ケータリング会社の売却|配ぜん人確保と大量調理体制が効くM&A

ケータリング会社の売却では、料理の質より先に「誰が現場を回せるか」が値段に響きます。配ぜん人の手配、繁忙期に偏る受注、器材と保冷車の更新。譲渡オーナーがつまずきやすい論点と譲渡価格の見立て方、会場運営会社や食品ECが買い手に回る背景までを、税理士法人グループのM&A仲介会社みつきコンサルティングが解説します。

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忘年会と歓送迎会で一年の山を作り、閑散期は器材を眠らせる。ケータリング会社の経営は、そんな波の上に成り立っています。配ぜん人が集まらない、保冷車の入れ替え時期が近い、会場からの値下げ要請が続く。こうした事情を抱えながら会社の売却を考え始めたオーナー経営者に向けて書いています。

法人イベントの戻りとオフィス需要が塗り替えたケータリングの商圏

宴会は戻ったのに、以前ほどの手応えがない。そんな声を耳にします。M&Aを考える前に、需要側の変化から押さえます。

イベント産業2兆8,535億円が示す法人需要の戻り

日本イベント産業振興協会が2025年6月に公表した推計では、2024年のイベント産業規模は2兆8,535億円、前年比108.3%でした。うちイベント関連産業は9,797億円で前年比107.2%。コロナ禍前の2019年と比べても109.2%の水準まで戻っています。展示会や周年行事、自治体の催事が復活し、料理を伴う場面も増えました。同じ推計は、低迷期に業界を離れた人材が戻らず、拡大する需要にリソースが追いつかない現状にも触れています。

出社回帰で膨らんだ社内向けの食の商材

オフィスに人が戻ると、会議前の軽食、部門懇親会、内定式や周年イベントといった小口の依頼が復活します。厨房を持たない企業に料理と什器を運び、盛り付けから撤収までを請け負う形は、社員食堂の代替としても使われるように。1回あたりの金額は宴会場の大型宴会より小さいものの、同じ顧客から年に何度も声がかかる点で事業の安定に効きます。法人の取引名簿を持つ会社が譲受企業から評価されるのは、この繰り返しの部分です。

一件ごとの受注を積み上げる商売の弱さ

店舗を構える飲食業と違い、ケータリングには通りがかりの客がいません。売上は受注件数と単価の掛け算で、12月と3月に山が立ち、8月は谷に沈みます。天候不良で屋外イベントが飛べば、仕込んだ食材はそのまま損失に変わる。閑散期の資金繰りに神経を使い続けた末に会社売却を考え始めるオーナーは少なくありません。波の大きさは、譲受企業が真っ先に見る部分でもあります。

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配ぜん人の手配難と保冷配送の負担から売却を考えるとき

後継者がいない、という一言だけでは説明がつかない業種です。現場が回らなくなる予感から相談が始まることも。

配ぜん人が押さえられない日が増えた

宴会やパーティーの現場では、配ぜん人と呼ばれるサービススタッフを日単位で手配します。職業安定法の運用でも配ぜん人は独立した職種として扱われ、専門の紹介所を通じて集めるのが業界の慣行。ところが繁忙期は同じ日にホテルや結婚式場と取り合いになり、単価を上げても頭数が埋まらない日が出てきました。受注を断る回数が増えると、売上の天井が見えてきます。ここで事業の先行きを考え直すオーナーは多いところです。

厨房と保冷配送車の更新が重なる

ケータリングの設備は厨房だけで終わりません。保温ジャーやシルバー、クロス、テーブルや什器、それを運ぶ保冷車と保管倉庫まで含めて一式です。10年20年と使えば劣化し、衛生基準に合わせた入れ替えも避けられない。数千万円の投資判断を70代で下すのは気が進まない、という声が多いところ。設備の更新時期と引退の時期が重なったとき、譲渡という選択が現実味を帯びてきます。

