マイノリティ・ディスカウントとは?株価算定の仕組みと目安を解説

「なぜ少数株主の株式価値は低く評価されるのか?」M&Aや事業承継で直面するこの疑問に、専門家が答えます。マイノリティディスカウント(少数株主割引)の定義から、コントロールプレミアムとの関係、目安となる割引率、そして非流動性ディスカウントとの違いまでを網羅。適正な株価算定のための知識をわかりやすく解説します。

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マイノリティ・ディスカウント(少数株主ディスカウント)とは

M&Aや株式譲渡の現場において、「持ち株比率が低い」というだけで、株式の評価額が予想以上に低く算定されることに驚かれる経営者の方は少なくありません。その主たる要因がマイノリティ・ディスカウント(少数株主ディスカウントです。

まずは、この概念の基本的な定義と、なぜそのような割引が発生するのかという背景について、専門家の視点から詳しく解説します。

支配権を持たないことによる「価値の減額」

少数株主ディスカウント(Minority Discount)とは、企業の株式評価において、支配権を持たない少数株主の株式価値を、支配権を持つ株式の価値(コントロールプレミアムが上乗せされたもの)から割り引く考え方です。

会社法において、株式会社の意思決定は原則として「株主総会での多数決」によって行われます。そのため、発行済株式総数の過半数(50%超)や3分の2以上を保有する「支配株主」と、それ未満しか持たない「少数株主」との間には、会社に対する影響力に天と地ほどの差が生まれます。

具体的には、少数株主は議決権を行使して経営に影響を与えられないため、その分だけ価値が低減されると考えられます。つまり、同じ1株であっても、「会社の舵取りができる1株」と「ただ乗っているだけの1株」では、経済的な価値が異なると評価されるのです。

支配株主と少数株主の決定的な権利の差

なぜそこまで価値に差が出るのでしょうか。それは、少数株主が以下のような重要な権利を単独で行使できないからです。

  • 取締役の選任・解任: 経営陣を誰にするか決められません。
  • M&Aや組織再編の決定: 合併や事業譲渡などの重要な意思決定に関与できません。
  • 配当政策の決定: 自分の投資に対するリターン(配当)をいくらにするか決められません。
  • 役員報酬の決定: 経営者の給料をコントロールできません。

このように、少数株主は会社の経営方針や管理処分権限を持たず、支配株主の決定に従わざるを得ない立場にあります。この「窮屈さ」や「リスク」を価格に反映させたものが、マイノリティ・ディスカウントなのです。

専門家の視点|M&A実務における解釈

実務上、このディスカウントは「嫌がらせ」で価格を下げているわけではありません。買い手(投資家)の視点に立つと、「経営に口出しできない株」をあえて高値で買う合理的な理由は乏しいため、市場原理として自然に発生する価格差だと言えます。特に中小企業のM&Aでは、この権利の有無が買取価格にダイレクトに影響します。

少数株主ディスカウントの重要ポイントと計算の仕組み

マイノリティ・ディスカウントを正しく理解するためには、その対義語である「コントロールプレミアム」との関係性を知る必要があります。ここでは、具体的な計算の考え方や適用される場面、割引率の目安について掘り下げていきます。

コントロールプレミアムとの「表裏一体」の関係

少数株主ディスカウントは、支配権の価値である「コントロールプレミアム」と表裏一体の関係にあります。

  • コントロールプレミアム: 支配権を獲得するために、株式の時価に上乗せして支払う価値(プラスの価値)
  • マイノリティ・ディスカウント: 支配権がないことによる価値の減少(マイナスの価値)

つまり、会社の価値(支配株主価値)から少数株主価値を算定する際に、このディスカウントが適用されるのです。

数式で表すと以下のようになります。

少数株主価値 = 支配株主価値 × (1−マイノリティ・ディスカウント率)

また、マイノリティ・ディスカウントは、コントロールプレミアムの逆数として求められることが一般的です。

割引率の目安と計算例

では、具体的にどの程度割引されるのでしょうか。 案件ごとに異なり、一律のルールはありませんが、実務上は 20~40%程度 が目安とされる場合が多いです。

ここで、コントロールプレミアムからマイノリティ・ディスカウントを導き出す具体的な計算例を見てみましょう。

【計算例:TOBプレミアムを参考にした場合】

TOB(株式公開買付)におけるプレミアムの平均値が30%程度であったと仮定します。この30%がコントロールプレミアムに相当すると考えた場合、マイノリティ・ディスカウント率は以下のように計算されます。

ディスカウント率 = 30%​ ÷(100%+30%)≒ 23%

このように、もし支配権に30%のプレミアムがつくならば、逆に少数株主の持分は約23%ディスカウントされて評価される、という論理が成り立ちます。

評価手法による適用の違い(DCF法での注意点)

企業価値評価の手法によって、マイノリティ・ディスカウントを考慮すべきかどうかが異なります。特に注意が必要なのが、インカム・アプローチの代表格であるDCF法です。下表は、評価手法別のマイノリティ・ディスカウント適用の考え方をまとめたものです。

