食品スーパーの売却|生鮮の内製力と惣菜比率が支えるM&Aの価格と事例

食品スーパーの会社売却では、生鮮3部門の内製力や惣菜の粗利、ロス率といった売場の数字が譲渡価格を支えます。ドラッグストアの食品強化で商圏が削られるなか、後継者不在や冷ケース更新の負担を抱えるオーナーは少なくありません。買い手候補の顔ぶれ、食品衛生法の営業許可や酒類販売業免許の承継、神奈川の事業譲渡事例までを、税理士法人グループのM&A仲介会社みつきコンサルティングがお伝えします。

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目次
  1. 既存店の前年割れと異業態の食品強化が迫る食品スーパーの選択
    1. 40か月ぶりに前年を割った既存店の売上
    2. ドラッグストアとコンビニの食品強化が削る来店頻度
    3. 10店舗以下が過半を占める業界構造と規模の壁
  2. 食品スーパーのオーナーが会社売却に傾く理由
    1. 冷ケース更新と電気代が重なる設備の負担
    2. 生鮮の職人と店長候補が育たない
    3. 短時間労働者への社会保険適用拡大が読みにくくする人件費
  3. 譲渡オーナーが食品スーパーの売却で得るものと手放すもの
    1. 調達力と物流を借りて店の体力が戻る
    2. 地元の生産者との関係をどう守るか
  4. 生鮮3部門と惣菜の粗利構成が支える譲渡価格
    1. 年買法で見る目安と時価純資産+のれん
    2. 部門別の粗利と内製比率が映す稼ぐ力
    3. ロス率と買上点数が語る店の地力
    4. 部門別の粗利表から始める価格の見立て
  5. 食品スーパーを譲り受けたい買い手の顔ぶれ
    1. 広域展開を狙う同業チェーン
    2. 生鮮ノウハウを求めるドラッグストア
    3. 投資ファンドと隣接業種からの参入
  6. 食品衛生法の営業許可と酒類販売業免許の承継で詰まる点
    1. 株式譲渡と事業譲渡で変わる営業許可の扱い
    2. 酒類販売業免許・たばこ小売販売業許可と計量法の検査記録
    3. 賃貸借契約のチェンジオブコントロール条項
    4. 営業許可の名義と契約承継で先回りしたい確認
  7. 値引きロスと在庫評価が終盤に響く財務デューデリジェンス
    1. 生鮮在庫の評価と廃棄・値引きロスの計上
    2. パート比率の高い職場に潜む労務の論点
    3. 個人保証の解除に向けた金融機関との詰め
  8. 事業の選択と集中で食品スーパー事業を中堅チェーンへ託した売却事例
    1. 譲渡を考え始めた背景
    2. 譲受先を決めた理由
    3. 譲渡後に見えたもの
  9. その他の食品スーパーマーケットのM&A事例
    1. 食品SM同士のM&A事例
    2. 食品SMが異業種に参入したM&A事例
    3. 異業種が食品SMに参入したM&A事例
  10. 食品スーパーの売却でよくある質問
  11. 食品スーパーのM&A・売却支援はみつきコンサルティング
    1. 食品スーパーの会社売却の関連コラム

本記事は、食品スーパーを営むオーナー経営者に向けて、会社売却の判断材料をまとめたものです。生鮮の職人が高齢化し、惣菜を内製で続けるか外注へ切り替えるかで迷う。冷ケースの入れ替え費用に二の足を踏む。店舗の賃貸借契約に譲渡制限が入っていた。こうした足元の詰まりが、売却検討の入口になりがちです。

既存店の前年割れと異業態の食品強化が迫る食品スーパーの選択

食品は景気に左右されにくい、と言われてきました。ところが足元の数字は揺らぎ、店舗網を組み替えるM&Aが動いています。

40か月ぶりに前年を割った既存店の売上

全国スーパーマーケット協会など流通3団体の「スーパーマーケット販売統計調査」によると、2026年6月の既存店総売上高は前年同月比99.7%となり、40か月ぶりに前年を下回りました。客単価の上昇で売上を保ってきた構図が、限界に近づいたということ。買上点数は伸びず、価格訴求商品へ需要が集中する動きも月次に表れています。同協会の「スーパーマーケット白書」では2024年の総販売額が約25.4兆円と伸びていましたが、既存店で見た地力は別の話です。数字の裏側にあるのは、来店頻度の静かな低下でした。