前受金と個人保証が絡む資金繰り

大口の宴会や婚礼は前受金が入る一方、食材と人件費の支払は先行します。繁忙期に運転資金が膨らみ、季節資金を借り入れる会社も珍しくない。その借入にはほぼ例外なく個人保証が付いています。保証解除の交渉では、譲受企業の信用力で借換えができるかを当社が早い段階で確かめ、株式譲渡契約の条件に紐づけます。相談先を探す段階で仲介会社の一覧を眺める方も多いところです。

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一件ごとの積み上げをどう値づけするか

決算書の利益だけでは、この商売の価値は測りきれません。何を見て値がつくのかを順に確かめます。

年買法で置く目安

中小のケータリング会社で最もよく使われるのが年買法(年倍法)です。時価純資産にのれん、つまり数年分の利益を足して目安を出します。純資産法やDCF法、類似会社比較法も方法としてはあるものの、上場企業との比較が効きにくい規模では出番が限られます。器材の含み損益と、繰り返し発注してくれる法人顧客の厚み。この2つが式のどこに効くかを知っておくと、交渉の話が早く進みます。

譲受企業が確かめる数字

下表は、ケータリング会社の譲渡価格を見立てる際に買い手が確かめる代表的な指標です。

指標譲受企業が見る観点価格交渉での効き方
稼働日あたりの受注件数厨房と配送体制にどれだけ余力が残っているか空き枠が多いほど伸びしろとして評価される
1件あたり平均受注額提案力と単価帯の位置づけ高単価帯の実績はのれんの上乗せ材料になる
法人リピート率年間で繰り返し発注する取引先の厚み固定客が多いほど収益の読みが立ち評価が上がる
繁忙月の売上構成比12月や3月への集中度合い偏りが強いと運転資金の負担が重く見られる
キャンセル規定と発生率中止時に損失を回収できる契約になっているか違約条項がないと減価の理由として持ち出される
食材原価率と配ぜん人費変動費の構造と外注比率共同仕入れで改善余地があれば買い手の関心が高まる
器材・保冷車の保有状況成約後にすぐ追加投資が要るかどうか更新直後なら時価純資産に反映されやすい
会場・幹事企業への依存度上位取引先への売上集中1社で3割を超えると条件交渉が慎重になる

器材と車両の時価が純資産を動かす

株価算定に入るとき、当社が必ず現物を見るのが器材です。帳簿では償却が進んでゼロに近い保温ジャーや大型のクロス什器でも、実際に使えるなら時価は残ります。逆に、倉庫の奥で眠ったままの食器やテントには評価が付きません。保冷車も年式と走行距離で見方が変わる。時価純資産を組み立てる段階でここを丁寧に拾えるかどうかで、提示できる金額の幅は違ってきます。

会場運営から食品ECまで、買い手候補の広がり

うちのような規模に手を挙げる会社があるのか。初回面談で必ず出る問いに、実例で答えます。

同業の仕出し・ケータリング会社

最も数が多いのがこの類型です。ケータリングは食材の仕入れと配送、そして人の手配が規模の勝負になるため、隣接エリアの会社を取り込む動機が働きます。婚礼に強い会社が法人パーティーの顧客を求める、和食の仕出しに寄った会社がビュッフェ形式のノウハウを取りに来る、といった組み合わせも。受注の枠が広がるだけでなく、繁忙期の人員を融通し合える点も相手方の狙いになります。

会場を持つ事業者からの資本参加

貸会議室を展開するティーケーピーは、2025年4月14日にハークスレイと業務提携を結び、同月24日、ハークスレイ子会社で仕出し料理とケータリングを手がける味工房スイセンの株式1,400株、所有割合35%を譲り受けて持分法適用会社としました。両社の発表では、自社施設で開かれる懇親会やパーティー案件への供給を安定させ、共同仕入れでコストを抑えることが狙いとされています。会場側が食の供給元を囲い込む動きは、譲渡オーナーにとって新しい買い手の入口です。

