PC周辺機器メーカーの会社売却は、市場の成熟や競争激化を背景に加速しています。本記事では、事業譲渡や子会社化の実例を交えながら、譲渡オーナーが抱える不安や課題の解決策を解説します。大手の資本参加による相乗効果や、自社の強みを活かした譲渡価格アップの秘訣を網羅しました。現場を知るM&Aの専門家が、最適な承継へと導くための実践的なノウハウをお届けします。
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PC周辺機器メーカーの会社売却を取り巻く業界環境
業界の状況は、近年大きく様変わりしています。 かつては国内市場だけで十分に利益を確保できた企業も、今やグローバルな激しい競争にさらされています。 まずは、現在のPC周辺機器業界が抱える構造的な課題と、市場の現在地を見ていきましょう。
市場規模の縮小とコモディティ化の波
日々の支援現場では、売上単価の下落に悩む経営者から数多くの相談が寄せられます。総務省や経済産業省の調査データによると、PC周辺機器の国内需要は現在約9,400億円と推計されています。国内のPC市場自体が成熟期を迎えており、パソコンの普及率が76%を超えた現在、新たな需要は生まれにくくなっています。
買い替え需要への移行と緩やかな市場縮小
消費者の主な購買理由は、新規購入から既存機器の買い替えへと移行しました。その結果として、市場全体は長期的には緩やかな減少傾向をたどっています。
コモディティ化が加速する価格競争
さらに深刻なのが、製品のコモディティ化(一般化による価格競争)です。安価な海外製品が大量に流入しているのが現実と言わざるを得ません。例えば、USBメモリや基本的なマウスなどは、機能面で消費者に違いを認識させることが難しく、結果として価格だけで比較されがちです。
生き残りに必要なマーケティング力と戦略転換
このような環境下で生き残るには、単にモノを作るだけでなく、販売チャネルごとに顧客の細かなニーズを汲み取り、適切な製品を訴求するマーケティング力が業績を大きく左右します。コストやデザイン面での競争力を保つため、多くの企業が生き残りを賭けた戦略の転換を迫られています。
PC周辺機器の主な種類と主な企業
現状を整理するため、以下の表にPC周辺機器の主な種類と代表的な企業をまとめました。
| 区分 | 周辺機器の例 | 主要企業 |
|---|---|---|
| 外部記憶装置 | ハードディスク、USBメモリなど | バッファロー、アイ・オー・データ機器 |
| 入力装置 | キーボード、マウス、ウェブカメラなど | エレコム、ワコム |
| 出力装置 | ディスプレイなど | EIZO、MCJ |
コロナ特需の終焉と新たな成長戦略の模索
よくある誤解として、「テレワークの普及でIT機器メーカーはどこも儲かっている」という見方があります。確かに2020年からのコロナ禍においては、在宅勤務の拡大やGIGAスクール構想(教育現場への端末導入)により、一時的な特需が発生しました。モニターやウェブカメラ、ルーターなどの売上は大きく伸長したのです。
特需の反動と円安が利益を圧迫
しかし、その特需は長くは続きませんでした。2022年以降は需要の反動減が顕著に表れています。さらに、近年の急激な円安による原材料価格の高騰が、多くの企業の利益を圧迫しています。
ファブレス体制が抱える構造的なリスク
主要企業の多くが、企画開発に自社のリソースを集中させ、実際の製造工程の大部分またはすべてを中国や台湾の外部メーカーに委託するファブレス体制を敷いているからです。国内市場が輸入に大きく依存している構造上、海外での製造コスト上昇や為替変動、さらには国際的な物流の混乱といったリスクを直接的に受けてしまいます。実際に2022年度以降、売上を維持しながらも営業利益が大幅に減少した企業が散見されました。
大手の傘下で活路を見出す動きが加速
こうした背景から、自社の単独での成長に限界を感じ、大手の傘下に入ることで活路を見出そうとする譲渡オーナーが増加しています。資本力のある企業と手を組むことで、調達コストを下げ、新たな市場を開拓する狙いがあるのです。
