観光施設の売却|入込客数と許可承継から読み解くM&Aの勘所と事例

観光施設の売却は、入込客数の推移と物販・飲食の厚みに加え、索道や遊覧船の事業許可、指定管理、補助金で整えた設備を引き継げるかで評価が変わります。後継者の不在、重い更新投資、安全管理者の後任探し。そんな悩みを抱えるオーナー経営者に向けて、譲渡価格の考え方や承継の注意点、マリーナ運営会社の売却事例まで紹介します。

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目次
  1. 旅行消費が伸びる今、観光施設のオーナーが売却を考える理由
    1. 37.6兆円の旅行消費が示す単価重視への転換
    2. 索道や観光船、水槽設備の更新費が読みにくい
    3. 改正海上運送法と索道技術管理者の後任難
    4. 団体客の減少と後継者不在が同時に進む
  2. 観光施設の会社売却で売り手が得るものと手放すもの
    1. 論点ごとに見る売り手のメリットとデメリット
    2. 全株を譲らない資本業務提携という選択肢
  3. 入込客数と送客チャネルで見る観光施設の譲渡価格
    1. 年買法で見る観光施設の価格の目安
    2. 買い手が注目する観光施設ならではの指標
    3. 財務デューデリジェンスで調整される利益
  4. 観光施設の売却でつまずきやすい索道許可・指定管理・補助金設備
    1. 株式譲渡と事業譲渡で変わる許可・登録の引き継ぎ
    2. 指定管理や公有地で運営する施設の注意点
    3. 補助金で整えた設備と旧耐震の建物
  5. 観光施設の買い手候補と相談先の選び方
    1. 観光施設の買い手になりやすい4つの類型
    2. マッチングサイトと仲介会社の使い分け
    3. 近隣の同業へ打診するときの情報管理
  6. 伊勢湾のマリーナ網に加わり事業継続を果たしたヨットハーバーの売却事例
    1. 82歳の代表が事業の継続を選んだ背景
    2. マリーナ事業の拡大に積極的な譲受企業との成約
    3. 会員を含む利用者の利便性が高まった譲渡後
  7. 観光施設の譲渡を検討する経営者から寄せられる質問
  8. 観光施設の許可承継と売却相談先選び
    1. 観光施設の会社売却の関連コラム
M&Aの基本や会社売却の進め方を電話相談|0120-169-256・24時間受付

団体バスの立ち寄りは減り、ロープウェイの大規模更新は目前、運航管理者の後任探しも難航中。本記事は、こうした事情から観光施設の会社売却を考え始めたオーナー経営者に向けたものです。観光施設では、決算書の利益だけでなく、事業許可や自治体との協定、補助金で整えた設備をどう引き継ぐかが、価格と日程を大きく動かします。

旅行消費が伸びる今、観光施設のオーナーが売却を考える理由

客足は戻ってきたのに、なぜ今売るのか。素朴な疑問ですが、需要が伸びている局面だからこそ、M&Aで施設を次の担い手へ託す判断が現実味を帯びています。

37.6兆円の旅行消費が示す単価重視への転換

観光庁「旅行・観光消費動向調査」の2025年確報(2026年4月公表)によると、日本人の国内旅行消費額は26兆7,845億円で前年比6.5%増でした。訪日客の消費を含めた国内の旅行消費額は37.6兆円に達し、その4分の1を訪日客が占めています。注目したいのは中身。延べ旅行者数の伸びが2.4%にとどまる一方、1人1回あたりの旅行単価は3.9%伸びました。客数より単価で稼ぐ傾向がはっきりしてきた今、入場料の見直しや物販・体験の付加価値づくりに投資できる施設ほど、評価を伸ばせる環境です。

索道や観光船、水槽設備の更新費が読みにくい

ロープウェイやリフトといった索道、遊覧船、水族館の水槽とろ過設備。観光施設の中には、止まれば営業できない大型設備を抱える会社が数多くあります。索道の搬器や駆動装置の更新、観光船に代わる船の建造は1回の投資額が大きく、借入を重ねるほど社長の個人保証も膨らみます。次の更新を自分の代で背負うのか、資本力のある会社に託すのか。売却を考えるきっかけとして、この問いは珍しくありません。

