カタログ通販の売却|顧客名簿の承継と媒体費率で考えるM&A評価と事例

カタログ通販の売却では、部あたり売上や媒体費率、稼働顧客の年齢構成が譲渡価格を動かし、顧客名簿を個人情報保護法の範囲でどう引き継ぐかが交渉の土台になります。用紙代やゆうメール運賃の値上げで先行きに悩むオーナーに向け、年買法での評価、注文はがきや商品写真の承継、譲受企業の類型と公開事例、類似業種の成約事例まで、売却前に打てる手を実務目線で解説します。

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目次
  1. ゆうメール運賃と用紙の値上げに揺れるカタログ通販の現在地
    1. 通販・EC市場は15兆円、それでも紙のカタログが細る理由
    2. 2025年のゆうメール改定と2026年の印刷用紙値上げ
    3. 電話とはがきで注文する顧客が残す価値
  2. 後継者不在だけではないカタログ通販の売却理由
    1. 次号を刷るかどうか、媒体費率が判断を重くする
    2. 受注センターと出荷を支える人手が集まらない
    3. 通販基幹システムの刷新とWeb受注への投資
  3. 部あたり売上と媒体費率で読む譲渡価格
    1. 年買法と時価純資産の見直し
    2. 部あたり売上・レスポンス率と稼働顧客の年齢構成
    3. カタログ制作費の計上時期が利益の見え方を変える
  4. 顧客名簿の承継と個人情報保護法で確かめること
    1. 株式譲渡と事業譲渡で異なる名簿の引継ぎ
    2. 交渉段階の名簿開示は段階を踏む
    3. 名簿の貸し借りと同梱広告の履歴
  5. 注文はがきと商品写真、株式譲渡と事業譲渡で変わる引継ぎ
    1. 料金受取人払と払込票、代金引換の名義
    2. カタログ写真とモデル起用の利用許諾
    3. 注文はがきの表示と返品特約
  6. カタログ通販の名簿と誌面を求める買い手の類型
    1. 商品と顧客を補い合う通販会社
    2. シニアの読者を抱えるメディア
    3. 自社商品を持つメーカーと投資ファンド
  7. 療養食の冷凍弁当メーカーが給食大手へ売却した類似業種の事例
    1. 事業の継続と雇用を守るための株式譲渡
    2. 譲受企業の狙いと事業の接点
    3. 医療・介護向けの食事サービスへの広がり
  8. カタログ通販の会社売却で特に注意すべき在庫と簿外の債務
    1. 掲載期間をまたぐ在庫と季節品の評価
    2. 返品・後払い・ポイントの引当と前受金
    3. 印刷会社・受注センター・物流の委託契約
  9. カタログ通販の売却を考える経営者から寄せられる質問
  10. まとめ|カタログ通販の会社売却で押さえたい実務論点
    1. カタログ通販の会社売却の関連コラム
M&Aの基本や会社売却の進め方を電話相談|0120-169-256・24時間受付

次号のカタログを、今年も同じ部数で刷れるか。そう自問しながら会社売却を考え始めた、カタログ通販会社のオーナー経営者に向けた記事です。この業態では、高齢の顧客が中心の名簿をどこまで開示するか、休眠顧客を含む名簿の価値をどう示すか、刷り上がった次号の費用を誰が負担するかが、決算書の外側で論点として浮上します。

ゆうメール運賃と用紙の値上げに揺れるカタログ通販の現在地

通販市場は伸びているのに、なぜカタログ通販は苦しいのか。この素朴な疑問をたどると、M&Aが選択肢に上がる理由が見えてきます。

通販・EC市場は15兆円、それでも紙のカタログが細る理由

公益社団法人日本通信販売協会の「2025年度通販・EC市場売上高調査」によると、市場規模は15兆4,085億円で、前年度比5.9%増でした。伸びをけん引したのは大手ECモールや家電量販店などで、紙のカタログを主力にしてきた会社の足取りは異なります。千趣会の2025年12月期決算では、通販事業の売上高が359億8,900万円と前期から約39億円減り、営業損失は30億8,200万円。同社は「カタログからECを主戦場としたモデル転換」を掲げています。

