OA機器販売業界の売却|カウンター保守が支える譲渡価格とM&A事例

OA機器販売会社の売却では、複合機そのものの販売粗利より、カウンター保守契約の継続と設置台数が譲渡価格を動かします。メーカー特約店契約の承認、リース残債の分布、工事担任者の在籍。この3点でつまずく案件は珍しくありません。福岡での同業間譲渡の事例も交え、譲渡オーナーが押さえておきたい実務をまとめます。

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目次
  1. ペーパーレス化の先にあるOA機器販売業界の現在地
    1. 2025年の国内向け出荷額はほぼ横ばい、海外が二桁減
    2. エトリアへのOKI参画が示す上流の集約
    3. 後継者不在率50.1%と、現場を支える人の年齢
  2. 会社売却でOA機器販売のオーナーが得るものと手放すもの
    1. 毎月のカウンター収益を正しく評価する相手に出会える
    2. 個人保証とリース与信の重荷を下ろせる
    3. 引き換えに受け入れることになる制約
  3. カウンター保守契約の厚みが譲渡価格に乗る仕組み
    1. 年買法で目安を置き、のれんに保守の継続性を織り込む
    2. 設置台数、保守契約率、カウンター単価という3つの数字
    3. リース残債の上乗せが将来の粗利を先食いする
  4. メーカー特約店契約と仕入ランクは、そのまま引き継げるのか
    1. 株式譲渡なら法人格が残り、事業譲渡なら結び直しになる
    2. 達成リベートと仕入ランクをどう守るか
    3. カウンター保守契約と提携リース会社の扱い
  5. 工事担任者と販売代理店届出、OA販売店が抱える許認可の棚卸し
    1. ビジネスホンとLAN配線を支える工事担任者
    2. 回線を売るなら電気通信事業の届出と代理店の届出
    3. 中古機を扱うなら古物商許可の所在を確かめる
  6. 2027年4月の新リース会計基準が顧客の判断を動かす
    1. オペレーティングリースのオンバランス化で何が起きるか
    2. 官公庁向けにはセキュリティラベルという新しい物差し
    3. 制度変更が譲渡の追い風になることもある
  7. 債務超過と個人保証を抱えた福岡のOA機器販売会社が選んだ売却
    1. 譲渡を決めるまでの事情
    2. 相手を選んだ決め手
    3. 譲渡後に変わったこと
  8. どんな会社がOA機器販売会社に手を挙げるのか
    1. 商圏を広げたい同業のディーラー
    2. ITやBPOへ広げたい隣接業種
    3. 再編を前提にする投資ファンドと異業種
  9. OA機器の会社売却で寄せられる質問
  10. まとめ|OA機器販売のカウンター保守と売却相談先選び
    1. OA機器販売業界の会社売却の関連コラム

複合機を納めて終わり、という商売ではなくなりました。収益の柱はカウンター保守料と消耗品、さらに回線やITの周辺サービスへ移っています。会社売却の場面で問われるのは、メーカー特約店契約の承認が下りるか、リース残債を抱えた顧客がどれだけ残っているか、工事担任者が何人いるか。OA機器販売会社のオーナー経営者に向けて、その勘所をまとめます。

ペーパーレス化の先にあるOA機器販売業界の現在地

紙が減れば商売も細る、と言い切れるほど単純ではありません。まず数字から確かめます。

2025年の国内向け出荷額はほぼ横ばい、海外が二桁減

一般社団法人ビジネス機械・情報システム産業協会が公表した2025年の会員企業出荷実績では、総出荷額が前年比9.5%減の1兆7,376億円でした。うち国内向けは0.4%減の3,066億円で、ほぼ横ばい。大きく落ち込んだのは海外向けで、11.3%減となっています。海外の落ち込みが全体を押し下げた形で、国内の景色とは分けて考える必要があります。国内の設置台数が一気に消えるわけではないという事実は、M&Aの評価でも前提に置かれます。

エトリアへのOKI参画が示す上流の集約

リコーと東芝テックが2024年7月に立ち上げた合弁会社エトリアへ、OKIが2025年10月1日付で複合機等の開発・生産事業を統合しました。出資比率はリコー80.74%、東芝テック14.25%、OKI5.01%。開発と生産をまとめ、基幹部品を共通化する動きです。上流が集約されれば、機種構成も仕入条件も静かに変わっていきます。販売店の側にも規模を確保する誘因が働くところ。