評価手法少数株主ディスカウントの適用理由・考え方
DCF法(インカム・アプローチ)適用するDCF法は、将来の事業計画に基づいて企業価値を算出します。この事業計画は通常、現経営陣の意思に基づいて策定されるため、算出される価値には支配権の価値がすでに含まれていると考えられます。したがって、DCF法で算出した全体の企業価値から少数株主の持分を算出する場合、マイノリティ・ディスカウントを適用して減額調整を行う必要があります。
類似会社比較法(マーケット・アプローチ)適用しないマルチプル法等で参照する上場企業の株価は、一般的に少数株主同士が市場で売買している価格です。そのため、市場株価にはすでにマイノリティ・ディスカウントが織り込まれており、ここからさらにディスカウントを行う必要はない(あるいは二重計上になる)という考え方が一般的です。逆に、市場株価をベースに支配権を取得するM&Aを行う場合は、プレミアムを上乗せする必要があります。
純資産法(コスト・アプローチ)適用する会社の資産や負債を時価評価して純資産額を出す方法です。資産の処分や活用は支配株主が決定できるため、この手法で出された価値も支配株主価値とみなされ、少数株主の評価においてはディスカウントの対象となることがあります。

専門家の視点|評価実務の落とし穴

「DCF法で出した株価だから正しい」と主張しても、それが少数株主の買取価格として提示された場合、買い手側から「それは支配権がある前提の価格ですよね?」とディスカウントを主張されるのがM&Aの常識です。どの評価手法がベースになっているかを見極めることが、適正価格を知る第一歩です。

関連する「非流動性ディスカウント」との違いと併用

マイノリティ・ディスカウントと並んで、非上場企業の株価評価で頻出するのが「非流動性ディスカウント」です。これらは混同されがちですが、全く異なる概念であり、実務では「ダブルで適用される」ことも珍しくありません。

非流動性ディスカウントとは

非流動性ディスカウントとは、非上場株式のように市場で売買しにくく、換金にコストや手間がかかる場合に、その流動性の低さから評価額を割り引く考え方です。 上場株式であれば証券取引所ですぐに現金化できますが、非上場株式は買い手を自分で探さなければならず、売却までに長い時間と労力(コスト)がかかります。この「換金のしにくさ」を価値の減額として反映させます。

2つのディスカウントの違い

項目少数株主ディスカウント非流動性ディスカウント
着眼点支配権の有無(経営に関与できるか)換金性の有無(すぐに売れるか)
対象議決権の過半数を持たない少数株主非上場企業の株式全般(支配株主も含む場合あり)
理由経営方針を決定できない不利益買い手探しや換金にコストがかかる不利益
割引率目安20~40%程度30%前後(状況による)

「ダブルパンチ」で評価額が下がる仕組み

非上場企業の少数株式を評価する場合、これら2つのディスカウントは併用されることがあります。 例えば、DCF法で算出した企業価値に対し、まずマイノリティ・ディスカウントを行い、そこからさらに非流動性ディスカウントを行うという手順です。

【計算イメージ】

  • 本来の1株価値:10,000円
  • マイノリティ・ディスカウント(30%):▲3,000円 → 残7,000円
  • 非流動性ディスカウント(30%):7,000円 × 30% = ▲2,100円
  • 最終評価額:4,900円

このように、2つの要素が重なると、理論上の価値から半値以下になることもあり得ます。これが、非上場企業の少数株式の売却が難しいと言われる金銭的な理由の一つです。

裁判における判断(法的視点)

この非流動性ディスカウントが認められるかどうかは、裁判でも争点になります。最高裁の判例や近年の傾向を見ると、「どのような目的で株価を算定するか」によって判断が分かれています。

1. 反対株主の株式買取請求(会社法785条など)

会社側の事情(合併など)で意に反して追い出される株主を保護するため、非流動性ディスカウントを行うべきではない(あるいは限定的であるべき)とされる傾向があります。

2. 譲渡承認請求(会社法144条)

株主が自らの意思で譲渡を希望している場合、取引の現実性を考慮し、非流動性ディスカウントを行うことは許容される(むしろ考慮すべき)と考えられています。

専門家の視点|交渉材料としての活用

「判例では非流動性ディスカウントが認められないケースもある」という情報は、売り手(少数株主)にとって強力な交渉カードになります。一方、買い手側は「譲渡承認請求のケースに該当する」としてディスカウントを主張します。どの「土俵」で戦っているかを理解することが重要です。

