M&A表明保証違反で補償請求される?損害賠償の範囲・防衛策・事例

M&A完了後に表明保証違反を指摘されたらどうなるのか。譲渡オーナーが知るべき「補償」の仕組み、損害賠償の範囲、リスクを限定する「キャップ」や「バスケット」条項、保険活用まで、実務のプロが解説します。契約条項の一文が会社売却後の老後の資産を左右するため、正しい知識でリスクを回避しましょう。

「うちの会社でも売却できるだろうか…」、「何から始めればいいんだろう…」。そのようなオーナー経営者の不安に、中小企業向けM&A仲介会社みつきコンサルティングは、20年間・500件以上の支援実績にもとづく無料相談でお応えします。本格的な検討前の情報収集だけでもかまいません。まずはお話をお聞かせください。

表明保証違反における「補償」と「損害賠償」の違い

M&Aの最終契約において、譲渡オーナーは譲受企業に対し、財務や法務に関する事実が真実であることを宣言します。これを「表明保証」と呼びますが、もし譲渡後にこの内容に誤りがあった場合、単なる口約束では済みません。契約違反として金銭的な責任を負うことになります。

このとき、実務で頻繁に使われる言葉が「補償」(インデムニティ)です。 一般的な法律用語である「損害賠償」と似ていますが、M&A契約においてはより強力で、譲受企業にとって有利な仕組みとして機能することが多いため、注意が必要です。

補償条項が選ばれる理由

日本の民法に基づく「損害賠償」を請求する場合、相手方の過失や、違反と損害の因果関係を厳密に証明する必要があります。しかし、これでは手続が複雑で時間がかかりすぎます。 そこでM&A契約では、特約として「補償条項」を設けるのが一般的です。

補償条項とは、表明保証違反という事実があれば、売主の過失の有無に関わらず、金銭的な損失を埋め合わせる約束のことです。 つまり、「違反=即支払義務」という図式が成り立ちやすく、譲受企業にとっては回収のリスクと手間を低減できる手段となります。

請求される金額の範囲

では、具体的にどのような費用が請求されるのでしょうか。 一般的には、表明保証違反によって譲受企業が被った「直接的な損害」が対象ですが、契約書の書き方次第では範囲が大きく広がります。

支援現場でよく議論になるのは、以下の費用を含むかどうかです。

  • 第三者からの請求対応費:訴訟費用や和解金など
  • 専門家費用:弁護士報酬や、違反調査にかかった会計士等の費用
  • 対応コスト:トラブル対応に割かれた社員の人件費

過去の裁判例では、工場設備の法令違反を是正するための工事費用に加え、それに対応した社員の人件費や弁護士費用までを「表明保証違反に起因する損害」として認めたケースもあります。 「株式の価値が下がった分だけ払えばいい」と安易に考えていると、想定外の出費を強いられる可能性があります。

補償範囲をめぐる攻防と「サンドバッキング」

補償の議論において、最も揉めやすい論点の一つが「サンドバッキング」(Sandbagging)の問題です。 これは、譲受企業がデューデリジェンス(買収監査)の段階で違反の事実を知っていたにもかかわらず、あえて契約時には黙っておき、譲渡後に「表明保証違反だ」として補償を請求する行為を指します。

譲受企業が違反を知っていた場合

譲渡オーナーからすれば、「知っていたなら買う前に言ってくれれば価格調整できたはずだ。後出しジャンケンは卑怯だ」と感じるでしょう。 しかし、契約書に「プロ・サンドバッキング条項(買主が知っていたとしても補償請求できるとする条項)」が含まれている場合、譲受企業は違反を知っていても補償請求が可能になります。

逆に、譲渡オーナー側としては、これに対抗するために「アンチ・サンドバッキング条項」を主張すべきです。これは、「買主が知っていた、または重過失で知らなかった事実については補償請求できない」とする規定です。 契約書のドラフト(草案)は譲受企業側から提示されることが多いため、この条項がどちらに有利になっているか、専門家によるチェックが欠かせません。