2015年〜2024年のスーパーマーケット年間総売上高の推移と青果・惣菜・一般食品など部門別内訳を表すグラフ

ドラッグストアとコンビニの食品強化が削る来店頻度

「うちの商圏に競合の新店はない」と話すオーナーは多いものです。ただ、実際に客を分け合っているのは同業とは限りません。医薬品や化粧品で利益を確保できるドラッグストアは、集客のため食品を安く並べます。生鮮や日配まで扱う店が増え、日常の買い回りが置き換わりつつある地域も。コンビニも家庭向けの品ぞろえを広げ、少量購入の受け皿になりました。業態の線引きが消えるなかで、価格だけで応戦すると粗利が痩せます。単独で守り切れるかどうか、判断の時期が早まっています。

10店舗以下が過半を占める業界構造と規模の壁

同協会の「スーパーマーケット年次統計調査報告書」では、運営企業の過半数が保有店舗10店舗以下、約7割が1都道府県内のみでの展開でした。地域密着の中規模チェーンが強みを発揮しやすい業態である一方、加工食品の一括調達やプライベートブランドの開発には規模が要ります。物流センターやプロセスセンターも、店舗数が伴わなければ投資が重荷に。共同仕入の枠組みで補う手はありますが、それでも届かない領域は残ります。強い相手の調達力を借りる選択として、会社売却を検討するオーナーが増えました。

食品スーパーのオーナーが会社売却に傾く理由

売却の理由は「後継者がいないから」だけではありません。現場から積み上がる負担が、静かに決断を押します。

冷ケース更新と電気代が重なる設備の負担

食品スーパーの設備投資は、店の見栄えより先に冷やす機械へ向かいます。冷凍・冷蔵ケースは開店から10年を超えると効率が落ち、電気代がじわりと増えます。フロン排出抑制法により業務用の冷凍冷蔵機器は定期的な点検と記録の保存が求められ、ノンフロン機への入れ替えも視野に入ります。1店舗の全面改装で数千万円、複数店なら数億円。人口が細る商圏で、その回収年数を見通せるか。ここで手が止まるオーナーは珍しくありません。

生鮮の職人と店長候補が育たない

鮮魚をさばく、精肉を仕込む、惣菜の味を決める。食品スーパーの差別化は、こうした手仕事に支えられています。ところが担い手の高齢化は進み、若手の採用も難しくなりました。バックヤードの技術は数か月では身につかず、抜けた穴を埋めるのに数年かかることも。結果として、プロセスセンターからの供給や外注へ切り替える店が増えています。売場の顔だった部門がパック商品に置き換わると、常連客は敏感に気づきます。技術の承継が読めなくなった時点で、会社を売りたいと考え始めるオーナーもいます。

短時間労働者への社会保険適用拡大が読みにくくする人件費

売場を回すのはパート・アルバイトです。この層の社会保険をめぐる制度が、これから大きく変わります。2025年に成立した年金制度改正法により、短時間労働者の賃金要件は撤廃され、企業規模要件も2027年10月から2035年10月にかけて段階的になくなると厚生労働省は示しています。週20時間以上働く従業員は、会社の規模にかかわらず加入対象へ。パート比率の高い食品スーパーでは、法定福利費の増え方が事業計画に効いてきます。最低賃金の引き上げと重なる点も、頭の痛いところです。

後継者不在と個人保証が重なるとき

子が別の道を選び、幹部にも株を買う資力がない。そこへ店舗の借入と個人保証が残ります。オーナー個人が背負う保証は、引退の意思だけでは外れません。第三者への譲渡を含めた事業承継の道筋を早めに描いておくと、選べる相手の幅が広がります。

譲渡オーナーが食品スーパーの売却で得るものと手放すもの

良い面だけを並べても判断は進みません。手放すものまで見えて、初めて条件交渉の軸が定まります。

調達力と物流を借りて店の体力が戻る

大手グループや広域チェーンの傘下に入ると、まず仕入条件が変わります。共同調達で原価が下がり、プライベートブランドを扱えるようになれば、粗利率の底上げも見込めます。配送センターの相乗りで物流費が下がった例も。加えて、基幹システムやセルフレジ、キャッシュレス対応といった投資を単独で背負わずに済みます。中小企業のM&Aが身近になり、屋号と雇用を残したまま資本だけ移す形も選べるようになりました。下表は、譲渡オーナーから見た効果と留意点をまとめたものです。

