広告業界のM&A|成功させる価値訴求ポイント・最新動向・成約事例

広告業界はインターネット広告の成長に伴い大きく変化しています。本記事では広告 M&Aを成功に導く業界動向と重要なポイントを解説します。 

広告業界の構造

広告業界は、広告代理店とメディアという大きく二つの業態から成り立っています。広告代理店が広告の企画や制作を担当し、メディアが広告代理店で作られた広告を消費者に届けます。このように、広告業界では複数の企業が役割を分担して事業を進めています。

また、広告業界にはいくつかの重要な職種があります。以下でそれぞれ詳しく説明します。

広告業界の主な職種

広告業界には主に以下の3つの職種があります。

  • 企画職:マーケティングを行い、市場調査や競合分析を通じて効果的な広告企画を立案します。クライアントのニーズに応えるための重要な役割を担っています。
  • 営業職:広告主(クライアント)との交渉やプレゼンテーションを担当します。説得力のあるプレゼン能力や交渉力が求められる職種です。
  • 媒体職(プランナー):広告代理店の企画がうまく進むように調整役を果たします。クライアントや社内の各担当者と密接にコミュニケーションを取りながら、プロジェクト全体を管理します。

広告業界の主要プレイヤー

広告業界では、広告代理店が主導的な立場を取っており、特に総合広告代理店がその中心となっています。代表的な企業には電通、博報堂、ADKなどがあります。これらの大手広告代理店が広告主や制作会社の間に入り、広告全体をコントロールしています。

また、特定の分野に特化した専門広告代理店も数多く存在します。例えばサイバーエージェントはインターネット広告に強みを持つ企業です。これにより、企業の強みや特性によって競争が激化しています。

広告業界が抱える課題

広告業界が現在直面している主な課題は「少子高齢化」と「媒体の変化」です。

少子高齢化による需要の減少

日本では少子高齢化が進んでおり、広告を見る人口が徐々に減っています。また、高齢者は新しい商品やサービスに対して消極的になる傾向があるため、広告効果が薄れやすくなっています。

テレビからインターネットへのシフト

最近ではテレビ広告よりもインターネット広告の需要が急速に伸びています。2019年にはインターネット広告費がテレビ広告費を上回りました。この流れはさらに加速しており、YouTubeなどの動画配信サービスやSNSへの広告投資が増えています。

一方、インターネット広告市場の競争は激しく、広告の成果を上げることは容易ではありません。企業が効果的な広告を出すためには、インターネット広告の専門知識や運用スキルが求められます。

広告業界の外部環境

広告業界は他の業種や個人による参入が進んでおり、明確な市場規模を把握することは困難です。しかし、インターネット広告や動画広告の市場規模は拡大傾向にあります。

市場規模

広告業界は業界自体が多様化していて、また別業種が参入してきています。そのためどこまでが広告業界か線引きが難しく、結果的に市場規模の明確な統計データがありません。しかし、動画広告市場規模の動向は参考になるでしょう。サイバーエージェント調べでも、動画広告市場規模は右肩上がりです。

動画広告市場規模・予測推移<広告商品別>(2023年~2028年)

インターネット広告市場の成長

インターネット広告市場は右肩上がりで成長しています。特に動画広告市場は顕著な伸びを見せており、今後も成長が続くと予想されます。一方で、テレビ、新聞、雑誌、ラジオといった従来型の媒体は広告費が徐々に減少しています。コロナ禍の影響もありますが、インターネットへの移行はそれ以前から緩やかに進行していました。下図はコロナ禍前までのものですが、ご参考ください。

媒体別広告費の推移

今後もインターネット以外の媒体は緩やかに広告費が減少していくでしょう。 

競合業態の多様化

広告業界の競合はますます多様化しています。Webマーケティング企業やコンサルティング企業が広告制作に参入し、広告業務を直接行うケースが増えています。また、広告制作における技術的なハードルが下がったことで、個人でも広告制作に参入することが容易になりました。

以前は広告主が広告代理店に依頼することが一般的でしたが、現在はオンラインを通じて個人に直接依頼することもできます。これにより、個人が広告制作を仕事として行うケースも増加しています。 

M&Aが増加する背景と広告業界のトレンド

広告業界では、総合代理店によるデジタルシフトが進んでおり、電通によるセプテーニ・グループの譲受や博報堂によるDACグループの譲受など、デジタル領域に強い企業を譲受する動きが活発化しています。

また、クッキー規制や個人情報保護強化により、広告業界のビジネスモデルは大きな転換期を迎えています。特に顧客データを直接保有する小売業などが広告分野において有利になっており、新たなM&Aの動きを促しています。

広告業界における最近のM&A動向と注目トピック

広告業界では近年、M&A動きが活発化しています。特に注目されるのは、総合広告代理店がデジタル領域を強化するために専門性の高い企業を譲受するケースです。

総合代理店によるデジタル領域企業の譲受

近年、総合広告代理店の大手企業がデジタル分野の専門企業を譲受しています。具体的な例としては、電通によるセプテーニ・グループの譲受や、博報堂によるDACグループの譲受が挙げられます。

