自動車部品業界のM&Aは、EVシフトによる内燃機関部品の需要減、完成車メーカーからの原価低減圧力、後継者不在が重なり、二極化が進んでいます。エンジンや排気系に依存する会社ほど、出口の判断が遅れがち。譲渡価格に効く承認図比率や電動化対応度、譲受企業の評価軸、部品メーカー固有の実務論点を、税理士法人グループのM&A仲介会社の視点で解説します。
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エンジン部品からE-Axleへ、自動車部品の再編が続く理由
作る部品そのものが、いま入れ替わろうとしています。自動車部品業界でM&Aが増えた背景を、商流と外部環境の両面からたどります。
貸与図と承認図で分かれる価格交渉力
自動車部品の商流は、完成車メーカーを頂点に、Tier1、Tier2、Tier3と続く多層構造です。ここで効いてくるのが図面の持ち方。完成車メーカーやTier1の図面を借りて量産する貸与図メーカーは、価格交渉力が弱く、毎年の原価低減要請をそのまま受け止めがちです。対して、自社で設計まで担う承認図メーカーは、代替が利きにくく、値付けの主導権を握れます。同じ売上でも、この違いが利益率と譲渡価格を大きく分けます。会社売却を考え始めた段階で、まず確かめたい論点です。
部品点数3万点が2万点へ、消えるエンジン・排気系部品
一般に自動車1台は約3万点の部品で構成されるといわれ、そのうちエンジンだけで約1万点を占めます。EVになると部品点数は約2万点かそれ以下に減り、エンジン本体に加えて、燃料タンクなどの燃料系、点火プラグなどの燃焼系、マフラーなどの排気系、オイルポンプなどの潤滑系がまとめて不要になります。制動装置や足回り部品は残るものの、回生ブレーキや重量増で要件が変わります。経済産業省のグリーン成長戦略は、2035年までに乗用車の新車販売を電動車100%とする目標を掲げており、内燃機関に軸足を置く会社ほど、需要のピークアウトが視野に入ってきました。
セグメントで分かれる明暗
ひと口に自動車部品といっても、EV転換で受ける影響はセグメントごとに正反対です。下表は、主要な部品分野とEV化での位置づけ、M&Aの向かいやすい方向を整理したものです。自社がどこに立っているかを重ねてみてください。
| 部品セグメント | EV転換での位置づけ | M&Aの方向 |
|---|---|---|
| 燃料噴射装置・燃料系 | 内燃機関専用で需要縮小 | 集約・技術転用・早期の出口 |
| 排気系・マフラー製造 | 内燃機関専用で縮小 | 加工技術の他分野転用が鍵 |
| 制動装置 | 存続。回生ブレーキで構成が変化 | 電動化対応で価値を維持 |
| 足回り部品 | 存続。電池搭載で軽量化要求が上昇 | 強化・スケール拡大 |
| 自動車電装品 | 電動化・電子制御で需要増 | 買い手が最も欲しい成長領域 |
| 自動車・産業用ゴム製品 | 防振・シール用途で継続 | 存続。用途拡張で安定 |
| ボディー・内装部品 | 継続。軽量素材への置換が進む | 素材対応力で選別 |
倒産最多が映す二極化と再編の動き
数字にも変化が表れています。帝国データバンクの調査によると、2024年度の自動車部品メーカーの倒産は32件で、3年連続の増加、直近10年で最多となりました。うち20件、62.5%が負債1億円未満の小規模倒産です。円安による原材料高を販売価格へ転嫁しきれない構図が、価格決定権の弱い会社を追い込んでいます。一方で再編も動いています。2022年にはデンソーが愛三工業へフューエルポンプモジュール事業を事業譲渡し、両社の資本業務提携を軸にした協業を深めました。エンジンバルブ大手が残存需要を見込んで内燃機関部品の取り込みに動く例もあり、縮小と集約が同時に進んでいます。
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内燃機関に依存する会社を売る、買う、それぞれの判断軸
同じ取引でも、譲渡オーナーと譲受企業では見ている景色が違います。自動車部品ならではの損得を、両方の立場から並べます。仲介の入り方を比べる際は、M&A仲介の得手不得手も見ておきたいところです。
売り手が手にするもの、抱える宿題
