ファッション通販の売却では、売上規模やフォロワー数よりも、返品率や2回目購入率、販路ごとの利益が価格を動かします。モデル写真の権利や会員データを譲渡後も使えるかも、早い段階で問われる点です。広告費と送料の上昇で先行きに迷う経営者に向けて、評価の視点、売却方法の選び方、特定商取引法の返品特約といった確認事項を、M&A仲介の実務からお伝えします。

サイズ違いの返品が倉庫に積み上がり、商品写真は外注のカメラマン任せ、新規客の多くは社長のSNS経由。会社売却を考え始めたファッション通販のオーナーから、よく伺う現状です。返品が粗利をどれだけ削っているか、外注で撮った写真を譲受企業が使い続けられるか。本記事は、決算書に表れないこうした実態をどう数字と書類で示すかを、売却を検討するオーナー経営者の目線でまとめました。
衣類EC2.8兆円市場で進むファッション通販の再編
市場は伸びているのに、手放す相談はむしろ増えています。なぜか。その答えに、ファッション通販でM&Aが選ばれる理由が表れています。
物販平均の2倍を超えるEC化率と細る手残り
経済産業省「電子商取引に関する市場調査」(2025年8月公表)によると、2024年の衣類・服装雑貨等のBtoC-EC市場は2兆7,980億円で、前年から4.74%伸びました。EC化率は23.38%。物販系分野全体の9.78%と比べ、2倍を超える水準です。ただ、服はサイズや色ごとに品番が膨らみ、撮影や採寸、返品対応にかかる手間が他の商材より重くなりがち。市場の拡大が、そのまま中小事業者の利益に結びつかない構造がここにあります。
ファッションモールの再編とブランドを束ねる企業の台頭
ファッションに特化したモールでは、再編が続いています。2024年2月29日、靴とファッションのEC「LOCONDO.jp」を運営するジェイドグループが、NTTドコモなどからマガシークの株式を取得し子会社化すると発表しました。2025年1月17日には、クルーズが「SHOPLIST」を運営する子会社の全株式を、韓国発のファッションEC「nugu」を手がけるMEDIQUITOUSへ譲り渡すと公表しています。
複数のブランドを傘下に集め、物流や広告を共通化する上場企業も増えました。出店する中小の通販会社にとっては、販路の顔ぶれと、自社を譲り受ける候補の顔ぶれが同時に入れ替わる局面です。
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ファッション通販のオーナーを売却に向かわせる事情
「売上は落ちていないのに、手元の資金が増えない」。会社を売りたいと考え始めたオーナーから、よく耳にする言葉です。
SNS広告の単価上昇と送料・返品物流の負担
新規客の多くをInstagramなどのSNS広告で集めるファッション通販では、広告枠の競争が強まるほど1人を獲得する費用がかさみます。そこへ宅配運賃の改定が重なると、送料無料や返品無料の条件を守るほど1件あたりの利益は薄くなる一方。サイズ違いの交換は往復の送料に加え、検品や再登録の手間も伴います。売上が伸びるほど負担も膨らむ、という逆転が起きやすい業態です。物流と広告を共通化できる相手と組みたいという相談は、中小企業のM&Aの現場でも増えてきました。
円安で上がった海外縫製の仕入原価
自社ブランドの服を中国やベトナムの縫製工場へ発注している会社では、為替の動きがそのまま原価に跳ね返ります。2022年以降の円安局面で、外貨建てで決まる工賃や生地代の負担は重くなりました。ところがファッション通販はセールを前提にした価格設計になりやすく、上昇分を定価に乗せきれない会社も少なくありません。発注は品番ごとにまとまった量で行うため、仕入資金の借入も膨らみます。調達網と資金力を持つ譲受企業への期待は、こうした事情から高まっています。
創業者の発信力に頼る集客と後継者の不在
社長やデザイナー自身がSNSで着こなしを発信し、その投稿から売上が立つ構図。ファッション通販ではよく見かけます。ただ、発信を続ける負担は年々重くなり、体調や家族の事情で投稿が止まれば売上もすぐに落ちます。社内に後継者候補がいても、同じ発信力までは引き継げません。ブランドを残すための事業承継として、組織と資本を持つ相手へ託す判断は、事業が好調なうちにこそ検討されています。