改正海上運送法と索道技術管理者の後任難

2022年の知床遊覧船事故を受けて海上運送法が改正され(2023年5月公布)、2024年4月からは安全統括管理者と運航管理者の資格者証制度が始まりました。罰則の強化もあり、遊覧船を営む会社には一段と厚い安全管理の体制が求められる時代です。索道でも、鉄道事業法にもとづく安全管理規程のもとで、索道技術管理者を置かなければなりません。こうした管理者は外部から採用しにくく、社長や古参社員が担っている会社もあります。後任のめどが立たないことが、売却を決める直接の理由になる場合も。

団体客の減少と後継者不在が同時に進む

旅行会社のツアーや観光バスの立ち寄りに支えられてきた施設ほど、個人旅行や訪日客の増加という客層の変化への対応を迫られています。予約サイトでの販売、多言語の案内、キャッシュレス決済。どれも手間と資金がかかります。そこへ社長の高齢化と後継者不在が重なると、会社を売りたいという思いが具体的な検討に変わっていきます。自社で投資を続けるより、販路や人材を持つ会社のもとで施設を残す。事業承継の選択肢として第三者への売却が浮かぶのは、こうした局面です。

▷関連:レジャー業界のM&A|インバウンド回復と設備投資が動かす譲渡事例

観光施設の会社売却で売り手が得るものと手放すもの

売却すれば施設との縁はすべて切れる、と思われがちです。実際には条件の組み立て次第で、残すものと手放すものを選べます。

論点ごとに見る売り手のメリットとデメリット

下表は、観光施設の譲渡オーナーにとってのメリットとデメリットを論点ごとに並べたものです。施設と雇用の存続、更新投資や個人保証からの解放は大きな利点。その裏側で、入場料や営業日の決定権は譲受企業へ移り、引継ぎ期間の拘束も生じます。どちらを重く見るかは、施設の歴史や地域とのつながりで変わるもの。条件の線引きは、観光施設の事情に通じたM&A仲介と早めに詰めておくと、交渉の途中で迷わずに済みます。

論点譲渡オーナーのメリット譲渡オーナーのデメリット
施設と雇用施設を閉じずに残せる
後継者がいなくても、運営と従業員の雇用を次の会社へ引き継げます。
運営方針の変化
入場料や営業日、ブランドの扱いが譲受企業の方針で見直されることがあります。
設備更新大型投資を託せる
索道の更新や観光船の建造を、資本力のある会社の計画で進められます。
更新費の差し引き
近く必要になる更新費は、譲渡価格を下げる材料として持ち出されます。
借入と保証個人保証の解除
設備資金の借入に付いた社長の個人保証を、金融機関との調整で外す道が開けます。
解除時期のずれ
保証の切り替えが成約日と同時にならず、一定期間残る場合もあります。
安全管理法定管理者の補充
運航管理者や索道技術管理者の後任を、グループの人材で補える場合があります。
キーマンの残留要請
現任の管理者や社長自身に、一定期間の在籍を求められることが多くあります。
資金と手取り創業者利潤の実現
長年育てた施設の価値を、株式の譲渡益として受け取れます。
希望額との開き
土地や建物の評価が高くても、収益力が伴わなければ価格は伸び悩みます。
地域との関係観光資源を地域に残せる
閉園や廃業を避け、地元の雇用と観光の拠点を守れます。
地元への説明負担
自治体や観光協会、地元の取引先への説明に、時間と気配りを要します。

全株を譲らない資本業務提携という選択肢

観光施設の売却は、全株式を一度に譲る形だけではありません。株式の一部を譲って資本業務提携を結び、設備更新の資金と販路を得ながら社長が経営に残る方法もあります。数年後に残りの株式を譲る段階型なら、運航管理者や現場責任者への引継ぎに時間をかけられるのが利点。ただし、設備投資や価格改定など、どの決定に社長の同意を要するかは契約で決めておくことが欠かせません。土地を社長個人が持つ場合、土地だけ手元に残して会社へ貸す組み立ても一案です。

