GISの会社売却|M&Aのメリットと課題・譲渡価格を高める方法

地理情報関連のシステム会社の売却をご検討の経営者様へ。自動運転やGISデータの需要増に伴い、同業界のM&Aが注目されています。本記事では、業界再編の動向からパイオニアなどの大手譲渡事例、相場感、成功のポイントまでを専門家が徹底解説します。自社の強みを正しく評価し、最適な譲受企業を見つけるためのヒントとしてお役立てください。

「うちの会社でも売却できるだろうか…」、「何から始めればいいんだろう…」。そのようなオーナー経営者の不安に、中小企業向けM&A仲介会社みつきコンサルティングは、20年間・500件以上の支援実績に基づき、お応えします。本格検討前の情報収集として、まずはお話をお聞かせください。

地理情報システム業界の市場動向

地図製作や配信を手掛ける企業群の動向について解説します。ビジネスのデジタル化に伴い、従来の出版物中心からデータベース提供へと業界の構造も大きく変化しています。

1,000億円規模の市場と成長予測

この業界の全体像と将来性について見ていきましょう。位置情報と結びついた地理空間情報の活用は、社会インフラとして欠かせないものとなっています。

業界の枠組みと基盤地図情報

日本の地図ビジネスは、国土地理院の基盤地図情報をベースに航空測量等でデータ取得を行います。その上で、各社が用途に適した編集や加工を施し、汎用的な地図データベースを作成する流れが基本です。

地図データの需要拡大

国内の市場規模は1,000億円程度と推計されています。特に地理情報システム(GIS)データの需要は世界的にも増加傾向です。今後も年平均成長率10%以上での市場拡大が多くの調査機関から予測されています。

需要者別の主な用途と市場の広がり

地図データは幅広い分野で必要とされています。ユーザーの目的に応じて、求められる情報の範囲や粒度は全く異なります。

一般消費者と公共機関向けの展開

消費者向けにはWebサイトやアプリを通じたガイド情報として利用されます。一方で公共機関向けには、災害救助やインフラ設備のメンテナンス業務などに特化したエリア情報が求められます。

民間事業者向けの多様なニーズ

民間向けでは、小売業の商圏分析から建設業の3D都市モデル構築まで多岐にわたります。特に自動車業界では、カーナビゲーション用データだけでなく先進運転支援システム(ADAS)用の情報が不可欠です。

多様なプレイヤーによる競争と協調

業界内には様々な規模や得意分野を持つ企業が存在し、それぞれの立ち位置でしのぎを削っています。

広域展開企業と専門特化型企業の二極化

業界にはゼンリンのような一貫体制を持つ大手企業と、特定業務に特化した企業が混在しています。大規模なデータ基盤の維持には多額の固定費がかかるのが実情です。そのため、収益性の高い体制作りが急務となっています。

専門特化型企業の躍進

自動車業界向けを主力とするジオテクノロジーズやアイサンテクノロジーのように、特定業種を想定したデータ作成を行う企業も存在します。顧客ニーズへの深い理解が、確固たる地位を築く原動力です。

異業種からの参入と競争激化

地図ビジネスの可能性に目をつけ、周辺業界からの参入も相次いでいます。より限定的な地域の高精度なデータ取得を得意とする航空測量事業者などが市場に参入し、既存企業にとって強力なライバルとなっています。

ゼンリンと昭文社HD2社の売上合計が600億円台で推移|出版依存型と出版脱却型で明暗が分かれる二極化構造

主要2社の売上高合計は近年600億円台で推移していますが、内実は大きく異なります。ゼンリンがデータ提供・ストック型サービスへの転換を進め増収傾向にある一方、出版事業が売上高の約7割を占める昭文社ホールディングスは2016年度以降全社で営業赤字が続き、2022年度にようやく黒字転換しました。広域的な地図製作や付随するオンラインサービス領域では「Google Map」との競合も生じており、出版依存度の高い中小事業者ほど構造的な苦境が深刻です。