2025年のゆうメール改定と2026年の印刷用紙値上げ

カタログを1冊届けるには、制作費のほか、紙、印刷、郵送の費用がかかります。日本郵便は2025年11月1日にゆうメールの基本運賃を改定し、150g以内は180円から190円、1kg以内は360円から380円になりました。用紙の値上げも続いています。日本製紙は2026年2月出荷分から10%以上引き上げたのに続き、同年7月21日出荷分から印刷・情報用紙全般を15%以上値上げすると発表。商品の配送でも、2026年10月1日からゆうパックの基本運賃が約10%上がります。部数を刷るほど、負担は重くなる構図です。

電話とはがきで注文する顧客が残す価値

紙のカタログが役目を終えないのは、電話やはがき、FAXで注文する高齢の顧客が一定数いるからです。検索や比較サイトを経由しない分、価格だけで他社へ流れる動きは起きにくいもの。季節ごとに届くカタログを待ち、同じ誌面から何年も買い続ける顧客もいます。Web中心の通販会社が広告費をかけても届きにくい層と、紙の媒体と名簿で直接つながる接点。他社がカタログ通販に目を向ける理由は、ここにあります。

後継者不在だけではないカタログ通販の売却理由

「業績が落ちたから売る」と思われがちですが、実際の相談はもう少し複雑です。親族内の事業承継が難しいところに、次の事情が重なります。

次号を刷るかどうか、媒体費率が判断を重くする

カタログ通販の経営は、刷って送った後に売上が立つ先行投資の繰り返しです。用紙と郵送の単価が上がると、同じ部数でも媒体費率、つまりカタログの制作・印刷・発送費を売上で割った比率が悪化します。部数を減らせば、今度は売上が落ちることに。どちらを選んでも苦しい判断を季節ごとに何十年も続けてきたオーナーが、この先の10年を一人で背負えるかと考え始めるのは、無理もない話です。

受注センターと出荷を支える人手が集まらない

高齢の顧客からの注文は電話が多く、商品の説明や聞き取りに時間がかかります。応対に慣れたオペレーターは、一朝一夕には育ちません。出荷の現場でも、カタログの切り替え時期に注文が集中するため、短期のパートを確保できるかが売上を左右します。最低賃金の引上げが続くなか、受注センターと倉庫を自前で抱え続ける負担は年々増すばかり。受注や物流の基盤を持つ会社と組む判断は、ここから生まれます。

通販基幹システムの刷新とWeb受注への投資

受注、顧客管理、在庫、請求を一体で動かす通販基幹システムを、導入から20年近く使い続けている会社は少なくないのが実情です。保守期限やインボイス制度への対応を機に刷新を迫られ、見積もりが数千万円に及ぶことも。Web受注を伸ばすには、商品データや写真の整備も欠かせません。借入に個人保証を付けたまま大きな投資に踏み切るより、資本力のある会社の下で進めたいという声。会社売却の相談は、こうした理由から始まる例が目立ちます。

▷関連:小売業のM&A|EC化と店舗網再編が変える譲渡価格と成約事例

部あたり売上と媒体費率で読む譲渡価格

純資産の大きさより、1冊のカタログがいくらの売上を生むか。譲受企業が最初に見るのは、そこです。

年買法と時価純資産の見直し

中小企業のM&Aで広く使われるのが年買法(年倍法)で、「時価純資産+のれん」で目安を出します。時価純資産は、資産と負債を今の価値で見直した純資産のこと。のれんには営業利益の数年分を充てるのが通例です。カタログ通販の時価純資産では、在庫、未配布のカタログ、後払いの売掛金が主な調整項目。季節を過ぎた衣料品や前号の残部が、仕入れた時の帳簿価額のまま評価されることはまずありません。DCF法は、規模の大きい案件で補助的に使われます。

部あたり売上・レスポンス率と稼働顧客の年齢構成

カタログ通販ならではの数字が、部あたり売上とレスポンス率です。1部あたりいくら売れたか、何部に1件の注文が入ったかを号ごと・媒体ごとに並べると、誌面の力が浮かび上がります。顧客の側では、過去1年に購入した稼働顧客の数と年齢構成、最終購入から2年以上たった休眠顧客の比率が問われるところ。新規の流入が細り、70代以上が大半を占める名簿は、数年後の売上を割り引いて見られがちです。下表に、評価の場で見られやすい数字をまとめました。