食品ECや食品宅配からの参入

異業種からの参入もあります。オイシックス・ラ・大地は2024年1月31日、法人向けケータリングとキッチンレス社食を手がけるノンピの株式約51%を取得し、連結子会社としました。同社の発表によれば、注力するBtoBサブスクリプション事業にノンピの社食事業を組み込み、グループの給食事業との相乗効果を狙うものです。食のEC事業者から見れば、法人の口座と現場運営のノウハウをまとめて得られる譲受先になります。

投資ファンドと周辺サービス

イベント運営、人材サービス、ビルメンテナンスなど、法人の現場に接する業種からの打診も届きます。投資ファンドは、複数の中小事業者を束ねて仕入れと配送の効率を作る発想で動くところ。これまで手がけた食品・外食分野の案件では、同業だけに絞って探すより、会場運営会社と食品卸を並行して当たったほうが条件のよい相手に届いています。M&A仲介に相談する際は、打診先の幅をどこまで広げられるかを確かめておくと安心です。

売却で手に入るものと、譲渡オーナーが譲るもの

良い面だけを並べても判断はできません。引き換えに生じる制約も含めて見ておきます。

手配の重圧から離れられる意味

配ぜん人の頭数を数え、天気予報を気にしながら週末を迎える。この緊張から解放される点を、成約後に真っ先に挙げるオーナーは多いところです。会社は残り、社員の雇用も引き継がれる。屋号を残す前提で交渉するケースも珍しくありません。ただし、料理長の腕やオーナー個人の人脈で受注してきた会社ほど、譲渡後の引継ぎ期間を長めに求められます。1年から2年、顧問として残る形が現実的な着地になることも。

対で見るメリットと注意点

下表に、ケータリング会社の譲渡オーナーから見た主なメリットと、その裏側で生じる制約を対にして示します。

場面譲渡オーナーのメリット譲渡オーナーのデメリット
事業の継続後継者がいなくても受注先への供給を止めずに済む献立や盛り付けの基準が譲受企業側に寄せられる
資金と保証創業者利潤を得られ、借入の個人保証も解除へ進めやすい表明保証の責任が成約後も一定期間残る
人の手配グループの人材網で配ぜん人や調理スタッフを補いやすい勤務条件の統一で既存スタッフの働き方が変わる
設備と器材器材や保冷車の更新を親会社の資金で進められる投資の可否が本部判断となり、現場の裁量が狭まる
受注の拡大会場や法人の口座を共有でき、大型案件に応札しやすい統合作業に手を取られ、当面は新規開拓が止まりやすい
仕入れ共同購買で食材原価率を下げられる長年つきあった地元業者との取引を見直す必要が出る

そうざい製造業許可と大量調理施設衛生管理マニュアルで問われる論点

価格の話がまとまっても、許可と衛生の確認でつまずけば日程が崩れます。ケータリングならではの確認事項を見ます。

会場調理と工場製造で変わる営業許可の組み立て

2021年6月の食品衛生法改正で、営業許可は32業種に再編されました。会場へ出向いて調理し提供する形は飲食店営業許可の範囲ですが、自社の厨房で弁当や折詰を作って届ける形が主なら、そうざい製造業の許可が要る場合があります。屋外の催事に出るなら臨時営業の許可や届出、キッチンカーを使うなら自動車での営業許可が別に必要。株式譲渡なら会社が許可主体のまま残るとはいえ、どの施設でどの許可を取っているかで、譲受企業から見た展開余地は変わってきます。

1回300食の線引きと検食の保存

厚生労働省の大量調理施設衛生管理マニュアルは、同一メニューを1回300食以上、または1日750食以上提供する調理施設に適用されます。原材料と調理済み食品を50g程度ずつマイナス20℃以下で2週間以上保存する検食の運用、原材料の記録を1年間保管する取り扱いが定められています。2024年の食中毒は事件数1,037件、患者数14,229人。2023年に八戸市内で製造された弁当の事例では、需要の回復を受けて製造能力を超える受注をしたことが要因として説明されました。受注の上限を守れているかは、買い手が必ず見る部分です。