譲渡オーナーを守る「責任制限条項」の重要性

M&Aで会社を売却し、得た資金でハッピーリタイアを考えている譲渡オーナーにとって、無制限の補償義務はあまりに危険です。売却代金の全額を返還するような事態になれば、老後の生活設計が崩壊しかねません。 そこで実務上は、補償責任に一定の「枠」を設ける交渉を行います。

以下の表は、責任を限定するために使われる主要な条項です。

条項名概要と目的実務上の目安
キャップ(上限額)補償額に上限を設ける条項。譲渡価格の全額ではなく、一定割合に留めることでリスクを限定する。譲渡価格の10%〜100%程度
バスケット(免責額)少額の損害を請求対象外とする条項。損害額の累計が一定額を超えるまで請求できない。案件規模によるが、数十万〜数百万円
サバイバル期間(保証期間)表明保証の効力が続く期間。これを過ぎれば請求されない。一般条項:1〜3年
税務・労務:3〜5年

実務での交渉ポイント

キャップ(上限額)の設定は、譲渡オーナーにとって生命線です。 例えば「譲渡価格を上限とする」「譲渡価格の50%」等と設定しますが、株式の所有権や反社会的勢力の排除といった根本的な事項については、キャップの対象外(上限なし)とされることが一般的です。

また、期間(サバイバル期間)についても注意が必要です。 譲受企業は長期間の保証を求めますが、譲渡オーナーとしては早期に責任から解放されたいものです。税務調査の遡及期間(通常5年など)を考慮しつつ、一般事項については1年〜2年程度に短縮するよう交渉するのが現場の定石です。

リスクを回避・軽減するための具体的対策

どれほど契約書を作り込んでも、人間が経営していた会社である以上、ミスや見落としはゼロにはなりません。 万が一の事態に備え、譲渡オーナーがとるべき具体的な防衛策を解説します。

ディスクロージャー(情報開示)の徹底

最大の防御策は、「隠さずにすべて伝えること」です。 表明保証違反は、契約書で「問題ない」と言ったのに「問題があった」場合に成立します。逆に言えば、契約書の別紙(開示別紙/ディスクロージャー・スケジュール)に「実はこのような問題があります」と明記しておけば、それは表明保証違反にはなりません。

現場では、 「この小さなミスを伝えたら、破談になるのではないか」というような心理が働きがちです。しかし、M&Aの最終局面で小さなミスが発覚しても、即破談になることは稀です。むしろ隠していたことが後で発覚した場合のほうが、心証が悪化し、詐欺的な行為として重いペナルティを課されるリスクが高まります。 些細なことでもアドバイザーや弁護士に相談し、契約書上に「除外事項」として記載することが身を守ります。

表明保証保険(W&I保険)の活用

近年、中小企業のM&Aでも利用が増えているのが「表明保証保険」です。 これは、表明保証違反によって発生した損害を、保険会社が補填してくれる仕組みです。

  • 譲渡オーナーのメリット:補償金の支払いや、エスクロー(代金の一部預託)を回避でき、手取額を確定させやすい。
  • 譲受企業のメリット:譲渡オーナーの資力(支払い能力)を気にせず、保険会社から確実に回収できる。

特に、譲渡オーナーが高齢で、売却後に資産を整理・分配してしまう予定がある場合、後から数千万円~数億円の請求が来ても払えない可能性があります。保険料は安くありませんが、多額の取引を守るコストと考えれば、検討に値します。

実際に起きた表明保証違反のトラブル事例

抽象的な説明だけでは実感が湧かないかもしれません。 実際に裁判に発展した事例をベースに、どのような点が争点になったのかを見てみましょう。 ※事例は実際の判例を参考に、内容を一般化しています。