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返品率と2回目購入率に表れるファッション通販の譲渡価格
売上高やフォロワー数がそのまま値段になる、と考える方は少なくありません。実際に値づけの決め手になるのは、売上の中身です。
年買法の目安に上乗せされるファッション通販の強み
中小のファッション通販で最もよく使われるのが年買法(年倍法)です。時価純資産にのれん(数年分の利益)を加えて目安を出します。算式は「時価純資産+のれん」。在庫が中心で純資産が薄くても、リピート客の厚みや自社ECの集客力があれば上乗せが見込めます。成長途上の会社ではDCF法を、上場するアパレルEC企業の株価を手がかりにする類似会社比較法を補助的に使う場合もあります。
買い手が確かめる評価の視点
下表に、ファッション通販の譲渡価格を検討する際、譲受企業が決算書とあわせて見る指標をまとめました。いずれも売上高の大きさそのものではなく、売上のうちどれだけが利益として残り、来期も続くかを測るための数字です。月次で3期分をそろえ、変化の理由を一言ずつ添えておくと、説明の説得力が増します。一般的な会社売却の相場を自社に当てはめるときも、これらの指標が前提になります。
| 評価の指標 | 把握したい中身 | 価格への効き方 |
|---|---|---|
| 返品率・交換率 | 理由別(サイズ・イメージ違い・不良)とカテゴリ別の推移 | サイズ起因が多いと、送料と値引き再販を差し引いた実質の粗利が下がる |
| 2回目購入率 | 初回購入者のうち、一定期間内に再び購入した人の割合 | 広告を止めても残る売上の厚みとして、のれんの上乗せ要素になる |
| 出荷1件あたりの物流費 | 送料・梱包資材・倉庫作業・返品処理の合計を出荷件数で割った額 | 運賃改定への耐性と、倉庫の統合で見込める効果の根拠になる |
| 販路別の貢献利益 | 自社EC・ファッションモール・総合モール別の、手数料と広告費を引いた利益 | 手数料率の高い販路に偏るほど、売上規模ほどには評価されにくい |
| シーズン別の在庫残高 | 今季品・前季品・季越し品の区分と、評価減の方針 | 季越し品は、時価純資産の算定で減額されやすい |
| SNS・指名検索からの流入比率 | 広告以外で得た新規客の割合と、その発信者 | 創業者個人の発信に頼るほど、引継期間や段階譲渡の条件に響く |
サイズ起因の返品が粗利を削るしくみ
返品1件のコストは、返送料だけでは済みません。倉庫での検品やたたみ直し、再撮影が要る場合の手間、再販時の値引きまで積み上げると、1着分の粗利が消えることもあります。アパレルは他の商材より返品率が高いとされ、サイズ違いの多い品番は評価の場で必ずといってよいほど話題に。採寸データの充実やサイズ表記の改善で返品率を下げた実績は、譲受企業にとって再現できる改善策として映り、利益の見通しを支える材料になります。
税理士法人グループのM&A仲介会社であるみつきコンサルティングでは、ファッション通販の株価を試算する際、ZOZOTOWNや楽天市場といった販路ごとに、手数料・返品送料・広告費を配賦し直した損益を作ります。決算書では1つにまとまった販売費も、販路別に分けると自社ECだけ利益が厚い、といった姿が浮かぶことは珍しくありません。この分解があれば、譲受企業の企業価値評価と前提がそろい、のれんをめぐる議論を数字の上で進められます。
売り手から見たファッション通販売却の利点と負担
譲渡代金ばかりに目が向き、送料や返品の条件が変わると契約の直前に知って迷うケース。得るものと手放すものを先に並べておけば、こうした戸惑いは避けられます。
在庫と物流の重荷を下ろせる一方で生じる制約
ファッション通販の会社売却で得られるものは、譲渡代金だけではありません。季節ごとの仕入資金や、倉庫と配送にかかる負担を、資本と設備を持つ相手に分け持ってもらえる点が大きいところです。その反面、価格政策やブランドの見せ方に譲受企業の基準が入り、社長の一存では決められない場面も増えます。下表に、ファッション通販の譲渡オーナーから見た利点と負担を、対になる形で並べました。
