居酒屋業界では、宴会需要の減少と成人の酒類摂取量の下降がみられるなか、競争力を高めて経営を改善するために、M&Aを活発化させています。本記事では、居酒屋M&Aのメリットや重要ポイントを詳しく解説します。居酒屋のM&Aを考えている人は、ぜひ参考にしてください。
居酒屋とは
居酒屋は日本式の酒場で、お酒を中心に食事も楽しめるのが大きな特徴です。形態はさまざまで、大衆的な酒場から立ち飲みスタイル、特色あるコンセプトを持つ居酒屋まで、豊富な選択肢があります。このように、日本独自の飲食文化でもある居酒屋は気軽に利用できる点が大きな魅力といえるでしょう。
居酒屋の現状
現在、居酒屋業界はいくつかの変化に直面しており、これらの影響が経営に大きく響いています。ここでは、時代とともに変化する居酒屋業界の現状について解説します。
宴会の需要が下がっている
近年、企業や組織では、宴会を開催する頻度が少なくなっています。宴会需要の減少は、居酒屋の収益に直接影響を与え、多くの居酒屋経営者にとって大きな課題となっています。また、団体客の急なキャンセルの増加や、居酒屋以外で飲酒する若者の増加も、宴会需要を減少させる大きな要因です。若者層の居酒屋離れへの対応が、居酒屋業界全体に求められています。
アルコール自体の需要が下がっている
消費者の低価格志向やライフスタイルの変化、嗜好の多様化などにより、お酒の需要は低下傾向にあります。国税庁のデータによると、令和3年度の成人1人当たりの酒類消費数量は、74.3リットルにまで減少しています。消費者の嗜好の変化を理解し、対応策を練る必要があるといえるでしょう。
居酒屋がM&Aする理由
居酒屋業界では、業界内の競争が激化するなか、M&Aを通じて経営の効率化や競争力の強化を図る動きが活発化しています。ここでは、M&Aが実施される理由について解説します。
競争力を上げるため
同業者同士のM&Aは、業界内での競争力を強化し、事業拡大を効率的に進める手段となります。居酒屋業界は特に競争が激しいため、M&Aを利用して市場のシェアを拡大し、競争上の優位性を確立する企業も増えています。M&Aによる組織の規模拡大は、経営基盤を強化に有効にはたらくといえるでしょう。
経営改善を計るため
居酒屋業界では、収益化までの道のりが長く、経営が悪化するリスクが常に存在します。このため、M&Aによる経営改善を図るケースが見られます。M&Aを通じて、店舗の評判を向上させたり、新しい客層を開拓したり、マーケティング戦略を見直したりと、さまざまな変化が生じます。これにより、経営基盤の強化や収益性の向上が期待できます。
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居酒屋がM&Aする目的
居酒屋業界におけるM&Aは、譲渡側と譲受側双方に重要なメリットをもたらします。以下で詳しく解説します。
譲渡側
譲渡側は、自社のブランド力や資金力を生かして、事業をさらに拡大できます。また、有名企業の傘下に入ることで、その企業が持つブランド力や資金力を活用し、商売の幅を広げることも可能です。事業の持続性や安定性を高め、市場でのポジションを強化できる可能性が増すといえるでしょう。
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譲受側
譲受側は、M&Aにより業容や売上規模を拡大できます。特定エリアでのシェア拡大を目指し、ドミナント戦略の実施にも役立てられるでしょう。市場での競争力を高め、さらなる成長の実現が期待できます。
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居酒屋をM&Aする際の注意点
M&Aの際には、相手企業とのシナジー(相乗効果)を十分に吟味し、譲受対象を慎重に決定する必要があります。飲食店は収益化するまで時間がかかることが多いため、飲食店の価値を適切に評価し、効果が得られるかを綿密に判断することが重要です。
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居酒屋の譲渡価格
適切な取引価格の把握は、M&Aの成功に不可欠です。居酒屋のM&Aにおける取引相場は、事業の規模やブランドの知名度などによって大きく異なります。ここでは、取引相場の目安について解説します。
M&Aでの取引相場
個人事業主が運営する居酒屋のM&A取引相場は、100万円~250万円程度です。一方、大手企業が運営する居酒屋のM&Aは、高額の取引になる傾向があります。この違いは、事業の規模やブランド力などに由来します。
取引価格の決め方
居酒屋のM&A取引価格を決定する際には、売上高、ブランド力、店舗数、設備などを参考にします。取引価格を把握するためには、自社や自店舗の状況と類似する事例を参照しましょう。適切な目安をつけることで、現実的で適切な価格を設定できます。
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居酒屋のM&Aを成功させるためのポイント
居酒屋のM&Aを成功させるためには、いくつかの重要なポイントがあります。ここでは、M&Aの効果を最大限に引き出すためのポイントについて詳しく解説します。
自社の強みを明確にする
