黒字でも後継者不在で廃業する中小企業が増えています。10年後も会社を残すには、業績改善と並行して早期の出口戦略の検討が欠かせません。本記事では、M&A仲介の現場視点から、中小企業生存率の現実と第三者承継による会社存続の道筋、判断と準備のタイミングを解説します。
「うちの会社でも売却できるだろうか…」、「何から始めればいいんだろう…」。そのようなオーナー経営者の不安に、中小企業向けM&A仲介会社みつきコンサルティングは、20年間・500件以上の支援実績に基づき、お応えします。本格検討前の情報収集として、まずはお話をお聞かせください。
> みつきコンサルティングに無料相談する|税理士法人グループ
中小企業の生存率と廃業をめぐる現実
会社をあと10年、20年と続けたい。そう考えるオーナー経営者にとって、まず直視すべきは「同じ規模の会社がどれだけ生き残っているか」という現実です。数字を眺めるだけでなく、廃業の背景にある構造を押さえることで、自社の選択肢が見えてきます。
10年後に残っている中小企業の割合
中小企業白書では、起業からおおむね5年で約8割、10年で約7割の企業が事業を継続しているという推計が示されてきました。出典:中小企業庁「中小企業白書」。一見すると高い数字に見えますが、ここには「会社の名前」が残っているだけのケースも含まれます。実態として、創業から30年を迎える会社は3割前後にまで絞り込まれます。
統計の落とし穴
公表されている生存率は、登録データに含まれる比較的規模のある会社が対象となりがちです。零細・個人事業を含めて捉えると、長期の存続率はさらに下がります。「平均」だけを見て安心するのは危険で、自社の事業モデルや業種特性、後継者の有無に置き換えて読み直す必要があります。
2024年の休廃業・解散は過去最多
東京商工リサーチの調査によれば、2024年の休廃業・解散企業は6万2,695件と過去最多を更新しました。倒産を合わせれば年間およそ7万社が市場から姿を消した計算になります。出典:東京商工リサーチ「2024年休廃業・解散企業動向調査」。
休廃業企業の代表者は70代が中心
同調査では、休廃業した企業の代表者の平均年齢は72.6歳。70代が4割超、80代以上が約4分の1を占めます。経営者個人の体力や意欲が会社の寿命を直接左右している、という構図が浮かび上がります。
黒字廃業が増え続ける構造
廃業企業の半数超は、直近期で黒字あるいは収支均衡を維持していたとされます。つまり、経営が立ち行かなくなったから店じまいを選んだのではなく、「続けたくても続けられない」会社が大量に発生している。引き金は資金繰りの悪化以上に、後継者の不在にあります。
会社が「生存」する3つの道
廃業件数の増加に対し、経営者が取り得る選択肢は突き詰めれば3つに整理できます。自社で続けるのか、身内・社員に託すのか、第三者に託すのか。それぞれに固有のハードルがあります。
自力で続ける ─ 経営改善と後継者育成
最初に検討するのは、現体制での継続です。固定費の見直し、原価率の改善、取引先や金融機関との関係再構築といった経営改善を進めつつ、社内から後継者を育てる。教科書的にはこれが本筋ですが、現場で見る論点として、社長の年齢と後継候補の年齢差・実務経験を冷静に評価する必要があります。50代以上のオーナーが「あと10年で育てる」と言い切れる候補がいない場合、別の道を並行検討するのが現実的です。
親族・社員に渡す ─ 親族内承継・MBO
子や役員に株式を渡し、経営を任せる方法です。詳細は事業承継の全体像で解説していますが、株式の集約、相続税・贈与税対策、個人保証の引継ぎといった論点が一気に押し寄せます。後継者本人が「継ぎたい」と腹をくくっていることが大前提で、本人の意思があいまいなまま準備を進めると、最終局面で破談になる事例が後を絶ちません。
第三者に託す ─ M&Aによる事業承継
外部の事業会社やファンドに株式を譲渡し、屋号・従業員・取引先をまるごと引き継いでもらう方法です。後継者不在の中小企業にとって、ここ十年で現実的な選択肢として定着しました。後継者不足を第三者承継で解決する考え方の通り、黒字の会社ほど引き継ぎ手は見つかりやすい傾向があります。会社を「畳む」のではなく「託す」ことで、雇用と取引関係を守る。これが第三者承継の本質です。
廃業ではなくM&Aを選ぶ判断軸