譲渡オーナーのメリット譲渡オーナーのデメリット
仕入原価の低減
共同調達やPBの活用で、単独では届かない条件を得られる
値入と品ぞろえの裁量が減る
本部の商品政策に合わせる場面が増える
設備・IT投資の分散
冷ケース更新やレジ刷新の負担を単独で抱えずに済む
改装計画の主導権が移る
投資の順番が譲受企業の基準で決まる
雇用と屋号の維持
地域で親しまれた店名を残す前提での譲渡も選べる
人事制度の統合に時間がかかる
賃金体系やシフトの運用を合わせる負担が生じる
個人保証からの解放
借入の保証を外し、私財のリスクを切り離せる
表明保証の責任が残る
在庫や労務に関する申告の正確さを問われる
技能承継の受け皿ができる
生鮮や惣菜の教育体制を持つ相手なら人が育つ
取引先の見直しが起こりうる
地元生産者との取引が統合方針で整理される場合も
創業者利益の確定
譲渡益を得て、老後資金や次の事業へ回せる
一定期間の関与を求められる
引継のため役員や顧問として残る条件が付くことがある

地元の生産者との関係をどう守るか

地場野菜のインショップや地元の豆腐店との直取引は、価格では測りにくい資産です。譲受企業が全国共通の調達基準を持つ場合、こうした小口の取引が見直し対象になることも。逆に、地域色を武器にしたい買い手なら評価は上がります。譲渡の初期段階で「残したい取引先」を一覧にしておくと、相手選びの物差しになります。インショップの什器を誰が所有しているか、委託販売の精算がどう回っているか。こうした細部まで示せると、交渉の場で守りやすくなります。

生鮮3部門と惣菜の粗利構成が支える譲渡価格

「年商の何倍」という話が先に出がちですが、買い手が見ているのは売場の中身です。部門ごとの数字が価格を支えます。

年買法で見る目安と時価純資産+のれん

中小の食品スーパーで最も使われるのが年買法(年倍法)です。時価純資産にのれんを加えて目安を出します。店舗不動産を持つ会社では土地建物の時価評価が結果を大きく動かし、賃借中心の会社では収益力の見方が前面に出ます。DCF法や類似会社比較法は、参考として併用される程度にとどまります。リース資産の残債や、閉店した店舗の原状回復費用も時価純資産の調整項目です。会社売却の相場を業界平均で語ると、実態から離れやすくなります。

部門別の粗利と内製比率が映す稼ぐ力

全国スーパーマーケット協会の「スーパーマーケット年次統計調査報告書」によると、食品売上の構成比は一般食品と日配品が大きく、青果、畜産、惣菜、水産が続きます。一方で目標とする粗利率はほぼ逆順で、惣菜が最も高く一般食品が最も低いという構造。つまり売上構成と利益貢献はずれます。買い手はこのずれを読み、どの部門に伸びしろがあるかを測ります。下表は、部門ごとの位置づけと譲受企業が見る観点をまとめたものです。

部門売上構成と粗利の傾向譲受企業が見る観点
青果構成比は大きいが相場変動を受けやすい卸売市場との関係、産地直送の有無
水産構成比は小さめ、加工の手間が利益を左右さばき手の在籍状況、対面販売の維持可否
畜産市場外流通が中心で仕入条件の差が出やすいプロセスセンターの有無、輸入品の調達ルート
日配品構成比が大きく来店頻度を支える地場メーカー品の品ぞろえ、PB比率
一般食品構成比は最大級だが粗利率は最も低い共同仕入で下げられる原価の余地
惣菜粗利率が最も高く、集客と差別化に効く店内調理の比率、レシピと人の承継

ロス率と買上点数が語る店の地力

決算書だけでは、店の地力は見えません。譲受企業が求めるのは店舗別・部門別の数字です。値引きロスと廃棄ロスを分けた率、㎡当たり売上、レジ客単価と買上点数、既存店売上高の推移。この5つがそろうと、投資の回収年数が描けます。ロス率が高くても、原因が発注精度なら改善余地として評価されることも。逆に、立地の弱さが原因なら値引きは止まりません。企業価値評価の場面では、この切り分けが価格差になって表れます。

