焼肉店の会社売却では、和牛や輸入牛の仕入原価、無煙ロースターと排煙ダクトの設備、生食用食肉の規格基準への対応が、価格と成否を大きく分けます。倒産が過去最多を更新する一方で、大手チェーンやファンドの譲受意欲は根強く、廃業ではなく売却で設備と雇用を残す道が広がってきました。譲渡オーナーの視点から、相場の見方と承継実務を解説します。
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排煙ダクトの掃除が追いつかない、和牛の仕入値が読めない、生肉を出していた頃の設備をどう扱うか。焼肉店を営むオーナーが会社売却を考えるとき、ほかの飲食業態とは違う設備と仕入れの重さが判断を鈍らせます。黒字でも、ロースター更新の負担や後継者不在から店を託す選択は珍しくありません。本記事は、焼肉店の売却を検討するオーナー経営者に向けて、つまずきやすい論点を具体的にお伝えします。
過去最多の倒産が映す焼肉店の外部環境
換気の良さで一時は集客を伸ばした焼肉店が、いま静かに岐路に立っています。追い風だったはずの業態に何が起きているのかを、数字から見ていきます。
倒産が過去最多を更新した街の焼肉店
帝国データバンクによれば、2024年度の焼肉店の倒産は55件(速報値)で、前年度の27件から倍増し過去最多を更新しました。円安による輸入牛肉の高騰に加え、電気・ガス代や人件費の負担増を、値上げに敏感な客層のなかで価格へ転嫁しきれない店が淘汰されています。それでも、店をたたむ前に設備も常連も引き継ぐM&Aを選ぶ動きが、規模を問わず広がってきました。
和牛と輸入牛の高騰が招く価格転嫁の板挟み
焼肉店の原価は、牛肉相場に大きく振られます。輸入牛だけでなく、安価なメニューを支えてきた豚肉まで円安で値を上げ、原価率の上昇が利益を削ります。同じ帝国データバンクの調査では、焼肉店を中心に展開する外食企業のうち2023年度に赤字となった割合は34.8%、減益を含む業績悪化は64.6%に達しました。値上げが客離れを呼ぶ悪循環は、単独店ほど抜け出しにくいのが実情です。
後継者不在率58.5%と大手チェーンの攻勢
担い手の問題も重くのしかかります。帝国データバンクの全国後継者不在率動向調査では、2024年の飲食店の後継者不在率は58.5%と、約6割の店で引き継ぎの目途が立っていません。一方で、資本力のある大手チェーンはショッピングセンターへの出店や新業態で攻勢を強めており、街の焼肉店との体力差は開くばかり。この構図が、黒字のうちに会社売却で出口を探る背中を押しています。
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設備更新と和牛仕入れが迫る焼肉店オーナーの売却理由
焼肉店の売却理由は、飲食のなかでも設備と仕入れに偏るのが特徴です。オーナーが決断に至る典型的なきっかけを、三つの角度から見ます。
排煙ダクトとロースター更新の重い設備投資
焼肉店は、無煙ロースターや排煙ダクト、グリスフィルターといった専用設備の塊です。長く使えば油汚れと劣化で更新が避けられず、全席分の入れ替えともなれば数千万円単位の投資になることも。設備投資の回収に何年もかかると見えた時点で、廃業か譲渡かを天秤にかけるオーナーは少なくありません。設備をそのまま生かせる相手へ売却する判断は、投資負担から解放される現実的な選択肢になります。
和牛の仕入れルートと原価管理の限界
仕入れの巧拙が、そのまま利益を決めるのが焼肉です。食肉卸との長い関係で一頭買いや希少部位を確保してきた店でも、相場高が続けば原価管理は限界に近づきます。仕入れ交渉や歩留まりの改善を一人で背負い続けることに疲れ、規模のある企業の仕入れ網に乗せたいと考えるオーナーもいます。属人的な目利きを次代へどう残すかは、売却を考える大きな動機となりやすい論点です。
後継者不在と個人保証の重荷
