会社売却の必要書類|株式譲渡契約書から議事録・印鑑証明まで

会社を売ると決めても、何をどこまで揃えればよいか戸惑うオーナーは少なくありません。買い手探しから最終契約・決済まで、段階ごとに整える資料を整理し、承認手続や名義書換、表明保証に関わる準備の勘所を現場視点でまとめました。抜け漏れを防ぎ、交渉を有利に進める一歩になります。

「うちの会社でも売却できるだろうか…」、「何から始めればいいんだろう…」。そのようなオーナー経営者の不安に、中小企業向けM&A仲介会社みつきコンサルティングは、20年間・500件以上の支援実績に基づき、お応えします。本格検討前の情報収集として、まずはお話をお聞かせください。

会社売却で必要な書類は売却の段階ごとに変わる

会社を譲渡すると決めても、最初から分厚い契約書がいるわけではありません。買い手候補へ自社を伝える初期の資料から、最終契約と決済で取り交わす書類まで、求められるものは段階で入れ替わっていきます。会社売却は株式譲渡という手法で進むことが多く、まずは株式譲渡の手続の流れに沿って全体像をつかむところから始めましょう。

初期段階で買い手に示す会社の基本情報

打診の段階で使うのは、自社の輪郭を伝える資料です。会社案内や事業概要書、組織図、登記簿謄本(履歴事項全部証明書)、定款などが代表例になります。ここで譲受企業の関心を引けるかどうかが、その後の交渉のスタート地点を左右します。

デューデリジェンスで開示する財務・法務の資料

基本合意のあとは、譲受企業による調査(デューデリジェンス)が入ります。決算書や確定申告書の直近3期分、試算表、株主名簿、各種議事録、主要な取引先との契約書、就業規則などを開示する流れです。売り手側のDD準備を早めに整えておくと、調査がスムーズに運びます。

段階ごとの必要書類を一覧で整理

会社売却で求められる書類を、進行フェーズごとに下表へ整理しました。表中のフェーズに沿って、いま自社がどの準備段階にあるかを照らし合わせてみてください。

フェーズ主な書類準備の目的
初期検討・打診会社案内、事業概要書、登記簿謄本、定款、組織図、役員従業員名簿譲受企業へ自社の魅力と概要を伝える
基本合意・調査決算書3期分、確定申告書3期分、試算表、株主名簿、株主総会・取締役会議事録、主要契約書、就業規則、許認可一覧企業価値の算定と簿外債務などのリスク調査に応じる
最終契約株式譲渡契約書、株式譲渡承認請求書、承認に関する議事録取引条件を確定し法的な有効性を担保する
決済(クロージング)株主名簿記載事項証明書、印鑑証明書、譲渡代金の受領書類名義移転と代金決済を完了させる

M&Aの進行に合わせて段階的に取り交わす書類の全体像は、M&A全体で必要になる書類でも流れに沿って確認できます。

株式譲渡で作成する法的書類

会社売却の大半は株式譲渡で実行されます。だからこそ、株式の移転を法的に有効にするための書類は、譲渡オーナー側でも中身を理解しておきたいところです。ここでは作成が必要となる代表的な書類を順に見ていきます。

株式譲渡における必要書類

株式譲渡承認請求書と承認の通知

中小企業の株式は譲渡制限が付いているのが普通です。譲渡には会社の承認が要るため、株主は株式譲渡承認請求書を会社へ提出します。会社が請求の日から2週間以内に可否を通知しないと、承認したものとみなされる点に注意が必要です(会社法第145条)。書き方の詳細は承認請求書の書き方で確認できます。

株主総会と取締役会の議事録

承認の意思決定は記録に残さなければなりません。取締役会設置会社なら取締役会、設置していなければ株主総会で可否を決め、その内容を議事録にまとめます。後の名義書換や登記で参照される基礎資料となるため、議事録が必要になる場面を押さえておくと安心です。