自動運転向け高精度3D地図の精度・国際標準化・コスト低減が中小事業者を直撃

2016年、内閣府主導でダイナミックマップ基盤企画(現ダイナミックマッププラットフォーム)が設立され、ゼンリン・ジオテクノロジーズ・トヨタマップマスターなどが出資しています。自動運転の走行基盤となる高精度3次元地図データには、安全走行を支える精度の高さ・国際標準化への対応・カーナビデータ並みへのコスト低減という三重の課題があります。開発投資を自力で賄えない中小事業者は、出資先大手グループへの参画によって技術課題を共同で乗り越えるM&Aが合理的な選択です。

地理情報システムの会社売却のメリット・課題

自社単独での成長に限界を感じる経営者にとって、企業譲渡は有効な選択肢です。この業界ならではの論点を整理し、譲渡を成功に導くポイントを解説します。

ストック型ビジネスへの転換の難しさ

従来の売り切り型から、定額でサービスを提供するストック型への移行が業界全体の急務です。しかし、中小企業にとってそのハードルは決して低くありません。

大規模データ基盤の固定費負担

高精度なデータベースの構築と維持には、莫大な固定費がかかります。自社で全てを賄うのは難しく、支援現場では資金繰りに悩むオーナー様の声を耳にします。大手企業への合流は負担軽減の有効な一手です。

業務基盤の共通化と自動化の壁

収益性を高めるには、製作工程の一部自動化やアルゴリズムの開発が不可欠です。技術力のある企業へ譲渡することで、相手先のシステムを利用して業務効率を劇的に向上させることが可能となります。

高精度3次元地図データの技術的課題

次世代のモビリティ社会に向けて、データに求められる精度は飛躍的に高まっています。最新技術への追随は、単独では困難な課題です。

ダイナミックマップ構築と国際標準化

自動運転の基盤となるダイナミックマップの構築には、安全走行を支える精度の高さが求められます。さらに国際標準化への対応など、技術的なハードルは極めて高いのが実情です。

コスト低減のプレッシャー

普及モデルの車両にシステムを搭載するため、地図製作にかかるコストを従来のカーナビ並みまで引き下げる必要があります。譲受企業の豊富な資金力を活かすことで、この難局を乗り越えやすくなります。

スキームごとの特徴と引き継ぎ

事業を他社へ引き継ぐ手法には、主に株式譲渡事業譲渡の2種類が存在します。下表のとおり、どちらを選ぶかで手続の負担が異なります。

比較項目株式譲渡事業譲渡
取引の対象会社そのもの(発行済株式)特定の事業資産(有形・無形)
契約の引き継ぎ原則としてそのまま包括承継される取引先や従業員との再契約が必要

病床からのWeb面談で成約を実現した、創業50年GIS企業の譲渡事例

みつきコンサルティングが支援した成約事例のなかから、GIS関連業務・補償コンサルティングを手掛ける会社の売却事例を紹介します。

健康問題が背中を押したM&Aの決断

1970年代に創業し、測量・GIS・補償コンサルティングで東関東のインフラ整備を支えてきたT社のオーナー。5年ほど前から事業承継を漠然と考えていましたが、大きな病気の再発を機に決断を迫られました。子どもたちは別の道を歩んでおり社内にも後継者候補がいない中、従業員の雇用と会社の将来を守るためにM&Aという選択肢を真剣に検討し始めました。

入院中のWeb面談を経てS社を選んだ理由

トップ面談の当日に急遽入院が重なるという想定外の事態が発生しましたが、病室からのWeb面談という形で予定通り実施しました。S社社長の「技術で地域に貢献する」という経営哲学が自社の価値観と一致し、全国拠点と豊富な専門人材を持つS社なら大型案件への挑戦と技術力向上の両方が実現できると確信しました。