部門別の粗利表から始める価格の見立て

初回相談で当社が最初に開くのは、部門別の粗利表です。惣菜の内製比率が高く、粗利率が業界の目標水準を上回っている会社は、それだけで買い手の関心を集めます。反対に、生鮮を全面的に外注へ切り替えた直後の会社では、譲渡価格の説明に工夫が要ります。年買法の計算に入る前に、どの数字を強みとして提示するかを決める。この順番を守るだけで、譲渡オーナーが受け取る評価は変わります。株価算定の初期段階から、部門別の実績を根拠として組み立てています。

食品スーパーを譲り受けたい買い手の顔ぶれ

買い手は同業だけではありません。誰が、なぜ手を挙げるのかを知ると、相手選びの精度が上がります。

広域展開を狙う同業チェーン

最も多いのが、隣接エリアへ店舗網を伸ばしたい同業です。新規出店で商圏を一から育てるより、常連客の付いた店を丸ごと引き継ぐほうが早い。物流センターの積載効率が上がり、共同仕入の量も増えます。地域の食文化に合った品ぞろえや、地元での知名度も評価対象。2026年には、埼玉県を地盤とするチェーンの持株会社が首都圏や東海の地域スーパーを相次いで傘下に収める動きが公表されました。屋号を残す前提の譲渡も少なくありません。

生鮮ノウハウを求めるドラッグストア

食品を強化するドラッグストアは、生鮮の運営技術を外から取り込みたいと考えています。クスリのアオキホールディングスは2026年、新潟県で「ピアレマート」などを展開する複数社の株式取得を公表しました。狙いは同社グループが持つ生鮮管理の技術と商品力、教育体制の取り込みで、自社の物流網や調達力と掛け合わせる構想です。医薬品や化粧品で利益を確保できる相手だけに、食品の値入に対する見方も同業とは異なります。売り手にとっては選択肢が広がる展開といえます。

投資ファンドと隣接業種からの参入

店舗網を基盤に再成長を描くファンドや、ディスカウント業態を運営する企業も買い手になります。パン・パシフィック・インターナショナルホールディングスは、株式交換によるOlympicグループとの経営統合を公表し、効力発生日を2026年7月1日としました。食品卸や共同仕入の組織が資本参加する形もあります。全部を売り切らず、資本業務提携から入る選択も現実的。相手の探索では、業態に明るい会社を仲介会社一覧で見比べておくと判断しやすくなります。

ディスカウントスーパーの台頭

商品や顧客体験に独自性を持ちながらも「安さ」を訴求できるディスカウント業態の大手が、M&Aをも利用して店舗数・売上を拡大しています。例えば以下のような会社です。

屋号売上高店舗数特徴
トライアル約1兆3,471億円
(2026年6月期・連結)
621店
(2026年6月末・グループ計)
スーパーセンターを中心に食品・日用品を低価格で展開。2025年に西友を連結子会社化し、事業規模と首都圏での店舗網を大幅に拡大。リテールテックによる生産性向上も推進。
オーケー約7,544億円
(2026年3月期)
174店
(2026年3月末)
「高品質・Everyday Low Price」を掲げるディスカウントスーパー。関東を基盤に関西への出店を加速し、2026年3月期には関東10店・関西5店を出店。
業務スーパー
(神戸物産)
約5,517億円
(2025年10月期・連結)
1,122店
(2025年10月末)
大容量の業務用・家庭用商品を幅広く展開。自社グループ工場で製造するPB商品と自社直輸入品に強みを持ち、製販一体のビジネスモデルを構築。
ロピア
(OICグループ)
約6,404億円
(2026年2月期・グループ合計)
146店
(2026年2月時点・国内外)
精肉・鮮魚・惣菜など生鮮食品に強みを持つ「食のテーマパーク」。積極的な新規出店とM&Aを通じて急成長し、台湾・タイを含む海外展開も進める。

食品衛生法の営業許可と酒類販売業免許の承継で詰まる点

食品スーパーは、1店舗でいくつもの許認可を抱えています。譲渡の方式によって扱いが変わる点に注意が要ります。

株式譲渡と事業譲渡で変わる営業許可の扱い

店内で精肉を扱えば食肉販売業、鮮魚なら魚介類販売業、揚物や弁当を作れば惣菜製造業。食品衛生法に基づく営業許可は、いずれも店舗単位で必要です。株式譲渡なら会社が許可主体のまま残るため包括的に引き継がれます。ところが事業譲渡では、譲受企業が自ら許可を取得しなければなりません。HACCPに沿った衛生管理の記録も引き渡し対象。店舗数が多いほど、この作業が譲渡日程を左右します。