評価で見られる数字見る中身譲渡価格への効き方
部あたり売上・レスポンス率号別・媒体別の売上と受注件数を、配布部数で割った推移下がり続けていると誌面の力の衰えとみられ、のれんの年数が伸びにくい
媒体費率制作・印刷・発送費の売上比。用紙と郵送の値上げ前後で比較高止まりは利益の持続性への疑問につながる。部数配分の見直し実績があれば補える
稼働顧客数と年齢構成過去1年の購入者数、年代別の構成、新規顧客の流入数新しい層の流入があれば評価が安定。高齢層だけなら将来の目減りを織り込まれる
休眠顧客の比率最終購入から一定期間たった顧客の割合と、掘り起こしの実績再購入につながった実績があれば、名簿の潜在価値として説明できる
受注チャネルの構成電話・はがき・FAX・Webの件数比と、1件あたりの受注コストWebの比率が高いほど受注コストが下がり、譲受企業の基盤に載せやすい
返品率と後払いの未回収率商品群別の返品率、後払い売掛金の経過月数別残高と貸倒実績高いと実質の粗利が薄いとみられ、価格調整の材料になる
自社企画品の比率PB・別注品の売上構成と粗利率他社のカタログにない商品が多いほど、顧客が定着する理由として評価される

カタログ制作費の計上時期が利益の見え方を変える

カタログは税務上、広告宣伝用印刷物に当たります。法人税基本通達2-2-15では、配布して消費した事業年度の損金(税務上の費用)とするのが原則です。ただ、毎期おおむね一定量を取得し経常的に消費している場合は、取得した期に費用とする処理も継続を条件に認められています。この処理を採る会社が春夏号を決算月に刷り、配布が翌期にずれると、その期の利益は低く、翌期は高く見えることに。部数を大きく動かした年ほど、ズレの幅も広がります。

みつきコンサルティングは税理士法人グループのM&A仲介会社として、カタログ通販の株式評価では号ごとの制作・発送時期と売上の計上月を突き合わせ、のれんの基礎になる利益を補正します。未配布の残部を貯蔵品として資産に計上していれば、時価純資産で評価減とするかどうかも同時に判断。この補正を先に済ませておくと、譲受企業から「利益が年によってぶれる」と指摘されても、根拠を示して説明できます。会社売却の相場を調べる前に、手元で済ませておきたい作業です。

顧客名簿の承継と個人情報保護法で確かめること

名簿は会社の命綱です。ただ、そのまま相手に渡してよいかというと、話はそう単純ではありません。

株式譲渡と事業譲渡で異なる名簿の引継ぎ

株式譲渡なら、名簿を持つ会社そのものが残るため、個人情報の扱いに大きな変化は生じません。事業譲渡や会社分割で名簿を移す場合も、個人情報保護法は事業の承継に伴う提供を第三者提供に当たらないとしています(第27条第5項第2号)。ただし譲受企業が使えるのは、承継前に特定していた利用目的の範囲まで(第18条第2項)。「カタログの送付のため」と公表していた名簿を、関連の薄い別事業の案内に使うなら、原則として本人の同意が要ります。

交渉段階の名簿開示は段階を踏む

個人情報保護委員会のガイドラインは、契約前の交渉段階で相手方の調査に応じて個人データを渡す場合も第三者提供に当たらないとする一方、利用目的や取扱方法、漏えい時の措置、交渉が不調に終わった場合の措置などを契約で定めるよう求めています。顧客データを早く見せるほど交渉が進む、というものでもありません。秘密保持契約の段階では件数と年代別の分布、基本合意の後で抽出したデータ、顧客ごとの個票は最終段階。この順序が現実的です。

支援現場では、名簿を開示する前に、会員規約とプライバシーポリシーの改定履歴を年代順に並べます。カタログに綴じ込んだ申込用紙に印刷していた利用目的の文言が、Webの規約と食い違っている例は意外と多い落とし穴です。どの時期の顧客に、どの文言で個人情報を預かったのか。紙で申し込んだ顧客とWebで登録した顧客を分けて示せれば、譲受企業は名簿を使える前提で価格を組め、表明保証(契約で事実関係を保証する条項)の範囲も絞りやすくなります。

名簿の貸し借りと同梱広告の履歴

カタログ通販の世界では、他社と名簿を交換したり、借りた名簿にカタログを送ったりする取引が行われてきました。本人の求めがあれば提供を止めることを条件に、同意なしで名簿を渡すオプトアウト方式を使っていたなら、個人情報保護委員会への届出が前提です。2022年4月の改正法施行後は、オプトアウトで提供を受けた名簿を、同じ方式でさらに別の会社へ回すこともできなくなりました。商品に他社のチラシを入れる同梱広告なら名簿は相手に渡りませんが、契約の中身は確認が要ります。