約3か月での成約と譲渡後の日々

体調と時間を考慮し、週末対応も含めたみつきコンサルティングの集中サポートにより、約3か月という短期間でクロージングを実現しました。従業員の雇用が守られたことへの安堵感とともに、今は療養しながら家族と過ごす時間を最優先にしています。体調が許す範囲で若手技術者の育成にも携わりたいと語ります。

地図情報サービス業界の代表的な売却事例

地図情報サービスに関連する会社売却の事例として、代表的なものがパイオニアによる「インクリメント・ピー」(現:マップファン株式会社)の譲渡です。

パイオニアによる約300億円での子会社売却

インクリメント・ピーは国内2位の地図制作会社として「MapFan」ブランドを展開していました。この大規模な譲渡の背景には、親会社の明確な経営戦略がありました。

モビリティサービスへのシフト

2021年、経営再建中のパイオニアはハードウェア事業からソフトウェア事業への転換を急いでいました。車載カメラから得た走行データを活用する新サービスに注力するため、虎の子の子会社売却を決断したのです。

ファンドへの売却と上場視野

売却先はポラリス・キャピタル・グループが運営するファンドの特別目的会社で、売却額は約300億円とされています。譲受側は、将来的な株式上場も視野に成長戦略を描いています。

独自サービスを維持した新たな展開

この売却により、インクリメント・ピーは独自の地図データ収集能力とサービスを維持したまま、新たな体制で地図事業を展開することとなりました。

MapFanブランドとデータ収集能力

全国を走行して集めた質の高いデータと、知名度のあるブランド力は高く評価されました。親会社の傘下を離れることで、他のカーナビメーカーなど顧客層の拡大も見込める状況になりました。

ウィンウィンの関係構築

売却後もパイオニアとの取引は継続され、両社にとって良好な関係が保たれています。技術力を自立させつつ、新たな資本で事業を拡大させる理想的な承継事例と言えます。

その他の地図情報サービスの譲渡事例

国内だけでなく、グローバル市場でも地図情報ビジネスの価値が再評価されています。海外での大型再編の動きを確認しておきましょう。

Nokiaの「HERE」売却事例

2015年にNokiaが地図事業「HERE」をアウディ、BMW、ダイムラーの欧州自動車メーカー3社に売却した事例が存在します。

次世代ナビゲーションへの布石

買収総額は28億ユーロ(約3800億円)という巨額なものでした。リアルタイムで交通情報を共有し、自律走行車が行き先を把握する上で地図データが不可欠であると証明されました。

オープンなプラットフォーム化

オンラインサービス領域では巨大プラットフォーマーとの競合が激化しています。自動車メーカー各社が共同で買収に動いた背景には、独自技術を確保し業界標準を確立する狙いがありました。

地理情報システムの売却相場と株式評価

対象会社の譲渡価格は、一般的な財務指標に加えて業界固有の無形資産が大きく影響します。自社の本当の強みを把握することが大切です。

評価額を左右する具体的な指標

一般的な株価算定は、純資産に数年分の営業利益を加算して算出されます。しかしこの分野では、見えない資産がより重要な評価の鍵を握ります。

測量手段と作業規定のクリア

地図調製は公共測量に該当し、測量法の定める厳しい基準を満たす必要があります。十分な技術力や人員、長年蓄積されたノウハウを持つ企業は、他社との強力な差別化要因として高く評価されます。

データクレンジングとアルゴリズム

自社でデータ取得を行わなくても、公開情報を組み合わせる最適化アルゴリズムを持つ企業は魅力的です。個別の業種ニーズに合わせたカスタマイズ能力も、評価額を押し上げる重要なポイントとなります。

業績動向と収益性の評価

過去の売上推移だけでなく、将来の収益基盤が安定しているかどうかも厳しく見られます。出版事業に依存している場合は注意が必要です。

出版からデータ提供へのシフト

大手企業の売上推移を見ると、出版物としての地図からデータベースへの移行が明白です。メディアのデジタル化に遅れをとっていないか、Webサービスへの対応力が譲渡価格に直結します。

