敵対的買収を仕掛けられた際、経営陣の味方となって会社を守ってくれる「ホワイトナイト」。友好的な支援者である一方で、最終的には経営権を手放すことになる諸刃の剣でもあります。本記事では、ホワイトナイトの仕組みや具体的な防衛手段、メリット・デメリットについて、実務の視点からわかりやすく解説します。
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ホワイトナイトの意味|M&Aにおける役割
近年、経営戦略の一つとしてM&Aが一般化する中で、同意なき買収、いわゆる「敵対的買収」のリスクも高まっています。 ここでは、窮地に陥った企業を救うホワイトナイトの定義と、その役割について解説します。
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敵対的買収から会社を守る「白馬の騎士」
ホワイトナイト(White Knight:白馬の騎士)とは、敵対的買収を仕掛けられた企業が、経営陣の合意のもとで友好的に買収・統合を行う第三者(企業・個人)のことです。 童話などで、怪物に襲われそうになっているお姫様を救うために、白馬に乗った騎士が颯爽と登場するイメージになぞらえてこう呼ばれています。
敵対的買収者(ブラックナイトとも呼ばれます)が、経営陣の同意を得ずに一方的に株式を買い集めるのに対し、ホワイトナイトはターゲット企業の経営陣が自主的に探し、介入を依頼する点が最大の特徴です。 この手法は、買収者よりも好条件を提示して介入することで企業を守り、支配下に入ることで会社を存続させるための重要な防御策となります。
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経営陣が合意した友好的な第三者への承継
ホワイトナイトの主な役割は、敵対的買収者による支配を阻止し、現経営陣の方針や企業文化、従業員の雇用を守ることです。 敵対的買収が成立してしまうと、経営陣の刷新や不採算部門のリストラ、企業文化の破壊などが強行されるリスクがあります。
そこで、自社の理念や事業戦略に理解がある企業(ホワイトナイト)に買収してもらうことで、これらのネガティブな影響を回避します。 現場では、単に資金を出してもらうだけでなく、買収後の事業シナジー(相乗効果)が見込める相手を選ぶことが、スムーズな統合の鍵となります。
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ホワイトナイトが用いる主な防衛手段
ホワイトナイトは、単に名乗りを上げるだけでは敵対的買収を阻止できません。 強力な資金力と法的な手法を用いて、敵対的買収者の意欲を削ぐ、あるいは物理的に買収を不可能にする対抗策を講じます。
競合よりも高値で行う株式公開買付(カウンターTOB)
最も代表的な手段の一つが、カウンターTOB(対抗的株式公開買付)です。 これは、敵対的買収者が提示している株式の買取価格よりも、さらに高い価格でTOB(株式公開買付)を行う方法です。
株主にとってみれば、より高い価格で株を売却できる相手を選ぶのは経済合理性に基づいた自然な判断です。 その結果、多くの株主が敵対的買収者ではなくホワイトナイトに株式を売却することになり、敵対的買収者は目標とする株式数を集められなくなります。 この手法を実行するには、敵対者を上回る豊富な資金力が不可欠となるため、通常、ホワイトナイトは買収対象企業よりも規模が大きく、財務基盤が盤石な会社であることが多いのです。
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持株比率を変える第三者割当増資と新株予約権
もう一つの主要な手段は、株式の持ち分比率を変えてしまう方法です。 具体的には、ホワイトナイトに対して「第三者割当増資」を行ったり、「新株予約権」を発行したりします。
- 第三者割当増資:対象会社が新株を発行し、それをホワイトナイトが引き受けます。これにより発行済株式総数が増加し、敵対的買収者が市場で買い集めた株式の保有比率(議決権比率)が相対的に低下します。
- 新株予約権の付与:将来的に株式を取得できる権利(ポイズンピル)をホワイトナイトに渡しておきます。いざという時にこれを行使してもらうことで、同様に敵対的買収者の比率を下げることができます。
これらの措置により、敵対的買収者が過半数の議決権を握ることを阻止し、経営権の奪取を防ぐのです。
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依頼する前に理解すべきメリットと注意点
ホワイトナイトは強力な防衛策ですが、経営者にとっては「究極の選択」でもあります。 メリットだけでなく、実行に伴うリスクや副作用を正しく理解しておく必要があります。
企業価値と従業員の雇用が守られやすい
最大のメリットは、経営陣が信頼できる相手を選べる点です。 敵対的買収者が短期的な利益を目的として資産の切り売りや大幅なリストラを行う懸念があるのに対し、ホワイトナイトは友好的な関係を前提としています。
そのため、以下の表のようなメリットが期待できます。
| 項目 | ホワイトナイトによるメリット |
|---|---|
| 経営方針 | 現経営陣の意思やビジョンがある程度尊重される |
| 雇用維持 | 従業員の雇用や処遇が急激に悪化するリスクが低い |
| 企業価値 | 事業シナジーのある相手を選ぶことで、中長期的な成長が見込める |