酒類販売業免許・たばこ小売販売業許可と計量法の検査記録

酒とたばこは、食品衛生法とは別の系統で管理されます。酒類販売業免許は税務署長の免許で、事業譲渡の場合は譲受企業側での新規申請が原則。たばこ小売販売業許可も営業所ごとの許可で、名義の扱いを早めに確かめておく必要があります。加えて見落とされやすいのが計量法です。売場のはかりは特定計量器として定期検査の対象となり、量目の管理記録が求められます。デューデリジェンスでこの記録が出てこないと、想定外の是正費用が話に上がることも。

賃貸借契約のチェンジオブコントロール条項

好立地の店舗ほど、契約の条項が効いてきます。商業施設のテナントや地主との賃貸借契約には、株主の変更や事業の移転に貸主の承諾を要する定めが入っていることがあります。承諾が得られなければ、譲渡そのものが組み替えを迫られる場面も。定期借家なら更新の保証がなく、残存期間が価格に反映されます。保証金の返還条件や原状回復の負担も、店舗ごとに違いが出ます。契約書を一枚ずつ確認する地味な作業が、後半の交渉を守ります。

営業許可の名義と契約承継で先回りしたい確認

支援現場で最後まで宿題として残りやすいのが、店舗ごとの許認可の名義です。惣菜製造業の許可が旧法時代のままだった、酒類販売業免許の販売場が移転前の住所だった、という例は実際にあります。みつきコンサルティングでは、母体である税理士法人の知見に加え、必要に応じて行政書士と連携し、譲渡方式を決める前の段階で許可の一覧と賃貸借契約の承諾条項を突き合わせます。承諾取得に時間がかかりそうな貸主が判明すれば、スケジュールを先に組み替える。この先回りが、条件変更の余地を減らします。

値引きロスと在庫評価が終盤に響く財務デューデリジェンス

食品スーパーの調査は、在庫と人に集中します。数字の作り方ひとつで、最終条件が動きます。

生鮮在庫の評価と廃棄・値引きロスの計上

棚卸資産の評価は、この業態で最も議論になる項目です。生鮮は日々値下がりし、賞味期限の近い日配品も同様。実地棚卸の頻度が低い会社では、簿価と実態の差が積み上がっていることがあります。値引きロスを売上値引で処理するか売上原価に含めるかで、部門粗利の見え方も変わります。財務デューデリジェンスでは、直近の棚卸表と廃棄記録が並べて確認されます。処理方法をそろえて説明できる準備が要ります。

パート比率の高い職場に潜む労務の論点

従業員の大半がパート・アルバイトという店は多いものです。だからこそ、シフト管理と割増賃金の運用が調査対象になります。開店前の品出しや閉店後の清掃が労働時間に含まれているか。年次有給休暇の付与が短時間労働者にも行われているか。社会保険の加入漏れがあれば、遡及して負担が生じる可能性も。デューデリジェンスで指摘されると、譲渡価格からの控除や表明保証の交渉材料になります。

個人保証の解除に向けた金融機関との詰め

これまで流通業の譲渡に関わってきた経験からいうと、オーナーが最後まで気にされるのは個人保証の行方です。店舗の建設資金や冷ケースのリース、仕入決済の当座借越まで、保証の対象は思いのほか広く広がっています。譲渡実行と同時に外れるとは限らず、金融機関ごとに手続の順序も異なります。当社は経営者保証に関するガイドラインを踏まえ、取引行への説明資料を早い段階で用意します。相談先を選ぶ場面では、M&A仲介の実務経験を確かめておくと安心です。

事業の選択と集中で食品スーパー事業を中堅チェーンへ託した売却事例

神奈川県で食品ディスカウント業態を営むP社が、食品スーパー事業を東京の中堅スーパーチェーンD社へ譲った案件です。

食品スーパー事業のM&A・事業譲渡(P社からD社へ)を支援したみつきコンサルティングの実績紹介画像

譲渡を考え始めた背景

P社は創業以来、地域に根ざした食品ディスカウント業態を営んできました。業態を広げるため食品スーパー事業へ進出したものの、大手チェーンの出店による競争激化と店舗の老朽化に直面します。単独運営には限界がある。そう判断し、みつきコンサルティングの提案を受けて事業譲渡の検討に入りました。

