新設合併は、当事会社全てが解散し新会社を設立するM&A手法です。対等な統合をアピールできる反面、許認可の再取得やコスト高など、実務的なハードルも存在します。吸収合併との決定的な違いや手続きの流れ、税務のポイントを専門家が解説します。自社にとって最適なスキームはどちらなのか、判断の軸を提供します。
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新設合併とは|2社以上が解散し「新会社」として生まれ変わる手法
新設合併(しんせつがっぺい)とは、2つ以上の会社が統合する際、当事会社すべての法人格を消滅させ、新たに設立する会社にすべての権利義務を承継させるM&Aスキームです。 吸収合併が「既存の箱」(会社)に中身を移すのに対し、新設合併は「新しい箱」を作って中身をすべて移し替えるイメージを持つと分かりやすいでしょう。
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M&Aの現場において、この手法が選ばれるケースは決して多くありません。 実務上の選択肢として圧倒的に多いのは吸収合併ですが、新設合併には「対等な立場」を社内外に強く印象付けられるという独自の強みがあります。 組織再編やグループ統合において、過去のしがらみを断ち切り、全く新しいブランドや企業文化を構築したい場合に検討される手法です。
新設合併と吸収合併の決定的な違い
オーナー経営者がM&Aを検討する際、まず直面するのが「吸収合併と何が違うのか」という疑問です。 両者の最大の違いは「法人格が残るかどうか」と、それに伴う「許認可やコストの扱い」にあります。 現場感覚で申し上げますと、新設合併は吸収合併に比べて「手間とコストが倍以上かかる」と考えていただいて差し支えありません。
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以下の表に、実務上の重要な相違点をまとめました。
| 比較項目 | 新設合併 | 吸収合併 |
|---|---|---|
| 存続する会社 | なし(新会社を設立) | あり(当事会社の1社が存続) |
| 消滅する会社 | 全当事会社 | 存続会社以外の1社以上 |
| 対価の種類 | 原則として株式・社債等(現金は不可) | 株式、社債、現金も可 |
| 許認可の承継 | 原則不可(再取得が必要) | 原則承継可(届出で済む場合多し) |
| 登録免許税 | 高い(資本金総額の0.15%〜) | 安い(増加資本金の0.15%〜) |
| 上場企業の扱い | 上場廃止(再審査が必要) | 上場維持(審査不要) |
新設合併の3つのメリット
手続きの煩雑さを超えてでも新設合併を選ぶ企業には、明確な戦略的意図があります。 単なる事業の足し算ではなく、組織の心理的な統合や刷新を図る目的で採用されることが多いのです。
1. 「対等合併」としての心理的効果
最も大きなメリットは、従業員や取引先に「対等な統合である」と印象付けられる点です。 吸収合併の場合、どうしても「飲み込む側(存続会社)」と「飲み込まれる側(消滅会社)」という主従関係が意識されがちです。 消滅会社の従業員が「自分たちの会社がなくなった」と喪失感を抱き、モチベーションが低下するリスクは現場でもよく見られます。
その点、新設合併であれば双方が一度解散し、新しい会社へ一緒に入社する形をとります。 どちらが上か下かという摩擦を減らし、融和的なPMI(統合プロセス)を進めやすい土壌を作れるのが強みです。
2. 企業イメージとブランドの刷新
新会社としてスタートするため、社名や企業理念、ブランドを一新する絶好の機会となります。 例えば、老舗企業同士が統合する場合など、どちらかの社名を残すと角が立つケースでは、新設合併によって新しい名称を採用することで円満な統合を図れます。 過去の負のイメージや古い慣習をリセットし、ゼロベースで組織文化を構築できるため、抜本的な経営改革の手段としても有効です。
3. シナジー効果の最大化に向けた土台作り
組織図や人事制度を白紙から設計できるため、業務効率化やシナジー効果を追求しやすい側面があります。 吸収合併では存続会社のルールに合わせるのが一般的ですが、それが必ずしも最適解とは限りません。 新設合併ならば、両社の良いとこ取りをした新しいルールを策定し、最初から最適化された状態でスタートを切ることが可能です。
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新設合併のデメリット|実務で敬遠される理由
メリットがある一方で、中小企業のM&A実務において新設合併が選ばれにくい理由も明確です。 特に許認可ビジネスを行っている企業にとっては、致命的な事業停止リスクを伴う可能性があります。
許認可の再取得による「空白期間」のリスク
建設業、運送業、宅建業など、事業運営に許認可が必須の業種では、新設合併は極めて慎重になるべきです。 新設合併では新会社が「別人」として扱われるため、消滅会社が持っていた許認可は原則として引き継げません。 新会社設立後に改めて許認可を申請し、取得するまでの間、営業活動ができなくなる「空白期間」が生じる恐れがあります。 現場の支援では、このリスクを回避するために、あえて吸収合併を選択するケースが大半です。
コストと手続きの負担が大きい
新設合併には、吸収合併にはないコストが発生します。 まず、登録免許税です。吸収合併では「資本金が増えた分」だけが課税対象ですが、新設合併では「新会社の資本金全額」に対して課税されます。 例えば資本金1億円の会社を作る場合、単純計算でも税額負担は大きくなります。 また、会社設立の手続きと解散の手続きを並行して行うため、司法書士への報酬や事務工数も増大します。