3つの道のうち、自力継続と親族承継が難しくなったとき、最後に残る論点が「廃業か、M&Aか」です。両者は似て非なる選択であり、得るものと失うものがまったく違います。
廃業を選んだ場合に失うもの
廃業を決断すると、まず従業員は職を失います。長く付き合ってきた取引先には供給責任の精算が発生し、店舗・設備・在庫の処分費用、原状回復費、登記関連費用などが重くのしかかります。手元に残るのは、残余財産の換価額から負債と廃業コストを差し引いた金額です。詳しくは廃業とM&A売却の比較記事で解説しています。
「畳むだけでもお金がかかる」現実
支援現場で見る独自論点として、廃業コストの過小評価があります。リース解約金、解雇予告手当、店舗の原状回復、専門家報酬を積み上げると、想定の2倍以上に膨らむケースが珍しくありません。「やめれば負担が消える」のではなく、「やめるためにお金が必要」と捉え直す必要があります。
M&Aを選んだ場合に守れるもの
譲受企業に株式を譲渡できれば、会社そのものが存続します。従業員の雇用、屋号、取引先との関係、許認可、これらが原則そのまま引き継がれます。事業承継M&Aによるハッピーリタイアで示している通り、オーナー個人には株式の譲渡対価が入り、創業者利益として手元に残ります。
個人保証・連帯保証の解除も視野に
中小企業オーナーの大半は、金融機関借入に個人保証を入れています。廃業で会社が清算されると、保証債務が一気に顕在化するリスクがあります。一方、M&Aで譲渡先に経営権が移れば、経営者保証の解除に向けた交渉が可能となります。これは廃業では得られない、M&A特有の効果です。
自社が売却対象になる条件
「うちのような会社でも譲受先が見つかるのか」という疑問を、初回相談で必ずいただきます。結論から言うと、黒字基調で、属人化が極端でなく、許認可や技術・顧客基盤などの無形資産が一定程度あれば、年商数億円規模の会社でも複数の譲受候補が現れます。逆に、社長個人への依存度が極めて高い、簿外債務やコンプライアンスリスクが多い会社は、買い手の検討段階で離脱されやすいのが実情です。
中小企業の生存率を高める早期承継対策
ここからは、会社を10年後・20年後も残すために、オーナー経営者が今のうちに取り組むべき準備の話に移ります。
動き出しの目安は60歳前後
中小企業庁の各種データでも、後継者問題は60代から急速に深刻化します。経営者が65歳を超えてから検討を始めると、健康問題や判断力の低下が重なり、十分な交渉時間を確保できないケースが目立ちます。経営者が引退する平均年齢を踏まえ、60歳前後で「自社の出口の選択肢を一度棚卸しする」のが現実的なタイムラインです。
「まだ早い」が一番危ない
現場で繰り返し見る失敗パターンは、「まだ元気だから先送りする」というものです。M&Aは検討開始から成約まで、相手企業の選定・交渉・デューデリジェンス・契約と、平均で半年から1年以上かかります。最適なM&Aのタイミングの通り、業績がピーク圏にあるうちに動き出さないと、譲渡価額にも交渉力にも影響します。
売却前に整えておくべき事項
会社を高く・確実に譲渡するには、事前の整理が欠かせません。当社の支援現場で実際に使っているチェック項目を整理すると、下表のとおりです。
| 領域 | 整えるべきポイント |
|---|---|
| 株主構成 | 少数株主・名義株の整理、株主名簿の最新化 |
| 決算・税務 | 3期分の決算精度確認、税務リスクの洗い出し |
| 労務 | 未払残業代・社会保険加入状況の確認 |
| 契約 | 主要取引先との契約書、チェンジオブコントロール条項の有無 |
| 許認可 | 承継可能性、再取得が必要となる範囲の把握 |
| 個人保証 | 借入残高と保証状況の整理、解除交渉の準備 |
| 不動産・私財 | 会社資産と個人資産の分離、社長個人名義不動産の取扱方針 |
完璧を目指す必要はありません。譲受候補が現れたときに「全体像を1日で説明できる状態」になっていることが重要です。
個人保証と相続を同時に整理する
オーナー経営者の引退設計では、会社の話と個人の話が表裏一体です。譲渡対価をどう受け取るか、退職金との組み合わせで税負担をどう抑えるか、相続税対策をどう設計するか。これらをバラバラに考えると、最終的な手取りが大きく変わります。会社売却後の生活設計と相続を、最初の段階から同じテーブルで議論することをお勧めします。
オーナー経営者がよくつまずく論点