これらの譲受では、特に「デジタル人材」の獲得が重視されます。デジタル分野の専門スキルを持つ社員が譲受企業にとって大きな価値を生み出すからです。そのため、譲受の際には譲渡企業が持つ人材の質や専門性が強く評価されます。

クッキー規制と顧客データの重要性

インターネット広告においては「クッキー規制」など、ユーザーのプライバシーを守る動きが進んでいます。そのため、今までのように簡単にユーザーの行動を追跡して広告を出すことが難しくなっています。

この影響で、小売業が持つ「顧客データ」が非常に価値を持つようになりました。顧客データを正しく管理し、活用できる企業は広告ビジネスで強みを発揮します。その結果、小売業など異業種から広告事業へ参入する企業も増えています。

インフルエンサーマーケティング企業への注目

また、「インフルエンサーマーケティング」の市場が拡大しています。インフルエンサーを活用して商品やサービスを宣伝する方法が効果的であることから、この分野への投資や譲受が活発に行われています。

近年ではインフルエンサーマーケティング関連企業が大型の資金調達を行い、高い企業価値を示す事例も増えています。こうしたトレンドも広告業界のM&Aを後押ししています。

業界再編と今後の展望

広告業界では、今後も、注目のM&Aが起こる可能性があります。特に大規模な企業同士のM&A案件が進行するとの予想もあり、業界再編が進むと考えられます。

広告業界で譲受企業に価値を訴求するポイント

M&Aを検討する際、譲渡オーナーは自社の価値を高く評価してもらう必要があります。以下にそのポイントを説明します。

顧客やサプライヤーとの関係性

譲渡企業が強い顧客関係を持ち、顧客がサービス提供企業を簡単に変えられない状況にあれば、その譲渡企業の価値は高く評価されます。さらに、GoogleやYahoo!など大手企業との交渉力、希少なインフルエンサーとの強い関係性がある等もプラス評価につながります。

高い成長性と競争優位性の訴求

譲渡企業が高い評価を受けるためには、まず「成長性」を示すことが重要です。市場でまだ広く知られていなくても、急成長している企業は高く評価されます。また、自社のビジネスモデルに独自性があり、競合他社が簡単に参入できない仕組みを持つ場合も、譲受企業からの評価が高くなります。

技術力や運用チームの強みを示す

広告業界では、AI(人工知能)や量子コンピューターなど、先進的な技術を持っている企業が高く評価されます。譲受企業はこの技術を活用して将来的に利益を出せるかを重視するため、自社の持つ技術やノウハウを明確に示すことが必要です。

また、優秀な運用チームや制作チームを持つことも評価されます。ただし、最近では大手企業も運用業務を自社内で行うケースが増えているため、小規模な運用チームだけでは大きな価値を生み出しにくくなっています。そのため、チームの質や実績を明確にすることが求められます。

みつきコンサルティングのM&A成約事例

「みつきコンサルのM&A仲介」では、広告会社の譲渡を成功させたオーナー経営者の体験談を紹介しています。

広告(出版)会社のM&A事例 【京都】フリープランニングさま

求人フリーペーパーを30年以上運営してきた京都の会社が、業界環境の変化に対応するためM&Aを選択した事例です。インターネット時代の変化に適応しながら、新たな道を歩むことになりました。

譲渡オーナーの課題

インターネットやスマートフォンの普及、大手求人サイトの台頭により、求人フリーペーパー事業の環境が厳しくなっていました。早い段階でウェブサイトを立ち上げるなど対策を講じましたが、事業改革は思うような成果を上げられませんでした。このままでは事業継続が難しくなるという危機感が高まっていたのです。

みつきコンサルの導入過程

事業改革に取り組んでいる最中に、みつきコンサルティングからM&Aの提案がありました。30年以上かけて築き上げた会社を手放す考えに、最初は全く乗り気ではありませんでした。しかし、時間の経過とともに事業の厳しい現実を直視するようになり、従業員の将来を考えた選択として再検討することになったのです。

コンサルティングの成果

最終的に、同業の株式会社クリエイト(東京)への譲渡が実現しました。譲受企業は単に資産や売上だけでなく、長年築いてきた地域とのつながりや社員の実力を高く評価してくれました。従業員の雇用が確保され、デジタルマーケティングのノウハウと地域密着型サービスの融合により、事業に新たな活力が生まれています。

広告業界のM&Aのまとめ 

広告業界のM&Aでは、業界動向や譲受企業のニーズを踏まえ、自社の強みを明確に訴求することが重要です。特にデジタル領域や顧客データ活用が注目されています。

当社は、みつき税理士法人グループのM&A仲介会社として15年以上の業歴があり、中小企業M&Aに特化した実績経験が豊富なM&Aアドバイザー・公認会計士・税理士が多く在籍しております。M&Aをご検討の際は、みつきコンサルティングにご相談ください。

著者

田原聖治
田原聖治事業法人第一部長/M&A担当ディレクター
みずほ銀行にて大手企業から中小企業まで様々なファイナンスを支援。みつきコンサルティングでは、各種メーカーやアパレル企業等の事業計画立案・実行支援に従事。現在は、IT・テクノロジー・人材業界を中心に経営課題を解決。M&Aの成約実績多数、経験年数10年以上
監修:みつき税理士法人

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