中小M&Aガイドラインとは?第3版で変わる手数料開示と業者選び

中小M&Aガイドラインとは、後継者不足に悩む中小企業の円滑な事業承継を支援するため、中小企業庁が策定した指針です。M&Aのプロセスや手数料の目安、支援機関が守るべき行動指針が明記されており、不透明な取引やトラブルを防ぐ目的があります。2024年の第3版改訂では悪質な業者や買い手の排除に向けた規制が強化されました。本記事ではガイドラインの要点と、経営者が自身の利益を守るための活用法を解説します。

「うちの会社でも売却できるだろうか…」、「何から始めればいいんだろう…」。そのようなオーナー経営者の不安に、中小企業向けM&A仲介会社みつきコンサルティングは、20年間・500件以上の支援実績にもとづく無料相談でお応えします。本格的な検討前の情報収集だけでもかまいません。まずはお話をお聞かせください。

中小M&Aガイドラインとは

中小M&Aガイドラインは、後継者不在の中小企業が安心して第三者承継(M&A)を行える環境を整備するために、中小企業庁が2020年に策定した指針です。

現場で支援を行う私たちから見ても、このガイドラインはM&Aを検討する全ての経営者が一度は目を通すべき重要な基準といえます。これまでブラックボックスになりがちだった手数料や契約内容に透明性をもたらし、トラブルを未然に防ぐ役割を担っています。

策定された背景と目的

中小企業の廃業が増加する中、黒字でありながら後継者がいないために事業を畳むケースが後を絶ちません。こうした「黒字廃業」を回避し、第三者への円滑な事業引継ぎを促進することが最大の目的です。

また、M&A仲介業者が急増する中で、高額な手数料請求や利益相反(りえきそうはん)となる取引など、不適切な事例が散見されるようになりました。こうした事態を受け、国として適切な取引のルールを提示する必要に迫られたのです。

ガイドラインの対象者と位置づけ

本ガイドラインは、主に、中小企業の経営者と、M&A仲介会社を中心とするM&A支援機関(FA、金融機関、士業などを含む)を対象としています。

特に支援機関に対しては、契約前の重要事項説明や手数料体系の開示など、具体的な行動指針を定めています。経営者にとっては、依頼しようとしている業者が信頼に足るかどうかを判断する「ものさし」として機能します。

法的効力と実効性の担保

中小M&Aガイドライン自体には法律のような強制力や罰則規定はありません。しかし、実質的な拘束力は年々強まっています。

2021年に創設された「M&A支援機関登録制度」では、ガイドラインの遵守が登録要件となっています。さらに、事業承継・M&A補助金の申請には登録支援機関の利用が必須要件です。

つまり、ガイドラインを守らない業者は国の制度から排除される仕組みとなっており、業界全体の実質的な自主規制として機能しています。

中小M&Aガイドラインの全体構成

ガイドラインは大きく分けての次の2部構成になっています。

  • 第1章:後継者不在の中小企業向けの手引き
  • 第2章:支援機関向けの基本事項

経営者の方は第1章を中心に読み込みつつ、第2章で業者が守るべきルールを知っておくことで、質の低い業者を見抜くことができます。

第1章:後継者不在の中小企業向けの手引き

第1章では、M&Aを検討し始めてから成約に至るまでの基本的なプロセスや心構えが解説されています。

具体的には、事前の磨き上げ(企業価値向上)、適切なマッチング、デューデリジェンス(買収監査)への対応など、失敗しないための手順が示されています。「M&Aは単なる売却ではなく、事業の存続と発展のための戦略である」という基本姿勢を持つことが推奨されています。

第2章:支援機関向けの基本事項

第2章は、M&A仲介会社や金融機関などの支援機関が遵守すべき行動規範です。

ここでは、顧客の利益を最大化するための誠実な業務遂行、利益相反リスクの説明、手数料の透明化などが求められています。特に、売り手と買い手の双方から手数料を取る「仲介方式」の場合、利益相反の構造的リスクを顧客にどう説明し、どう管理するかが厳しく問われています。

第3版(2024年改訂)の重要な変更点

2024年8月に公表された第3版(改訂版)では、近年問題となっている悪質な買い手や、質の低い支援業者への対策が大幅に強化されました。

私たち支援の現場でも、今回の改訂は「正直者が馬鹿を見ない」ための大きな前進だと感じています。経営者の皆様が特に知っておくべき変更点は以下の通りです。

仲介契約・FA契約における重要事項説明の強化

仲介会社等とアドバイザリー契約を締結する前に、支援機関が顧客に対して説明すべき「重要事項」の内容が拡充されました。

これまでは手数料の体系などが中心でしたが、第3版では「担当者の保有資格」や「過去の成約実績・経験年数」の開示も求められるようになりました。これにより、経験の浅い担当者が実績を隠して契約を迫るようなケースが減ることが期待されます。

悪質な買い手への対策強化

M&A後に約束を反故にする、資産を吸い上げて会社を潰すといった「悪質な買い手」による被害を防ぐため、支援機関による調査義務が強化されました。

仲介会社等は、買い手候補の財務状況や事業実態、過去のトラブル歴などを調査し、不適切な買い手を排除するよう求められています。また、業界内で不適切な買い手情報(特定事業者リスト)を共有する仕組みの構築も進められています。

利益相反と手数料の透明化

仲介業者が売り手と買い手の双方から手数料を得る場合、どちらか一方に有利な条件で成約させようとするリスク(利益相反)があります。

第3版では、このリスクについてより具体的な説明が義務付けられました。また、売り手に対して「買い手がいくら手数料を払うのか」を開示することも求められています。買い手の手数料負担が重ければ、その分だけ譲渡価格が下がる可能性があるためです。