株式譲渡契約書で詰めておく条項

株式譲渡契約書は、譲渡の合意内容を確定させる中心的な書類です。譲渡株式の種類・株数・対価、支払方法、株主名簿の書換、契約解除事由などを盛り込みます。なかでも表明保証という仕組みは、引き渡した情報が真実であることを保証し、後日の補償請求の根拠になります。記載事項の組み立ては株式譲渡契約書の注意点を参照してください。

無償で譲渡する場合も契約書は省かない

親族間などで対価を無償にするケースもあります。それでも口約束は禁物です。無償である旨を明記した契約書を残しておくことが、のちの認識違いを防ぐ最善策になります。

株主名簿と名義書換に関する書類

譲渡が成立したら、株主名簿を更新します。譲渡側と譲受側が連名で株主名簿記載事項書換請求書を会社へ出し、書換後は株主名簿記載事項証明書を交付する流れです。株主名簿の管理は会社法で求められており、放置すると思わぬリスクを抱えます。

株式譲渡で作成する主な書類とその役割を、下表にまとめました。

書類役割
株式譲渡承認請求書譲渡制限株式の譲渡について会社の承認を求める
株主総会・取締役会議事録承認の意思決定を記録として残す
株式譲渡契約書譲渡の合意内容と取引条件を確定する
株主名簿記載事項書換請求書名義の書換を会社へ依頼する
株主名簿記載事項証明書新たに株主となった事実を証する

会社売却のクロージングで整える本人確認と前提条件の書類

最終契約から決済までの局面では、書類の性格が一段と「証明」寄りになります。誰が、どの会社の、どの株式を動かすのかを公的に裏づける段階だからです。ここを軽く見ると、決済当日に止まることがあります。

印鑑証明書や登記簿謄本など本人と会社を証する書類

譲渡オーナーの印鑑証明書、会社の登記簿謄本、場合によっては株券は、本人性と会社の現況を示す要となります。発行から日が浅いものを求められることも多く、取得のタイミングを逆算しておくと慌てません。意外と、ここで足踏みする会社は少なくないものです。

表明保証とクロージング前提条件に関わる確認

最終契約には、決済を実行する前提条件(クロージング条件)が定められます。許認可の継続、重要契約の同意取得、表明保証の正確性などが満たされて、はじめて代金が動きます。クロージング当日の段取りを事前に共有しておくと、関係者の動きが揃います。

書類を準備するときに見落としやすい注意点

書類は揃えるだけでなく、前提の確認を誤らないことが大切です。よくある相談として、後工程で初めて気づいて手戻りする例が挙げられます。先に押さえておきたい論点を3つに絞って整理します。

自社が株券発行会社かどうかを最初に確認する

株券発行会社では、株式譲渡に株券の交付が要ります。一方、株券不発行会社なら交付なしで譲渡が成立します。どちらに当たるかは登記簿謄本で確認できるため、書類の整備に入る前にここを見ておきましょう。

譲渡益への課税と申告に備える

株式の譲渡で利益が出れば、課税対象になります。個人オーナーの場合は申告分離課税で、税率は所得税15.315%(復興特別所得税を含む)と住民税5%を合わせた20.315%です(国税庁タックスアンサーNo.1463)。手取りを左右する論点なので、株式譲渡の税金の計算も併せて確認しておくと判断を誤りません。

株式譲渡契約書に収入印紙は原則不要

株式譲渡契約書は、印紙税法が定める20種類の課税文書に当たりません。よって原則として収入印紙は不要です(国税庁タックスアンサーNo.7100)。

対価の領収を兼ねる記載があるときの扱い

契約書に「代金を受け取った」旨を書き込むと、その部分が金銭の受取書(第17号文書)に該当します。ここで実務上の注意があります。株式は有価証券のため、その譲渡代金は売上代金に当たらず、受取書は売上代金以外の受取書として扱われます。記載金額が5万円以上でも印紙は一律200円であり、金額に応じて増える性質のものではありません。要否の詳しい線引きは印紙の要否と金額を確認してください。