子に別の道を勧め、店を継ぐ人がいない。そこに借入の個人保証が重なると、引退そのものが遠のきます。焼肉店の設備資金は借入で賄うことが多く、連帯保証を抱えたまま高齢を迎えるオーナーは珍しくありません。売却で保証を外し、雇用と屋号を残せるなら、廃業で全てを失うより納得できる。こうした相談は、支援現場でも後を絶ちません。
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造作譲渡と株式譲渡で見る焼肉店の売却手法と価格
焼肉店は設備が特殊なぶん、売却手法の選び方にも業態の色が出ます。手法の違いと、価格を左右する見方を順に押さえます。
造作譲渡(居抜き)が焼肉店で選ばれやすい理由
焼肉店の設備は、後継の飲食店がそのまま使いにくい一方、同じ焼肉業態には価値が高い。この非対称性から、排煙設備やロースターを残したまま引き渡す造作譲渡(居抜き)の需要が、ほかの業態より強く出ます。小規模な単独店なら、店舗の造作と営業権を譲る形が現実的。複数店や法人格ごと譲るなら、許認可や契約を包括承継できる株式譲渡や事業譲渡を軸に検討します。
年買法とのれんで見る譲渡価格の目安
中小の焼肉店で目安に使われるのが年買法(年倍法)です。時価純資産に、数年分の利益をのれんとして加えて価格を出します。純資産が薄くても、安定した客数や確かな仕入れルートがあれば上乗せが見込めます。より詳しい会社売却の相場感は、店舗ごとの収益力を見てはじめて固まります。
原価率と客単価が映す焼肉店のKPI
焼肉は、食材費と人件費を合わせたFL比率のうち、食材費の比重が高い業態です。だからこそ、譲渡価格の交渉では原価率の水準と、それを支える仕入れ力が問われます。下表に、焼肉店の価格を左右する主なKPIと、譲受企業が見るポイントをまとめました。支援現場では、和牛の歩留まりや希少部位の販売力まで踏み込み、のれんに反映できる強みを譲渡オーナーと言葉にしていきます。ここを数字で示せるかどうかが、評価の底上げにつながります。
| KPI | 譲受企業が見るポイント | 価格への効き方 |
|---|---|---|
| 原価率(食材費比率) | 和牛と輸入牛の構成、値上げ耐性 | 低く安定していれば収益力として評価 |
| 客単価と宴会需要 | 単価帯、団体・宴会の取り込み | 高単価と法人需要はのれんの源泉 |
| 仕入れルートと歩留まり | 食肉卸との関係、一頭買いの技術 | 他店が再現しにくい強みは上乗せ要因 |
| 席回転率と個室構成 | 回転の速さ、個室・座席の設計 | 坪あたり収益の高さが評価に直結 |
| 排煙・ロースター設備の年齢 | 更新時期、排煙能力の余力 | 更新間近だと投資見合いで減額も |
焼肉店の譲渡で譲渡オーナーが手にする利点と注意点
売却は身軽になるだけの手続ではありません。焼肉店ならではの利点と、事前に知っておきたい注意点を対で整理します。
廃業では消える設備と雇用を残せる強み
焼肉店の売却で大きいのは、廃業なら処分費がかかる専用設備を、価値として引き継げる点です。ロースターや排煙設備、什器を撤去せずに済み、原状回復の負担も避けられます。従業員の雇用や屋号を残しながら個人保証を外せることも、オーナーにとっての救いになります。下表に、譲渡オーナー側の主な利点と注意点を並べました。
| 観点 | 譲渡オーナーのメリット | 譲渡オーナーのデメリット |
|---|---|---|
| 設備・撤去費 | 専用設備を価値化 ロースターや排煙設備を処分せず引き継げる | 設備の老朽度が減額要因 更新間近だと投資見合いで価格が下がることも |
| 雇用・屋号 | 雇用と屋号の存続 スタッフの職と看板を残したまま引退できる | 運営方針の変化 タレや焼き方が譲受企業の基準に寄る場合がある |
| 資金・保証 | 個人保証の解除 連帯保証を外し、譲渡益で老後資金を確保 | 引き継ぎの拘束 一定期間の在籍や仕入れ先の紹介を求められることも |