| 譲渡オーナーのメリット | 譲渡オーナーのデメリット |
|---|---|
| 在庫と運転資金の負担が軽くなる シーズンごとの先行仕入と季越し在庫の資金を、譲受企業の資本で支えられる | ブランドの見せ方が変わる懸念 商品企画や撮影のトーンが、グループの基準に寄せられることがある |
| 物流網と倉庫を共同で使える 譲受企業の物流拠点や配送契約に乗り、出荷1件あたりの費用を下げやすい | 送料・返品条件の見直し 送料無料や返品無料の条件がグループ基準に統一され、既存客が離れる場合がある |
| 撮影と商品登録の体制の底上げ スタジオや登録作業の人員を共有でき、新作の掲載遅れによる機会損失が減る | 創業者の引継期間の拘束 発信を担う創業者に、一定期間の在籍やSNS発信の継続が求められやすい |
| 広告とCRMへの投資余力 会員データの分析や広告運用の専門チームを使え、獲得費用の上昇を抑えやすい | 撮り直しや許諾延長の費用 使用許諾の範囲を超える写真は差し替えが要り、価格調整の材料にされやすい |
| 個人保証の解除と創業者利益の確定 仕入資金の借入に付けた保証を外し、株式の対価を手にできる | モールや取引先への説明負担 出店モールや縫製工場への通知と、条件の再交渉が生じうる |
| ブランドと雇用の存続 後継者がいなくても、ブランドとスタッフの働く場を残せる | 経営の裁量の縮小 セールの実施や新ブランドの立ち上げに、親会社の決裁が必要になる |
当社は、秋冬物の仕入れに備えた当座貸越や、海外縫製の支払いに充てる短期借入に付いた社長の個人保証について、クロージング日に譲受企業の保証へ差し替える段取りを金融機関と詰めます。在庫が膨らむ時期に保証だけが残れば、譲渡後も社長個人がシーズンの売れ行きを背負い続けることになりかねません。
ブランドの世界観と価格政策はどこまで残せるか
譲受企業の多くは、育ったブランドの見せ方を急に変えることを望みません。とはいえ、物流や送料、セールの時期といった運営の条件は、グループの基準に合わせて見直されやすい部分です。残したいものがあれば、ブランド名、撮影のトーン、送料や返品の条件といった項目ごとに、維持する期間を最終契約の協議事項として早めに示しておくのが得策。守りたいものを具体的に書き出すほど、交渉は進めやすくなります。
モデル写真・SNS・会員データの承継と売却スキームの選び方
商品ページの写真1枚にも、会社とは別の持ち主がいることがあります。形のない資産ほど、権利の所在は意外なほどばらばらです。
株式譲渡と事業譲渡で異なるデジタル資産の移り方
売却の方法は、会社そのものを渡す株式譲渡と、事業を切り出して渡す事業譲渡が中心です。ファッション通販では、モールの出店契約や決済代行の加盟店契約、会員データのように形のない資産ほど、方法によって移り方が変わります。株式譲渡なら契約の当事者は会社のまま残る一方、事業譲渡では相手先の承諾や新たな審査が要る場面が増えるもの。スキームの設計に強い相談先を探すなら、仲介会社の一覧で支援実績を見比べておくと目安になります。下表で主な資産の移り方を比べました。
| 対象の資産 | 株式譲渡の場合 | 事業譲渡の場合 |
|---|---|---|
| モールの出店契約 | 会社が当事者のまま続く。代表者や株主の変更を届け出る定めに注意 | 出店者の地位の移転にモール側の承認が要り、新規の審査となる場合もある |
| 決済代行の加盟店契約 | 原則として続く。変更届の提出を求められることがある | 譲受企業の名義で審査を受け直し、切替え日を調整する |
| 会員データ | 会社が持ち続けるため、移転の問題は生じにくい | 事業の承継に伴う提供として同意は不要だが、利用目的は承継前の範囲に限られる |
| 商品画像・モデル写真 | 会社が得ている権利の範囲で使い続けられる | 著作権や使用許諾を個別に移す必要があり、撮影者やモデル側の承諾が要ることも |