事例1:設備が消防法に違反していたケース

ある製造業のM&Aで、譲渡後に工場設備が消防法の基準を満たしていないことが発覚しました。 譲受企業は、是正工事を行った上で、その工事費用や対応した社員の人件費、弁護士費用を「表明保証違反による損害」として請求しました。

結果と教訓

裁判所は、法令違反の状態を解消するために必要な合理的範囲の工事費用について、補償を認めました。 「長年行政から指摘されていなかったから大丈夫」という現場の慣習は、M&Aの契約社会では通用しません。許認可や法令遵守の状況は、自分たちだけで判断せず、専門家の視点でチェックする必要があります。

事例2:不適切な会計処理(粉飾)があったケース

譲渡オーナーが「財務諸表は適正である」と表明保証したものの、譲渡後に在庫の架空計上や費用の先送りが発覚したケースです。 譲受企業は「正しい財務諸表に基づいていれば、買収価格はもっと安かったはずだ」として、差額の損害賠償を請求しました。

結果と教訓

裁判所は、不適切な会計処理がなければ算出されたであろう適正な企業価値と、実際の支払額との差額を損害として認めました。 「少しでも高く売りたい」という誘惑から数字を操作することは、将来的にその利益をすべて吐き出すだけでなく、信用失墜という取り返しのつかない事態を招きます。

表明保証違反に関するFAQ

表明保証違反について、現場でよくいただく質問にお答えします。

Q:知らなかった事実でも違反になりますか?

契約書の文言次第ですが、基本的には「知らなかった」場合(無過失)であっても責任を負うのが一般的です。表明保証は「事実の正確性を保証する」ものであり、オーナーの認識の有無を問わないケースが多いためです。ただし、契約書で「売主の知る限り(to the best of knowledge)」という文言を入れることで、責任範囲を限定できる場合があります。

Q:譲受企業のデューデリジェンスで見つからなければ大丈夫ですか?

いいえ、大丈夫ではありません。デューデリジェンスはあくまでサンプル調査であり、全ての問題を発見できるわけではありません。調査で見つからなかったとしても、契約書で「問題ない」と表明していれば、後から発覚した際に責任を問われます。

Q:会社を売却した後、海外に移住しても請求されますか?

居住地に関わらず、契約上の責任は残ります。もし日本国内に資産がなくても、国際的な法的手続を通じて請求される可能性があります。また、契約書で日本国内の裁判所を管轄としている場合、対応のために帰国を余儀なくされることもあります。やはり「キャップ」や「期間制限」で責任を限定しておくことが重要です。

M&A成功の鍵は「誠実な開示」と「専門家の盾」

表明保証違反は、M&A後に譲渡オーナーを襲う最大のリスクです。違反が認められれば、故意・過失を問わず「補償」として多額の支払いを求められる可能性があります。これを防ぐには、契約書での責任制限(キャップ・期間等)と、不都合な事実も含めた誠実な情報開示が不可欠です。ハッピーリタイアを守るため、契約の細部まで妥協せず確認しましょう。

当社、みつきコンサルティングは、M&Aアドバイザーだけでなく、会計・税務・法務のプロフェッショナルが連携し、契約書のリーガルチェックからリスクの洗い出しまで徹底的にサポートします。表明保証違反のリスクに不安を感じたら、まずは当社の無料相談をご活用ください。

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著者

田原 聖治
田原 聖治事業法人第一部長/M&A担当ディレクター
みずほ銀行にて大手企業から中小企業まで様々なファイナンスを支援。みつきコンサルティングでは、各種メーカーやアパレル企業等の事業計画立案・実行支援に従事。現在は、IT・テクノロジー・人材業界を中心に経営課題を解決。M&Aの成約実績多数、M&A仲介・助言の経験年数は10年以上
監修:みつき税理士法人

みつきコンサルティングは、中小企業の会社売却・事業承継に特化した譲渡企業様に完全成功報酬制のM&A仲介会社です。売り手と買い手企業の最適なマッチングを、経験豊富なM&Aコンサルタントが初期相談から成約まで一貫してフルサポートします。

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