ストック型収益の安定性

常に最新情報に更新されるデータベースは、継続的な配信ビジネスを可能にします。ゼンリンなどのようにストック型ビジネスへの転換を進め、安定した月額収益の割合が高い企業ほど評価額は向上します。

当社では、GIS・地図会社の評価においてストック型収益(月次・年次更新ライセンス・API課金)の売上全体に占める比率と契約更新率を確認しています。データ基盤の構築・維持には大きな固定費がかかる業界特性上、更新収益が安定しているほど将来キャッシュフローの予測精度が高まり、譲受企業が高い評価を付けやすくなります。

自動運転向けデータ売上比率を評価倍率に反映

当社では、GIS・地図会社の算定においてEV/EBITDA(ゼンリン4.7倍・昭文社ホールディングス8.2倍)を参照して、出版収益の比率・ストック型サービス比率・自動運転(ADAS)向けデータ売上の有無を確認しています。出版比率が高い会社は減点要因となる一方、CAGR10%以上の成長が見込まれるGISデータ領域を主力とする会社は加点評価につながります。

完全成功報酬制(料金体系)

M&Aが成立した場合のみ、譲渡対価に応じた手数料を頂戴します。
売主様は、ご成約まで費用負担なくスタートできます。



地理情報システムの売却に関するFAQ

M&Aを検討し始めた経営者の方々からよく寄せられる疑問について、支援現場の実務的な視点からお答えします。

Q:独自に取得した測量データの扱いはどうなりますか?

株式譲渡であれば、原則として包括的に引き継がれます。現場ではまず、保有するデータベースの権利関係や更新頻度を確認します。データ基盤の質や独自性が高いほど、譲受企業にとっては非常に魅力的な資産となります。

Q:特定のニッチな用途に特化していますが買い手はつきますか?

むしろ高く評価される可能性があります。自動運転や不動産評価など、特定業務のニーズを深く理解している企業は独自のアルゴリズム開発力等で差別化できているためです。大手プラットフォーマーからも関心を集めやすい領域と言えます。

Q:従業員の雇用は維持されますか?

契約条項と相手企業の条件次第ですが、多くの場合で維持されます。インクリメント・ピーの売却事例でも、従業員約400人の雇用は維持されました。専門的な技術を持つ測量や開発の人材は、譲受企業にとっても事業を牽引する重要な資産です。

GISに精通したM&A仲介会社|みつきコンサルティング

地理情報システム会社の売却は、自動運転への対応など莫大な投資負担を軽減する有効な手段です。独自のデータ基盤やアルゴリズムを持つ企業は、市場で高く評価されます。長年育ててきた事業や社員の将来を案じるオーナー様の不安に寄り添い、当社が最適な相手先探しを全力でサポートいたします。

税理士法人グループのM&A仲介会社である当社の強みは、中小企業M&Aの実績経験が豊富な点です。対象業界に専門特化した知見を活かし、オーナー様の企業価値を最大化します。地図情報サービスの会社売却なら、みつきコンサルティングへぜひ一度ご相談ください。

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著者

伊丹 宏久
伊丹 宏久事業法人第二部長/M&A担当ディレクター
ヘルスケア分野に関わる経営支援会社を経て、みつきコンサルティングでは事業計画の策定、モニタリング支援事業に従事。運営するファンドでは、投資先の経営戦略の策定、組織改革等をハンズオンにて担当。東南アジアなど海外での業務経験から、クロスボーダー案件に関しても知見を有する。M&Aの成約実績多数、M&A仲介・助言の経験年数は10年以上
監修:みつき税理士法人

みつきコンサルティングは、中小企業の会社売却・事業承継に特化した譲渡企業様に完全成功報酬制のM&A仲介会社です。売り手と買い手企業の最適なマッチングを、経験豊富なM&Aコンサルタントが初期相談から成約まで一貫してフルサポートします。

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