| SNSアカウント | 運用するのは同じ会社のまま。管理者の権限を付け替える | 規約がアカウントの譲渡を認めておらず、運用の引継ぎ方に工夫が要る |
| 商標・独自ドメイン | 会社名義なら手当ては不要。個人名義なら事前に会社へ移す | 移転登録やドメインの登録者変更を行う |
撮影素材に重なる2つの権利
支援現場では、ささげ業務(撮影・採寸・原稿作成)を外注しているファッション通販ほど、撮影会社やモデル事務所との契約書を集めるところから始めます。商品ページの写真には、撮った人の権利と写った人の権利が重なっているためです。使用期間を過ぎた写真が残っていないか、譲受企業の別のモールや広告でも使えるかを点検し、延長の交渉や撮り直しの費用を先に見積もっておきます。そうすれば、価格の減額ではなく実費の精算として話を収めやすくなります。
外注カメラマンに残る著作権
外部のカメラマンに撮影を頼んだ場合、写真の著作権は原則として撮影者にあります。契約書で著作権の譲渡を定めていても、翻案などに関わる著作権法27条・28条の権利を明記していなければ、撮影者に残ると推定されます(同法61条2項)。トリミングや色の補正に関わる著作者人格権は譲り渡せないため、行使しない旨の定めがあるかも見ておきたいところ。
モデルの使用期間と媒体の制限
モデル事務所との契約では、写真を使える媒体や期間が限られている例が少なくありません。自社ECとSNSのみ、使用期間1年といった条件で撮影していれば、譲渡後に譲受企業のモールや広告へ転用する際は追加の許諾が要ります。期限の切れた写真を使い続けていないかも、点検される項目の1つです。
規約で譲渡できないSNSアカウントの扱い
Instagramの利用規約は、ユーザーネームを含むアカウントの売買や譲渡を認めていません。フォロワーの多いアカウントを事業の一部として渡したくても、アカウント単体の受け渡しは規約違反になりかねない点に注意が要ります。株式譲渡であれば運用するのは同じ会社のままで、管理者の権限を付け替えれば足りる場面がほとんど。社長の個人アカウントが実質的なブランドの顔になっているなら、譲渡の前から会社のアカウントへ発信の軸足を移しておくのが安全です。
会員データの移転と2026年改正個人情報保護法
事業譲渡で会員データを渡すことは、事業の承継に伴う提供として、本人の同意がなくても認められています(個人情報保護法27条5項2号)。ただし、譲受企業が使えるのは承継前の利用目的の範囲まで。交渉段階で譲受候補の調査に応じてデータを見せる場合も、秘密保持や漏えい時の措置を定めた契約が前提になります。購買履歴やサイズの登録情報を含め、どのデータをどの目的で集めてきたかをプライバシーポリシーと照らしておくと、話が早く進みます。
2026年7月には改正個人情報保護法が公布され、違法な第三者提供などに課徴金を科す制度が設けられました。施行は公布から2年以内。本人が1,000人を超える事案が主な対象とされ、会員数の多い通販会社ほど、管理体制の説明を求められる場面が増えます。
ファッション通販の売却で見落としやすい表示と在庫の論点
価格の減額は、交渉の終盤に思わぬところから持ち上がります。多いのは、カート画面と倉庫の数字です。
最終確認画面の返品特約と8日間の返品
通信販売には、商品が届いてから8日以内なら申込みの撤回や契約の解除ができる、法定の返品のルールがあります(特定商取引法15条の3)。これを「セール品は返品不可」「サイズ交換のみ」といった自社の特約で置き換えるには、広告に表示するだけでは足りません。インターネット通販では、注文の最終確認画面にも表示しておく必要があります。2022年6月からは、最終確認画面で申込みの撤回・解除に関する事項などを表示する義務も明文化されました。画面の作りは、デューデリジェンスで点検の対象になる項目です。
セール表示の通常価格と8週間の目安