後継者不在率50.1%と、現場を支える人の年齢

帝国データバンクの全国「後継者不在率」動向調査(2025年)によると、全国の後継者不在率は50.1%でした。7年連続で改善したとはいえ、なお半数です。OA機器販売では、ここに現場の年齢構成が重なります。長年の顧客を握る営業と、機械を直せるカスタマーエンジニア。どちらも代わりが利きにくく、採用も進みにくい。会社売却が現実的な選択肢に挙がる理由は、そこにもあります。

支援の現場では、初回の面談で借入残高と個人保証の状況を必ず伺います。OA機器販売はリース会社への立替や中古機の仕入で運転資金が動きやすく、決算書の見た目以上に資金繰りが張り詰めている会社もあるためです。個人保証の解除見通しは譲受企業の与信次第で変わりますから、金融機関へいつ伝えるかも含めて早い段階で道筋を描きます。

▷関連:家具・インテリア・生活雑貨のM&A|EC化と技術承継・譲渡事例

会社売却でOA機器販売のオーナーが得るものと手放すもの

良いことばかりを並べても判断材料になりません。両側から見ていきます。

毎月のカウンター収益を正しく評価する相手に出会える

親族や社内へ承継する場合、会社の価値は結局のところ帳簿で語られます。第三者への譲渡なら話は変わり、設置台数と保守契約の厚みが金額に反映されます。数百社の法人アカウントを抱えていても、決算書の純資産にはほとんど表れません。保守台帳に並ぶ社名と稼働台数が、そのまま将来収益の裏づけになるからです。そこを見てくれる相手と出会えることが、外部への売却を選ぶ最大の理由になりやすいところです。

個人保証とリース与信の重荷を下ろせる

金融機関からの借入に個人保証が付いたままの状態は、経営者本人だけでなく家族にも影を落とします。譲渡が成立し、譲受企業が債務を引き受ける形になれば、保証は外れる方向へ動きます。リース会社との提携でも、与信枠は会社の信用力に紐づくもの。資本が強い相手の傘下に入ると、取扱高の制約がむしろ緩むことがあります。保証が外れる時期と条件は、最終契約の交渉で必ず取り上げる項目のひとつ。

引き換えに受け入れることになる制約

譲渡後は、値引き幅も人事も自分ひとりでは決められません。取扱いメーカーの整理を求められる場面もあり、長年の付き合いが途切れることも。社名や屋号を残せるかどうかも、相手の方針によって変わってきます。引継ぎのために数年は残ってほしいと求められる例も少なくありません。役員退任までの期間や競業避止の範囲は、最終契約で細かく決まります。下表に、譲渡オーナーの立場から見た利点と負担を並べました。順番に目を通してみてください。

譲渡オーナーのメリット譲渡オーナーのデメリット
保守収益が価格に反映される
設置台数と継続率がのれんの根拠になる
取扱いメーカーの見直し
譲受企業と重複する系列は集約を求められることも
個人保証の解除が視野に入る
借入の引受けとあわせて金融機関と協議できる
価格決定の自由度が下がる
大口顧客への特別値引きが本部承認になる
資金力を背景に在庫を厚くできる
デモ機や中古機の確保が回しやすくなる
管理業務の負荷が増える
月次報告や稟議の様式が譲受企業側に揃う
採用と教育の仕組みを借りられる
カスタマーエンジニアの育成を任せられる
役員退任までの拘束
引継ぎ期間と競業避止の範囲が契約で決まる
IT・回線商材を横に広げられる
既存の法人顧客へ提案の幅が増える
従業員の処遇調整
給与体系や評価制度の統合に時間がかかる
創業家の資産を現金化できる
相続で分散するリスクを先に断てる
情報開示の負担
顧客別の保守台帳まで整える必要が生じる