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入込客数と送客チャネルで見る観光施設の譲渡価格

年間の入場者数だけを資料に載せ、譲受企業から月別の内訳を求められて慌てる。観光施設の評価で、よく見かける場面です。

年買法で見る観光施設の価格の目安

中小の観光施設の評価で最もよく使われるのが年買法(年倍法)です。時価純資産にのれん(数年分の利益)を加える考え方で、算式にすると時価純資産+のれんとなります。土地や建物を自社で持つ施設は純資産が厚くなる反面、観光地や山間地の不動産は時価が簿価を下回ることも。上場企業の株価と比べる類似会社比較法や、将来の収益から逆算するDCF法は、規模の大きい案件で補助的に用いる位置づけです。

買い手が注目する観光施設ならではの指標

年買法ののれん部分の厚みにつながるのは、今の利益が来年以降も続くと思えるかどうか。その裏付けは、決算書の外にある数字で測られます。客数が天候や旅行会社の企画で揺れる業種だけに、記録を示せる施設は評価を落としにくいもの。下表は、譲受企業が特に確認する指標と、事前に用意したい資料をまとめたものです。企業価値評価の前提をそろえる意味でも、直近3期分を月次で並べておくと話が早く進みます。

観光施設の指標譲受企業の見方用意したい資料
入込客数の推移年間の合計より、月別・曜日別の波と回復の勢いを見ます。3期分の月別入場者数、天候や休業日の記録
送客チャネルの構成旅行会社・バス会社の団体、個人、訪日客、予約サイト経由の比率から客層の偏りを測ります。チャネル別の入場者数と手数料率の一覧
1人あたりの消費額入場料に物販・飲食・体験を足した客単価と、その粗利率まで確認します。部門別の売上と原価、商品別の粗利
土地・施設の権利形態自社所有か借地か、公有地の使用許可か国有林野の貸付かで、事業の続けやすさが変わります。登記簿、賃貸借契約、使用許可書と更新履歴
指定期間・許可の残り指定管理の期間や許可の更新時期が近いほど、収益の見通しに幅が出ます。基本協定書、年度協定、許可証の写し
大型設備の更新時期索道・船舶・水槽などの次の更新までの年数と概算額を、価格から差し引いて考えます。法定点検の記録、修繕履歴、更新見積

支援の現場では、入込客数を月別・チャネル別に並べ直す作業から入ります。旅行会社経由の団体比率が高い施設は、その旅行会社の方針ひとつで客数が動くため、譲受企業の見方は慎重になりがちです。逆に、個人客や訪日客の比率が年々上がっている施設は、同じ利益水準でものれんを厚めに見てもらえる可能性が高まります。数字の見せ方で評価が変わる典型例。売却相場を調べる前に、まず手元の記録を整えることをおすすめします。

訪日客比率と入場料改定の余地

訪日客の比率が高い施設や、入場料を長く据え置いてきた施設では、譲受後の価格改定で利益が伸びる余地を譲受企業が見込むことがあります。ただ、その伸びしろを譲渡価格へどこまで織り込むかは交渉次第。周辺施設の料金水準や、過去の改定で客数がどう動いたかを示せると、議論が前に進みます。

財務デューデリジェンスで調整される利益

財務デューデリジェンスでは、決算書の利益から一時的な要素を除いた実力値が問われます。観光施設で調整の対象になるのは、コロナ禍の雇用調整助成金のような一時的な収入、全国旅行支援のような需要喚起策で一時的に伸びた売上、修繕の先送りで膨らんだ利益などです。入場券や物販の現金売上をどう管理しているかも点検されます。社長個人の経費や同族への地代が混じる場合は、通常の水準に置き換えて利益を示す。それだけで、のれんをめぐる議論がかみ合うようになります。

観光施設の売却でつまずきやすい索道許可・指定管理・補助金設備

ひとつの施設に、許可や登録がいくつも重なっていることがあります。どれを、どの手法なら引き継げるのかを先に見極めましょう。

株式譲渡と事業譲渡で変わる許可・登録の引き継ぎ

観光施設の売却では、許可を持つ会社ごと株式を譲る株式譲渡が中心です。会社が許可の主体として残るため、多くの許可・登録をそのまま使い続けられます。一方、施設や事業だけを切り出す事業譲渡や会社分割では、許可ごとに扱いが分かれるのが厄介なところ。下表は、観光施設でよく見る許可・登録と、手法ごとの扱いの目安です。所管の役所で運用が異なる部分もあるため、最終的には事前相談で確認します。