譲渡オーナーにとっての最大の意味は、EV転換と設備更新の重荷を資本力のある傘下へ託せることです。将来リスクを個人で抱え込まずに済み、完成車メーカーとの受注も継続の受け皿を得られます。ただ、いいことばかりではありません。下表の左に得られるもの、右に残る宿題を整理しました。
| 譲渡オーナーのメリット | 譲渡オーナーのデメリット |
|---|---|
| 投資負担の移転 EV対応や設備更新の資金を後ろ盾に委ねられる 将来リスクの遮断 内燃機関依存の縮小リスクを個人で抱えずに済む 取引の継続 完成車メーカーやTier1との受注を残せる 個人保証からの解放 借入と個人保証の重荷を外せる 雇用と技能の承継 熟練工の雇用と技能を次へ引き継げる 創業者利益の確保 引退後の生活設計まで見通せる | 取引承認の取り直し チェンジ・オブ・コントロール条項で再承認が要る場合も 保守的な評価 内燃機関専業だと価格が伸びにくい 顧客集中の壁 主要顧客への依存が高いと評価に響く 自由度の低下 経営判断に親会社の意向が入る 情報漏洩の懸念 交渉長期化で社内外に伝わるリスク 説明順序の難しさ 従業員への伝え方を誤ると離職につながる |
買い手が狙う技術と、引き受けるリスク
譲受企業の狙いは、電動化や軽量化の技術、完成車メーカーへの取引口座、そしてプレスや鋳造といった生産能力の確保です。人材の獲得も大きな動機。半面、内燃機関依存の需要減や、品質にまつわる簿外リスクを引き受けることにもなります。
| 譲受企業のメリット | 譲受企業のデメリット |
|---|---|
| 技術・特許の獲得 電動化や軽量化のノウハウを一気に取り込める 取引口座の取得 完成車メーカーへのサプライヤー登録を引き継げる 生産能力の確保 プレス・鋳造・樹脂成形の設備を得られる 人材の獲得 熟練技能者やエンジニアを確保できる ポートフォリオ転換 内燃機関から電動系へ構成を組み替えられる 顧客基盤の補完 地域や取引先の空白を埋められる | 需要減リスク 内燃機関専用部品の縮小を抱える 更新投資の負担 老朽設備の入れ替え費用が読みにくい 品質の簿外リスク リコール履歴や量産品質承認の不備 業績変動 主要顧客の生産計画に左右される 労務・退職リスク キーパーソンの離職で技能が失われる 統合の難しさ 企業文化のすり合わせに時間がかかる |
譲渡価格に効く自動車部品メーカーの評価ポイント
いくらで売れるのか。多くの経営者が最初に気にする論点ですが、計算式より先に、何が評価されるかを押さえるほうが近道です。
年買法を軸に、承認図とのれんを重ねる
中小の自動車部品メーカーで最もよく使われるのが年買法(年倍法)です。時価純資産にのれんを数年分加えて目安を出します。純資産が薄くても、承認図での設計力や独自の加工技術があれば、のれんに上乗せが見込めます。より精緻に見るなら企業価値評価としてDCF法や類似会社比較法も用いますが、将来の受注前提が読みにくい局面では、年買法を土台に据えるのが実務的です。会社売却の相場観は、この土台の上で初めて意味を持ちます。
買い手が確かめる部品業ならではのポイント
譲渡価格を裏づけるのは、決算書の数字だけではありません。承認図の保有比率、完成車メーカーやTier1への売上依存度、電動化部品への対応度、金型や専用設備の年齢、そして品質マネジメント認証の運用状況。これらが評価の芯になります。下表に、買い手が見る主なポイントと、価格への効き方をまとめました。
| 評価ポイント | 価格への効き方 |
|---|---|
| 承認図比率 | 設計力があるほど代替されにくく、のれんが厚くなる |
| 主要顧客依存度 | 特定完成車メーカーへの集中が高いと保守的に評価 |
| 電動化対応度 | 電動系・電装品への実績があると成長性が上乗せ |
| 設備・金型の年齢 | 更新間近だと将来投資分が価格から差し引かれやすい |
| IATF16949などの認証 | 量産品質の裏づけになり、取引承継の安心材料に |
| 技能者の年齢構成 | プレス・鋳造の熟練層が厚いと技能承継の価値に |
みつきコンサルティングでは、承認図の保有比率と電動化部品への対応度を、初回の株価算定の段階で確かめます。内燃機関専業でも、プレスや鋳造の加工技術が他分野へ転用できれば、評価は変わってきます。ここを言語化できるかどうかが、値付けの分かれ目です。