| 準備 | ポイズンピル(毒薬条項)のように平時からの導入準備が不要 |
特に中堅企業のM&Aにおいては、オーナー社長にとって「誰に託すか」が精神的な安心感に直結するため、この点は非常に重要です。
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経営権の移動と新たな買収合戦のリスク
一方で、注意すべきリスクも存在します。 最も根本的な点は、ホワイトナイトを利用したとしても、結局は「別の企業に買収される」という事実に変わりはないことです。 経営の独立性は失われ、支配権はホワイトナイトの手に渡ります。これを「身売り」と表現することもあります。
また、以下の点にも留意が必要です。
- 新たな買収合戦の誘発:ホワイトナイトを探していることを公表すると、対象企業が「売りに出ている」と市場に認識され、別の買収者(競合他社やファンド)を呼び寄せてしまう可能性があります。
- 買収後の統合リスク:緊急避難的に相手を選んだ場合、企業文化の不一致などが後から発覚し、PMI(買収後の統合プロセス)が難航することがあります。
焦って条件の悪い相手を選んでしまわないよう、慎重に判断いただきたいと思います。
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日本国内におけるホワイトナイトの実例
日本でも、過去にいくつかの著名な敵対的買収騒動において、ホワイトナイトが登場しました。 下表では代表的な事例を紹介します。なお、内容は一般公開されている情報に基づきます。
| 対象企業 | 敵対的買収者 | ホワイトナイト | 結末と概要 |
|---|---|---|---|
| ニッポン放送 | ライブドア | SBI(ソフトバンク・インベストメント) | 2005年、ライブドアによるニッポン放送株の大量取得に対し、ニッポン放送はフジテレビジョン株をSBIへ貸与するなどの策を講じ、最終的にフジテレビの子会社となることで敵対的買収を回避しました。 |
| オリジン東秀 | ドン・キホーテ | イオン | 2006年、ドン・キホーテがTOBを開始。これに対しオリジン東秀はイオンに支援を要請。イオンがより高い価格でカウンターTOBを実施し、オリジン東秀を子会社化しました。 |
| 東京機械 | アジア開発キャピタル | 新聞各社(読売新聞など) | 東京機械製作所の輪転機事業を守るため、主要顧客である新聞社などが株式を取得し、経営権の安定を図りました。 |
これらの事例からも分かるように、ホワイトナイトには対象企業の事業内容を深く理解し、その価値を守る意志のある企業(取引先や同業者など)が選ばれる傾向にあります。
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ホワイトナイトに関するFAQ
ホワイトナイトに関して、M&Aを検討中のオーナー家からよく寄せられる疑問にお答えします。
上場企業のようなTOBは原則としてありませんが、類似の事例はあります。 例えば、株主が親族間で分散している場合、疎遠な親族の株を第三者が買い集め、経営権を脅かすケースです。現場では、こうしたリスクに備え、早めに友好的な承継先(ホワイトナイト的な役割の買い手)を見つけておくことを推奨しています。
信頼できるM&A仲介会社やFA(フィナンシャル・アドバイザー)に相談するのが一般的です。 自力で探すのは情報漏洩のリスクが高く、困難です。普段から付き合いのある金融機関や、業界に精通した専門家を通じて、財務力があり、かつ自社の理念に共感してくれる候補先を水面下で選定する必要があります。
「資金力」「事業適合性」「長期的関係」の3点が重要です。 対抗TOBを行うには豊富なキャッシュが必要です。また、買収後の成長を描けるかどうかも重要です。単に高値を提示するだけでなく、従業員や取引先を大切にしてくれるか、経営陣との信頼関係を築けるかを慎重に見極める必要があります。
まとめ|ホワイトナイトの意味
ホワイトナイト(白馬の騎士)とは、敵対的買収から会社を守るために経営陣が合意した友好的な第三者の買収者です。カウンターTOBや第三者割当増資などの資金力を背景にした手法で敵対的買収を阻止し、企業価値や雇用を守ります。ただし、最終的には支配権が移るため、事前の慎重なパートナー選定が不可欠です。
当社の立場は、みつき税理士法人グループのM&A仲介会社として、オーナー家の利益を最優先に考えます。中小企業M&Aの実績経験が豊富で、M&Aアドバイザー・公認会計士・税理士が在籍しており、複雑な権利関係の整理も安心です。ホワイトナイトのような友好的な承継先をお探しの際は、ぜひ一度ご相談ください。
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著者

- 事業法人第二部長/M&A担当ディレクター
-
ヘルスケア分野に関わる経営支援会社を経て、みつきコンサルティングでは事業計画の策定、モニタリング支援事業に従事。運営するファンドでは、投資先の経営戦略の策定、組織改革等をハンズオンにて担当。東南アジアなど海外での業務経験から、クロスボーダー案件に関しても知見を有する。M&Aの成約実績多数、M&A仲介・助言の経験年数は10年以上
監修:みつき税理士法人
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