譲受先を決めた理由

決め手は、D社の経営理念と権限移譲の姿勢に共感できたことでした。同じ地域に店舗を多く持ち、物流や商品の共通化で互いに利がある。雇用継続にも前向きで、転籍を希望した従業員は全員が引き継がれています。不動産付きの譲渡だったため、賃貸借契約のチェンジオブコントロール条項への対応が最大の山場になりました。

譲渡後に見えたもの

検討開始から完了まで約半年。屋号はそのまま使われ、地域密着の運営も続きます。譲受側のノウハウと規模が加わり、価格と品ぞろえが充実したと代表者は振り返っています。

【インタビュー全文】不動産付きの事業譲渡でチェンジオブコントロール条項を乗り越えた経緯を読む

M&Aが成立した場合のみ、譲渡対価に応じた手数料を頂戴します。
売主様は、ご成約まで費用負担なくスタートできます。



その他の食品スーパーマーケットのM&A事例

食品SM業のM&Aは、同じ食品SM同士での再編が多いですが、近年では異業種との売買も増えています。

食品SM同士のM&A事例

食品スーパーマーケット同士のM&Aは、具体的にどのような事例があるのでしょうか。以下で事例を紹介します。

エコスはココスナカムラのM&A

2024年6月、エコスはココスナカムラの株式を全て取得すると発表しました。エコスは食品スーパーマーケットの事業を運営しています。一方、ココスナカムラは東京23区内で食品スーパーマーケットとベーカリーショップを展開する企業です。今回のM&Aを通じて、両社の経営資源とノウハウを統合し、より効率的に活用することで企業の成長を目指しています。

アークスと伊藤チェーンのM&A

2019年9月、東日本でスーパーマーケットを展開するアークスが伊藤チェーンを完全子会社化しました。伊藤チェーンは宮城県で複数のスーパーマーケットを運営しています。このM&Aの主な目的は経営の効率化です。

アルビスとオレンジマートのM&A

2019年4月、アルビスがオレンジマートを子会社化しました。両者とも、富山県を中心にスーパーマーケットを展開しています。アルビスは、まだ出店していないエリアでのシェア拡大を目指してM&Aを決断しました。

バローホールディングスと三幸のM&A

2019年2月、愛知県や岐阜県でスーパーマーケットを展開するバローホールディングスが富山県のスーパーマーケットの三幸を子会社化しました。バローホールディングスの目的は、富山県内のシェアの拡大です。

ヤオコーとエイヴイのM&A

2017年4月、関東でスーパーマーケットを運営するヤオコーが、神奈川県南部に複数の店舗があるエイヴイを子会社化しました。M&Aにより、両社の企業価値の向上や成長を実現できる見込みがあると判断したためです。  

イズミとユアーズのM&A

2015年10月、中国・四国・九州地方でスーパーマーケットを運営するイズミが、広島県・岡山県・山口県・福岡県を中心に展開していたユアーズを子会社化しました。イズミは大規模店舗、ユアーズは小規模店舗を多く運営しており、それぞれのノウハウを活かして今後の成長を目指せると判断したためです。

食品SMが異業種に参入したM&A事例

中には、M&Aにより異業界に参入したスーパーマーケットもあります。具体的な事例を紹介します。

万代とハークスレイのM&A

2021年2月、近畿地方のスーパーマーケットである万代は、ハークスレイの子会社であるアルヘイムの事業をM&Aで買収しました。譲渡された事業内容は、フレッシュベーカリーの製造や販売などです。M&Aの目的は、財務基盤の安定と商品調達力の強化とされています。

異業種が食品SMに参入したM&A事例

M&Aにより、異業界から食品スーパーマーケット業界へ参入した事例もあります。以下でくわしく紹介します。

クスリのアオキは木村屋のM&A

2024年8月、クスリのアオキは木村屋の全株式を取得し、同日に吸収合併しました。クスリのアオキHDは、全国でドラッグストアや調剤薬局、スーパーマーケットを運営している企業です。木村屋は千葉県を拠点とし、食品スーパーを4店舗展開しています。今回のM&Aによって、ドラッグストアと食品スーパーが提供する新鮮な食材を豊富に組み合わせ、顧客にとっての利便性をさらに高めることを目指しています。