自動車部品業界でM&Aを進める実務の流れ
部品メーカーのM&Aは、工場と品質を見ずには進みません。初回相談から引渡しまでの手順を、業界特有の論点とともに追います。
株価算定から候補打診、基本合意まで
前半の山場は、自社の値づけと相手探しです。図面と契約の棚卸しを丁寧に進めるほど、後の交渉が楽になります。
まず貸与図と承認図の内訳、完成車メーカーやTier1との取引基本契約、金型の所有区分を洗い出します。誰の金型で、どの受注を得ているかが、のれんの評価に直結します。
※当社なら、最短1日の無料株価算定で、譲渡価格の目線を早い段階でお示しします。
相手は同業の部品メーカーだけではありません。電動化を急ぐTier1、異分野から参入する事業会社、投資ファンドも候補です。ノンネームシートでは、取引先名を伏せつつ保有設備と加工難度を伝えます。
※当社では、譲渡オーナーの意向を踏まえ、打診先の順番から一緒に組み立てます。
自動車部品のM&Aで、工場を見ないまま話が進むことはまずありません。プレスライン、鋳造炉、樹脂成形機、検査工程の状態が、価格の裏づけになります。
※当社は、現場視察で問われる論点を事前に整理し、答えを用意する準備をご一緒します。
譲受企業がデューデリジェンスを行います。自動車部品では、量産品質承認(PPAP)の記録、リコール・不具合履歴、認証の維持状況が重点的に確かめられます。
※当社では、想定問答を先回りで用意し、調査が途中で止まらない段取りを組みます。
最終契約を締結し、譲渡代金の決済と株式の引渡しを行います。個人保証の解除や設備リースの承継も、この段階で仕上げます。
※当社は、金融機関との個人保証解除の交渉まで、クロージング後も伴走します。
支援の現場では、完成車メーカーとの取引基本契約にあるチェンジ・オブ・コントロール条項と、IATF16949の認証範囲を早い段階で確認します。承認が続かなければ受注が止まるため、契約の前に押さえるべき論点です。必要に応じて行政書士や社会保険労務士とも連携します。
大手部品メーカーとの取引を活かし後継者不在を越えた設計会社の譲渡事例
自動車部品に近い設計の分野から、譲渡が次の成長の起点になった一例を紹介します。以下は、自動車の樹脂部品の設計を担う会社の類似業種の譲渡事例です。

譲渡を選んだ背景
岐阜県で機械設計と電子回路の設計、ソフトウェア開発を手がけるY社は、年商およそ1億7,500万円の会社でした。自動車の樹脂部品の設計が主力で、大手自動車部品メーカーとの取引を続けてきました。経営者は60代半ば。後継者が不在で、事業と従業員の行き先を見据える時期に入っていました。みつきコンサルティングとともに、承継を前提としたM&Aの検討を始めます。
譲受企業選びの決め手
選んだのは、愛知県で各種設計請負と技術者派遣を営む売上30億円のH社でした。H社も同じ大手自動車部品メーカーを取引先とし、複数の取引先が重なっていたため、グループとして各取引先での競合優位性を高められる点が決め手になりました。株式譲渡の形をとり、事業領域の拡大という買い手の狙いとも合致しました。
譲渡後に開けた展望
成約は2017年6月。M&A後も合併はせず、対象会社は独立採算で運営されています。企業文化とキャリアのポジションが守られ、従業員への影響は最小限に抑えられました。Y社はH社グループへの参画で自動車以外の取引先も増え、売上の向上とエンジニアの技術力向上につながっています。オーナーは代わっても、現場は前向きに事業を続けています。
【インタビュー全文】大手自動車部品メーカーと取引する設計会社が、同じ取引先を持つ企業への株式譲渡を選んだ理由を読む
自動車部品のM&A仲介でみつきコンサルティングが選ばれる理由
仲介会社は数多くあります。工場を持つ会社ならではの論点を分かっているかで、進み方は変わります。
税理士法人グループだから描ける、手取りまでの設計
みつきコンサルティングは、税理士法人グループのM&A仲介会社です。譲渡価格の話で終わらせず、譲渡益にかかる税負担、役員退職金の設計、譲渡後の資産管理まで一体で考えます。工場の土地建物を個人で所有しているオーナーは多く、株式と不動産をどう切り分けるかで手取りが大きく変わります。この論点を初期から詰められるのは、税務を本業に持つグループならではの強みです。