「通常価格8,900円のところ半額」といった二重価格表示も、ファッション通販でよく問題になる論点です。消費者庁の価格表示ガイドラインでは、比べる価格が最近相当期間にわたって販売されていた価格といえるかを、セール開始前の8週間のうち過半の期間、その価格で販売していたかどうかで判断するのが目安とされています。その価格での販売期間が通算2週間に満たない場合などは、この目安に当たりません。セールが常態化した品番ほど、表示の裏付けを示せるかが焦点に。
現場では、最終確認画面や過去のセール告知の画面を保存した記録があるかを見ます。記録が残っていない期間の表示について、最終契約の表明保証でどこまで責任を負うかは、譲渡オーナーにとって重い交渉事項。品番ごとの販売履歴で二重価格表示の根拠を出せる会社は、補償の範囲を狭く抑えやすくなります。
EMV 3-Dセキュアとカード情報の管理体制
自社ECでカード決済を受けている場合、割賦販売法に基づく対策の実務指針とされる、クレジットカード・セキュリティガイドラインへの対応状況も見られます。EC加盟店には本人認証のEMV 3-Dセキュアの導入が2025年3月末を期限に求められ、サイトの脆弱性対策や不正ログイン対策も並びました。2026年3月公表の6.1版でも、この枠組みは変わっていません。カード情報の漏えいを起こした過去があれば、再発防止の状況まで説明を求められます。
モールや外部倉庫に預けた在庫の数量確認
ファッションモールの受託販売や外部の物流倉庫を使っていると、在庫は自社の倉庫にありません。それでも所有権は自社に残るため、譲渡の際は預け先ごとの在庫データと帳簿の数量を突き合わせることになります。サイズとカラーの組合せで品番が数千に及ぶ会社も多く、差異の原因を追うだけで数週間かかることも。財務デューデリジェンスの前に、預け在庫の残高証明を取り寄せておくと安心です。
当社が支援した化粧品EC企業の譲渡でも、業務に支障が出ないよう夜を徹して実地棚卸を行い、在庫数がほぼ一致したことが円滑な合意につながりました。品番の多い通販ほど、在庫の数字への信頼が価格への信頼に直結します。
ファッション通販の買い手像と、ブランドが評価される理由
同業だけを候補に考えていると、声をかけるべき相手の半分を見落としかねません。狙いがわかれば、自社の見せ方も定まります。
類型ごとの狙いと、目当てにする資産
ファッション通販の譲受企業は、同業のアパレルEC企業に限りません。実店舗が中心のアパレル企業はEC人材と運営ノウハウを、化粧品や雑貨のD2C企業は同じ客層に売る服のブランドを求めて近づいてきます。複数のブランドを束ねる前提で、投資ファンドが名乗りを上げることも。下表に、主な類型と関心を寄せる理由、目当てにする資産をまとめました。打診の順番を考えるうえでも、この顔ぶれを先に押さえておくと役立ちます。
| 譲受企業の類型 | 関心を寄せる理由 | 目当てにする資産 |
|---|---|---|
| 複数ブランドを束ねる上場アパレルEC企業 | 客層を広げ、物流・広告・撮影を共通化できる | ブランドの認知、SNSの発信力、会員データ |
| 実店舗中心のアパレル企業 | ECの遅れを補い、若い客層を取り込みたい | 自社ECの運営ノウハウ、撮影と商品登録の体制、EC人材 |
| 化粧品・雑貨などのD2C企業 | 同じ顧客に服を加え、客単価と購入頻度を上げたい | 客層の重なり、商品企画力、会員の稼働率 |
| EC支援・物流会社 | 自社の倉庫や運営ノウハウを生かせるブランドを持ち、荷量も増やしたい | 出荷件数、在庫回転、ブランドの伸びしろ |
| 投資ファンド | 複数ブランドの統合で規模をつくる。事業承継の受け皿にもなる | 利益率、成長の余地、経営陣の続投 |
創業者がブランドの顔なら段階的な譲渡も選べる
公開事例では、東証グロース上場のyutoriとheart relationの取引が参考になります。yutoriは2024年8月5日、ライフスタイルブランド「Her lip to」などを運営する同社の株式51%を既存株主から取得すると発表しました。狙いはターゲット層の拡大とアパレル以外の商材の取扱いで、ブランド運営や商品企画、マーケティングのノウハウを共有する想定です。2026年4月13日には残る49%を約19億6,000万円で取得すると発表し、同月30日付で100%子会社としています。