| 仕入れ・原価 | 仕入れ網への接続 譲受企業の調達力で原価改善が進む余地 | 属人的な目利きの評価難 仕入れがマニュアル化されていないと強みが伝わりにくい |
| 成長・投資 | 出店余力の獲得 資本を得て多店舗展開を再開できる | 希望条件との折り合い 屋号継続や従業員処遇は交渉で詰める必要がある |
生食用食肉の規格基準と焼肉店で特に注意したい承継論点
焼肉店の売却は、価格よりむしろ承継の段取りでつまずくことがあります。この業態に固有の確認事項を、実務の視点で見ていきます。
生食用食肉の規格基準と衛生管理の引き継ぎ
ユッケなど生の食肉を扱う店では、厚生労働省の生食用食肉の規格基準への適合が前提です。2011年の集団食中毒を機に基準が定められ、牛の肝臓は生食用としての提供が禁じられました。専用の設備や加工エリア、記録の整備が求められ、譲受企業はここを厳しく確認します。生食メニューの有無で承継論点が変わるため、みつきコンサルティングでは、行政書士と連携し、飲食店営業許可と規格基準の引き継ぎ可否を初期段階で切り分けています。
排煙・消防設備と店舗賃貸借契約の確認
焼肉店は火気と煙を大量に扱うため、消防法や建築基準法に沿った排煙設備が欠かせません。ダクトの防火区画や届出の状況は、DDで必ず論点になります。加えて、好立地でも定期借家で残存期間が短ければ評価は伸びにくく、造作の扱いや原状回復の条件も価格を左右。譲渡の前に、賃貸借契約と設備の届出をそろえて点検しておくと、交渉が滞りにくくなります。
労務と食肉仕入契約に踏み込むデューデリジェンス
焼肉店のデューデリジェンスでは、財務に加えて労務と仕入れが焦点です。アルバイト比率が高い業態では、残業代の精算や社会保険の加入状況が簿外債務として表に出ることがあります。食肉卸との取引条件や、特定の仕入先への依存度も評価に響く点。譲受企業は継続性を重く見るため、契約と実態のずれを事前に洗っておくことが、条件の揺れを防ぐ近道になります。
焼肉店の買い手候補と譲受のねらい
焼肉店の譲渡先は、同業だけにとどまりません。買い手の類型ごとに、なぜ焼肉店を求めるのかを見ておくと、打診先の幅が見えてきます。
酒場・多業態チェーンによる補完型の譲受
居酒屋や酒場業態を持つ企業は、焼肉店を取り込むことで夜間需要と客単価を底上げできます。2024年7月には、銀だこハイボール酒場などを展開するオールウェイズが、焼肉店「昇家」を運営するショウエイを子会社化しました。酒場で培った運営ノウハウと焼肉の融合をねらう動きで、こうした補完型の譲受は今後も増えると見られます。多業態を持つ相手ほど、既存店網とのシナジーを価格に織り込みやすいのが特徴です。
ホルモン・希少部位に強い同業の譲受
同じ焼肉でも、ホルモンや希少部位に強い店は、大手同業にとって業態の幅を広げる好機になります。都心型店舗の強化や新たな客層の開拓を目的に、独自メニューを持つ店を取り込む例も見られます。仕入れルートや調理のノウハウが、そのまま譲受のねらいになる。自店の強みがどこにあるかを整理しておくと、同業への打診で交渉力が高まります。
投資ファンドによるプラットフォーム型の譲受
複数の焼肉店を束ね、共同仕入れや管理の効率化で価値を高めるプラットフォーム型の投資も活発です。当社は、酒場業態や精肉事業を持つ企業まで含めた買い手網に当たります。これまでの外食企業の支援でも、同業に限らない相手が有力な譲受先になった例があり、幅広く探すほど条件は引き上げやすくなります。買い手の選択肢を広げるうえで、M&A仲介の探索力は判断材料の一つです。仲介各社の案件公開数を見比べたいなら、仲介一覧から比較する方法もあります。
事業の選択と集中で都心の飲食事業を託した焼肉店運営企業の売却事例
焼肉店をはじめ外食事業を手がけてきた東京都のN社は、1970年代の創業以来、都心のホテル内で飲食店を長く営んできました。売上1億円規模で、経営者は70代。事業の選択と集中を進めるなかで、この飲食事業を譲渡する決断に至ります。

