スクリーニングシステムの開発や、リモートモニタリングの導入などを検討しています。
また、C社の持つデータベースを活用して、新たな治験施設の開拓も進めていきたいと思います。特に、これまでアプローチが難しかった地方の医療機関や専門性の高い医療機関へのアクセスが容易になると期待しています。
さらに、C社のeラーニングシステムを活用して、CRC(治験コーディネーター)の教育プログラムを充実させることも計画しています。質の高いCRCの育成は、治験の質と効率を向上させる上で非常に重要です。
- 従業員の方々の反応はいかがでしたか?
従業員の反応は、予想以上に前向きでした。特に若手社員から、C社のデジタル技術や幅広いネットワークを活用した新しいプロジェクトに参加したいという声が多く上がっています。また、中堅社員からは、キャリアアップの機会が増えることへの期待の声も聞かれました。
- M&A後の組織体制について、どのようなお考えをお持ちですか?
基本的には、当社の既存の組織体制を維持しながら、C社とのシナジーを最大化できる部分で段階的に統合を進めていく予定です。例えば、営業部門については、C社の製薬企業ネットワークを活用するため、早期に統合を検討しています。
一方で、SMO事業の現場運営については、当社の強みを活かすため、当面は現行の体制を維持します。ただし、デジタル化推進のためのプロジェクトチームを新設し、ここにはC社からの人材も加わる予定です。
また、管理部門については、効率化の観点から段階的に統合を進めていく予定です。ただし、従業員の雇用条件などには十分に配慮し、慎重に進めていきたいと考えています。
- 最後に、M&Aを検討している他の経営者の方々へメッセージをお願いします。
M&Aは単なる事業売却ではなく、新たな成長の機会だと捉えることが重要だと思います。私の場合、最初は慎重でしたが、みつきコンサルティングのサポートを受けながら、C社との対話を重ねるなかで、新たな可能性が見えてきました。
特に強調したいのは、相手企業との価値観の共有です。私はC社の経営理念や社長の経営哲学に共感できたことが、決断の大きな要因となりました。単なる数字の話ではなく、どのような未来を一緒に作っていけるかを議論することが重要だと感じました。
また、M&Aのプロセスは予想以上に複雑で、時に感情的になることもあります。そのため、みつきコンサルティングのような経験豊富なアドバイザーのサポートは非常に心強かったです。彼らの専門知識と冷静な判断が、プロセス全体をスムーズに進める上で大きな役割を果たしました。
最後に、従業員とのコミュニケーションも忘れてはいけません。M&Aは会社の未来を左右する大きな決断です。従業員の不安を軽減し、新しい環境への期待を高めるためにも、適切なタイミングでの情報共有と丁寧な説明が必要だと感じました。
M&Aは確かに大きな決断ですが、適切なパートナーと共に進めることで、会社と従業員にとって新たな成長の機会となる可能性を秘めています。慎重に、しかし前向きに検討することをお勧めします。