株式譲渡において登記申請は必要?手続きの流れ、事前に確認すること、注意点も解説

株式譲渡において登記申請は必要ありません。ただし役所の関与がないと正当性をチェックする機会がないため、慎重な手続きが必要です。

この記事では、事業の継続を希望している経営者に向けて、株式譲渡と登記申請の関わりについて解説します。株式譲渡を検討している人は参考にしてください。

1.株式譲渡とは

株式譲渡とは、企業の経営権を移転させる手法の1つで、中小企業のM&Aにおいて、頻繁に採用されています。株式を譲渡する際には、譲渡する株式の種類や数量、譲渡価格、譲渡の条件などの合意事項が、契約書に記載されるのが一般的です。譲渡が完了すると、株式の所有権が変更されて、新しい株主がその株式に関連する権利を行使できるようになります。

2.登記・定款とは

ここでは、登記および定款の概要について解説します。

登記の概要

登記とは、権利や義務を社会に向けて公示する法制度です。企業や法人の設立時は、商業登記・法人登記が必要です。登記には、商号や目的、発行可能株式総数などを記載します。

定款の概要

定款(ていかん)とは、会社の憲法にあたるものです。会社を設立する際に必要な法的文書で、会社の基本的なルールや運営の枠組みを定めます。定款は、会社法に基づいて作成され、会社の組織や活動に関する基本的な事項を規定した書類です。

3.株式譲渡において登記申請は必要?

ここでは、株式譲渡において登記申請が必要であるかどうかについて、解説します。

株式譲渡は原則自由

株式譲渡は、原則として自由に行うことが可能です。これは、会社法第127条において定められている「株式譲渡自由の原則」に基づいています。この原則により、定款で譲渡制限を設けていない限り、株主は自由に自己の株式を他者に譲渡可能です。

株式譲渡において登記申請は不要

株式譲渡が行われた場合でも、法人登記に関する申請は必要ありません。株式の譲渡は、会社の登記されている事項に変更をもたらすものではないためです。

株式譲渡において定款変更は不要

株式譲渡に伴って株主が変更された場合も、定款の変更手続きは必要ありません。株式譲渡は、定款変更の事由には該当しないためです。定款は会社の基本的なルールや構造を定めるものであり、株式譲渡は定款の内容に直接的な影響を与えるものではありません。

4.事前に確認すること

ここでは、株式譲渡を行う際に、事前に確認すべき事柄について解説します。

株式に譲渡制限はあるか

株式譲渡を行う際に事前に確認すべき事柄は、株式に譲渡制限があるかどうかです。株式は、譲渡制限がついている株式と、譲渡制限がない株式があります。上場企業の株式は譲渡制限がありませんが、譲渡制限を設けている中小企業が多いです。譲渡制限がある場合は、譲渡にあたって会社の承認を得る必要がある点に注意しましょう。

株券を発行しているか

株式譲渡を行う前に確認すべき事柄は、株券を発行しているかどうかです。株式会社が株券を発行するかは任意で決められます。株券を発行しているかどうかは、登記事項証明書で確認可能です。株券発行会社が株式譲渡を行う際には、株券を交付する必要がある点を押さえておきましょう。

5.株式譲渡の手続きの流れ

ここでは、取締役会を設置しない企業における、承認機関が株主総会の場合の手続きについて解説します。

1.譲渡側が株式譲渡承認を請求する

最初に、譲渡側が株式譲渡を承認するように会社に請求を行います。譲渡側は、自身が保有する株式を別の個人や法人に譲渡する意向を持っている場合、この意向を正式に会社に伝えなければなりません。そのために、譲渡側は「株式譲渡承認請求書」を作成し、企業に提出します。

2.会社が臨時株主総会で譲渡承認について決議する

株式譲渡承認請求書が会社に提出された後、会社は臨時株主総会を開催します。総会の目的は、譲渡側から提出された株式譲渡の承認について決議を行うことです。取締役は、株主総会において譲渡の条件、影響、及びその他の関連事項を詳細に説明し、株主たちの意見を聞いたうえで、譲渡の承認についての決議を行います。

譲渡承認が決定したら、譲渡側に株式譲渡を承認したことを通知します。2週間以内に通知が必要である点を押さえておきましょう。

3.譲渡側と譲受側が株式譲渡契約を締結する

株式譲渡の承認通知が届いたら、譲渡側と譲受側で株式譲渡契約を締結します。この契約は、株式の移転に関する条件を、法的に拘束力のある形で定めるものです。契約締結にあたっては、株式譲渡契約書を作成します。これにより、株式の譲渡が正式に合意されます。