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コンピュータ周辺機器メーカーの主な売却・再編事例
PC周辺機器メーカーの会社売却は、単なる生き残りのためだけに行われるわけではありません。 むしろ、それぞれの企業が抱える課題を解決周辺機器・PC業界では、事業の選択と集中や生き残り戦略として、下表のような代表的な再編事例があります。
| 事例 | 概要 | 背景・狙い |
|---|---|---|
| エレコムによる多摩電子工業の譲受(2026年) | 2026年4月、エレコムが多摩電子工業の親会社であるTEJホールディングスを完全子会社化しました。多摩電子工業はコンビニエンスストア向けの商流に強固な地盤を持ち、中国に自社工場を構え高いコスト競争力を有していました。手順は以下の通りです。 1)譲渡企業が持つコンビニ商流や中国の生産体制の価値を客観的に評価する 2)譲受企業であるエレコムとの間で、ECノウハウと既存チャネルの融合計画を具体化する 3)シナジー創出に向けた合意形成後、持株会社の全株式を取得して完全子会社化を実行する | エレコムのEC事業のノウハウや物流拠点と、多摩電子工業の商流・生産体制を融合させ、販売チャネルの補完と原価低減を同時に実現する戦略です。互いの弱みを補い合い、強みを掛け合わせる模範的なシナジー効果の追求といえます。 |
| 東芝のDynabook売却(2018年〜2020年) | 2018年に東芝はPC事業子会社(東芝クライアントソリューション)の株式80%をシャープへ約38億円で売却し、2020年に残り20%も完全譲渡してパソコン製造から完全撤退しました。シャープの親会社は台湾の鴻海精密工業です。 | スマートフォンの台頭によるPC需要低迷と巨額赤字を受け、グループ全体の経営再建の一環として事業を切り離しました。圧倒的な生産力と調達力を持つ鴻海の傘下に入り、ブランドは「Dynabook」として存続しています。 |
| 富士通のPC事業譲渡(2017年) | 2017年、富士通は子会社である富士通クライアントコンピューティング(FCCL)の株式51%を中国のレノボに、5%を日本政策投資銀行に譲渡しました。譲渡額は約280億円です。 | 富士通はブランドを維持しつつレノボの世界屈指の部品調達力を活用できるようになりました。法人向け営業網・サポートは富士通が担い、個人向けはFCCLが担当する役割分担を明確にし、スケールメリットによるコスト競争力の強化を実現しました。 |
| ソニーのVAIO事業売却(2014年) | 2014年、ソニーはPC事業を投資ファンドの日本産業パートナーズ(JIP)に売却し、パソコン市場から撤退しました。売却後、長野県の安曇野工場を拠点に新会社「VAIO株式会社」が設立されました。 | 成長が見込めるスマートフォンやタブレットに経営資源を集中させるための決断です。独立後は小回りの利く自由なモノづくりが可能になり、現在では国内法人向けを中心に高付加価値モデルを展開し独自の立ち位置を確立しています。 |
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会社売却の主な背景と動機
これらの一連のM&A事例を俯瞰すると、経営者たちが何を考え、なぜ事業を手放す決断を下したのかが見えてきます。 企業規模を問わず、背景にある動機にはいくつかの共通点が存在します。
PC本体の市場規模縮小と成熟化
素朴な疑問として、「なぜ大企業ですら事業を手放すのか」と感じる方も多いでしょう。 最大の要因は、スマートフォンやタブレットの爆発的な普及にあります。 家庭内でインターネットに接続する主要な端末がパソコンからモバイル端末へと移り変わりました。 これにより、個人向けのパソコン市場は急速に縮小したのです。
また、製品自体の性能が向上し、買い替えサイクルが長期化したことも影響しています。 かつてのように、毎年新しいモデルが飛ぶように売れる時代は終わりました。 周辺機器もパソコン本体の売れ行きに連動するため、市場の成熟は業界全体に重くのしかかっています。
赤字事業の切り離しと経営効率の向上