▷関連:小売業のM&A|EC化と店舗網再編が変える譲渡価格と成約事例

カウンター保守契約の厚みが譲渡価格に乗る仕組み

機械そのものより、機械が毎月生む請求書のほうが見られています。

年買法で目安を置き、のれんに保守の継続性を織り込む

中小のOA機器販売会社でよく使われるのは年買法(年倍法)です。時価純資産にのれんを加えて目安を出します。ここでのれんに効いてくるのが、カウンター保守契約から生まれる継続収益。本体の販売粗利は競合の値付けで揺れますが、保守料は稼働している機械がある限り毎月入ってきます。純資産が薄くても、保守の裾野が広ければ上乗せは見込めます。譲受企業は、その安定感を何年分と見るかで金額を動かします。

設置台数、保守契約率、カウンター単価という3つの数字

最初に確かめられるのは、稼働している機械の台数です。次に、そのうち何台が保守契約に紐づいているか。そして1枚あたりの単価と月間印刷枚数。モノクロは1円前後、フルカラーは10円台という水準がよく語られますが、実際は顧客ごとにばらつきます。台数を取るために単価を切り下げた期があると、粗利率の低下として後から跳ね返ってくるもの。3年分の推移を機種別に並べておくと、話が早く進みます。

単価を下げて台数を増やした期の見られ方

新規獲得を急いだ期は、平均のカウンター単価が目に見えて下がります。台数だけを見れば伸びていても、粗利率は落ちている状態。譲受企業はそこを分けて読みます。値下げの理由が特定の大口案件によるものなら、その旨を説明すれば納得は得られるもの。説明のない下降線が、いちばん誤解を招きます。

スポット修理に頼っている台数の扱い

保守契約を結ばず、故障のたびに呼ばれて請求する形の顧客もいます。単価は取れても、収益としては読みにくい部類。譲受企業は継続契約とスポットを分けて集計します。契約へ切り替えられる余地がどれだけ残っているかは、譲渡後の伸びしろとして加点されることもあります。

リース残債の上乗せが将来の粗利を先食いする

入替の際、旧機の残債を新しいリース料へ上乗せする商慣行があります。目先の受注は取れますが、その分だけ将来のカウンター単価や本体値引きの余地が削られていきます。デューデリジェンスでは、顧客別のリース満了時期と残債の残り方が必ず見られる場面。契約書と社内の管理表が食い違っていると、そこから交渉が長引きます。入替を急いだ期があるなら、その理由を先に説明できる状態にしておいてください。

下表は、OA機器販売会社の譲渡で譲受企業が確かめる主な数字と、その見られ方をまとめたものです。

確認される指標何を読み取られるか評価が下がりやすい状態
稼働設置台数保守収益の母数と訪問体制の規模撤去済み機が台帳に残ったまま
保守契約率販売した機械をどれだけ収益化できているかスポット修理に頼る比率が高い
カウンター単価値付けの規律と顧客との関係の強さ直近2期で平均単価が連続低下
リース満了の分布翌期以降の入替需要と失注リスク特定年度に満了が集中している
主要顧客の売上比率1社の離反が業績へ与える振れ幅上位1社で売上の3割を超える
有資格者の人数と年齢工事と保守を続けられる体制の厚み工事担任者が1名のみで60代

みつきコンサルティングでは、株価の目安を出す前にカウンター保守の顧客台帳を機種と満了年月まで含めて拝見します。台数が同じでも、来期に満了が集中している会社と平準化している会社では譲受企業の見方が変わるためです。ここを整えないまま企業概要書を作ると、後の交渉で価格を削られる展開になりかねません。会社売却の相場観は、こうした台帳の質でも動きます。

メーカー特約店契約と仕入ランクは、そのまま引き継げるのか

会社の持ち主が変われば、仕入条件も見直されることがあります。ここは軽く見ないでください。

株式譲渡なら法人格が残り、事業譲渡なら結び直しになる

株式譲渡では会社そのものが続くため、メーカーとの特約店契約も原則そのまま残ります。ただし契約書にチェンジオブコントロール条項があれば、株主が変わる時点で承認が要ります。事業譲渡を選べば契約は当然には移らず、譲受企業が改めて結び直す形に。承認を得るまでの期間はメーカーごとに差があり、クロージングの日程にも響きます。取扱いメーカーが複数あるほど、この作業は重くなります。