対価として「現金」を使えない
M&Aによる出口戦略(イグジット)を考えるオーナー様にとって、最大のネックはここかもしれません。 新設合併では、対価として現金を交付することが会社法上認められていません(原則として新会社の株式や社債のみ)。 つまり、「会社を売って引退し、手元に現金を残したい」という事業承継ニーズには対応できないのです。 株主が現金化を望む場合、新設合併ではなく、株式譲渡や吸収合併+現金対価のスキームを検討する必要があります。
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新設合併の具体的な手続とスケジュール
新設合併は、会社法に基づいた厳格な手続が必要です。 準備開始から登記完了まで、最低でも3ヶ月〜半年程度の期間を見積もっておく必要があります。 以下に、主なフローを解説します。
- 事前準備・デューデリジェンス:統合効果の検証や、財務・法務のリスク調査を行います。許認可の再取得スケジュールもこの段階で綿密に確認します。
- 合併契約の締結:取締役会の承認を得て、当事会社間で合併契約書を締結します。
- 事前開示書類の備置:株主や債権者が内容を確認できるよう、契約内容等を記載した書類を本店に備え置きます。
- 債権者保護手続・公告:官報への公告や債権者への個別催告を行い、異議申立期間(最低1ヶ月)を設けます。
- 株主総会の特別決議:原則として、各社の株主総会で特別決議(出席株主の議決権の2/3以上の賛成)を経る必要があります。
- 株式買取請求への対応:合併に反対する株主がいる場合、株式を公正な価格で買い取る手続きを行います。
- 新設会社の設立登記(効力発生):新設合併では、登記申請をした日が効力発生日となります。同時に消滅会社の解散登記も行います。
- 事後開示書類の備置:合併後の状況を記載した書類を6ヶ月間備え置きます。
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新設合併における税務・会計の注意点(概要)
合併を行う際、税務上の要件を満たすかどうかで、課税関係が天と地ほど変わります。 これを「適格合併」と「非適格合併」と呼びます。
適格合併と非適格合併の違い
税務上の要件(持株比率、従業員の引継ぎ、事業の継続性など)を満たす「適格合併」であれば、資産や負債を帳簿価額で引き継ぐことができ、譲渡益への課税は繰り延べられます。 一方、要件を満たさない「非適格合併」の場合、資産を時価で売却したとみなされ、含み益に対して法人税が課税されます。 中小企業のM&Aでは、予期せぬ多額の課税を避けるため、適格要件を満たすスキームを組むことが一般的です。
「のれん」の会計処理
会計上、買収額が純資産額を上回る場合は「のれん」(資産)、下回る場合は「負ののれん」(負債)が発生します。 日本の会計基準では、のれんは20年以内で定額償却を行いますが、IFRS(国際会計基準)では償却しないなど、適用する基準によって利益への影響が異なります。 M&A後の財務諸表に大きな影響を与えるため、事前にシミュレーションを行うことが不可欠です。
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新設合併に関するFAQ
新設合併について、現場でオーナー社長からよくいただく質問をまとめました。
現場では、主にグループ内の組織再編や、大手企業同士が対等な立場で統合する場合に使われます。中小企業の事業承継で、オーナーが株式の現金化を望む場合には、新設合併は選ばれず、株式譲渡や事業譲渡が選択されます。
原則として新会社に引き継がれますが、労働契約そのものは新会社と結び直す形になります。また、退職金制度や給与体系の統合には時間がかかるため、合併前に十分な説明と調整を行わないと、優秀な人材の離職を招く恐れがあります。
業法によっては、事前の認可があれば地位承継が認められるケースもありますが、非常に限定的です。基本的には「新規取得」となると考え、空白期間を作らないための対策(共同株式移転の検討など)を専門家と相談する必要があります。
株主総会の特別決議(2/3以上の賛成)が通れば合併自体は可能です。ただし、反対株主には「株式買取請求権」が認められており、会社側は公正な価格で株式を買い取る義務が発生します。資金繰りに影響するため注意が必要です。
新設合併は「心理的効果」と「実務的負担」の天秤
新設合併は、関係する全ての会社が解散し、新しい会社として再出発するM&A手法です。 最大のメリットは「対等な統合」というメッセージを社内外に発信でき、従業員の心理的摩擦を軽減できる点にあります。 一方で、許認可の再取得リスク、登録免許税の高さ、対価が現金化できない点など、実務的なデメリットは吸収合併よりも大きくなります。 「会社を売却してリタイアしたい」というオーナー様には不向きですが、「グループ会社を整理して心機一転したい」という場合には有力な選択肢となるでしょう。
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著者

- 事業法人第二部長/M&A担当ディレクター
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ヘルスケア分野に関わる経営支援会社を経て、みつきコンサルティングでは事業計画の策定、モニタリング支援事業に従事。運営するファンドでは、投資先の経営戦略の策定、組織改革等をハンズオンにて担当。東南アジアなど海外での業務経験から、クロスボーダー案件に関しても知見を有する。M&Aの成約実績多数、M&A仲介・助言の経験年数は10年以上
監修:みつき税理士法人
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