許可・登録(根拠法)株式譲渡の場合事業譲渡・会社分割の場合
索道事業の許可(鉄道事業法)会社が許可主体のまま残ります。索道技術管理者の配置は引き続き欠かせません。事業の譲渡・譲受や会社分割に、国土交通大臣の認可が必要です。
旅客船事業の許可(海上運送法)会社は変わらず、資格者証を持つ安全統括管理者・運航管理者を置き続けることが条件です。航路ごとの許可の扱いを運輸局と事前に確認します。定期航路の譲渡には国土交通大臣の認可が要ります。
飲食・物販の営業許可(食品衛生法)そのまま営業を続けられます。2023年12月施行の法改正で、事業譲渡でも届出により営業者の地位を承継できます。
映像施設・日帰り入浴の営業許可(興行場法・公衆浴場法)そのまま営業を続けられます。同じく2023年12月から、承認手続または届出で地位を承継できます。
動物の展示(動物愛護管理法の第一種動物取扱業)登録した会社が変わらないため継続できます。地位の承継ができないため、譲受側での新規登録が必要です。
指定管理者の指定(地方自治法・各自治体の条例)団体は同じですが、協定書の届出・承認条項の有無を点検します。指定は譲受側へ自動では移りません。合併・分割の扱いも条例次第です。

税理士法人グループのM&A仲介会社であるみつきコンサルティングでは、観光施設の相談を受けると、索道や旅客船の許可証、指定管理の協定書、補助金の交付決定通知を早い段階でお預かりします。どの許可が株式譲渡なら残り、どれが会社分割で手続を要するのかを洗い出してから、スキームを組み立てるためです。当社が支援したヨットハーバー運営会社の案件でも、会社分割を経て株式を譲渡する手法を用いました。分割を挟む場合は、索道のように認可が要る許可の手続を、契約交渉と並行して進めます。

指定管理や公有地で運営する施設の注意点

自治体の施設を指定管理者として運営している場合、収益の土台は指定期間と協定の中身にあります。指定期間の残りが短ければ、譲受企業は次の公募で選ばれるかまで見込んで価格を考えます。協定書には権利義務の譲渡を禁じる条項がよく入っており、株主や役員の変更に届出を求める例も見られるもの。合併・分割による地位の承継を条例で認めつつ、承継後の審査で指定を取り消せる定めを置く自治体もあります。公有地の使用許可で営業する施設も含め、自治体への打診は秘密保持と日程の両面から時期を選びます。

補助金で整えた設備と旧耐震の建物

観光施設のデューデリジェンスで、意外に時間を取られるのが補助金と建物の確認です。国や自治体の補助金で改修した設備には処分の制限が付き、手法によっては承認や返還の手続が生じます。建物では、1981年5月以前に建築確認を受けた旧耐震基準の展示館や物産館の耐震性、遊具や索道の法定検査の記録が調べられます。どちらも成約間際に見つかると、価格や日程の見直しに直結しかねない論点。早い段階で資料を出しておけば、慌てずに済みます。

補助対象の設備を移すときの財産処分

補助金で取得した設備や建物は、耐用年数などをもとにした処分制限期間のあいだ、譲渡や貸付、担保提供、取壊しに交付元の承認が要ります。株式譲渡なら設備の持ち主は会社のまま変わりません。ところが事業譲渡や会社分割で別会社へ移すと財産処分にあたる可能性があり、残りの期間に応じた返還を求められるケースもあるため要注意です。交付決定通知と実績報告書の控えは、今のうちに手元へそろえておきましょう。

株式譲渡でも見落とせない交付の条件

補助金によっては、計画どおりの事業運営や一定期間の報告を、交付の条件にしているものがあります。譲受後に施設の用途を変えたり休止したりすると、その条件に触れるおそれもあります。譲受企業の投資計画と交付条件が食い違わないか、契約前に突き合わせておくと安心です。

観光施設の買い手候補と相談先の選び方

意外な業種が名乗りを上げるのも、観光施設の売却の特徴です。譲受企業の候補像を知ると、打診の順番と条件の出し方が見えてきます。

観光施設の買い手になりやすい4つの類型

観光施設の譲受企業は、大きく4つの類型に分かれます。どの類型が向くかは、施設の立地や客層、社長が何を残したいか次第。類型ごとに評価の物差しが違うため、同じ施設でも、提示される金額や引継ぎ条件にかなりの開きが出ます。複数の類型に声をかけて比べられる状態をつくることが、価格と条件の両方を引き出す近道です。4つの類型と、それぞれが観光施設を求める理由は次のとおりです。