配ぜん人の労務区分とデューデリジェンスの目線

支援現場では、配ぜん人の契約形態を早い段階で確かめます。紹介所を通じて日々雇用する形なのか、自社で直接雇っているのか、業務委託の名目で扱っていないか。指揮命令の実態と契約書の中身が食い違っていると、買い手のデューデリジェンスで未払残業や社会保険の論点として拾われます。人が足りない時期ほど運用は緩みがち。ここを整えてから交渉に入るかどうかで、条件の詰め方が変わってきます。

M&Aが成立した場合のみ、譲渡対価に応じた手数料を頂戴します。
売主様は、ご成約まで費用負担なくスタートできます。



ケータリング会社の売却でよくある質問

初回相談で出やすい質問のうち、本文で触れていないものをまとめました。

Q:リース中の保冷車や什器は、売却時にどう扱われますか?

株式譲渡なら契約はそのまま残るのが原則です。ただ、リース契約に支配株主の変更を解約事由とする条項が入っていることがあり、事前の読み合わせが欠かせません。現場ではここを確認します。リース会社への通知が要るのか、残債をどちらが負担するのか、条項単位で洗い出す進め方です。器材のレンタル契約も同じ扱いになります。

Q:料理長の名前で受注しています。譲渡後も取引は続きますか?

顧客が個人に付いている場合、買い手は必ずそこを心配します。料理長に一定期間の残留を約束してもらう、レシピと仕込み手順を文書に落とす、といった手当てを成約前に進めるのが現実的。オーナー自身が営業窓口なら、引継ぎ期間の長さを条件に織り込む形になります。

Q:婚礼やイベントの前受金と予約残は、どう精算するのですか?

成約日をまたぐ受注は、実務でいちばん手間のかかる部分です。前受金の残高をどう扱うか、成約後に実施する案件の売上と原価をどちらに帰属させるかを、譲渡契約の中で決めておきます。予約台帳の精度が低いと、この調整だけで時間を取られることに。

Q:繁忙期を避けて進めたほうがよいですか?

12月や3月に交渉の山場を置くと、現場が回らなくなります。閑散期にあたる夏場から準備を始め、繁忙期の実績が出た直後に条件を詰める組み立てが多いところ。みつきコンサルティングでも、ケータリングの受注が固まる時期に合わせて日程を引きます。譲受企業の決算期の都合次第で前後することもあります。

税理士法人を母体とするM&A仲介会社|みつきコンサルティングが選ばれる理由

ケータリング会社の売却で押さえる実務と相談先の選び方

イベントと法人の需要は戻ったものの、配ぜん人の手配と器材の更新は重い負担のまま。譲渡価格は年買法を土台に、法人リピート率や繁忙月の偏り、器材の時価で調整されます。長年守ってきた屋号と社員を託す相手を選ぶ場面で迷いが生じるのは、当然のことです。

みつきコンサルティングは税理士法人グループの財務・税務に強いM&A仲介会社として、中小企業のM&A仲介の実績経験が豊富です。相談先選びに迷う段階からでも、株価の目安と買い手候補の幅をお示しできます。ケータリング会社の会社売却なら、みつきコンサルティングへご相談ください。

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著者

西尾 崇
西尾 崇事業法人第三部長/M&A担当ディレクター
宅食事業を共同経営者として立ち上げ、CFOとして従事。みつきコンサルティングでは、会計・法務・労務の知見を活かし、業界を問わず、事業承継型・救済型・カーブアウト・MBO等、様々なニーズに即した多数の支援実績を誇る。M&Aの成約実績多数、M&A仲介・助言の経験年数は10年以上
監修者 神門 剛 代表取締役 / 公認会計士・税理士

みつきコンサルティングは、中小企業の会社売却・事業承継に特化した譲渡企業様に完全成功報酬制のM&A仲介会社です。売り手と買い手企業の最適なマッチングを、経験豊富なM&Aコンサルタントが初期相談から成約まで一貫してフルサポートします。

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