少数株主ディスカウントの実務における重要性

少数株主ディスカウントは、単なる計算上の調整項目ではなく、株式評価の実務において、企業の支配権の有無による価値の差を適正に反映させるために極めて重要な概念です。

M&Aや事業承継での適用場面

少数株主ディスカウントは、具体的には下表のような場面で適用され、取引価格を左右します。

適用場面具体的な状況ディスカウントの影響
M&A(少数持分の買収)買い手がすでに過半数を握っており、残りの株式を買い集める場合です。少数株主に対して提示される価格にはディスカウントが適用される可能性があります。支配権を持たない株式であるため、評価額が減額されます。
非公開化(スクイーズアウト)上場企業がMBOなどで非公開化する際、退出させられる少数株主の株式評価が行われます。ディスカウントの是非が争点となります。ただし、会社側の事情で退出を余儀なくされる場合は、ディスカウントが否定される判例もあります。
親族外への事業承継後継者が株式を買い取る際、支配権を伴わない一部譲渡が行われる場合です。低い評価額での譲渡が税務上も認められやすくなるケースがあります。ただし、税務上の評価は財産評価基本通達等に従うため、別途専門的な検討が必要です。
同族株主間の売買経営権を持たない親族が株式を手放す際の売買です。その評価額を巡ってトラブルになるケースが多発します。支配権の有無によって評価額が大きく異なるため、慎重な対応が必要です。

「一物二価」を受け入れる

M&Aの世界では、同じ会社の株式であっても、「誰が持つか」「何%持つか」によって価値が変わる「一物二価(あるいは多価)」が当たり前です。 少数株主ディスカウントは、「支配権の価値」を数字に落とし込むための共通言語です。

売り手としては「安く買い叩かれている」と感じるかもしれませんが、買い手からすれば「経営に関与できないリスク分を差し引いている」という合理的な主張です。このギャップを埋めるためには、双方がディスカウントの根拠(割引率の妥当性など)を客観的なデータに基づいて協議する必要があります。

専門家の視点|納得感のある合意のために

ディスカウントの適用有無やその幅(20%なのか40%なのか)に、絶対的な正解はありません。だからこそ、交渉力が問われます。売り手であれば「会社は安定配当を出しており、少数株主の不利益は少ない」と主張してディスカウント幅を縮小させるなど、会社の個別の事情を加味した交渉が可能です。

少数株主ディスカウントに関するFAQ

少数株主ディスカウントに関して、よくある質問をまとめました。

Q:マイノリティ・ディスカウントの割引率は具体的に何%くらいですか?

一般的には 20%~40%程度 が目安とされています。ただし、企業の業種、収益性、支配株主との関係性、定款の定め(譲渡制限の有無など)によって変動します。また、TOBプレミアムの逆算から約23%~30%程度という数字が参照されることもあります。一律に決まっているわけではないため、個別の鑑定評価が必要です。

Q:どのような評価手法を使った時にディスカウントが必要ですか?

主に DCF法(ディスカウント・キャッシュ・フロー法) や 純資産法(時価純資産法) を用いた場合に適用が検討されます。これらは基本的に「支配権を持っている人が会社を自由に動かせる前提」で価値を算出するため、そこから「支配権がない分」を差し引く必要があるからです。一方、市場株価をベースにする類似会社比較法では、通常は適用しません。

Q:非上場の少数株式を売却したいのですが、必ずディスカウントされますか?

買い手との交渉次第ですが、実務上は少数株主ディスカウント(および非流動性ディスカウント)を考慮した価格提示がされるケースが大半です。買い手にとって、経営権のない非上場株は流動性が低く、リスク高い資産だからです。ただし、会社法上の「反対株主の株式買取請求」などの特定の局面では、ディスカウントを行わない評価が裁判で認められることもあります。

少数株主ディスカウントのまとめ

マイノリティディスカウント(少数株主ディスカウント)について解説しました。 要点をまとめると以下の通りです。

  • 定義: 支配権(議決権の過半数)を持たないことによる株式価値の減額調整。
  • 背景: 取締役の選任やM&Aの決定など、経営に関与できない不利益を価格に反映させる。
  • 目安: 一般的に20~40%程度の割引率が適用されることが多い。
  • 注意点: 非上場株の場合は「非流動性ディスカウント」も加わり、さらに評価額が下がる可能性がある。

M&Aや株式譲渡において、提示された株価が「適正」か「不当に安い」かを判断するには、このディスカウントの仕組みを正しく理解しておく必要があります。特にDCF法などの専門的な計算手法が絡む場合、直感的な価格と理論上の価格には大きな乖離が生まれます。ご自身の保有する株式、あるいは買収対象の株式が適正に評価されているか不安な場合は、早めに専門家へ相談することをお勧めします。

当社は、みつき税理士法人グループのM&A仲介会社として15年以上の業歴があり、中小企業のM&Aに特化した実績経験が豊富なM&Aアドバイザー・公認会計士・税理士が多く在籍しております。マイノリティディスカウントを含む株式評価やM&Aをご検討の際は、みつきコンサルティングにご相談ください。

著者

伊丹 宏久
伊丹 宏久事業法人第二部長/M&A担当ディレクター
ヘルスケア分野に関わる経営支援会社を経て、みつきコンサルティングでは事業計画の策定、モニタリング支援事業に従事。運営するファンドでは、投資先の経営戦略の策定、組織改革等をハンズオンにて担当。東南アジアなど海外での業務経験から、クロスボーダー案件に関しても知見を有する。M&Aの成約実績多数、M&A仲介・助言の経験年数は10年以上
監修:みつき税理士法人

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