同業の観光・レジャー施設運営会社

同じ観光圏で施設を持つ会社にとって、近隣の施設は周遊ルートや共通券で相乗効果を生みやすい相手です。運営ノウハウや予約・販売の仕組みを持ち込めるため、譲受後の立ち上がりも早い。入込客数の実績がある施設ほど、新たに施設をつくるより時間を買える手段として評価されます。

テーマパーク運営会社が伊豆で進める取得の例

日本駐車場開発の適時開示(2025年6月27日)によると、子会社の日本テーマパーク開発は、東急不動産から伊豆観光開発の全株式を取得する契約を結びました。伊豆観光開発は天城高原でホテルやゴルフ場の運営、別荘地の管理を手がける会社です。那須で培った地域と一体の観光振興を伊豆半島へ広げるのが狙いで、同年12月には伊豆の別荘地管理会社の取得も公表し、エリア全体の活性化を掲げています。

鉄道・バス・宿泊などの隣接業種

鉄道やバスの会社は沿線や路線の目的地づくりとして、ホテルや旅館は宿泊客の滞在時間を延ばす手段として、観光施設に関心を寄せます。送客の導線を自社で握れるのが強み。団体客の減少に悩む施設にとっては、新しい客層を得る機会にもなります。

地元企業や異業種の事業会社

地元の建設会社や不動産会社、食品メーカーなどが、地域への貢献や自社ブランドを発信する拠点として名乗りを上げることがあります。不動産の活用に強い会社なら、施設と土地を一体で生かす計画を描けるのが特徴です。社長の想いや地元の雇用を重んじる相手と出会える類型でもあります。

投資ファンド

投資ファンドは、価格改定や設備投資、販路の見直しで施設の価値を高め、数年後に次の譲受先へ引き継ぐことを見越して投資します。複数の施設を束ねる受け皿になることも。資金力と意思決定の速さが魅力な半面、数年後に再び株主が替わる点は、従業員や地元への説明で配慮が要ります。

マッチングサイトと仲介会社の使い分け

譲受企業と出会う経路は、主に3つです。マッチングサイトは小型の案件が目立ち、自分で相手と交渉する仕組み。国が各都道府県に設けた事業承継・引継ぎ支援センターは、無料で相談できる公的な窓口です。そして、非公開で候補先に打診し、許可や補助金の段取りまで伴走する仲介会社。行政手続が絡む観光施設のような中小企業のM&Aでは、仲介会社が力を発揮します。比べる際は中小企業庁のM&A支援機関登録制度への登録を確認し、仲介一覧で候補を見比べてください。みつきコンサルティングも、同制度に登録したM&A支援機関です。

近隣の同業へ打診するときの情報管理

近隣の同業に計画を知られたくない、という声はよく聞かれます。当社が観光施設の譲受候補を探すときは、同じ観光圏で施設を持つ事業者を候補に含めるかを、最初に社長と決めます。近隣の同業は周遊や共通券の効果を見込めるぶん評価が高くなる半面、情報が地元へ漏れる心配も残るところ。そこで、施設名を伏せた概要書で関心の有無を探り、秘密保持契約を結んだ相手にだけ名前を明かす手順を踏みます。ロープウェイや遊覧船のように同業が限られる施設では、隣接業種やファンドにも並行して当たり、選択肢を確保します。

伊勢湾のマリーナ網に加わり事業継続を果たしたヨットハーバーの売却事例

観光施設と同じく、立地と利用者に価値が宿る類似業種の譲渡事例として、ヨットハーバー運営会社の売却を紹介します。

志摩ヨットハーバー(株式会社新SYH)の株式譲渡に関するM&A成約実績。マリーナ事業を拡大する譲受企業(株式会社CIS)への承継。

82歳の代表が事業の継続を選んだ背景

大阪の会社が運営する志摩ヨットハーバーは、売上7,200万円の規模でした。代表が82歳を迎えるなか、事業の継続を目的に売却を決めています。

マリーナ事業の拡大に積極的な譲受企業との成約

譲受企業は、不動産事業を基盤にゴルフ練習場やマリーナを営む三重の株式会社CIS(売上11億7,500万円)。2013年に西浦マリーナ、2018年に鳥羽マリーナを譲り受けてきた会社です。みつきコンサルティングの仲介により、2019年12月に会社分割を経た株式譲渡で成約しています。