居酒屋のM&Aでは、自社の強みを明確にすることが重要です。利用者のニーズや価格意識、立地などに沿った柔軟な経営戦略が求められています。また、M&Aの過程でも独自性を保つことが必要といえるでしょう。メニューや価格帯を含む、自店舗の特色や強みを明確にしておくことで、M&Aの交渉において有利な立場を築けます。
条件を整理する
M&Aを進めるにあたっては、役員の処遇、従業員の雇用維持、事業やブランドの継続など、企業として譲れない条件を明確にしなければなりません。合理的な主張をして、適格に交渉を進めましょう。早急に交渉をまとめようとして条件を妥協すると、M&A後の統合に失敗するリスクがあるため、十分な注意が必要です。
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M&Aの相談先
M&Aを検討する際には、適切な相談先を選ぶことが重要です。専門的な知識と経験が必要とされるM&Aにおいては、適切なアドバイスを受けることが、成功につながります。ここでは、M&Aの相談先について解説します。
M&A仲介会社
M&Aを専門とする仲介会社は、一貫したサポートを自社で提供できる相談先です。中立的な立場でのアドバイスを受けられるため、客観的な視点でM&Aを検討してもらえるでしょう。仲介会社は業界の動向や最新の市場情報を持っており、M&Aに関する深い知識と経験を活かして、企業に最適な提案を実施できることも、大きなポイントです。
公的機関
事業引継ぎ支援センターや他の公的機関では、M&Aに関する相談を受け付けています。これらの機関は地域密着型であるため、アクセスしやすいというメリットがあります。公的機関は専門家を紹介する形で支援を行い、企業の状況やニーズに合わせた適切なアドバイスを提供します。
税理士や弁護士などの士業
税理士や弁護士などの士業専門家は、M&Aにおける税務や法務の分野で、明確な得意分野を持っています。M&Aは多岐にわたる専門知識が必要であるため、これらの士業専門家が仲介会社などと提携し、総合的なサポートを提供することが一般的です。専門的な知識を持つ専門家からのアドバイスは、M&Aの成功に不可欠な要素となるでしょう。
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居酒屋のM&A事例
居酒屋業界におけるM&Aは、数多くの成功事例を生み出しています。ここでは、具体的な事例を挙げて、M&Aの効果や影響について解説します。
ダイナックホールディングスによるRESTAURANT SUNTORY U.S.A.,INCのM&A
株式会社ダイナックホールディングスは、2019年12月にハワイで和食レストランを経営するRESTAURANT SUNTORY U.S.A.,INCの株式を取得し、2020年3月付けで子会社化しました。この取得により、同社はハワイでの事業拡大とブランドの強化を実現しています。
鳥貴族ホールディングスによるダイキチシステムのM&A
株式会社鳥貴族ホールディングスは、2023年1月に「やきとり大吉」の運営会社であるダイキチシステム株式会社の全株を、サントリーホールディングスから取得しました。これによりダイキチシステム株式会社は、株式会社鳥貴族ホールディングスの子会社となり、両社の事業のシナジー(相乗効果)が期待されます。
SFPホールディングスによるクルークダイニングのM&A
2019年5月、SFPホールディングス株式会社は、株式会社クリエイト・レストランツ・ホールディングスの子会社である株式会社クルークダイニングを、株式譲渡により子会社化しました。このM&Aは、SFPホールディングス株式会社の「SFPフードアライアンス構想」の一環として実施されており、独自ブランドの育成や広域展開をサポートする目的がありました。
やまやによるつぼ八のM&A
2018年10月、酒類販売大手の株式会社やまやは、傘下の居酒屋チムニー株式会社と共同で、株式会社つぼ八の株式のうち、87.8%を取得しました。このM&Aの主な目的は、運営店舗数の確保です。
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居酒屋のM&Aのまとめ
居酒屋業界は、宴会需要の減少や酒類消費の低下という厳しい環境下にあり、多くの企業がM&Aを通じて経営改善や競争力の強化を図っています。
みつきコンサルティングは、税理士法人グループとしての強みを活かし、事業所内承継や親族内承継など、M&Aにおける複数の選択肢を提供しています。さらに、債務超過や収益赤字の企業であっても、事業再生を行いM&Aへと導くサポートを提供します。みつきコンサルティングでは、豊富な知識と経験を活用し、より効果的なM&A戦略の構築をサポートします。居酒屋業界のM&Aなら、ぜひみつきコンサルティングにご相談ください。
著者
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宅食事業を共同経営者として立ち上げ、CFOとして従事。みつきコンサルティングでは、会計・法務・労務の知見を活かし、業界を問わず、事業承継型・救済型・カーブアウト・MBO等、様々なニーズに即した多数の支援実績を誇る。
監修:みつき税理士法人
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