大企業にとって、継続的に赤字を垂れ流す事業を抱え続けることは、全社的な経営リスクに直結します。 ソニーや東芝の事例が示すように、利益率の高い他部門の足を引っ張らないよう、不採算事業を切り離す「選択と集中」が急務となりました。 M&Aを活用した事業譲渡や会社分割といった手法を用いることで、事業そのものを消滅させることなく、再建を別会社に託すことができます。
廃業してしまえば、長年苦楽を共にしてきた従業員は職を失い、取引先にも多大な迷惑をかけることになります。 従業員の雇用を維持しながら、新たな資本のもとで事業を継続させることは、経営者が社会的責任を果たす上でも極めて重要な判断基準となります。
シナジーの追求を通じた競争力強化
一方的な撤退だけでなく、より積極的な理由で売却を選択するケースもあります。 自社にはないリソース(経営資源)を外部から取り込み、事業を飛躍させるための戦略的なM&Aです。 エレコムによる多摩電子工業の買収のように、互いの販路や生産拠点を共有することで、単独では実現できなかった新しい価値を生み出します。 特に、急速に成長するソフトウェア技術やIoT(モノのインターネット)に対応するためには、異業種や海外企業との提携が欠かせない時代となっています。
海外勢やコスト競争力の高い企業への集約過程
国内の業界は、今まさに激動の再編期を迎えています。 大企業の事例から得られる教訓は、調達力とコスト管理の重要性です。 ここからは、業界全体がなぜ少数の勝ち組へと集約されていくのかを解説します。
調達力とコスト競争力の絶対的な壁
現場の小さな失敗としてよく目にするのが、部品の調達コストを見誤り、利益を出せなくなるケースです。 PCや周辺機器の収益性は、どれだけ安く優れた部品を仕入れられるかにかかっています。 世界的なシェアを持つ海外のトップメーカーは、液晶パネルやメモリなどの部品を大量に買い付けるため、強力な価格交渉力を持っています。
対して、日本のメーカーの多くは販売台数が限られており、この「調達力」の差がそのままコスト競争力の差につながってしまいました。 製造工程を中国や台湾のODM(相手先ブランドによる設計・製造)企業に委託するファブレス体制が主流となる中、自社でコントロールできるコストの幅は狭まっています。 そのため、レノボや鴻海といったグローバル企業と手を組むことが、生き残りのための現実的な解となったのです。
国内メーカーが直面する構造的課題
国内のPC周辺機器業界は、歴史的な転換点に立たされています。 国内メーカーの事業は、圧倒的なスケールメリットを持つ海外勢や、コスト競争力に優れた企業へと集約されつつあるのが現状です。 この流れは、大企業に限った話ではありません。 今後、中堅・中小企業にも事業再編の波が確実に波及していくでしょう。 自社の強みを客観的に見つめ直し、早めに戦略的な決断を下すことが求められます。
情報機器メーカーの売却相場と株式評価
会社の譲渡を検討し始めた経営者が最も気になるのが、「自社はいくらで売れるのか」という点でしょう。 評価額は、業績だけでなく、その企業が持つ無形の強みによって大きく変動します。 ここでは、実務で用いられる評価手法と、金額を引き上げるための着眼点を解説します。
株価の一般的な計算式
中小企業のM&Aにおいて、最も頻繁に用いられるのが「時価純資産+営業利益の複数年分」という計算方式です。 これは現在の会社の純資産を時価に換算し、そこに将来生み出されるであろう利益(のれん代)を2〜5年分上乗せして算出します。 非常にシンプルで納得感が高いため、基準として多用されます。
情報機器メーカーが譲渡価格を最大化するポイント
同じような売上規模であっても、買い手から高く評価される企業には明確な特徴があります。 PC周辺機器業界において、譲渡価格を最大化させるための具体的な指標をいくつかご紹介します。
法人向け商流と独自技術の保有
価格競争に巻き込まれやすい一般消費者向け製品だけでなく、安定した利益が見込める法人向けの商流を持っているかが問われます。 一般消費者向けの市場では、前述の通り製品のコモディティ化が進み、低価格な海外製品との終わりのない体力勝負になりがちです。