クスリのアオキとホーマス・キリンヤ、フードパワーセンター・バリューのM&A

2022年3月、クスリのアオキがホーマス・キリンヤと、フードパワーセンター・バリューの2社を吸収合併しました。ホーマス・キリンヤは岩手県や宮城県でスーパーマーケットや衣料品店を運営しており、フードパワーセンター・バリューはホーマス・キリンヤの仕入業務を担っていました。M&Aの目的は、ドラッグストアに新鮮な食材を取り込むことです。

丸の内キャピタルと三浦屋のM&A

2021年8月、丸の内キャピタルが中央線や西武新宿線の沿線でスーパーマーケットを運営する、三浦屋の全株式を取得しました。丸の内キャピタルはファンド運営の知見やノウハウを活かし、三浦屋を成長させるとしています。

PPIHとGRCY HoldingsのM&A

2021年2月、PPIHがアメリカのカリフォルニア州でスーパーマーケットを展開するGRCY Holdingsを子会社化しました。PPIHは総合ディスカウントストアなどを展開する持株会社で、M&Aの目的は海外事業の拡大です。

食品スーパーの売却でよくある質問

相談の現場でよく挙がる疑問のうち、本文で触れていないものをまとめました。

Q:惣菜の内製を外注へ切り替えた直後でも、買い手の評価は下がりませんか?

切り替えの理由次第です。人手不足でやむを得ず外注した場合と、生産性を上げる目的で計画的にプロセスセンターを使う場合とでは、受け止め方が変わります。現場では、切り替え前後の惣菜部門の粗利率と客数の推移を並べて説明します。数字が保たれていれば、評価が下がる理由にはなりません。

Q:卸売市場の買参権やボランタリーチェーンの加盟は引き継げますか?

株式譲渡なら会社がそのまま残るため、原則として維持されます。ただし共同仕入の組織には、資本構成の変更を届け出る規約や、大手グループ傘下入りを想定した定めがある場合も。譲受企業が別の枠組みに加盟していれば、統合の過程で見直されます。加盟規約の確認は、初期の段階で行っておくと安心です。

Q:ネットスーパーが赤字です。切り離してから売った方がよいですか?

切り離しを急ぐ必要はありません。ピッキングと配送の人件費が重く、単体で黒字化している例はまだ多くないためです。買い手が既存の物流網へ載せられるなら、赤字のまま引き受ける判断もあります。現場では、注文単価と配送1件あたりのコストを示し、改善余地として説明する方法をとります。

Q:店の屋号や地元生産者との取引は残せますか?

相手の商品政策によります。地域名の入った屋号は、そのまま資産と見る買い手も少なくありません。地場野菜のインショップや地元メーカーとの直取引も、差別化の源泉として評価される場合があります。譲渡契約の交渉段階で、残したい取引先と屋号の扱いを条件として明示しておく方法が有効です。

税理士法人を母体とするM&A仲介会社|みつきコンサルティングが選ばれる理由

食品スーパーのM&A・売却支援はみつきコンサルティング

食品スーパーの譲渡価格は、生鮮3部門と惣菜の粗利構成、ロス率や買上点数といった売場の数字に支えられます。営業許可や酒類販売業免許、賃貸借契約の承諾条項まで見通せていれば、交渉の終盤で慌てずに済みます。一人で抱え込む時間が長いほど、選べる相手は減っていきます。

みつきコンサルティングは、財務・税務に強いM&A仲介会社として、中小企業のM&A仲介の実績経験が豊富です。生鮮や惣菜の現場を理解したうえで、譲渡オーナーの手取りと従業員の処遇を両立させる条件をつくります。相談先選びで迷ったら、食品スーパーの会社売却なら、みつきコンサルティングへご相談ください。

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食品スーパーの会社売却の関連コラム

著者

潟野 和徳
潟野 和徳名古屋法人部長/M&A担当ディレクター
人材支援会社にて、海外人材の採用・紹介事業のチームを率いて新規開拓・人材開発に従事。みつきコンサルティングでは、強みを生かし人材会社・日本語学校等の案件を中心に工事業・広告・IT業など多種に渡る案件支援を行う。M&Aの成約実績多数、M&A仲介・助言の経験年数は10年以上
監修者 神門 剛 代表取締役 / 公認会計士・税理士

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