達成リベートと仕入ランクをどう守るか

OA機器の仕入価格は、年間の販売台数や達成率で段階的に決まる仕組みが多く見られます。譲渡を機に発注量が読めなくなると、翌年のランクが下がることも。譲受企業が同じメーカーを扱っていれば、合算で条件がよくなる場合もあります。逆に取扱いメーカーが競合していると、どちらかを畳む判断が出てくることも。発注計画を先に示せると、ランクを保つ交渉もしやすくなります。事前に想定しておきたいところです。

カウンター保守契約と提携リース会社の扱い

顧客と結んだ保守契約も、株式譲渡なら名義はそのまま。事業譲渡では顧客一社ごとに同意を取り直すことになり、数百社を抱える会社では現実的な負担にもなりかねません。保守契約の書式が年代ごとに異なる会社も多く、まずは様式の棚卸しから入ります。同意が取れない顧客が出れば、その分だけ譲渡後の収益は目減りします。リース会社との提携契約も同じ構図で、株主変更を届出事由としている例が見られます。下表に、2つの手法で何がどう変わるかを並べました。

比較項目株式譲渡事業譲渡
メーカー特約店契約原則そのまま。COC条項があれば承認を取得譲受企業が新たに締結し直す
カウンター保守契約顧客の同意なく継続される顧客ごとに再契約または承諾が要る
リース会社との提携契約継続。届出義務の有無を要確認提携審査を最初から受け直す
電気通信事業の届出届出主体は変わらず。変更届で対応譲受企業が自ら届出を行う
古物商許可法人に付いたまま残る公安委員会へ新規申請が必要
従業員の雇用労働条件を含めそのまま引き継ぐ個別に同意を得て転籍させる

工事担任者と販売代理店届出、OA販売店が抱える許認可の棚卸し

機械を置くだけの商売なら許認可の話は要りません。実際はそうもいかないのが現場です。

ビジネスホンとLAN配線を支える工事担任者

電話回線やビジネスホンを事業所内の配線へつなぐ工事には、電気通信事業法にもとづく工事担任者の資格が要ります。第一級デジタル通信などの区分があり、資格は会社ではなく個人に付いているもの。有資格者が定年間近の1名だけ、という会社は実際にあります。ネットワーク工事を継続して請け負う規模になれば、建設業法上の電気通信工事業の許可も論点に入ってきます。資格の区分と取得年を一覧にしておくと、譲受企業の確認は早く済みます。

回線を売るなら電気通信事業の届出と代理店の届出

光回線やモバイル回線を自社の名前で提供しているなら、電気通信事業法第16条にもとづく届出が要ります。キャリアから委託を受けて契約の媒介等を行う場合は、販売代理店としての届出も別に求められます。株式譲渡であれば届出の主体は変わりませんが、代表者や本店の変更届は生じるところ。事業譲渡では、譲受企業の側で出し直す形になります。届出の控えと提供役務の内容が手元にあるかどうか、先に確かめておきたいところ。

中古機を扱うなら古物商許可の所在を確かめる

下取りした複合機やリースアップ機を再販しているなら、古物商許可が要ります。許可は都道府県公安委員会が出すもので、法人に紐づきます。事業譲渡で事業だけを移すと、譲受企業が自ら取得しなければなりません。申請から取得まで1か月以上かかることもあり、クロージング日から逆算した段取りが求められる場面です。許可番号の表示や取引の記録に抜けがないかも、この機会に見直してください。買取台帳は開示を求められることがあります。

当社は行政書士と連携し、工事担任者の在籍状況と古物商許可の変更届を同じ線表に載せて動かします。OA機器販売では許認可そのものより、資格を持つ社員が譲渡後も残るかどうかが問われる場面が多いところ。M&A仲介の段階で人の見通しが立ってはじめて、譲受企業も踏み込んだ条件を出せるようになります。

2027年4月の新リース会計基準が顧客の判断を動かす

顧客側の会計ルールが変われば、売り方も変わります。少し先の話を先に置きます。

オペレーティングリースのオンバランス化で何が起きるか

企業会計基準委員会が2024年9月に公表した企業会計基準第34号により、2027年4月1日以後に始まる事業年度から、借手のリースは原則として貸借対照表へ載ることになりました。対象は上場会社と会社法上の大会社で、中小企業は任意適用です。リース料の総額が負債として並ぶことになり、財務指標の見え方が変わるためです。とはいえ上場企業を顧客に持つ販売店なら、リースか買取かレンタルかを問い直す相談は増えていきます。