しかし、法人向けであれば事情が異なります。 セキュリティ機能が強化されたネットワーク機器や、医療現場向けの長寿命かつ高精度なディスプレイなど、専門的なニーズに応える独自技術を有している企業は非常に高く評価されます。 企業向けの製品は一度導入されるとリプレイス(入れ替え)の際にも継続して指名されやすく、安定した収益基盤となるからです。 他社が容易に真似できない参入障壁や、強固な顧客基盤が、評価額を押し上げる最大の要因となります。
外部委託先の管理能力と品質保証体制
ファブレス化が進む業界だからこそ、海外メーカーとの強固なネットワークや、高い品質を維持するための独自の管理体制に大きな価値が生まれます。 単に安く作ってくれる工場を知っているというレベルではなく、現地の優良な委託先工場と長年にわたる信頼関係を築き、トラブル発生時にも迅速に対応できる太いパイプを持っているかが重要です。 円滑なサプライチェーンの構築ノウハウや、設計図面通りの精度を担保する品質管理のプロセスは、新規参入を狙う買い手企業にとって、ぜひ欲しいリソースなのです。
ECサイトなど直販チャネルの展開力
家電量販店やITディストリビューターなどの既存の流通網に頼るだけでなく、自社のECサイトを通じた直販体制を強固に確立しているかどうかも重要な評価指標となります。 直販チャネルを持っていれば、中間マージンを省くことで高い利益率を確保できるうえ、顧客の購買データや直接の声を商品開発に素早く活かすことができるためです。 また、特定のプラットフォームにおいて、高いレビュー評価を獲得し、検索順位の上位を維持しているブランド力も、現代のM&Aにおいては重要な無形資産として算定の対象となります。
完全成功報酬制
M&Aが成立した場合のみ、譲渡対価に応じた手数料を頂戴します。
売主様は、ご成約まで費用負担なくスタートできます。
着手金・中間金
0円
月額報酬
0円
成功報酬
成約時のみ
※レーマン方式
コンピュータ周辺機器メーカーの会社売却に関するFAQ
支援現場で経営者の方々から多く寄せられる素朴な疑問にお答えします。
可能です。赤字であっても、独自の技術や優良な顧客基盤、優れた販売チャネルなどがあれば、そこに魅力を感じる譲受企業は存在します。大手の資本が入ることで、調達コストが大幅に下がり一気に黒字化するケースも珍しくありません。
原則として、株式譲渡のスキームを用いれば従業員の雇用や待遇はそのまま引き継がれます。譲受企業も優秀な人材の確保を目的としている場合が多く、現場ではまず雇用の維持を前提に交渉を進めます。ただし、役員待遇などは協議次第です。
取引先との契約内容によります。M&Aを機に契約の見直しを求められる「チェンジオブコントロール条項」が含まれていないか、事前の法務デューデリジェンスで必ず確認されます。現場では、譲渡前に重要な取引先へ慎重に根回しを行います。
情報機器メーカーに精通したM&A仲介会社|みつきコンサルティング
PC周辺機器業界はスマートフォンの普及やコスト競争の激化により厳しさを増しています。大手企業が事業を再編する中、中小企業にとっても戦略的M&Aは有効な選択肢です。長年会社を育ててきた譲渡オーナーが抱える雇用や取引先への不安に、当社は真摯に寄り添い、最適な承継へと導きます。
みつきコンサルティングは、税理士法人グループのM&A仲介会社です。情報機器メーカーの会社売却の実績経験があり、この業界特有の商流や課題に特化した専門的な知見を有しています。情報機器メーカーの会社売却なら、みつきコンサルティングへご相談ください。
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著者

- 事業法人第二部長/M&A担当ディレクター
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ヘルスケア分野に関わる経営支援会社を経て、みつきコンサルティングでは事業計画の策定、モニタリング支援事業に従事。運営するファンドでは、投資先の経営戦略の策定、組織改革等をハンズオンにて担当。東南アジアなど海外での業務経験から、クロスボーダー案件に関しても知見を有する。M&Aの成約実績多数、M&A仲介・助言の経験年数は10年以上
監修:みつき税理士法人
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