東海に根ざした、部品業界の実務対応
自動車部品の集積地である東海圏に名古屋オフィスを構え、部品メーカーやその周辺の設計会社の案件を支援してきました。完成車メーカーへのサプライヤー登録や取引承認が譲渡後も続くか、量産品質の承認をどう引き継ぐか。当社が関わってきた案件では、こうした業界固有の確認を初期に済ませることで、交渉の停滞を防いできました。仲介会社の比較を進める際は、業界固有の手続に対応できるかを見てください。
プレス・鋳造の技能を、次へどうつなぐか
当社が関わる部品メーカーの案件では、プレスや鋳造の熟練技能者の技能承継が大きな論点になります。腕のある職人ほど、伝え方の順番を誤れば移る先があります。だからこそ、クロージング後に譲受企業の経営陣と一緒に説明の場を設け、処遇と勤務地は変えないという方針をその場で示す形を勧めています。技能の受け皿ができたと伝わるかどうかが、分かれ目です。
着手金・中間金・月額報酬無料の完全成功報酬制
完全成功報酬
M&Aが成立した場合のみ、譲渡対価に応じた手数料を頂戴します。
売主様は、ご成約まで費用負担なくスタートできます。
着手金・中間金
0円
月額報酬
0円
成功報酬
成約時のみ
※レーマン方式
自動車部品業界のM&Aでよくある質問
初期の相談でよく出る質問を挙げます。個別事情で答えは変わるため、目安として読んでください。
見つかる例はあります。ただ、内燃機関の需要見通しから評価は保守的になりやすいのが実情です。現場で買い手が見るのは、プレスや鋳造といった加工技術が電動系や他分野へ転用できるか。転用の道筋を示せると、候補の顔ぶれが広がります。設備の年齢と更新投資の見積もりも、価格の調整材料になります。
変わります。承認図で自社設計まで担う会社は、代替されにくく交渉力が強いため、のれんが厚く乗りやすい傾向です。貸与図中心だと、原価低減要請の影響を受けやすく、利益率が評価の足かせになりがち。現場では、承認図の比率と、その図面で得ている受注の安定度を1件ずつ確かめます。
売れる余地はあります。単年の落ち込みが完成車メーカーの生産計画や関税の影響によるものなら、正常収益に引き直して評価するのが実務です。ただし、価格転嫁の遅れが構造的に続いているのか、一時的なのかで見方は分かれます。仕入と販売の単価差の推移を、数期並べて説明できるよう整えておくと有利です。
デューデリジェンスで必ず確認される論点です。量産品質承認の記録や是正の履歴が整っていれば、むしろ管理体制の裏づけになります。逆に記録が曖昧だと、表明保証の交渉で価格や補償条件に反映されがち。契約条項と是正状況次第で、扱いは変わってきます。
自動車部品業界のM&A仲介なら、みつきコンサルティング
自動車部品業界の再編は、EVシフトによる内燃機関部品の需要減、原価低減圧力、後継者不在という3つの流れから動いています。譲渡価格を支えるのは、承認図での設計力、電動化部品への対応度、主要顧客との取引の安定度。数字を前に判断を先送りしたくなる気持ちは分かります。ただ、量産の終わる時期も技能者の年齢も、待ってはくれません。
みつきコンサルティングは、税理士法人グループのM&A仲介会社として、中小企業M&Aの実績経験が豊富です。相談先選びに迷う段階からでも、譲渡価格の目線合わせをお手伝いします。自動車部品業界のM&Aなら、みつきコンサルティングへ。
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著者

- 名古屋法人部長/M&A担当ディレクター
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人材支援会社にて、海外人材の採用・紹介事業のチームを率いて新規開拓・人材開発に従事。みつきコンサルティングでは、強みを生かし人材会社・日本語学校等の案件を中心に工事業・広告・IT業など多種に渡る案件支援を行う。M&Aの成約実績多数、M&A仲介・助言の経験年数は10年以上
監修者 神門 剛 代表取締役 / 公認会計士・税理士
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