会員を含む利用者の利便性が高まった譲渡後

志摩ヨットハーバーはCISグループの一員となり、西浦・鳥羽の両マリーナとともに伊勢湾を中心とするマリーナ網を形づくりました。既存会員を含む利用者の利便性が向上し、グループのマリーナ事業も一段と強化されています。

82歳の代表が志摩ヨットハーバーを伊勢湾のマリーナ事業者へ託した成約事例を読む

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観光施設の譲渡を検討する経営者から寄せられる質問

本文で触れきれなかった、観光施設ならではの質問にお答えします。

Q:国立公園の区域内にある施設でも売却できますか?

売却はできます。ただし、国立公園事業の認可を受けている施設は、手法で手続が変わる点に注意が必要です。株式譲渡なら会社が事業者のまま残りますが、会社分割では自然公園法にもとづく環境大臣の承認が要り、事業譲渡は承継の規定がないため認可を取り直す計画を立てます。特別地域では、改修にも別途許可が求められる点に気をつけたいところ。現場では、認可書と過去の許可の記録を最初に確認します。

Q:旅行会社やバス会社との送客の取り決めは、売却後も続きますか?

株式譲渡なら契約の当事者は会社のままなので、原則として続きます。気をつけたいのは、支配権が変わると解約できる条項の有無と、書面のない慣行です。送客手数料の率や精算方法が口約束のままでは、買い手は収益の見通しを立てにくい。現場では、主要な送客先との取り決めを一覧にし、必要なものは書面に起こしてから交渉に臨みます。

Q:自治体や地元企業が株主に入っている会社でも売却できますか?

できます。ただし、自治体や地元企業が少数株主として残る場合は、定款の譲渡制限や株主間の取り決めに沿った承認が要ります。自治体側では、議会への説明など内部の手続に時間がかかることも。オーナーの持株だけを譲る場合でも、残る株主との関係を買い手は気にします。みつきコンサルティングでは、株主ごとの意向と手続の期間を先に把握し、無理のない日程を組みます。

Q:施設の名称やオリジナルキャラクターの権利は、売却後どうなりますか?

会社が商標権を持っていれば、株式譲渡ではそのまま引き継がれます。事業譲渡で移すなら、特許庁での移転登録が必要です。注意したいのは、商標を社長個人が持っている場合や、キャラクターを自治体や観光協会から借りて使っている場合。前者は譲渡の契約、後者は使用許諾が続くかを確認します。施設名は集客の看板なので、権利の所在は売却を決める前に調べておきましょう。

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観光施設の許可承継と売却相談先選び

観光施設の売却では、入込客数や送客チャネル、物販・飲食の厚みが価格を形づくり、索道や旅客船の許可、指定管理、補助金設備の扱いが日程に響きます。どれも準備の順番で結果が変わる論点です。長年守ってきた施設を誰に託すか、迷うのは当然のこと。ひとつずつ確かめれば、納得できる答えは見えてきます。

みつきコンサルティングは税理士法人グループに属する、財務・税務に強いM&A仲介会社です。中小企業のM&A仲介の実績経験が豊富で、M&Aに特化した専門スタッフが相談先選びの段階から伴走します。観光施設の会社売却なら、みつきコンサルティングへご相談ください。

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著者

田原 聖治
田原 聖治事業法人第一部長/M&A担当ディレクター
みずほ銀行にて大手企業から中小企業まで様々なファイナンスを支援。みつきコンサルティングでは、各種メーカーやアパレル企業等の事業計画立案・実行支援に従事。現在は、IT・テクノロジー・人材業界を中心に経営課題を解決。M&Aの成約実績多数、M&A仲介・助言の経験年数は10年以上
監修者 神門 剛 代表取締役 / 公認会計士・税理士

みつきコンサルティングは、中小企業の会社売却・事業承継に特化した譲渡企業様に完全成功報酬制のM&A仲介会社です。売り手と買い手企業の最適なマッチングを、経験豊富なM&Aコンサルタントが初期相談から成約まで一貫してフルサポートします。

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