官公庁向けにはセキュリティラベルという新しい物差し

経済産業省と情報処理推進機構は2025年3月25日、IoT製品のセキュリティを評価するJC-STARの運用を始めました。政府機関等の対策基準策定のためのガイドラインでは、2025年度中に同制度のラベル取得を機器等の選定基準へ含める方針が示されています。官公庁や自治体へ複合機を納めてきた販売店にとって、扱う機種の適合状況は新しい確認事項です。仕様書に文言が入る前に、メーカーへ確かめておきたい項目に挙がります。

制度変更が譲渡の追い風になることもある

会計基準もセキュリティ要件も、対応には人と情報がいります。1社で追いかけるより、グループの後ろ盾を得たほうが早い。この判断で譲渡へ踏み出す経営者は増えました。譲受企業から見ても、制度対応を済ませた販売網は手に入れる価値があります。締切が近づくほど交渉に使える時間は減っていくもの。動き出す時期そのものが、条件の良し悪しに響いてきます。中小企業のM&Aが制度改正のたびに動くのは、こうした事情によるものです。

顧客への説明は、順番を決めてから動きます。OA機器販売の取引は担当営業とカスタマーエンジニアの顔で続いている場合が多く、社名が変わること自体より誰が訪問に来るのかを気にされるためです。みつきコンサルティングでは想定問答を先に作り、説明の場に担当者が同席する形を取ってきました。支援実績として公開しているOA機器の販売・保守の案件でも、この段取りが効いています。

債務超過と個人保証を抱えた福岡のOA機器販売会社が選んだ売却

福岡県でOA機器の販売と保守を営む会社が、2025年10月に同業へ株式を譲りました。

オーエーメディア福岡さまとインフォシステムさまのM&A成約インタビューの様子

譲渡を決めるまでの事情

オーエーメディア福岡は1989年の設立。数百社の法人顧客を抱え、日々の業務は回っていました。ただ過去の負債が重く、債務超過の状態で、代表の個人保証も付いたまま。当時67歳の代表は、社員と顧客の行き先を案じていたといいます。

相手を選んだ決め手

2025年4月にみつきコンサルティングと契約すると、6月には3社が関心を示しました。うち2社は上場企業。条件面に大きな差はありませんでしたが、代表が選んだのは埼玉県のインフォシステムでした。福岡に拠点を求める熱意と、経営者どうしの相性が理由です。

譲渡後に変わったこと

10月のクロージングを経て、長年の借入と個人保証の重圧から解放されました。社員には現状以上の処遇が約束され、常務も新しい体制で現場を率いています。資金繰りに割いていた時間を、本来の仕事へ戻せたと語られています。

債務超過からの再出発を選んだ福岡のOA機器販売会社と譲受企業の対談を読む

どんな会社がOA機器販売会社に手を挙げるのか

声をかけてくるのは、必ずしも隣県のディーラーとは限りません。

商圏を広げたい同業のディーラー

レカムは2025年11月13日、岩手県盛岡市のカワハラ事務機の全株式を取得すると決議し、同日付で株式譲渡契約を締結しました。譲渡実行は2026年1月9日の予定です。カワハラ事務機は官公庁や医療機関との取引を持つ地域密着の会社で、2025年7月期の売上高は3億9,100万円、営業損益は1,490万円の赤字でした。東北への足がかりを求めた動きとされます。赤字でも顧客基盤が評価される例です。

ITやBPOへ広げたい隣接業種

複合機の周りには、回線、パソコン、クラウド、セキュリティ、書類の電子化受託まで並びます。システム会社や通信の販売会社から見れば、OA機器販売会社が抱える数百社の法人アカウントは、そのまま提案先の名簿。カウンター保守の訪問が続いている限り、接点も切れません。電子化やクラウドの提案は、足を運ぶ先があってこそ回り始めます。資本業務提携から入り、段階的に持分を増やす形を選ぶ相手もいます。

再編を前提にする投資ファンドと異業種

複数のディーラーをまとめ、間接部門と物流を共通化していく絵図。この絵を描ける相手であれば、投資ファンドも候補に入ります。地域の有力企業が、自社グループのオフィス環境を内製化する目的で手を挙げることも。地方のディーラーほど、思いがけない業種から声がかかることがあります。同業だけに絞って探すと、条件のよい相手を取りこぼしかねません。仲介会社一覧で得意分野を見比べてから動き出す方も少なくありません。