売却を選んだ背景
複数の事業を抱えるなかで、経営資源をどこに集めるかが課題でした。長年守ってきた店の伝統とサービスの質を損なわずに次へ渡すため、廃業ではなく事業譲渡という出口を選びます。みつきコンサルティングが、条件整理から相手探しまで助言しました。
譲渡条件の決め手
譲受先となったのは、飲食店とエステティックサロンを運営する売上15億円規模のR社。事業領域の拡大をねらう相手でした。譲渡条件には、従業員の労働条件維持とブランドの継続を明記し、これまでの信頼を守る形をとりました。
承継後に守られたもの
店舗の設備や備品はそのまま承継され、メニューも現場の意見を尊重して残されました。従業員にも客にも変わらぬサービスが届き、双方にとって新たな成長の機会となりました。
完全成功報酬
M&Aが成立した場合のみ、譲渡対価に応じた手数料を頂戴します。
売主様は、ご成約まで費用負担なくスタートできます。
着手金・中間金
0円
月額報酬
0円
成功報酬
成約時のみ
※レーマン方式
焼肉店の売却でよくある質問
売却を具体的に考え始めたオーナーから、焼肉店ならではの相談として多い質問を取り上げます。
強みとして評価されます。現場では、安定した部位バランスや希少部位を確保できる仕入れ網を、他店が再現しにくい価値と見ます。ただし、目利きが特定の人に依存していると継続性を疑われることも。取引条件や発注の流れを整理して示せると、のれんの上乗せにつながりやすくなります。
譲渡できます。設備の老朽度は減額要因になり得ますが、立地や客数、仕入れ力が評価されれば十分に買い手はつきます。譲受企業は更新費を織り込んで価格を見るため、直近の点検記録や見積りを用意しておくと交渉がぶれにくい。造作を生かせる同業なら、むしろ設備ごと引き継ぐ前提で話が進むこともあります。
条件次第で残せます。看板の味を資産と見て、そのまま継続する方針の譲受企業もいます。譲渡前に、レシピの継続や監修の関わり方を意向表明や契約条項に落とし込んでおくと、認識のずれを防げます。属人的すぎる味は再現リスクと見られるため、配合や手順を書き起こしておくことが評価の分かれ目です。
衛生の記録がそろっているかを確認します。生食用食肉の規格基準に沿った設備や加工の記録は、譲受企業が重く見るところ。過去の保健所対応や食中毒の有無まで問われることがあります。曖昧なまま進めると表明保証で守るべき範囲が広がるため、書類を早めに整えておくことが安心につながります。
まとめ|焼肉店の売却で重視すべき設備と仕入れの実務
焼肉店の売却は、倒産最多と食肉高騰という逆風のなかで現実的な出口になっています。価格は原価率や客単価、のれんで動き、承継は生食用食肉の規格基準や排煙設備、賃貸借契約の段取りが鍵。設備と雇用を残したいという思いに、納得できる評価で応えることが大切です。
みつきコンサルティングは、財務・税務に強いM&A仲介会社として、中小企業のM&A仲介の実績経験が豊富です。焼肉ならではの仕入れと設備の論点に踏み込みながら、相場感の確かな相談先選びを支えます。焼肉店の会社売却なら、みつきコンサルティングへご相談ください。
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著者

- 事業法人第三部長/M&A担当ディレクター
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宅食事業を共同経営者として立ち上げ、CFOとして従事。みつきコンサルティングでは、会計・法務・労務の知見を活かし、業界を問わず、事業承継型・救済型・カーブアウト・MBO等、様々なニーズに即した多数の支援実績を誇る。M&Aの成約実績多数、M&A仲介・助言の経験年数は10年以上
監修者 神門 剛 代表取締役 / 公認会計士・税理士
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