4.譲渡側と譲受側が会社に株主名簿の書換を請求する

譲受側が譲渡対価を支払うことで、株主が変わります。このタイミングで、譲渡側と譲受側が会社に対して株主名簿の書換を請求します。

この請求は、新たに株主となる譲受側が、自身が株主であることを主張するために必要な手続きです。会社側は双方から株主名簿書換請求を受けたら、株主名簿の書き換えを必ず行わなければなりません。

5.会社が譲受側に株主名簿記載事項証明書を交付する

株主名簿の書換請求が行われた後、会社はこの請求に応えて株主名簿の書換を実施します。株主名簿の書換が完了すると、会社は譲受側に「株主名簿記載事項証明書」を交付します。この証明書は、譲受側が株式の正式な所有者であることを証明するために必要です。

6.株式譲渡において必要な書類

株式譲渡において必要な書類は、以下のとおりです。

・株式譲渡契約書

・株主名義書換請求書

・株主名簿

・株主名簿記載事項証明書交付請求書

・株主名簿記載事項証明書

また、取締役会を設置しない企業の場合は、さらに以下の書類が必要です。

・株式譲渡承認請求書

・株主総会招集に関する取締役の決定書

・株主総会招集通知

・株主総会議事録

・株式譲渡承認通知

7.株式譲渡の際に注意すべきこと

ここでは、株式譲渡の際に注意すべき点について解説します。

株主が親族のみでも手続きは確実に進める

株式譲渡の際、特に株主が親族のみで構成されている場合、株主総会を開催せずに、書類を簡単に作って済ませるケースがあります。このような状況では、親族間の信頼関係により、形式的な手続きが省略されることがありますが、リスクも伴うのが実情です。

親族間であっても、将来のトラブルを防ぐために、株式譲渡に関する手続きは確実に行いましょう。また、株主総会の議事録や株式譲渡承認請求書などの公式文書も、適切に作成し、保管することが重要です。

法務局が関与しない分慎重に進める

株式譲渡は法務局への申請が不要であるため、譲渡側と譲受側で手続きを進められます。手間が少なく済むものの、役所が関与しない分、手続きの正当性をチェックする機会がありません。そのため、慎重に進める必要があります。

不安や疑問がある場合、または手続きの複雑さに対処する自信がない場合は、法律の専門家や税務の専門家への相談が賢明です。専門家の助言を受けることで、将来的な法的な問題や紛争を未然に防げるでしょう。

8.株式譲渡と税金

株式譲渡で発生する利益は、課税対象となります。株式譲渡に関連する税金の計算は複雑で、個々のケースによって異なる要素も少なくありません。そのため、株式譲渡を行う際には、トラブルを防ぐためにも、専門家に相談することが望ましいでしょう。

9.株式譲渡のご相談はみつきコンサルティングへ

株式譲渡の手続きを進める際には、みつきコンサルティングへの相談がおすすめです。ここでは、みつきコンサルティングの特徴と強みを紹介します。

みつきコンサルティングの特徴

みつきコンサルティングは、税理士法人グループのM&A・事業承継仲介会社です。完全成功報酬で、M&A・事業承継をサポートしています。経営コンサルティング経験者も多く在籍しており、対象企業の詳細な事業分析を実施したうえでシナジー(相乗効果)創出を見込める候補先を紹介することが可能です。

事業分析や企業価値算定のために、候補先から事業計画書の提出を求められるケースが増えています。そのような場合も、経営コンサルティング経験者が、精緻な計画を策定します。

多種多様な業種・業態・エリアでの実績が豊富

みつきコンサルティングは、多種多様な業種・業態・エリアでのM&Aの実績があり、500件以上の成約実績があります。さらに、意外性のある遠隔地同士・異業種間でのマッチング実績もある点が特徴です。十分な実績から、株式譲渡を検討している人に対して、数多くの過去事例も紹介できます。

10.まとめ

株式譲渡において、登記申請は不要です。登記申請の有無も含め、株式譲渡を行う際には、必要な知識をあらかじめ網羅したうえで進めましょう。手続きに不安があれば、専門家への相談がおすすめです。 みつきコンサルティングは、株式譲渡を含めたM&Aに対応をしています。税理士法人グループであることから、M&A(第三者への承継)ありきの提案ではなく、事業所内承継、親族内承継といった、複数の選択肢のメリット・デメリットを比較して選択可能です。お困りの人は、いつでもお問い合わせください。

著者

西尾崇
西尾崇事業法人第三部長
宅食事業を共同経営者として立ち上げ、CFOとして従事。みつきコンサルティングでは、会計・法務・労務の知見を活かし、業界を問わず、事業承継型・救済型・カーブアウト・MBO等、様々なニーズに即した多数の支援実績を誇る。
監修:みつき税理士法人