あわせて創業者には第三者割当で新株を発行し、ブランドの世界観を担う人物の関与を資本面でつなぎ留めました。一度に全株を手放さず、過半数の譲渡から始める設計は、発信力のある創業者が率いる会社ほど検討する価値があります。資本業務提携から入る道も含めて比べてみてください。
打診先の順番で取引先との関係を守る
打診の順番も、ファッション通販では気を配りたいところです。みつきコンサルティングは、出店しているファッションモールの運営会社グループや、取引のある縫製工場の関係先を後回しにする設計をよく提案します。先に声をかけた相手から取引先へ話が伝われば、出店条件や仕入条件に響きかねないため。候補の広さと情報管理を両立させるには、複数の候補へ匿名で同時に打診できるM&A仲介の枠組みが向いています。
完全成功報酬
M&Aが成立した場合のみ、譲渡対価に応じた手数料を頂戴します。
売主様は、ご成約まで費用負担なくスタートできます。
着手金・中間金
0円
月額報酬
0円
成功報酬
成約時のみ
※レーマン方式
ファッション通販の売却相談で多い質問
ファッション通販のオーナーから、初回の相談でよく寄せられる質問を取り上げます。
売り方次第です。値引き販売そのものより、定価で買った顧客の目に触れる形で、ブランド名の付いた在庫が安く出回っていないかが問題に。当社は、処分ルートごとの販売額と値引率、ブランドタグを外して売っているかどうかを聞き取ります。処分の方法をルール化し、処分損を毎期の数字に織り込んでいる会社は、利益の見通しを説明しやすくなります。
在庫リスクが小さい点は評価されます。ただ、代金を先に受け取る予約販売では、前受金の残高と、それに見合う生産の手配状況が確認されます。納期の遅れによるキャンセルや返金の履歴も見られるところ。みつきコンサルティングでは、受注から出荷までの日数の推移と、縫製工場ごとの納期遵守率を一覧にし、仕組みとして回っていることを示すよう勧めています。
進めて構いません。在庫と買掛金が一時的に増える時期は、純資産や運転資金の見え方が平時と変わります。そのため譲受企業とは基準となる運転資金の水準を決め、クロージング時点の実額との差で価格を調整する方法がよく使われます。シーズンの立ち上がりとクロージング日が重なると現場が回らなくなるため、日程は販売計画と照らして決めるのが実務です。
契約書の中身次第です。報酬の料率や期間に加え、会社の支配権が変わったときに相手が解除できる条項がないかを読み込みます。株式譲渡なら契約の当事者は変わりませんが、本人が新しい株主を知らないまま話が進むと、関係がこじれかねません。ファッション通販の案件では、条項の有無にかかわらず、成約前に本人へ伝える時期と伝え方を決めておきます。
ファッション通販のデジタル資産承継と売却相談先選び
ファッション通販の売却価格は、年買法の目安を土台に、返品率や販路別の利益といった業態に特化した指標と、モデル写真や会員データを引き継げるかどうかで形づくられます。ブランドを育ててきた思いが強いほど迷いは深くなりますが、権利と数字を先に確かめておけば、守れるものは増えます。
みつきコンサルティングは、税理士法人グループに属する財務・税務に強いM&A仲介会社です。中小企業のM&A仲介の実績経験が豊富で、ECの表示や契約承継に通じた専門の担当者が、仲介会社の選び方の段階から伴走します。ファッション通販の会社売却なら、みつきコンサルティングへ。
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著者

- 名古屋法人部長/M&A担当ディレクター
-
人材支援会社にて、海外人材の採用・紹介事業のチームを率いて新規開拓・人材開発に従事。みつきコンサルティングでは、強みを生かし人材会社・日本語学校等の案件を中心に工事業・広告・IT業など多種に渡る案件支援を行う。M&Aの成約実績多数、M&A仲介・助言の経験年数は10年以上
監修者 神門 剛 代表取締役 / 公認会計士・税理士
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