登記や定款変更は基本的に生じない

株式譲渡そのものでは、登記申請も定款変更も通常は発生しません。ただし、譲渡に伴い役員が交代する場合は役員変更登記が要ります。詳細は登記申請の要否で整理しています。

譲渡オーナーが先回りで整える書類チェックリスト

調査が始まってから慌てて探すより、検討の初期に手元を整えておくほうが交渉は有利に運びます。当社の支援現場で、譲渡オーナーに早めの着手をお勧めしている書類を挙げます。

  • 最新の登記簿謄本と定款
  • 現状を反映した株主名簿(名義の実態確認を含む)
  • 決算書と確定申告書の直近3期分
  • 許認可の一覧と許認可証の写し
  • 主要な取引先との契約書、不動産の賃貸借契約書
  • 就業規則、賃金規程、退職金規程
  • 借入金の返済予定表と個人保証の一覧

株主名簿の放置が交渉を止めた事例

地方の製造業で、年商8億円ほど、従業員40名規模の会社の例です(数値は仮例)。60代のオーナーが後継者不在から同業への譲渡を検討しました。ところが株主名簿が長年更新されておらず、亡くなった親族名義の株式が未相続のまま残っていたのです。調査で発覚し、相続関係の整理に数か月を要しました。名簿の現状確認は、最初に手を付けて損のない作業だと痛感する一件でした。

会社売却の必要書類に関するFAQ

書類の準備をめぐって、譲渡オーナーから寄せられることの多い疑問を取り上げます。実務で最初に確認する観点から答えます。

Q:書類は誰が準備するのですか

会社の基本資料や決算関係は売り手が用意します。契約書のひな形や条項の調整は、仲介会社や弁護士などの専門家が担うのが一般的です。現場ではまず、何を自社で揃え、何を任せるかの線引きから整理します。

Q:準備はいつから始めればよいですか

検討を始めた初期からで早すぎることはありません。とくに株主名簿や許認可、契約書の所在確認は時間がかかります。買い手探しと並行して着手しておくと、調査段階で慌てずに済みます。

Q:株主名簿が古いまま放置されている場合は

まず現状の株主を実態ベースで洗い直します。相続が未処理の株式や名義借りがあると、買収の前提が崩れかねません。整理の方法は株主構成と経緯次第なので、早めに専門家へ相談するのが安全です。

Q:譲渡オーナーの印鑑証明書はいつ使いますか

主に最終契約の締結と名義書換、決済の局面で使います。発行から日が浅いものを求められることが多いため、取得のタイミングは決済日から逆算して準備しておきましょう。

会社売却の必要書類は段階管理がカギ

会社売却の書類は、初期の会社情報から調査資料、最終契約、決済の証明書類まで、進行に応じて入れ替わります。株式譲渡承認請求書や議事録、契約書、株主名簿、印鑑証明の整備が要となり、課税や印紙の扱いも押さえておきたいところです。何から手を付けるべきか迷う不安は、段階ごとに分けて考えれば軽くなります。

当社は税理士法人グループに属するM&A仲介会社として、中小企業の会社売却・事業承継を数多く支援してきました。書類の整備から税務の見立てまでワンストップで伴走できる体制です。会社売却をお考えなら、本格検討の前段階からお気軽にご相談ください。

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著者

西尾 崇
西尾 崇事業法人第三部長/M&A担当ディレクター
宅食事業を共同経営者として立ち上げ、CFOとして従事。みつきコンサルティングでは、会計・法務・労務の知見を活かし、業界を問わず、事業承継型・救済型・カーブアウト・MBO等、様々なニーズに即した多数の支援実績を誇る。M&Aの成約実績多数、M&A仲介・助言の経験年数は10年以上
監修者 神門 剛 代表取締役 / 公認会計士・税理士

みつきコンサルティングは、中小企業の会社売却・事業承継に特化した譲渡企業様に完全成功報酬制のM&A仲介会社です。売り手と買い手企業の最適なマッチングを、経験豊富なM&Aコンサルタントが初期相談から成約まで一貫してフルサポートします。

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