最後に、初回相談の場で繰り返し質問される論点を3つ取り上げます。
「うちのような小さな会社でも売れるのか」
年商1億円台・従業員10名未満の会社でも譲渡実績は積み上がっています。重要なのは規模よりも、「何が引き継がれるか」が明確であること。顧客基盤、職人技、地域での信用、安定した固定客、いずれも譲受企業にとっては価値ある資産です。一度ご相談いただければ、自社のどこに価値があるかを整理する材料を提供できます。
「従業員や取引先にいつ伝えるべきか」
結論として、最終契約締結(または譲渡実行)の直前または直後が原則です。早すぎる開示は情報漏洩リスクと従業員の動揺を招き、ディールそのものが頓挫することがあります。逆に遅すぎると、信頼関係を損ねます。タイミング設計は譲受企業とのすり合わせ事項で、仲介者の役割が大きい場面です。
「税金で半分以上持っていかれるのでは」
中小企業のオーナーが株式を譲渡する場合、譲渡所得には申告分離課税が適用され、税率は所得税・住民税・復興特別所得税を合わせて20.315%です。出典:国税庁。役員退職金との組み合わせや、事業承継税制の活用余地を含めて設計すれば、想像よりも手取りは残ります。詳しくは事業承継とM&Aの違いもご参照ください。
中小企業の生存率とM&Aに関するFAQ
実際の相談現場で多く寄せられる質問に、現場の感覚も交えてお答えします。
赤字でも譲渡可能なケースはあります。現場ではまず、赤字の原因が一時的なものか構造的なものか、無形資産(顧客基盤・技術・許認可)に価値があるかを確認します。譲渡対価は黒字企業より低くなる傾向ですが、廃業コストを差し引いた手取りでM&Aが上回ることは珍しくありません。
社長が60歳を超えたら、結論の出し方を含めて一度棚卸しすることをお勧めします。検討から成約まで1年前後かかるため、65歳・70歳を意識する頃には選択肢が狭まります。早めの相談ほど、譲渡先の選択肢も交渉余地も広がります。
契約条項と譲受企業の方針次第ですが、株式譲渡スキームでは原則として雇用条件はそのまま引き継がれます。譲渡契約に「一定期間の雇用維持」を明記することも可能です。譲受企業の選定段階で、雇用方針を最重要項目として確認することになります。
譲受企業と金融機関の合意次第です。事業承継時の経営者保証ガイドラインに基づき、解除を前提とした交渉を行うのが基本です。譲受企業の信用力が一定以上あれば、ほぼ解除できる一方、譲受側の財務内容等によっては一部残存することもあります。
その必要はありません。当社では、相談の結果「もう少し続けたほうがよい」「親族内承継を優先すべき」という結論に至ることも珍しくありません。出口の選択肢を整理する場として、まずはご相談ください。
企業生存率(存続率)のまとめ
中小企業の長期生存率は決して高くなく、2024年の休廃業・解散は過去最多を記録しました。背景にあるのは業績悪化以上に後継者不在です。会社を10年後も残したいなら、自力継続・親族内承継・第三者承継という3つの道を冷静に比較し、廃業で失うものとM&Aで守れるものを天秤にかける必要があります。早めに動き出すほど、選択肢は広がります。
みつきコンサルティングは税理士法人グループのM&A仲介会社として、中小企業の会社売却・事業承継支援に豊富な実績を持ちます。生存戦略としての第三者承継について、初期相談から成約まで一貫してサポートします。出口の選択肢を整理する段階からお気軽にご相談ください。
完全成功報酬のM&A仲介会社なら、みつきコンサルティングへ >
著者

- 事業法人第三部長/M&A担当ディレクター
-
宅食事業を共同経営者として立ち上げ、CFOとして従事。みつきコンサルティングでは、会計・法務・労務の知見を活かし、業界を問わず、事業承継型・救済型・カーブアウト・MBO等、様々なニーズに即した多数の支援実績を誇る。M&Aの成約実績多数、M&A仲介・助言の経験年数は10年以上
監修:みつき税理士法人
最近書いた記事
2026年5月14日中小企業を10年後も残すために|生存率を高める第三者承継M&A
2026年5月13日会社売却で得た譲渡所得の確定申告|書き方と手取り最大化の実務
2026年5月11日55歳経営者の引退資金|会社売却で得る創業者利益と資産設計
2026年2月8日M&Aの増加理由と背景は?今後の中小企業の会社売却の見通しも解説