注文はがきと商品写真、株式譲渡と事業譲渡で変わる引継ぎ

契約書の束より先に、倉庫に積まれた注文はがきの束を見てください。紙の通販には、紙ならではの名義が残っています。

料金受取人払と払込票、代金引換の名義

注文はがきの料金受取人払は、受取人が郵便局に請求して承認番号を受ける仕組みで、差出有効期間は2年以内です。後払いの払込票を発行する収納代行や、代金引換の契約も会社名義で結ばれています。株式譲渡なら名義は変わりませんが、事業譲渡では譲受企業の名義で承認や契約を取り直し、はがきと払込票を刷り直すことになります。顧客の手元に残る旧はがきが戻ってきた時の扱いまで、決めておくのが実務です。下表は、カタログ通販に特有の資産と契約の扱いを手法別に並べたものです。

比較項目株式譲渡事業譲渡
顧客名簿会社に残り、利用目的も従前どおり承継に伴う提供として移せるが、使えるのは承継前の利用目的の範囲
料金受取人払の承認名義は変わらず、そのまま使える譲受企業が承認を受け直し、注文はがきを刷り直す
後払い・代金引換の契約継続。株主変更の届出を求める条項の有無を確認譲受企業の名義で審査を受けて再契約
商品写真・モデルの許諾契約上の地位は会社に残る権利や許諾を個別に移す合意が要る
酒類・医療機器の免許や届出会社に付いたまま残り、役員変更などを届け出る譲受企業が免許の取得や届出を改めて行う
受注センター・物流の委託原則継続。株主変更時の解除条項があれば相手の承諾が要る委託先と条件を含めて結び直す
従業員雇用条件ごと引き継ぐ個別に同意を得て転籍

当社は行政書士と連携し、料金受取人払の承認や通信販売酒類小売業免許の取り直しが要るかを、スキームを決める前に洗い出します。カタログ通販の事業譲渡では、次号の注文はがきを刷る日から逆算して名義の切替日を決めないと、旧名義と新名義のはがきが混在する期間が生まれ、料金の精算や入金の照合が煩雑になりがち。スキームの選択は、税金の差だけでなく、紙の段取りまで含めて考えるものです。

カタログ写真とモデル起用の利用許諾

外部のカメラマンが撮った商品写真は、契約で譲り受けていない限り、著作権は撮影者に残ります。モデルの起用も、使える媒体と期間を「紙のカタログのみ、1年間」などと限っている例が珍しくありません。過去の誌面の写真をそのままWebに転用しているなら、許諾の範囲を超えているおそれも。譲受企業は写真資産をECに生かしたいと考えるため、撮影契約とモデル契約の控えを揃え、使える範囲を一覧にしておくと評価の下支えに。

注文はがきの表示と返品特約

2022年6月施行の改正特定商取引法で、事業者が用意した書面による申込みは「特定申込み」とされ、分量、価格と送料、支払と引渡しの時期、申込期間、返品などの撤回・解除の条件を表示する義務が課されました。消費者庁のガイドラインは、カタログに同封された申込用紙もこれに当たると明記しています。表示が欠けた注文はがきで誤認させれば、消費者に申込みの取消しが認められることも。直近号の申込用紙は、相手方の調査で必ず目を通される書類です。

カタログ通販の名簿と誌面を求める買い手の類型

候補は同業だけではありません。紙の媒体と高齢の顧客名簿を、自社に足りないものと見る会社は意外なところにいます。

商品と顧客を補い合う通販会社

最も話が進みやすいのは、商品や顧客層が補い合う通販会社です。2024年5月9日、歯科医院などに向けた通販を営む歯愛メディカルは、セブン&アイ・ホールディングスからニッセンホールディングスの全株式を41億円で取得すると発表し、同年7月1日に実行しました。狙いは、女性医療従事者に届く自社の販路と、ニッセンの商品開発力の掛け合わせ。取得後は自社の旧物流拠点を再稼働させ、ニッセングループの物流の一部を受託し始めました。

シニアの読者を抱えるメディア

新聞社のように高齢の読者を抱えるメディアにとって、カタログ通販の名簿と商品は読者向け事業を厚くする材料です。2024年5月20日、朝日新聞社はTBSグループのスタイリングライフ・ホールディングスから、ライトアップショッピングクラブの全株式を取得しました。譲渡価額は約47億円と開示されています。同社は年間100媒体のカタログを発行し、本物志向のシニア層を顧客に持つ会社。朝日新聞社は顧客基盤の共通性を挙げ、紙面やWebでの商品紹介と共同の商品開発を掲げました。