下表は、OA機器販売会社の譲渡で候補になりやすい譲受企業の類型と、その動機をまとめたものです。

譲受企業の類型譲受を検討する動機譲渡オーナーが得やすいもの
同業のOA機器ディーラー空白商圏の獲得とメーカー発注量の拡大仕入ランクの改善と保守要員の相互応援
上場のITソリューション企業法人アカウントの取得とクロスセルの拡大個人保証の解除と商材ラインアップの拡充
通信・回線系の販売会社訪問体制と工事担任者の確保回線商材の卸条件と販促の仕組み
異業種の地域有力企業オフィス環境の内製化と地域雇用の維持設備投資と採用の資金的な後押し
投資ファンド複数ディーラーの統合による収益基盤の再構築管理体制の高度化と幹部人材の補強

M&Aが成立した場合のみ、譲渡対価に応じた手数料を頂戴します。
売主様は、ご成約まで費用負担なくスタートできます。



OA機器の会社売却で寄せられる質問

相談の場で実際に出た問いから、4つ取り上げます。

Q:複合機の遠隔監視やリモート保守の仕組みは、買い手に評価されますか?

稼働状況を遠隔で把握し、トナー切れや故障の予兆を先に拾える体制は加点されます。訪問回数が減るほど保守の粗利は残るためです。現場では対応台数と自動出荷の運用実績を数字で示します。未導入でも、譲受企業の仕組みを載せる前提で見てもらえる場合があります。

Q:カスタマーエンジニアが高齢です。買い手の評価は下がりますか?

訪問対応が回らなくなる懸念として見られます。ただし譲受企業に技術者がいれば、むしろ引き受けやすい材料に。現場ではサービスエリアと年間の訪問件数、1人あたりの担当台数を出して、引継ぎの現実味を示します。定着に向けた処遇は、最終契約の詰めで扱う論点です。

Q:下取りした中古機の在庫は、株価にどう反映されますか?

機種と年式ごとに、直近の販売実績と照らして評価されます。動きのない機種は簿価から落とされることも珍しくありません。棚卸の際に、修理待ちの機体と再販できる機体を分けておくと説明がつきます。部品の入手可否も併せて示せると、評価の目減りを抑えやすくなります。

Q:携帯や光回線の代理店手数料は、譲渡価格に含まれますか?

継続的に入る手数料であれば、収益として見られます。ただしキャリアとの代理店契約に承認条項があるかどうかで扱いが変わります。契約が更新制で、株主の変更が解除事由に挙がっている例も。条項の書きぶりと、キャリア側の運用次第というのが実際のところです。

税理士法人を母体とするM&A仲介会社|みつきコンサルティングが選ばれる理由

まとめ|OA機器販売のカウンター保守と売却相談先選び

OA機器販売会社の売却では、複合機の販売粗利より、カウンター保守契約の継続と設置台数が価格を動かします。メーカー特約店契約の承認、リース残債の分布、工事担任者や古物商許可の扱いも避けて通れません。決算書だけでは伝わらない強みを抱えたまま悩む経営者は、決して少なくないところです。

みつきコンサルティングは財務・税務に強いM&A仲介会社として、中小企業のM&A仲介で豊富な実績経験を積んできました。相談先選びに迷う段階でも構いません。OA機器販売業界の会社売却なら、みつきコンサルティングへ。

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著者

潟野 和徳
潟野 和徳名古屋法人部長/M&A担当ディレクター
人材支援会社にて、海外人材の採用・紹介事業のチームを率いて新規開拓・人材開発に従事。みつきコンサルティングでは、強みを生かし人材会社・日本語学校等の案件を中心に工事業・広告・IT業など多種に渡る案件支援を行う。M&Aの成約実績多数、M&A仲介・助言の経験年数は10年以上
監修者 神門 剛 代表取締役 / 公認会計士・税理士

みつきコンサルティングは、中小企業の会社売却・事業承継に特化した譲渡企業様に完全成功報酬制のM&A仲介会社です。売り手と買い手企業の最適なマッチングを、経験豊富なM&Aコンサルタントが初期相談から成約まで一貫してフルサポートします。

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