ネームクリア・テール条項・直接交渉の制限

実務上のトラブルになりやすい条項についても、ルールが明確化されました。

  • ネームクリア:買い手候補に社名を開示する際は、原則として売り手の事前同意が必要とされました。
  • テール条項:契約終了後に成約した場合の手数料請求権(テール条項)について、有効期間や対象となる相手方の範囲を限定的にするよう求められています。
  • 直接交渉の制限: 依頼者が自ら見つけた相手と交渉することを不当に制限しないよう規定されました。

中小M&Aガイドラインが定める「手数料」の目安

M&Aの手数料は業者によって大きく異なりますが、ガイドラインでは一般的な報酬体系として「レーマン方式」を紹介しています。不当に高額な手数料を請求されないよう、相場観を知っておくことが身を守る盾となります。

一般的な報酬体系とレーマン方式

多くのM&A仲介会社が採用している「レーマン方式」は、取引金額に応じて手数料率が逓減する仕組みです。下表はガイドライン等で示される一般的な料率の例です。

取引金額(基準額)の部分一般的な手数料率
5億円以下の部分5%
5億円超 10億円以下の部分4%
10億円超 50億円以下の部分3%
50億円超 100億円以下の部分2%
100億円超の部分1%

注意点として、この料率を掛ける「基準額」が「移動総資産」(負債含む)なのか「株式譲渡対価」(売り手が受け取る額)なのかで、支払額が数倍変わることもあります。必ず契約前に計算根拠を確認してください。

譲渡オーナーが確認すべきM&A仲介会社選びのポイント

ガイドラインの内容を踏まえ、実際に支援機関を選ぶ際にチェックすべきポイントを整理します。支援会社や担当者の質は玉石混交です。会社の規模や知名度だけで選ばず、以下の視点で厳しく見極めてください。

契約前に確認すべき事項リスト

仲介会社とアドバイザリー契約を結ぶ前に、以下の質問を投げかけてみてください。明確に回答できない、あるいは回答を濁す業者は避けた方が賢明です。

  1. 担当者の実績:「あなたが担当した成約件数は何件ですか? 保有資格はありますか?」
  2. 手数料の総額:「買い手からも手数料をもらいますか? その場合、私(売り手)の手取りにどう影響しますか?」
  3. 契約解除の条件:「もし信頼できなくなった場合、途中解約は可能ですか? 違約金はありますか?」
  4. ネームクリア:「私の許可なく、買い手候補に社名を開示しませんか?」

セカンドオピニオンの活用

ガイドラインでは、セカンドオピニオンの活用も推奨されています。もし提示された企業価値評価額(株価)に違和感があったり、契約内容に不安を感じたりした場合は、別の専門家(税理士、弁護士、他のM&Aコンサルタントなど)に意見を求めてみましょう。「専任契約だから他には相談できない」と思い込まず、重大な決断の前には客観的な意見を取り入れることが、納得のいく事業承継への近道です。

中小M&Aガイドラインに関するFAQ

中小M&Aガイドラインに関して、現場で譲渡オーナー様からよくいただく質問にお答えします。

Q:ガイドラインを守らない業者と契約するとどうなりますか?

法的な罰則はありませんが、トラブルのリスクが高まります。 ガイドラインはトラブル防止の知恵の結晶です。これを守らない業者は、利益相反の説明を省いたり、高額な手数料を隠したりする可能性があります。また、事業承継・M&A補助金の対象外となるため、費用負担が増えるデメリットもあります。

Q:仲介会社とFA(ファイナンシャル・アドバイザー)はどう違いますか?

立ち位置と忠実義務の対象が異なります。 仲介会社は売り手と買い手の間に入り、双方から手数料を得て成約を目指します(中立的)。一方、FAは売り手(または買い手)の片方だけと契約し、依頼者の利益最大化のために交渉します。ガイドラインでは、双方の特徴とリスクを説明することが義務付けられています。

Q:買い手候補に勝手に情報を流されることはありませんか?

第3版の改訂で規制が強化されました。 以前は一部の業者が無断で情報を流すケースもありましたが、現在は「ネームクリア」(社名開示)の前に売り手の同意を得ることが原則となっています。もし不安な場合は、契約時に「ノンネームシート(匿名情報)の段階でも、開示先リストを事前に確認したい」と申し出てください。

まとめ|中小M&Aガイドラインとは

中小M&Aガイドラインは、後継者不在の中小企業が安全にM&Aを進めるための羅針盤であり、2024年の第3版改訂で悪質業者や不適切な買い手への規制が強化されました。法的拘束力はありませんが、補助金の要件となるなど実効性は高く、本指針を遵守する支援機関を選ぶことが、トラブル回避と納得のいく事業承継への第一歩となります。

当社は、税理士法人グループのM&A仲介会社として、中小M&Aガイドラインを遵守し、お客様の利益最大化を支援しています。豊富な実績を持つM&Aアドバイザーや公認会計士・税理士がチームとなり、安心・安全なM&Aをサポートいたします。事業承継に関する不安や疑問をお持ちの方は、ぜひ一度ご相談ください。

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著者

潟野 和徳
潟野 和徳名古屋法人部長/M&A担当ディレクター
人材支援会社にて、海外人材の採用・紹介事業のチームを率いて新規開拓・人材開発に従事。みつきコンサルティングでは、強みを生かし人材会社・日本語学校等の案件を中心に工事業・広告・IT業など多種に渡る案件支援を行う。M&Aの成約実績多数、M&A仲介・助言の経験年数は10年以上
監修:みつき税理士法人

みつきコンサルティングは、中小企業の会社売却・事業承継に特化した譲渡企業様に完全成功報酬制のM&A仲介会社です。売り手と買い手企業の最適なマッチングを、経験豊富なM&Aコンサルタントが初期相談から成約まで一貫してフルサポートします。

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