自社商品を持つメーカーと投資ファンド

機能性食品などの自社商品を持つメーカーは、直接売る仕組みを内側に取り込みたいと考えます。雪印メグミルクは2025年12月24日、千趣会が持っていたベルネージュダイレクトの株式33.4%を取得し、100%子会社としました。1999年設立の同社は、受注から配送までの通販業務と広告代理業務を担う会社で、雪印メグミルクは事業拡大と意思決定の迅速化を狙いに挙げています。複数の通販会社を束ね、仕入れや物流、システムを共通化する投資ファンドも候補の一角です。全株式を渡す前に、資本業務提携から入る道もあります。

これまでの支援実績を振り返ると、療養食の冷凍弁当メーカーを病院・福祉施設向けの給食会社へつないだ案件のように、顧客層の重なる異業種が、同業以上に良い相手になることがあります。カタログ通販の打診先も、同業の通販会社に加え、シニア向けの住まい、介護、旅行、健康関連のサービス会社まで広げて検討するのが当社のやり方です。顧客リストを一度に何社にも見せない慎重さと、候補を狭めすぎない探索の幅。この両立こそ、M&A仲介の役目です。

療養食の冷凍弁当メーカーが給食大手へ売却した類似業種の事例

通販でも扱いの多い冷凍弁当の分野から、みつきコンサルティングが支援した類似業種の譲渡事例を紹介します。

給食大手企業とのM&A事例として紹介されている、疾患患者向け療養食の冷凍弁当を製造・開発している現場の様子

事業の継続と雇用を守るための株式譲渡

神奈川県のメディカルフーズは、2006年設立の療養食メーカーです。たんぱく質やカロリー、塩分を調整した冷凍弁当を開発から手がけ、売上高は2億7,500万円。45歳の代表が事業の継続と従業員の雇用確保を目的に選んだのが、株式譲渡による売却でした。

譲受企業の狙いと事業の接点

譲り受けたのは、病院や福祉施設向けの食堂受託運営や食材卸売を展開する東京のニッコクトラストです。売上高210億円の同社にとっては、療養食分野への進出と冷凍弁当の製造ノウハウの確保が狙いでした。

医療・介護向けの食事サービスへの広がり

成約は2018年7月。両社の強みを生かし、より充実した医療・介護向けの食事サービスの提供が期待される組み合わせとなりました。

【成約事例】療養食の冷凍弁当メーカーが給食大手へ株式譲渡した背景を読む

カタログ通販の会社売却で特に注意すべき在庫と簿外の債務

調印の直前に価格が下がる案件の多くは、倉庫と売掛金の中身が原因です。現場でよく見るつまずきから見ていきます。

掲載期間をまたぐ在庫と季節品の評価

カタログは一度刷ると、誌面の価格と品揃えを数か月は変えられません。欠品を避けようと多めに仕入れた結果、号の切り替え時に売れ残りを持ち越すのが、この業態の在庫の特徴です。デューデリジェンス(譲受側が行う事前の調査)では号別・仕入年度別の在庫明細が求められ、次号に載らない季節品や廃番品は評価減の対象に。売却を決めたら処分の時期と方法を先に決めておくと、実地棚卸での食い違いも減らせます。撮影用に外部へ預けたままのサンプル品も、数え漏れやすい品目です。

返品・後払い・ポイントの引当と前受金

通販の決算書には、まだ起きていない費用が潜んでいます。返品特約に基づく返品、後払いの未回収、会員ポイントの将来の使用分、頒布会や予約販売で先に受け取った代金。どれも引当や負債の計上が甘いと、財務デューデリジェンスで純資産から差し引かれます。ポイントは付与と失効の実績を、返品は号別・商品群別の実績率を用意しておけば、引当の根拠としてそのまま使えるはずです。以下の2つは、とくに金額が膨らみやすい項目です。

自社で与信してきた後払いの売掛金

高齢の顧客に配慮し、商品に請求書を同封する後払いを自社の与信で続けてきた会社では、売掛金の中身が問われます。請求から何か月たった残高がいくらあるか、督促の記録と貸倒の実績はどうか。経過月数ごとの残高表があれば、回収の見込みを数字で示せます。後払い決済サービスへ切り替えた会社なら、その手数料率も収益の見通しに響くところ。

頒布会や予約販売で先に受け取った代金

毎月決まった商品を届ける頒布会や、季節商品の予約販売で代金を先に受け取っていれば、未発送の分は商品を届ける義務として負債に残ります。株式譲渡なら会社がそのまま義務を負い、事業譲渡では引き継ぐ範囲を契約で決めておかなければなりません。途中解約の返金条件も、あわせて点検したい項目です。

印刷会社・受注センター・物流の委託契約

カタログ通販は、印刷、受注センター、物流、決済と、外部の協力会社に支えられて動いています。取引基本契約に、株主が変わった時に相手が解除できるチェンジオブコントロール条項がないか、長期の最低発注量の約束がないか。事前に点検しておくべき項目です。印刷会社と年間の用紙確保を約束している場合、譲受企業が印刷先を切り替えると違約金が生じることもあります。条項があっても直ちに解除されるわけではなく、先に趣旨を伝えて了解を得れば、多くは円滑に進むものです。委託先への説明の順番まで設計できるかどうかは、仲介会社一覧で各社の支援範囲を比べると分かります。

M&Aが成立した場合のみ、譲渡対価に応じた手数料を頂戴します。
売主様は、ご成約まで費用負担なくスタートできます。


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カタログ通販の売却を考える経営者から寄せられる質問

本文で触れきれなかった、カタログ通販ならではの相談を3つ取り上げます。

Q:次号のカタログを刷り終えた直後に売却する場合、その費用はどう扱われますか?

引渡しの基準日と、その号の売上がどちらに帰属するか次第です。現場では、基準日時点で未配布の部数と、配布済みでも受注期間が残る号の費用を洗い出し、価格調整か精算条項で手当てします。値上げ前に先行して確保した用紙の分は、差額も交渉の材料に。カタログ通販の案件では、みつきコンサルティングが号ごとの費用と売上の対応表を作って合意を取ります。

Q:紙のカタログをやめてWebに移ってから売ったほうが、評価は上がりますか?

一概には言えません。Web受注の比率が上がれば受注コストは下がりますが、紙をやめた途端に離れる高齢の顧客も少なくないためです。シニアとの接点を求める譲受企業にとっては、紙の媒体を持っていること自体が評価の理由になります。発行をやめる判断は、相手の方針を聞いてからでも遅くありません。部数を段階的に絞った実績を示すほうが、説得力は増します。

Q:誌名や通販ブランドの商標が社長個人の名義でも、売却に支障はありませんか?

株式譲渡でも、個人名義の商標は会社の資産に含まれません。譲渡の前に会社へ移すか、使用許諾の契約を結ぶかを決める必要があります。移転は特許庁への登録で効力が生じるため、手続の期間を見込んでおきたいところ。長年親しまれた誌名は顧客にとってカタログそのものの目印で、名義が曖昧なままでは相手も価格を出しにくくなります。

税理士法人を母体とするM&A仲介会社|みつきコンサルティングが選ばれる理由

まとめ|カタログ通販の会社売却で押さえたい実務論点

カタログ通販の売却では、部あたり売上や媒体費率、稼働顧客の年齢構成が譲渡価格の土台になり、顧客名簿の引継ぎでは個人情報保護法上の利用目的が問われます。用紙と郵送の値上げが続くなか、長年の顧客をどこへ託すか迷うのは当然のこと。シニア層に特化した名簿と誌面は、整え方次第で評価の源泉になります。

みつきコンサルティングは、中小企業のM&A仲介の実績経験が豊富な、財務・税務に強いM&A仲介会社です。相談先選びに迷う段階から、通販の商慣行に通じた専門の担当者が名簿の開示と株価算定まで伴走します。カタログ通販の会社売却なら、みつきコンサルティングへ。

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カタログ通販の会社売却の関連コラム

著者

潟野 和徳
潟野 和徳名古屋法人部長/M&A担当ディレクター
人材支援会社にて、海外人材の採用・紹介事業のチームを率いて新規開拓・人材開発に従事。みつきコンサルティングでは、強みを生かし人材会社・日本語学校等の案件を中心に工事業・広告・IT業など多種に渡る案件支援を行う。M&Aの成約実績多数、M&A仲介・助言の経験年数は10年以上
監修者 神門 剛 代表取締役 / 公認会計士・税理士

みつきコンサルティングは、中小企業の会社売却・事業承継に特化した譲渡企業様に完全成功報酬制のM&A仲介会社です。売り手と買い手企業の最適なマッチングを、経験豊富なM&Aコンサルタントが初期相談から成約まで一貫してフルサポートします。

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